気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

僕の彼女は魔法使い27


「なんか懐かしいねー」

「そうだねー」

宮澤と柏木は昔を思い出し、感慨にふけっていた

「あの頃の生徒会楽しかったなぁ。麻里子様も意外と熱い人でよく議論したよ」

「そうだね。でも結局それをまとめるのは敦子っていうね」

「そうそう。実は誰よりも権限持ってた気がするよ」

宮澤は笑う

「でも、あの時の麻里子様の告白はしびれたなー」

「うんうん。でも、私は佐江ちゃんの言葉が嬉しかったよ」

「そう?なんか、勢いで麻里子様に便乗したみたいで自分ではあの後ちょっと気にしてたんだけどね」

「え?そうなの?」

柏木はクスッと笑う

篠田が3年になり、生徒会を引退した後は

宮澤が会長、前田が副会長に就任していた

だが、篠田の引退は契約解除ということになる

生徒会室で、その事実を知らされた篠田は

小嶋にずっとそばにいてほしいと言ったのだ

―――

「たかみなは、敦子にずっとついてるじゃん。そういう風にはできないの?」

夕日が照らす薄暗くなった校舎の生徒会室で篠田が言う

「もちろん、契約は続けることができるが・・・私らの力は最近弱まってきてて・・・ここの学校を出れば、契約者にも負担がかかるんだ・・・大学進学とかでこのあたりの地区をでると相当な負担になる」

「それは、私にってこと?」

篠田は尋ねる

「そうだ。それに、これから先は・・・本当にこの地区・・・いや、霊樹周辺でしか生活できない可能性だってあるんだ」

「・・・わかった。今はまだ大丈夫なんだね。じゃあ、契約は解除しない」

「え?」

「私、この学校にもどってくる」

「え・・・?」

その台詞に、一番驚いたのは小嶋だった

「陽菜は、私を変えてくれたんだ。4年間私の身体に負担がかかるなんてどうってことない。それに、ここは学校だし、教員になって戻ってくるよ」

「で、でも麻里ちゃんは生物学者になりたかったんじゃないの?」

小嶋によって生きることの意味を見つけた篠田は

生物学に興味をもった

死を考えていた彼女が、生を扱う学問を好きになったのだ

「それは、陽菜の身体が歳を取らないから・・・」

「え?」

「最先端の科学技術とかを学べば、何か手掛かりが見つかるんじゃないかなっておもって・・・」

「なにそれー。私に歳とらせたいの?」

「ちがうよ。私の方だよ」

「え?」

「どうやったら、歳とらないか・・・考えて、そういう結果になったんだ。ただ・・・一緒に居たいの。ずっと一緒に・・・生きていたいから」

篠田は俯く

「麻里ちゃん・・・ありがと」

小嶋は篠田の手を取る

「でも、私たちは生きてる世界が違うから・・・。だから、そんなに考えなくてもいいよ」

「考えるよ!・・・好きだから。陽菜の事が・・・好きだから。陽菜が他の人と契約結ぶの嫌だし、記憶がなくなるのだって・・・嫌なの」

篠田の目から涙がにじむ

「私も嫌だ」

話しを聞いていた宮澤が口を開く

「ねぇ、たかみな。私もりんちゃんとの契約解消するの嫌だよ」

「・・・佐江ちゃん」

「私も、ずっと一緒に居たい。私も教員になってもどってくる。大学だって東京にする。もし霊樹のそばでなきゃ無理だって言うんなら、この地区から通う」

「おまえら・・・」

「ねぇ、たかみな。王女様が来るのって、あと何年くらいなの?」

前田が口を開く

「え・・・あと・・・11、2年くらいか」

「じゃあ、私ら30前だね。大学いって、ここで就職して・・・丁度教員としてもいい時期なんじゃないかな?」

「え?」

「王女の契約者は生徒会長にして、私たち教員がフォローするのじゃ駄目なの?」

「あっ、それいい!」

宮澤は声を上げる

「それに、私もみなみと契約解消するつもりないよ。みなみだってそうでしょ?」

「う・・・でも、敦子に負担がかかるんなら・・・」

「今更そんなこと言わないでよ!私は一緒に居たいの!それに、みなみが居ない生活なんて・・・もう考えられないよ」

「敦子・・・」

「私も、同じ。陽菜が居ないなんて嫌だ」

「私も。りんちゃんにいてほしい」

「・・・」

高橋は黙る

「ねぇ、たかみな。私ね、ここ最近ずっと1年くらいで契約解除してたでしょ?それって、なんかピンとこないのもあってさ。別にそれでいいかなーって思ってたの」

小嶋は高橋の方を向いて話しだした

「でも、麻里ちゃんと契約解消する時期が来て・・・なんか、寂しかったの。私も・・・麻里ちゃんと一緒に居たい。ダメかな?」

「私も・・・佐江ちゃんがいい!この先も・・・ずっと!」

柏木も声をあげる

「おまえら・・・わかってるのか?私らの使命は・・・」

「わかってる。だから、せめて王女がくるまでは・・・好きにさせて。そこから、どうするか決めてもいいんじゃない?」

小嶋はいつになく真剣なトーンで言った

「・・・いつか、離れる日がくるんだぞ?ずっといる方が・・・辛いときだってあるんだぞ?」

「わかってる。でも、今離れるよりその方が、ずっといい」

柏木も真っ直ぐ高橋を見つめた

「そっか・・・みんな、いいパートナーに出会えたってことだか・・・」

高橋はフッと笑い

「じゃあ、2人には約束してもらう」

高橋は篠田と宮澤の方を向いた

「必ず、教員になって戻ってきてきてくれ。そして、王女が来る時・・・フォローしてほしいんだ。この世界で、生活ができるように」

「わかった」

「もちろんっ!」

篠田と宮澤しっかりと頷いた

――――

「ねぇ、佐江ちゃんはさ。教師になったこと後悔したことないの?」

「え?なんで?」

「だって、大鳥さんに憧れてたから・・・その・・プロとかそっちに行きたかったんじゃないのかなって」

「あー。ううん。全然。元々教員には興味あったしさ、それにこうしてバスケの顧問させてもらえてうれしいよ」

宮澤はニコッと笑う

「お・・・もしかして、佐江か?」

「え?」

聞き覚えのある声を聞いて振り返る

「お、当たった」

「佐江ー。久しぶりー」

そこには背の高い女性が2人立っていた

「大鳥先輩、千田先輩!」

宮澤は思わず駆け寄る

「今シーズンオフでさぁ。休暇取れたから久しぶりに遊びに来たんだよー」

「今は佐江が教えてるって聞いて、覗きに来ちゃった」

2人はにこっと笑う

大鳥と千田は大学もバスケを続け、実業団チームに所属しているのだ

いわば、プロの様なものである

「あー・・・でも練習終わっちゃったんですよねー」

「えーなんで?」

千田が尋ねる

「いや、今日テスト終わりで練習早く終わったんです」

「そうなんだ。で、生徒がいなくなった後こっそり練習してたの?」

大鳥はくすっと笑う

「もーそんなんじゃないですよー」

宮澤は口をとがらせる

「ねぇ、あの人は?」

千田が柏木の方を見る

「あぁ、ここの保健室の先生なんです」

柏木はぺこっと頭を下げる

「ん・・・?」

大鳥は首をかしげた

(どっかであったような・・・?)

柏木は宮澤と契約を結んだので、それまでに学校で会った人たちの記憶を消していたのだ

「佐江の彼女?」

そういって千田はにこにこと笑う

「はいっ!」

宮澤は迷うことなく頷いた

そして

「先輩達も順調なんでしょ?」

ニヤッと笑った

「そんなの当たり前でしょー。鳥ちゃんには私が必要なんだから」

「あはは。そういうこと」

千田に腕を組まれ、大鳥はにこっと笑った

―――
その頃

玲奈は寮にもどり、渡辺が渡してきた本に目を通していた

織田信長という名前は聞いたことあった

天皇から武士が政権を奪い

天下を統一した人物・・・

ヒスイがさらりと言って以来

歴史について学ぶことがなくなってしまった

レナはなんとなく疑問に思っていたのだが

『いずれ、あなたは日本に行くことになるかもしれません・・・歴史はその時に学んでください』

そう言われた

ヒスイの顔が寂しそうだったので

玲奈はそれ以上詮索できないでいたのだ

「たっだいまー」

部屋のドアが開き、部活を終えた珠理奈が部屋に入ってきた

「おかえりなさい」

玲奈は本を閉じ、珠理奈の方をむく

「いやーやっぱりバスケはいいわー。ずっとできなかったからさー楽しかったよー」

珠理奈はニコニコと笑いながら荷物を床に置く

「よかったね」

嬉しそうな珠理奈の顔を見て、玲奈はクスッと笑った

「玲奈ちゃん今日は何してたの?」

「私は、図書室でいたよ」

「ふーん。借りてきたの?」

「あ、うん」

珠理奈は玲奈の机をのぞき込み

「あー織田信長だ。かっこいいよねー。」

そう言った

「珠理奈は知ってるの?」

「え?信長?知ってるよー本能寺の変は私でもしってるからね」

あまり勉強が得意ではない珠理奈は苦笑いをしながら言う

「本能寺の変・・・?」

「あ、そっか。玲奈ちゃんは異世界の人だから日本の歴史とか詳しくないよね。明智光秀っていう家臣が信長に逆らって討つんだよ」

「そうなんだ・・・」

玲奈はぱらぱらとまだ読んでいない後半のページをめくる

『本能寺の変』

というフレーズが目にとまり、ページを止めた

そこには刺し絵がはいっており、炎の中で刀を構え今にも刺し合おうとしている2人の武士が居た

「これこれー。こっちが信長だよー。ちょび髭だし」

そういって、珠理奈は左の人物をさす

「そうなんだ・・・」

「でもさ、光秀もすぐに殺されちゃって三日天下とかいわれてるんだよー。その後は豊臣秀吉が天下とってさー」

「そうなんだ」

「私、唯一そこだけは歴史好きなんだよねー」

そういって珠理奈は笑う

「そっか。じゃあ、ちゃんと読んでみようかな」

「え?」

「珠理奈の話しきいたら、なんだか面白そうだし」

玲奈はニコッと笑う

「・・・」

珠理奈はその顔にドキッとする

ドンドンドン!

「わっ!」

「きゃっ!」

いきなり戸がたたかれ、珠理奈と玲奈は声を上げる

「珠理奈!大変やっ!」

その声は横山だった

「な、なんだよ。ゆいはんか・・・」

珠理奈は戸を開ける

「今、宮澤先生から連絡が来て、栄堂工業の大鳥さんと千田さんが来てるって!!」

「えっ、マジ!?」

珠理奈は声を上げる

「誰?それ?」

「女子バスケ界のアイドルみたいなもんやな。プレー技術もさながら、ルックス抜群で人気なんやで」

「そうなんだよ!すっごくカッコいいんだから!」

珠理奈は興奮しながいう

「なんや、宮澤先生の先輩なんやって。今から体育館に来れないかって連絡があってバスケ部に声かけてんねん」

「行く行く!あ、玲奈ちゃんもいこうよ」

「え?」

「見るだけでも、価値あるからさ」

「そうそう!ほな、私他の子にも声かけて来るから」

「わかった!行こう、玲奈ちゃん」

「え、う、うん・・・」

珠理奈は玲奈の手を引き走りだす

「・・・」

玲奈は握られた手を見つめ

胸があったかくなるのを感じていた


そして、珠理奈たちバスケ部は大鳥と千田に指導を受け

最後は宮澤も混じり試合をした


「やっぱり佐江ちゃんかっこいいなー」

そう言いながら、見つめる柏木の横で

楽しそうにプレーをする珠理奈を見て

玲奈はクスッと微笑んだ


僕の彼女は魔法使い26


―――

そして、準決勝が始まった

「「行け行けーーー!」」

「「守れーー!!」」

「「わぁぁぁっ!!」」

たくさんの観客が声を上げる中、柏木はぎゅっと手を握り試合を見つめていた

ガンッ!

宮澤のドリブルシュートが外れる

「くっ」

顔をゆがませる宮澤に

「リバウンドー!」

大鳥が叫ぶ

そして、スパッ!

同じ1年の佐々木がボールをとり、シュートした

「「わぁぁぁぁぁっ!!」」

観客たちは声を上げた

「ナイッシュー」

「はいっ」

コート内で大鳥と佐々木はニッと笑う

「佐江、いいからどんどん打てよ」

大鳥は宮澤の背中をたたく

「はいっ!」

宮澤は弱気な気持ちを振り払うように声を上げた

そして、試合は終盤

ピピー!

相手のファウルで宮澤にフリースローのチャンスが回ってきた

「はぁ・・・はぁ・・・」

宮澤はボールをつきながら、リングを見つめる

コートを走り回り、何度も何度もボールを投げたが、力が入ってうまく決めれないでいた

今回のフリースローもシュートが入らなかったので2回投げる

シュッ!

ガンッ!

ボールは無情にもはじかれる

「・・・」

宮澤は顔をゆがめる

「佐江、大丈夫だ!」

大鳥の声が聞こえ、ハッとした

そして、顎でくいっとメンバーがいる方を見る

「佐江ー!大丈夫だー!」

「入るよー」

皆、大声で声援を送っていた

「佐江、投げろ。絶対拾うから」

「そうそう、悩まないで投げなー」

コートに居るメンバーたちも声をかける

『チームでやってるんだ・・・って』

宮澤は大鳥の言葉を思い出す

そして、千田も力強く頷いていた

宮澤は、ふーっと息を吐き

シュッ

投げた

グルングルン

ボールはまたリングを周り

グラッ

外れたっ!

宮澤がそう思った時

ボールの下から手が伸びてきた

同じ一年の佐々木だった

がっちりとボールをつかみ

「佐江っ!もう一回投げろ」

佐々木は宮澤にボールを戻す

パンッ!

宮澤は反射的にボールを受け取り構える

「昨日の感覚!思い出して!」

どこからか、声が聞こえた

「!!」

シュッ!

ふわっ・・・

ボールは綺麗な孤を描き・・・

入る

直感的に思った

スパッ!

「「わぁぁっ!!」」

「よしっ!ナイッシュー!」

佐々木はガッツポーズをし、佐江に駆け寄る

「ありがと」

「何いっての?フォローするの当たり前でしょ?チームなんだから」

「・・・うん。そうだね。よしっ!守ろう!」

「そうそう!佐江はそれくらいがいいよ」

「え?」

「みんな、佐江が元気無くないって心配してたんだから」

「みんなが・・・?」

宮澤はコートの外を見る

「ほら、2人とも守るよー」

大鳥が声をかけ、ニッと笑った

「「はいっ!」」

宮澤たちは大鳥の方に駆け寄る



そうだ、シュート決めなきゃって・・・思ってたのって

皆と勝ちたいからだったんだ

このチームで・・・優勝したかったんだ


だめだなぁ・・・ホントに大事なこと忘れてた

宮澤は顔を上げ、手を大きくひろげ

守りに徹する

その顔に、迷いはなかった


―――

「みんなよく頑張った」

試合が終わり、会場のロビーで監督が話しをする

試合は苦しくも負けてしまった

みんな目を赤くしていたが

宮澤はしっかりと目を前を向いていた

大鳥はその表情見てフッと笑った


試合後、宮澤は学園の体育館に居た

ダムダム・・・

誰も居ない体育館にボールの音が響く

「・・・」

ボールをつくのを止め

「・・・いるんでしょ?」

宮澤は問いかける

「・・・でてきてよ」

「・・・」

「なんで、わかったの?」

体育館の中央から、柏木が姿を現した

「今日の会場で、声が聞こえたから。でも、姿が見えなくて・・・魔法使いだから姿とかけせるのかなと思って」

「・・・そっか。ばれてたんだ」

柏木はバツが悪そうに言う

柏木は姿を消し、コート近くで試合をみていたのだ

「・・・」

「・・・」

宮澤と柏木の間に沈黙がながれる

「・・・ごめんなさいっ!」

柏木は勢いよく頭を下げる

「いいよ。私もごめん・・・」

「・・・許して、くれるの?」

柏木はおそるおそる、頭を上げる

「うん・・・」

宮澤は頷いた

「キャプテンと話ししたんだね」

「うん・・・。今日、調子わるそうだったから・・・私のせいかなって・・・」

「・・・ううん。それは自分が悪いから」

「・・・私ね、ずっと風を操ることはいいことだっておもってた」

「え・・・?」

「この世界に500年くらい前からいるの」

「そっ、そんなに?」

「うん。私が来た当時は戦国時代で戦のたびに風を操って助けてたの・・・だから、それが当たり前だったし、いいことだと思ってた。戦が終わったあとも、火事のときは風を止めたり、広がらないようにしたり・・・最近だって追い風は喜ばれてたから・・・風を起こして怒られるなんて考えたことなかった」

「・・・」

「でも、それって私の考えだけだったんだよね。あなたの気持ち、考えてなくて・・・ごめんなさい」

「・・・ううん。私も・・・いきなり怒鳴ってごめん。・・・応援してくれてたんだよね」

「・・・」

柏木はこくっと頷く

その目には涙が滲んでいた

「キャプテンに言われた。一人で練習したら自分の考えに固執するって・・・私も、柏木さんの気持ち考えずに怒鳴ってごめんなさい」

「・・・」

柏木はふるふると首をふる

「うん。でも、約束して。もう、バスケの時は風をおこなさいって」

「うん、約束する。今日だって、ちゃんとなにもせずにみてたんだから」

「ありがとう。今日、シュートはいったの柏木さんのおかげだよ」

「え?」

「昨日の感覚、思い出してっていったよね」

「・・・聞こえて・・・たんだ」

柏木は苦笑いをする

「うん。おかげで、大事なことも気づけたし・・・感謝してる。試合は負けちゃったけど・・・私にとってはいい試合だったよ」

「・・・そっか。よかった」

「だからさ、契約者になるよ」

「え?」

「約束まもってくれるんだから。私も言ったことは守らないとね」

宮澤はニコッと笑う

「宮澤さん・・・ありがとう」

柏木もニコッと笑った

「「・・・」」

なんとも照れくさい空気が、二人をつつむ

そして

体育館の入り口から足音が聞こえて

宮澤は振り返る

「あれ、佐江?」

「何?佐江も来てたの?」

「え・・・みんな?」

1年生部員がわらわらとやってきた

「今日の試合くやしくてさ。自主連するっていったらみんなついてきちゃった」

佐々木は笑う

「私らだって負けてらんないからさー」

「そう思ってたら、佐江の方が先にいるんだもん。ビックリしたよ」

「抜け駆けなんてずるいよー」

「そうそう、相手要るでしょー?」

みんなニッと笑う

「ありがと」

宮澤も笑った

「さ、練習練習」

部員たちはコートの端に荷物を置きだす

宮澤はハッとして振り返ると、すでに柏木の姿はなかった

「よかったね」

耳元で声が聞こえた

柏木はとっさに姿を消していたのだ

「・・・ちょっと、残念だけど」

「え?」

「ううん。あ、あの契約者になる方法・・・あとで教えるね。じゃあね」

ふわっ

柔らかな風が吹き

宮澤の前髪を揺らした

宮澤は目を閉じ

その風を感じる

「何してんの?」

佐々木が不思議そうに問いかけた

「いや・・・いい風だなって思って」

「風?体育館で?」

「いいの。さっ、練習練習」

宮澤はニッと笑った

――――


そして、篠田と宮澤は生徒会長に立候補した

篠田は、あの一件から眼鏡もコンタクトに変え、根暗なイメージを変えるために同級生に話しかけるようになった

何があったのかとクラスの人たちは驚いていたが

男子からは黒縁眼鏡女子は実は美人だったというアニメの様な展開に一気に人気が高まった

そして、生徒会長立候補演説で緊張して博多弁が出たことも幸いし

男子からの投票獲得数No.1となり

篠田はこの年見事、生徒会長になったのであった

一方、宮澤は元々イケメン女子とて同級生から絶大な人気があった

そして、演説場所が体育館であることを利用して

ドリブルシュートを決め

先輩達のハートも鷲掴みにしたのだった

そして、女子からの獲得票数No.1となり

副会長に任命された

前田も、乗り気ではなかったのだが

この学園のために何かをしたいという思いが話しているうちに強まり

最後は泣いてしまっていた

その様子に胸を打たれた生徒たちから投票され

無事、書記として落ち着いたのだった



僕の彼女は魔法使い25



次の日―

昨日と同じ会場で試合が行われていた

ガンッ!

「あっ!」

宮澤の投げたシュートがリングにはじかれる

「佐江、ドンマイ!」

大鳥が声をかける

「・・・すいません」

宮澤は小さく呟き、走る

「・・・」

その姿を怪訝そうに見つめていた

朝、学園の体育館で集合になっていたのだが

鍵を取りに行った大鳥は、顧問から聞いたことに驚いていた

『昨日、宮澤最後まで残ってたんだけど、片づけもせずに帰ったみたいなんだ』

『えっ?』

『あいつ、いつもちゃんと掃除までして帰ってたのに・・・昨日は、なんにもせずにいなくなっててさ。荷物もそのままで・・・まるで・・・』


何から逃げたみたいだった


「・・・」

大鳥は顧問から言われたことを思い出し

宮澤の背中を見つめていた


ビーーー・・・

試合が終わり

なんとか秋葉学園が勝利した

だが、宮澤が入れたのは4点・・・

果敢にシュートを入れていたのだが

ほとんどが入らずにいた

「ベスト4だよー」

「次勝てば聖光だよねー」

「・・・」

わいわいと盛り上がるメンバーとは対照的に

宮澤は素早く荷物をまとめ

歩き出した

「・・・理恵、荷物お願い」

「う、うん」

大鳥は千田の腕に荷物を押しつけ、宮澤の後を追った

「・・・」

そんな様子を柏木は観客席でひっそりと見つめていた


「佐江のやつ、どこいったんだよ・・・」

大鳥は会場内を駆け回る

「あ、あの・・・」

「え?」

「バスケ部のキャプテンですよね?」

そこには、秋葉学園の制服を着た柏木が立っていた

「そうですけど・・・」

「あ、あのっ。宮澤さんのことで私謝らなきゃいけないことがあるんです」

「え?」

大鳥は首をかしげた

――――


宮澤は会場外のベンチにいた

わぁぁぁっ!!

ピーーー!

遠くで試合の音が聞こえて来る


「はぁ・・・」

宮澤はうなだれる

試合は散々だった

投げても投げても・・・あざ笑うかのようにリングにはじかれる

・・・結局、私は全然かわってないのかな

悔しくて涙が滲んできた

「佐江」

その声を聞いて、パッと顔を上げる

「キャプテン」

「探したよ・・・こんなとこに居たんだ」

大鳥は宮澤の隣に座る

「なんかあったのか?」

「・・・」

宮澤は答えない

「昨日の今日でスランプか?」

「・・・違います。スランプなんかじゃないです・・・そういうのじゃなくて、元々私はできないんですよ」

「え?」

「シュートが入らない・・・ダメなやつなんですよ」

「そんなことないよ」

宮澤は首を振って、俯く

「昨日、やっぱり遅くまで練習してたんだろ?」

「え・・・」

「それに、木曜学校が早く終わった時も、内緒でやってたんだろ?」

「え・・・なんで知って・・・」

「さっきさ、柏木さんって人と話したんだ」

「えっ!」

宮澤はバッと顔を上げる

「先輩、じゃあ・・・聞いたんですか?」

「え?なに?」

「その・・・風のこと・・・」

「風?いや、彼女そんなこと言ってなかったよ」

「へ?」

「詳しくは言えないって言ってたことに関係するのかな?ものすごく言いづらそうだったから、言わなくていいって言っちゃった」

(そっか・・・魔法使いだからそれは隠したんだ・・・)

宮澤はとっさに理解する

「練習してたのに、怒らせちゃったって・・・すごく申し訳なさそうに言ってたよ」

「・・・」

「ただ、佐江が頑張ってたから、応援したかっただけなんだって」

「え・・・」

「柏木さんにとってはよかれと思ってしたことなんだよ。でも、それが佐江にとっては許せないことだったんだね」

「・・・」

「気持ちはわかるよ。私もさ、実は理奈に練習してたのばれて、他のメンバー連れてきた時怒っちゃったんだ」

「え・・・」

「なんか、気恥かしくて、こっそりやってたのになんでばらすんだってね。でも、理奈にいわれたんだ。一人で練習しても、試合はチームでしてるんだって」

「・・・」

「みんなにも言われたよ。理奈が言ってくれるまで気付かなかったけど・・・聞いて私もやらなきゃって思ったって。皆で、強くなろうって・・・さ」

大鳥は空を見上げる

「意外とさ、一人でやってる時って結構固執しちゃうものなのかもね」

「・・・」

「あ、別に一人で練習してるのが悪いわけじゃないよ。意識の問題ね。なんか、他の人の意見を受け入れにくくなってたっていうか・・・気持ちが自分寄りになってたって言うか・・・相手がどう思ってるかちゃんと聞こうとしなかった」

大鳥は苦笑いをする

「あ・・・」

宮澤は柏木に怒鳴ってしまったことを思い出し、ハッとする

「私は理奈に気付かされたから・・・だから、今こうして2年生はまとまってるんだと思うよ。だからさ・・・」

大鳥は宮澤の方を見る

「柏木さんの話し、ちゃんと聞いてあげなよ。きっと、彼女には彼女の思うことがあるんだよ」

「・・・」

「それに、佐江がどんだけ外したってフォローするよ」

「・・・」

「だって、それがチームってもんでしょ?」

「あ・・・」

宮澤の目から涙がにじむ

「そんな顔しない。次の試合もあるんだから。じゃあ、アップ参加しなよ」

そういって大鳥はポンっと肩をたたき立ち上がり歩き出した

「・・・チームか・・・」

宮澤は自分の手を見つめた

―――

「鳥ちゃんどこいってたの?」

「いや、ちょっとね」

大鳥はメンバーが集まっている所に合流し、誤魔化すようにニッと笑った

「キャプテン、佐江みませんでしたか?」

1年生たちが声をかけてきた

「会場内探してるんですけどみつからなくて・・・」

「・・・」

大鳥はフッと笑う

「佐江なら大丈夫だよ」

「でも・・・」

「大丈夫。それに、みんなが佐江を励ますのは試合中が一番いいんじゃない?」

「・・・」

1年生たちはハッとしたが

「「はいっ!」」

みんな、しっかりと頷いてくれた

「うん。じゃあ、アップしにいこうか」

「「はいっ!」」

1年生達はボールを抱えアップするために移動しだした

「そんなに心配してるなら、佐江が練習してるの気付けばいいのにー」

千田は口をとがらす

「・・・」

大鳥は、柏木との会話を思い出す

『どんなことがあって怒らせたから言えないんですけど・・・。よかれとおもってしたことが裏目に出ちゃったんです・・・私はただ宮澤さんが頑張ってたから・・・応援したかっただけなんです』

そして

『鳥ちゃんが頑張ってるから、私も頑張ろうって思ったの!みんなだってそう思ったの!私は・・・ううん、皆だって鳥ちゃんのこと大好きなんだから!!』

ぐしゃぐしゃの泣き顔で千田が1年前に言った言葉も・・・


きっと、佐江もわかってくれるだろう・・・

自分が、どんなに支えられて思われているかって



「まぁ、どういう団結をするかは1年生達に任せよう。じゃあ、私たちも行こうか」

そういって、大鳥は千田の手を取る

「・・・わかった」

千田は照れくさそうに、ニコッと笑った




僕の彼女は魔法使い24

「えーっと ・・・この学校の生徒・・・だよね?」

制服姿の柏木を見て、宮澤は首をかしげる

「うん。私は柏木由紀。3年生なの」

「えっ?3年生って・・・勉強とかいいんですか?」

3年生は部活も引退し、現在受験に向けて猛勉強中であった

「え・・・んーまぁ。それはいったん置いといて。シュート、うまくなりたいんでしょ?」

柏木は誤魔化すように笑い

フリースローラインに立つ

そして

ふわっ

「きれいだ・・・」

宮澤は思わず呟く

素人の柏木はフォームもまるで出来ていなかったが

ボールが宙を舞う軌道は

ものすごく美しかった

スパッ

ボールは吸い込まれるように入った

「すごい・・・すごいよっ!どうやったらそんなに綺麗にはいるの!?」

宮澤は興奮して柏木に詰め寄っていた

顔が近づき

柏木は顔が熱くなる

「あ・・・ご、ごめんなさい。先輩にタメ口とか、失礼ですよね」

「ううん、いいよ。あ、あのね。投げる時に風を起こすイメージでやるといいんだよ」

柏木は照れて早口になる

「風・・・?」

「そう。ボールに回転をかけて風をおこすの。風っていっても小さな空気振動みたいな感じだけど」

「んー?なんかむずかしいですね」

「じゃあ、ボール持って」

柏木は宮澤をフリースローラインに立たせる

そして

少し離れて手をかざす

「投げて」

「え?」

「いいから。シュートして」

「は、はい」

宮澤はスッと構える

「え?」

誰かが、自分の腕や足を曲げているような感覚に襲われる

まるで、後ろから誰かが抱きついて操っているみたいだった

そして

跳んで、ボールが手から離れた瞬間

指先からふわっとボールが浮き上がるような感覚があった

スパッ

ボールは反射板にあたることなく入った

「すごい・・・」

「ね?この感覚だよ。あなたは力は入りすぎててブレてるの。優しく浮き上がらせる感じそれくらいがいいと思うよ」

柏木はボールを拾い微笑む

「すごい!すごいよっ!どうやったの?さっきの何?魔法?あ・・・ご、ごめんなさい」

宮澤は興奮してまたもタメ口になる

「ふふっ。いいよ。気を使わなくても。それに、私はあなたにお願いがあってきたの」

ころころ変わる宮澤の様子がおかしくてクスッと笑う

「え?」

「宮澤佐江さん。あなたに私の契約者になってもらおうとおもって」

「契約者・・・?」

「うん。ここの3年生って言うのは仮の姿なの。私は異世界からきた魔法使い」

「え・・・?ホントに?」

「うん。で、正確には風使い」

柏木は持っているボールを空中で浮き上がらせる

ボールはその場でくるくると回っていた

下に手をかざし、そこから風を送っているのだ

「すごい・・・浮いてる」

「だから、ボールの軌道とかは少しの風とか空気抵抗とか感じてわかっちゃうの」

「ホントに・・・魔法とかあるんだ・・・」

「驚いた?あ、でも他の人には内緒にしててね。そうしないと記憶消さなくちゃいけなくなるから。そうなると、さっきの感覚も消しちゃうからね」

そういって、ウインクをした

「うんっ!わかった!誰にも言わない!あのさっ!もう一回、もう一回さっきのやってもらってもいい?契約者でもなんでもなるからさ」

宮澤は目を輝かせる

(またタメ口になってる・・・)

柏木はクスッと笑い

「いいよ。何度でも」

そういって、手をかざした


宮澤は本当に何度も何度も練習した

ボールが離れていく感覚

力加減

明日の試合に向けて身体に叩きこもうとしていた

「どう?なんとなくわかった?」

「うん。ちょっとやってみる」

そういって、宮澤はふーっと深呼吸をして

ふわっ

ボールを投げた

スパッ!

「入った!!」

宮澤は柏木の方をむいて笑う

「・・・」

その笑顔に、柏木はドキッとした

「ありがとう!よしっ。もう少し練習だ」

「頑張るね。もう遅いし、あんまりやると明日に響くよ」

「だって、出来るようになったのうれしいんだもん。今のうちに身体にたたきこまなきゃ」

そういって、宮澤はまたシュート練習をする

が、さすがに身体は疲れており

ボールはリングの淵を回る

「えいっ」

柏木は手をかざし、こぼれそうになったボールを入れた

ふわっ

下から突き上げるような風が吹いた

「・・・」

宮澤は目を見開く

この感覚・・・まさか・・・


「ほら、身体が疲れて回転が変になってるからもうこの辺で―」
「なに、今の?」

柏木が言いきる前に、宮澤の言葉がかぶさる

「え?」

「今、落ちそうになったボール入れたよね?」

「うん」

「私、この風感じたの2回あるんだ。ひとつはこの体育館・・・もう一つは・・・今日の試合で」

「・・・だって、あんなにぐるぐる回って期待させて落ちるなんて嫌じゃない。だから、少し手伝ってあげたの」

「・・・じゃあ、今日の試合も?」

「うん。なんか負けてほしくなくて。だからこうして教えに―」

宮澤の耳には後の言葉は聞こえてこなかった

『ずっと練習してた努力の結果かな?』

頭の中では大鳥の言葉がずっと回っていた


認めてもらえたと思ってたのに・・・


「なんでそんなことしたんだよ!!」

「っ!!」

宮澤の声が、体育館に響き

柏木はびくっと肩を震わせた

「自分でやらなきゃ・・・意味ないんだよ!そんなズルして、嬉しい奴なんていない!」

宮澤は叫び

体育館から出て行った

「・・・」

柏木は反論することも、追いかけることもできなかった

宮澤が怒ったことが

怒鳴ったことが

ただただ、悲しくて仕方がなかった

「っ・・・。なによっ・・・私は・・・ただ・・・」

(あなたが、頑張ってたから・・・力になりたかっただけなのに・・・)

言葉にならない想いが

涙になってあふれ出た


僕の彼女は魔法使い23

―――

翌日

「え、にゃんにゃんもう契約者候補みつけたのか?」

今日も3人は霊樹で会議をしていた

今契約している生徒たちには次の生徒会役員が決まると契約を解消すると伝えていないため

そういう話しをするときは決まって霊樹でおこなうのだ

「うん、2年生の子ー。んーと・・・名前わすれちゃった」

小嶋はてへっと笑う

「なんだそりゃ」

「あ、でも、下の名前はわかるよ。麻里ちゃん」

「ほー。麻里ちゃんねぇ。にゃんにゃんが気にいるなんてよっぽどだなー」

「うんうん」

高橋と柏木は頷く

「んー。なんかあの子といたらおもしろそうっておもったの」

小嶋はニコッと笑う

「いいなぁいいなぁ。なんか今回は期待できそうじゃねぇか」

高橋はニッと笑い

「ゆきりんはみつかったか?」

柏木に尋ねる

「え?」

柏木の脳裏に、宮澤が浮かぶ

「あ、何その間?もしかしているの?」

こういう時だけ、小嶋は鋭かったりする

「なんだよなんだよー。2人して仕事はやいなー」

「あ、いや、でも・・・候補ってだけで。どうだろうなーって感じだし」

そう言いながら、柏木は顔が赤くなっていくのを感じていた

(何照れてんのよ・・・)

自分でもわけがわからなかった

「で、誰誰?」

小嶋がずいっと近寄る

「その・・・宮澤佐江っていう子・・・バスケ部の1年生」

「ほーバスケ部か・・・そういや、クラスでも聞いたことある。イケメン女子って」

高橋は顎に手を当てて記憶をめぐらす

高橋は現在前田と同じクラスで1年生としてこの学園にいるのだ

(やっぱり・・・人気なんだ)

柏木の胸はちくりと痛む

「いいじゃん。スポーツやってる子は人気あるから立候補しても通るぜ」

「え、でも・・・まだ1年生だし・・・」

「大丈夫だって。2年生が主流だけど、1年生が立候補しちゃだめだっていう決まりはないし。副会長くらいいくんじゃねぇか?それに、敦子にも立候補してもらう予定だしよ。まぁ、本人はしぶしぶだけど」

高橋は苦笑いをする

「ねぇねぇ、今からその子見に行こうよ」

「お、いいねぇ」

小嶋の提案に、高橋はニッと笑う

「えっ!」

「いいじゃん。バスケ部だからまだ部活やってるだろー」

「うんうん」

そういって2人はふわりと浮きあがる

「ちょ、ちょっと待ってよ」

柏木も置いていかれないよう、慌てて浮き上がった


キュッキュッ!

ダムダム!

体育館では女子バスケ部が2チームに分かれて試合をしていた

「佐江ー!いけー!」

ダムダム・・・

シュッ!

「「ナイッシュー――!!」」

宮澤が華麗なレイアップシュートを決め

拍手と声援が響く

「ほほう」

「かっこいいねぇ」

「・・・」

窓の外からその様子を3人は眺めていたが

柏木だけやたら前のめりだった

「集合!」

「「はい!!」」

監督が招集をかけ、生徒たちは集まる

「いよいよ明日からウィンターカップの予選だ。昨日練習できなかったのは申し訳なかったが、リフレッシュできて逆に良かったかもしれない。今日も早めに切り上げて、明日に備えるぞー」

「「はい!!」」

「じゃあ、軽くシュート練習して終わりだ。いいな」

「「はいっ!!」」

そういって、生徒たちはまた散って練習を再開する

「へー明日試合なんだねー」

「みんな気合入ってるなぁ。青春だわ。青春」

小嶋と高橋が話しをする横で

(そっか・・・試合前だから内緒で昨日も練習してたんだ)

柏木は宮澤を見つめていた

(・・・試合、見に行ってみようかな)

柏木はなんだか、わくわくしていた

―――

そして、試合当日

柏木は都内の会場に来ていた

今日は高橋も小嶋も居ない

一人で見に来ていたのだ

入口のトーナメント表を食い入るように見て

秋葉学園の文字を探す

「あった・・・」

試合は2試合目・・・

1試合目には既に赤ラインがひかれていた

(やばっ、もう始まってるじゃん)

行こうかどうしようか迷っていたことを後悔しながら

柏木は慌ただしく会場に入った


体育館内は生徒たちであふれ、独自の応援歌や垂れ幕が観客席を彩っていた

「すごい・・・」

柏木はきょろきょろとあたりを見渡しながらその場の雰囲気にのまれていた

秋葉学園の垂れ幕を見つけ、制服姿も見つけたので

開いている席を探すが見当たらず

席の後ろで立ち見をすることにした

試合は後半戦だった

柏木は宮澤の姿を探す

(いた・・・)

10番のユニフォームを着た宮澤はコートを走り回っていた

シュッ!

宮澤は華麗なレイアップシュートを決める

「「ナイッシューー!」」

観客席から声援が飛ぶ

「ねーあの10番の子かっこよくない?」

「うん、イケメン。シュートもうまいしさー」

「まだ、1年生らしいよー」

「えーすごーい」

生徒たちの会話が聞こえて来る

(やっぱり・・・人気あるんだなぁ)

柏木はなんとなく、複雑な気持ちになった

そして・・・

試合は進み

58対60

秋葉学園が負けていた

観客の話しでは相手は去年準優勝の成城高等学校・・・

周りの話しからすると有名な強豪校らしい

試合時刻まで5分を切り

生徒たちの声援に熱が入る

ドンッ!

スパッ!

ピーーーーー!

宮澤のシュートを阻止した相手がファールとなり

宮澤のフリースローになる

幸いシュートは入ったので60対60の同点になった

残り時間は1分半・・・

宮澤のフリースローに皆が集中する

宮澤は青ざめているように見えた

(あ・・・)

柏木はハッとした

(あの位置・・・ずっと外してたやつだ)

宮澤はドリブルシュートは入るのだが、フリースローがめっぽう弱いのだ

ダムダム・・・

何度も何度もボールをつき、ふーっと深呼吸をして

構える

「「・・・」」

その一挙手一投足を

全員がかたずをのんで見つめていた

シュッ!

ボールが宙を舞う

「あ・・・」

柏木は思わず声を漏らす

(入らない)

柏木は瞬時にわかってしまった

風使いである柏木は、ボールが起こす微妙な風の動きを感じることができるのだ

ドンッ

反射板にボールがあたり

グルングルン・・・

リングの淵を回る

その様子をリング下で選手達がみつめる

グラッ・・・

ボールが淵からこぼれそうになる

(だめっ!)

柏木はとっさに手をかざしていた

ふわっ

会場に風が起こり

パサッ!

「「入ったーーーー!!」」

ワッと一気に歓声が上がる

選手達も宮澤を取り囲んで肩をたたいて喜んでいた

「守りきるよっ!」

「「はいっ!」」

キャプテンの声に、皆頷き

守りに徹する

そして

ビーーー!

試合が終了し、秋葉学園は1回戦を突破した

「佐江ーやってくれるじゃん!あの成城に勝ったんだよ!」

「うんうん。正に奇跡だよー」

先輩たちが宮澤にかけよる

「あ、ありがとうございます。あ、あの、なんかあの時・・・風ふきませんでした?」

「え?そう?」

「ボールに夢中で気付かなかったけど」

先輩は首をかしげる

「そう・・・ですか。なんか・・・こう・・・ふわっと浮き上がるっていうか・・・」

宮澤は手でボールの形をつくり

その時の事を伝えようとする

「まぁいいじゃん、入ったんだから!」

「そうそう!風さえも巻き起こす奇跡ってやつ?かっこいいじゃん」

「は、はぁ・・・」

「佐江フリースロー苦手なのに、ここぞってところは決めてくれるんだからー」

「次もたのむね」

「はいっ!」

宮澤たちはコートの中央に並び、一礼する

(よかった・・・)

柏木はホッと安堵のため息をついた


そして、秋葉学園はその後も勝ち続け、ベスト8まで残った


「みんな、今日はよく頑張った!でも、明日もあるんだ、まだまだ気合入れてけよ!」

「「はいっ!」」

秋葉学園の体育館で生徒たちの声が響く

「じゃあ、軽くシュート練習したら帰るように」

「「はいっ」」

皆、ボールをつきシュートを入れていく

「佐江」

「キャプテン」

声をかけたのはキャプテンの大鳥 舞だ

「初戦のフリースロー、決めてくれてホントによかったよ。ありがとう」

大鳥はニコッと笑う

「いえ・・・」

宮澤は照れ笑いをする

大鳥は周りをちらっと見て

「ずっと練習してた努力の結果かな?」

こそっと言った

「え・・・キャプテン・・・」

「なんで、遅くまで体育館が開いてたか考えたことなかったの?」

「え・・・まさか」

宮澤はハッとする

「そういうこと。先生には私が責任もって施錠しときますって言ってたんだ」

大鳥はクスッと笑う

「な・・・なんで?」

「実は、私も1年の頃は遅くまでのこってやってたんだ。あぁいう練習って誰かがいるとなんか気恥かしいだろ?だから黙ってたんだ」

「先輩・・・」

「そうそう、鳥ちゃんなんてしばらく私にも言ってくれなかったんだから」

後ろから声がして振り返る

そこには副キャプテンの千田 理奈が居た

「理奈。まだそのこと怒ってんの?」

大鳥は苦笑いをする

「だってー」

千田は口をとがらせる

「一人でやってたら理奈にばれて、みんなが残るようになったの。そしたら1回遅すぎて最終夕食時間に間に合わなくてさー・・・けっこうな人数だったから怒られちゃって・・・それ以来中止になっちゃったんだけどね」

大鳥はクスッと笑う

「えっ、そうなんですか?」

バスケ部は全国から推薦で来ており、寮生活なのだ

寮は部活がない日は6時に寮生全員で食事

部活がある日は最終9時までに食堂で夕食をとるようになっている

2年生は全員で14人、顧問は黙っていたのだが

教頭が注意してきたらしい

「うん。でも、そのおかげで私もシュート率あがったし、皆団結できたきがするから結果オーライなんだけどね」

「そうそう、よきかなよきかな」

千田はにこにこと笑う

「じゃ、じゃあ・・・なんで、私の練習止めなかったんですか?中止になったんだったら・・・」

「うーん。なんか、1年前の自分を思い出してさ。おねがいしちゃった」

大鳥はクスッと笑う

「いつまで続くかなーと思ってたけど。4月からずっと・・・佐江はホント骨のある奴だよ」

「キャプテン・・・」

「他の1年生も気付けばいいのにー」

千田は口をとがらす

「ま、それはこの予選が終わったら変わるんじゃないかな?」

大鳥は他の1年生達をみる

皆、一心不乱にリングに向かってボールを投げていた

女子バスケ部の2年生たちはレベルが高いのだが

宮澤はその中でスタメン出場していたのだ

そのため、他の1年生も負けていられないと思っているのだろう

「みんな佐江に感化されてるよ」

「そ、そんな」

「いれくらいがいいのよ。それでこそチームも強くなるんだし。このまま行って打倒聖光!」

千田はぐっと拳を握る

千田の言っている聖光学園は強豪校で秋葉学園とは永年ライバル関係にある

夏の総体で負けてしまったことを千田は誰よりも悔しがっていたのだ

「はいっ!」

宮澤も拳を握る

「こら、理奈あんまり炊きつけない」

大鳥は苦笑いをする

「ま、あんまり気負いしないでね。仲間を信じれば必ず勝てるよ。今日みたいな奇跡だっておこるんだから」

「おー鳥ちゃんいいこというー」

「ちゃかさない。じゃあ、練習戻ろうか」

「はいっ!ありがとうございました!」

宮澤は頭をさげ、他の1年生とともにシュート練習をし始めた

反対のコートでは大鳥たち2年生がシュート練習をしている

宮澤はそれをちらっとみて、にやける顔を隠すようにリングにむかってボールを投げた

キャプテンに認めてもらえたことが

何よりも嬉しかった

宮澤はフリースローは苦手なものの、スピードやドリブルシュートの能力にたけており

いわば速攻の選手として

数校から推薦の話しが出ていた

そんな矢先、高校のウインターカップを見に行って

大鳥の3ポイントシュートに一瞬で心を奪われた

綺麗なフォームで

リングに吸い込まれるように入って行くボール

聞けばまだ1年生だという・・・

1歳しか違わないのに、この存在感・・・

宮澤はこの人とプレーしたいと思った

そして、宮澤は秋葉学園を選んだ

大鳥にコツを教えてもらっていたのだが

やはりフリースローは苦手なままだった

先輩に追いつきたくて、先輩みたいになりたくて

ずっとずっと練習してきた

それが、今日・・・少し近づいた気がして

嬉しかった

―――

みんなが帰った後も

宮澤はいつものように遅くまで練習していた

「・・・頑張るなぁ」

柏木は窓の外から、その様子を見ていた

(でも・・・いいな)

「決めた・・・」

柏木はスッと降り

宮澤の反対方向に立つ

ガンッ!

「あっ!」

リングにボールがはじかれ

勢いよく転がり、体育館入り口のほうに向かう

宮澤はボールを拾いに行こうと小走りになる

が・・・

キュッ・・・

足を止めた

「・・・」

転がったボールの先には人がいたのだ

「誰?」

「・・・シュート」

「え?」

「シュート。教えに来たの」

柏木はニコッと笑った



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