気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

僕の彼女は魔法使い23

―――

翌日

「え、にゃんにゃんもう契約者候補みつけたのか?」

今日も3人は霊樹で会議をしていた

今契約している生徒たちには次の生徒会役員が決まると契約を解消すると伝えていないため

そういう話しをするときは決まって霊樹でおこなうのだ

「うん、2年生の子ー。んーと・・・名前わすれちゃった」

小嶋はてへっと笑う

「なんだそりゃ」

「あ、でも、下の名前はわかるよ。麻里ちゃん」

「ほー。麻里ちゃんねぇ。にゃんにゃんが気にいるなんてよっぽどだなー」

「うんうん」

高橋と柏木は頷く

「んー。なんかあの子といたらおもしろそうっておもったの」

小嶋はニコッと笑う

「いいなぁいいなぁ。なんか今回は期待できそうじゃねぇか」

高橋はニッと笑い

「ゆきりんはみつかったか?」

柏木に尋ねる

「え?」

柏木の脳裏に、宮澤が浮かぶ

「あ、何その間?もしかしているの?」

こういう時だけ、小嶋は鋭かったりする

「なんだよなんだよー。2人して仕事はやいなー」

「あ、いや、でも・・・候補ってだけで。どうだろうなーって感じだし」

そう言いながら、柏木は顔が赤くなっていくのを感じていた

(何照れてんのよ・・・)

自分でもわけがわからなかった

「で、誰誰?」

小嶋がずいっと近寄る

「その・・・宮澤佐江っていう子・・・バスケ部の1年生」

「ほーバスケ部か・・・そういや、クラスでも聞いたことある。イケメン女子って」

高橋は顎に手を当てて記憶をめぐらす

高橋は現在前田と同じクラスで1年生としてこの学園にいるのだ

(やっぱり・・・人気なんだ)

柏木の胸はちくりと痛む

「いいじゃん。スポーツやってる子は人気あるから立候補しても通るぜ」

「え、でも・・・まだ1年生だし・・・」

「大丈夫だって。2年生が主流だけど、1年生が立候補しちゃだめだっていう決まりはないし。副会長くらいいくんじゃねぇか?それに、敦子にも立候補してもらう予定だしよ。まぁ、本人はしぶしぶだけど」

高橋は苦笑いをする

「ねぇねぇ、今からその子見に行こうよ」

「お、いいねぇ」

小嶋の提案に、高橋はニッと笑う

「えっ!」

「いいじゃん。バスケ部だからまだ部活やってるだろー」

「うんうん」

そういって2人はふわりと浮きあがる

「ちょ、ちょっと待ってよ」

柏木も置いていかれないよう、慌てて浮き上がった


キュッキュッ!

ダムダム!

体育館では女子バスケ部が2チームに分かれて試合をしていた

「佐江ー!いけー!」

ダムダム・・・

シュッ!

「「ナイッシュー――!!」」

宮澤が華麗なレイアップシュートを決め

拍手と声援が響く

「ほほう」

「かっこいいねぇ」

「・・・」

窓の外からその様子を3人は眺めていたが

柏木だけやたら前のめりだった

「集合!」

「「はい!!」」

監督が招集をかけ、生徒たちは集まる

「いよいよ明日からウィンターカップの予選だ。昨日練習できなかったのは申し訳なかったが、リフレッシュできて逆に良かったかもしれない。今日も早めに切り上げて、明日に備えるぞー」

「「はい!!」」

「じゃあ、軽くシュート練習して終わりだ。いいな」

「「はいっ!!」」

そういって、生徒たちはまた散って練習を再開する

「へー明日試合なんだねー」

「みんな気合入ってるなぁ。青春だわ。青春」

小嶋と高橋が話しをする横で

(そっか・・・試合前だから内緒で昨日も練習してたんだ)

柏木は宮澤を見つめていた

(・・・試合、見に行ってみようかな)

柏木はなんだか、わくわくしていた

―――

そして、試合当日

柏木は都内の会場に来ていた

今日は高橋も小嶋も居ない

一人で見に来ていたのだ

入口のトーナメント表を食い入るように見て

秋葉学園の文字を探す

「あった・・・」

試合は2試合目・・・

1試合目には既に赤ラインがひかれていた

(やばっ、もう始まってるじゃん)

行こうかどうしようか迷っていたことを後悔しながら

柏木は慌ただしく会場に入った


体育館内は生徒たちであふれ、独自の応援歌や垂れ幕が観客席を彩っていた

「すごい・・・」

柏木はきょろきょろとあたりを見渡しながらその場の雰囲気にのまれていた

秋葉学園の垂れ幕を見つけ、制服姿も見つけたので

開いている席を探すが見当たらず

席の後ろで立ち見をすることにした

試合は後半戦だった

柏木は宮澤の姿を探す

(いた・・・)

10番のユニフォームを着た宮澤はコートを走り回っていた

シュッ!

宮澤は華麗なレイアップシュートを決める

「「ナイッシューー!」」

観客席から声援が飛ぶ

「ねーあの10番の子かっこよくない?」

「うん、イケメン。シュートもうまいしさー」

「まだ、1年生らしいよー」

「えーすごーい」

生徒たちの会話が聞こえて来る

(やっぱり・・・人気あるんだなぁ)

柏木はなんとなく、複雑な気持ちになった

そして・・・

試合は進み

58対60

秋葉学園が負けていた

観客の話しでは相手は去年準優勝の成城高等学校・・・

周りの話しからすると有名な強豪校らしい

試合時刻まで5分を切り

生徒たちの声援に熱が入る

ドンッ!

スパッ!

ピーーーーー!

宮澤のシュートを阻止した相手がファールとなり

宮澤のフリースローになる

幸いシュートは入ったので60対60の同点になった

残り時間は1分半・・・

宮澤のフリースローに皆が集中する

宮澤は青ざめているように見えた

(あ・・・)

柏木はハッとした

(あの位置・・・ずっと外してたやつだ)

宮澤はドリブルシュートは入るのだが、フリースローがめっぽう弱いのだ

ダムダム・・・

何度も何度もボールをつき、ふーっと深呼吸をして

構える

「「・・・」」

その一挙手一投足を

全員がかたずをのんで見つめていた

シュッ!

ボールが宙を舞う

「あ・・・」

柏木は思わず声を漏らす

(入らない)

柏木は瞬時にわかってしまった

風使いである柏木は、ボールが起こす微妙な風の動きを感じることができるのだ

ドンッ

反射板にボールがあたり

グルングルン・・・

リングの淵を回る

その様子をリング下で選手達がみつめる

グラッ・・・

ボールが淵からこぼれそうになる

(だめっ!)

柏木はとっさに手をかざしていた

ふわっ

会場に風が起こり

パサッ!

「「入ったーーーー!!」」

ワッと一気に歓声が上がる

選手達も宮澤を取り囲んで肩をたたいて喜んでいた

「守りきるよっ!」

「「はいっ!」」

キャプテンの声に、皆頷き

守りに徹する

そして

ビーーー!

試合が終了し、秋葉学園は1回戦を突破した

「佐江ーやってくれるじゃん!あの成城に勝ったんだよ!」

「うんうん。正に奇跡だよー」

先輩たちが宮澤にかけよる

「あ、ありがとうございます。あ、あの、なんかあの時・・・風ふきませんでした?」

「え?そう?」

「ボールに夢中で気付かなかったけど」

先輩は首をかしげる

「そう・・・ですか。なんか・・・こう・・・ふわっと浮き上がるっていうか・・・」

宮澤は手でボールの形をつくり

その時の事を伝えようとする

「まぁいいじゃん、入ったんだから!」

「そうそう!風さえも巻き起こす奇跡ってやつ?かっこいいじゃん」

「は、はぁ・・・」

「佐江フリースロー苦手なのに、ここぞってところは決めてくれるんだからー」

「次もたのむね」

「はいっ!」

宮澤たちはコートの中央に並び、一礼する

(よかった・・・)

柏木はホッと安堵のため息をついた


そして、秋葉学園はその後も勝ち続け、ベスト8まで残った


「みんな、今日はよく頑張った!でも、明日もあるんだ、まだまだ気合入れてけよ!」

「「はいっ!」」

秋葉学園の体育館で生徒たちの声が響く

「じゃあ、軽くシュート練習したら帰るように」

「「はいっ」」

皆、ボールをつきシュートを入れていく

「佐江」

「キャプテン」

声をかけたのはキャプテンの大鳥 舞だ

「初戦のフリースロー、決めてくれてホントによかったよ。ありがとう」

大鳥はニコッと笑う

「いえ・・・」

宮澤は照れ笑いをする

大鳥は周りをちらっと見て

「ずっと練習してた努力の結果かな?」

こそっと言った

「え・・・キャプテン・・・」

「なんで、遅くまで体育館が開いてたか考えたことなかったの?」

「え・・・まさか」

宮澤はハッとする

「そういうこと。先生には私が責任もって施錠しときますって言ってたんだ」

大鳥はクスッと笑う

「な・・・なんで?」

「実は、私も1年の頃は遅くまでのこってやってたんだ。あぁいう練習って誰かがいるとなんか気恥かしいだろ?だから黙ってたんだ」

「先輩・・・」

「そうそう、鳥ちゃんなんてしばらく私にも言ってくれなかったんだから」

後ろから声がして振り返る

そこには副キャプテンの千田 理奈が居た

「理奈。まだそのこと怒ってんの?」

大鳥は苦笑いをする

「だってー」

千田は口をとがらせる

「一人でやってたら理奈にばれて、みんなが残るようになったの。そしたら1回遅すぎて最終夕食時間に間に合わなくてさー・・・けっこうな人数だったから怒られちゃって・・・それ以来中止になっちゃったんだけどね」

大鳥はクスッと笑う

「えっ、そうなんですか?」

バスケ部は全国から推薦で来ており、寮生活なのだ

寮は部活がない日は6時に寮生全員で食事

部活がある日は最終9時までに食堂で夕食をとるようになっている

2年生は全員で14人、顧問は黙っていたのだが

教頭が注意してきたらしい

「うん。でも、そのおかげで私もシュート率あがったし、皆団結できたきがするから結果オーライなんだけどね」

「そうそう、よきかなよきかな」

千田はにこにこと笑う

「じゃ、じゃあ・・・なんで、私の練習止めなかったんですか?中止になったんだったら・・・」

「うーん。なんか、1年前の自分を思い出してさ。おねがいしちゃった」

大鳥はクスッと笑う

「いつまで続くかなーと思ってたけど。4月からずっと・・・佐江はホント骨のある奴だよ」

「キャプテン・・・」

「他の1年生も気付けばいいのにー」

千田は口をとがらす

「ま、それはこの予選が終わったら変わるんじゃないかな?」

大鳥は他の1年生達をみる

皆、一心不乱にリングに向かってボールを投げていた

女子バスケ部の2年生たちはレベルが高いのだが

宮澤はその中でスタメン出場していたのだ

そのため、他の1年生も負けていられないと思っているのだろう

「みんな佐江に感化されてるよ」

「そ、そんな」

「いれくらいがいいのよ。それでこそチームも強くなるんだし。このまま行って打倒聖光!」

千田はぐっと拳を握る

千田の言っている聖光学園は強豪校で秋葉学園とは永年ライバル関係にある

夏の総体で負けてしまったことを千田は誰よりも悔しがっていたのだ

「はいっ!」

宮澤も拳を握る

「こら、理奈あんまり炊きつけない」

大鳥は苦笑いをする

「ま、あんまり気負いしないでね。仲間を信じれば必ず勝てるよ。今日みたいな奇跡だっておこるんだから」

「おー鳥ちゃんいいこというー」

「ちゃかさない。じゃあ、練習戻ろうか」

「はいっ!ありがとうございました!」

宮澤は頭をさげ、他の1年生とともにシュート練習をし始めた

反対のコートでは大鳥たち2年生がシュート練習をしている

宮澤はそれをちらっとみて、にやける顔を隠すようにリングにむかってボールを投げた

キャプテンに認めてもらえたことが

何よりも嬉しかった

宮澤はフリースローは苦手なものの、スピードやドリブルシュートの能力にたけており

いわば速攻の選手として

数校から推薦の話しが出ていた

そんな矢先、高校のウインターカップを見に行って

大鳥の3ポイントシュートに一瞬で心を奪われた

綺麗なフォームで

リングに吸い込まれるように入って行くボール

聞けばまだ1年生だという・・・

1歳しか違わないのに、この存在感・・・

宮澤はこの人とプレーしたいと思った

そして、宮澤は秋葉学園を選んだ

大鳥にコツを教えてもらっていたのだが

やはりフリースローは苦手なままだった

先輩に追いつきたくて、先輩みたいになりたくて

ずっとずっと練習してきた

それが、今日・・・少し近づいた気がして

嬉しかった

―――

みんなが帰った後も

宮澤はいつものように遅くまで練習していた

「・・・頑張るなぁ」

柏木は窓の外から、その様子を見ていた

(でも・・・いいな)

「決めた・・・」

柏木はスッと降り

宮澤の反対方向に立つ

ガンッ!

「あっ!」

リングにボールがはじかれ

勢いよく転がり、体育館入り口のほうに向かう

宮澤はボールを拾いに行こうと小走りになる

が・・・

キュッ・・・

足を止めた

「・・・」

転がったボールの先には人がいたのだ

「誰?」

「・・・シュート」

「え?」

「シュート。教えに来たの」

柏木はニコッと笑った



僕の彼女は魔法使い22


――――――

一方、その頃柏木は

学校内にある生徒会室に居た

「んー・・・人気のある人ねぇ・・・」

顎に手を当てながらむむむと考える

手の前にはクラス写真が並べられていた

(あ、そうだ。スポーツしてる人とかいいかも)

人気=スポーツマンという閃きがおき

柏木はふわりと浮きあがり、窓から外に出た

秋葉学園は北校舎と南校舎があり、グラウンドは北側にある

生徒会室は南校舎側のため、外に出て上から見た方が早いと思ったのだ

「あれ?」

が、生徒は誰も居なかった

(そっか、今日職員会議だから部活も全面禁止だった・・・)

校舎にかかった時計はもう3時を回っていた

夢中で写真を見ていた時間は結構長かったらしい

「仕方ない。明日探そ・・・」

柏木はため息をつき、戻ろうとした

その時・・・

ダムダム・・・

「ん?」

風にのって、音が響いてきた

「これって・・・」

柏木は体育館の方に飛ぶ

体育館はグラウンドの横にあり、1階は武道場、2階は体育館になっている

柏木は体育館上部の開け放たれた窓からそっと覗いた

「あ・・・」

そこにはリングにむかって跳ぶ女子生徒がいた

なびく髪、滲む汗、リングを見つめる真剣な眼差し・・・

「かっこいい・・・」

柏木は思わず漏らす

何度も何度も、彼女はボールを投げ

ボールは吸い込まれるように入って行く

そして

「よし・・・」

彼女はそう呟くと

フリースローラインに立ち、またボールを投げる

「あれ・・・?」

柏木は眉をひそめた

ドリブルシュートはあんなに入っていたのに

フリースローは全くと言っていいほど入らなかったのだ

「くそっ・・・!」

彼女の声が体育館に響く

だが、諦めることなく

何度もボールを拾っては投げていた

(あーもうやきもきするなー)

柏木は気付けば前のめりになり

窓に手が触れそうなほど近づいていていた

シュッ!

そして、彼女がまたボールを投げた

グルングルン・・・

ボールがリングの周りをまわり

ぐらっ・・・

端からこぼれ落ちそうになる

「あっ!」

柏木はとっさに手をかざし

ふわっ

下から上に突き上げるような

やわらかな風が吹く

「え・・・?」

感じたことのない風に、女子高生が違和感を感じた

その時

「あ」

シュッ!

トントントン・・・

ボールはリングの中に入り、下に落ちた

「ナイッシュー!」

柏木は思わず声を上げていた

体育館内に柏木の声が響く

「え?」

女子高生は振り返る

(しまった!)

柏木は勢いよく後ろに下がり、その場から飛んで逃げた

「あれ?いない?」

女子高生はきょろきょろとあたりを見渡し

首をかしげながら体育館内に戻った


「はぁはぁはぁ・・・」

柏木は生徒会室に戻ってきていた

(って・・・結界はってたんだった・・・とっさに逃げてバカ見たい・・・)

結界を張っていると、姿は見えないのだが

声は普通に聞こえてしまうのだ

「・・・はーっ」

柏木は結界を解き、机の上に広げていた集合写真に目をやる

そして、1枚1枚確認し

「あ・・・」

先ほどの彼女を見つけた

「宮澤・・・佐江・・・まだ1年生なんだ・・・」

そこには、口角を上げて微笑む先ほどの女子高生が写っていた


僕の彼女は魔法使い21


「よいしょっと」

小嶋は学校の屋上に着地する

以前までは理事長室はオープンだったのだが、記憶が消えてしまっている敬子がいるので入ることができなくなってしまっていたのだ

「んーどうしようかなぁ・・・」

小嶋はそうつぶやきながら屋上のドアを開けようとした

その時、視界の端に人影を感じハッと横を見た

「・・・」

一人の女子生徒と目があった

大きな黒縁眼鏡をかけた、ショートカットの女子生徒

「あ・・・」

(見られた・・・)

「・・・何してるの?」

「えー・・・っと」

小嶋はえへっと笑う

「どこから現れたの?異空間?」

女子高生は眉をひそめる

小嶋は空を飛んでいる時は結界を張っていたので、急に現れたように見えたのだ

「あ、あなたこそ、どうやってここに入ってきたの?ここって、鍵かかって・・・」

そう、いいかけて小嶋は彼女の手に目をやる

そこにはちいさな鍵が一つ、ぶらさがっていた

「・・・盗んできた」

「え・・・?なんで?」

「・・・飛んでみたいと思ったから」

そういって、彼女はフェンスのほうをみる

「それって・・・飛び降り?自殺ってこと?」

「・・・はっきり言うね」

女子高生はクスッと笑った

「んー。だってわざわざここまできたからそうかなーと思って」

「あんた・・・変わってるね。制服着てるってことは、ここの生徒?」

「んーまぁ、一応ね。私、小嶋陽菜っていうの」

(ま、いっか。記憶消せばいいし)

小嶋は開き直ってにこっと笑う

「そうなんだ」

「なによー。名前は?」

「篠田麻里子・・・」

「ふーん。何年生?」

「2年・・・だけど」

小嶋は篠田をまじまじと見つめ

「えいっ」

眼鏡をとった

「な・・・」

「あーやっぱり。きれいな顔してるー。眼鏡やめたほうがいいよー。こっちのほうがかわいいって」

小嶋はにこにこと笑う

「か、かわいくなんてないからっ!」

篠田は顔を真っ赤にして、眼鏡をうばった

(なんか、この子おもしろーい)

小嶋はなぜかワクワクしていた

「ねぇ、飛んでみたいんでしょ?」

「え?」

「じゃあ、特別に連れてってあげる」

そういって、小嶋は手をかざし楕円形の水たまりが空中に現れた

「乗って」

「・・・」

「大丈夫。濡れないよ」

「いや、そう言うことじゃなくて・・・」

「いいから、いいから」

小嶋は篠田の手を引き

「じゃあ、いくよー」

そういって、2人を乗せた水の塊は上昇していく

「・・・っ」

上昇につれて、耳がキーンとな感覚に襲われる

そして

目の前に白い水蒸気が広がり、篠田は思わず目を閉じた

・・・・・

そして、音が消えた

「え・・・」

今まで経験したことのない感覚に篠田は目をゆっくりと開ける

「あ・・・」

目の前には青い空と太陽、そして雲が眼下に広がっていた

「雲の王国・・・」

「え?」

「昔、映画館で見たんだ・・・雲の王国」

篠田は目の前の光景に目を輝かせた

「なにそれ?」

「雲を固めて歩けるようにするんだよ。それでそこに国を作るっていう話し。すごく好きで・・・映画観終わった後、テレビで放送されたら録画して何度も何度も見てた・・・」

篠田は昔を思い出してクスッと笑う

「ふーん。降りて見る?」

「えっ!できるの?」

「うん。曇って水蒸気だから。一部分を固めれば大丈夫だよ」

小嶋は手をかざし雲の上に一本の長い道をつくり

2人を乗せた水の塊はそこに着地する

「・・・」

篠田は恐る恐る足を乗せた

「すごい・・・雲の上だ・・・」

篠田は歩をすすめる

「わっ!」

靴が氷の上を滑り、バランスを崩した篠田は後ろ向きに倒れる

が・・・

「え?」

水のクッションが身体を包み

なんの痛みもなく、空を見上げていた

「大丈夫?凍ってるから危ないよ」

視界の端から小嶋が顔をのぞかせる

「・・・」

無音の世界で青と太陽

そして、今自分は不思議な魔法使いと雲の上に居る・・・

「・・・ははっ。はははっ!」

篠田はなんだかおかしくて声を上げて笑った

「なになに?どうしたの?」

小嶋は何が起きているのかわからず眉をひそめる

「いや、自分のいた世界なんてちっちゃいなーっておもって。死ぬのがばからしくなった」

「え?なに?私自殺未遂止めたの?すごーい」

小嶋はにこにこと笑う

「・・・不思議な人だね」

篠田はむくりと起き上がり、小嶋を見つめた

「え?そう?」

小嶋はきょとんとしていた

「私さ・・・自分の事、蝉みたいだって思ってたんだ」

篠田はぽつりともらす

「え?」

「蝉って土の中に7年もいるでしょ?でも出てきたら1週間で死んじゃう・・・。私、全国模試でいい成績とってたら、この学校からスカウトが来て福岡からでてきたの。元々、地元でも浮いてる方だったし。東京に来たいって思いもあったから、何か変わるかと思ってた」

篠田はその時の事を思い出し、目を伏せる

「でも、何も変わらなかった。クラスの子たちともろくに話ししないまま2年になって・・・。何も変わんなくて・・・。退屈だった・・・。東京に憧れてた福岡の時は土の中に居て・・・東京っていう外にでたのに何も変わらなかった。だから・・・思ったの、私は何のために生きてるんだろうって」

「ふーん」

「そんなこと考えてる時に・・・蝉の死骸を見つけたんだ。夏の当たり前の風景・・・道路に転がってても誰も目にとめない。私も・・・こんな感じなのかなっておもって。だから・・・いっそこの世からいなくなってしまおうって。誰も、気に留めやしないから」

「んーそうだねー。よくわかんないけど。ずっと生きてるのってめんどくさいよね」

「え?」

思わぬ言葉に篠田は小嶋を見る

「私ね、こっちで500年くらい過ごしているの。もう正確には何年か覚えてないんだけどねー」

「500年・・・?」

「あっ、今こいつ何歳なんだって思ったでしょ?言っとくけど、私今20歳のままなんだからね、ピチピチなんだから!」

小嶋はむっと口をとがらせる

「いや・・・別にそんなこと思ってないよ」

篠田は苦笑いをする

「ま、ずっと若いままだからいいんだけどさー」

「歳・・・とらないの?」

「うん」

「それは、この世界の人じゃないから?」

「・・・ううん。違うよ。昔はねこっちに来てもじわじわ歳とってたの。セイレートの月日と同じスピードで」

「セイレート?」

「あぁ、私が元いたところなんだけどね。時空の流れが違うからんー・・・大体こっちの25年で1年くらいかな?」

「じゃあ・・・なんで」

「罰なの」

「え?」

「時を止めて、罪を償え・・・そういうことなんだろうね」

小嶋は寂しそうに笑った

「じゃあ・・・死ねないの?」

「んーまぁ、身体も若いままだから病気もしないし。そういうことだろうね」

「嫌にならないの?」

「うーん。でも、そんなの思ってもしかたないじゃん。だって、生きてるんだもん。そりゃ、心臓止めたら死ぬかもしれないけど、そういうの考えたことなかったなー」

「どうして?」

「んー。私と同じセイレートからきたのが2人居るんだけど。2人と500年ずっと生きてきたからかな?だから、寂しくないの」

「・・・そうなんだ」

「蝉だって、出てきた時は一人だから仲間を見つけるために鳴いてるんじゃなかな?自分はここに居るよって、しらせてるんじゃない?」

「・・・」

「私はあの2人がいて楽しいから、死にたいなんて思わないよ」

「そう・・・」

「でもね」

小嶋のトーンが変わる

「契約者が死ぬのはやっぱり辛かったな」

「契約者・・・?」

「うん。この世界に居るには、人間の誰かと契約を結ばなきゃならないの。で、契約してる間はずっとその人と居るんだけど・・・やっぱり、死んじゃうから。それを見るのが嫌で、最近は元気なうちに契約者変えちゃうの」

「そう・・・なんだ」

「私はずっと生きてるから。そういうのずーっと見てきたんだよね。だからさ、そんなに若いのに死のうなんて思わないでよ」

「・・・ごめん」

「あ、今私なんかいいこといったよね」

小嶋はあはっと笑う

「シリアスなのかふざけてるのかどっちかにしてよ」

篠田は苦笑いをする

「えー私はいたって真面目だよ。四宮さん・・・だっけ?」

「篠田です」

「あ、ごめーん。とにかくさ、篠田さんは蝉じゃないよ。蝉だとしても、まだ鳴いてないじゃん」

「え?」

「自分から、ここに居るってアピールしてないじゃん。そんなんじゃ誰も気付いてくれないよ。だから、大声で鳴いて生きてる時間を楽しんだらいいんじゃない?」

「・・・」

篠田はハッとする

自分は東京に来て何かしただろうか?

福岡の時とは違うことを・・・行動を起こしただろうか?

環境が変われば・・・そうやって周りのせいにして

自分は、何もしていなかった・・・

「ま、今日だって雲の上に来ることできたんだから、生きてたらいいことあるよー」

小嶋はにこにこと笑った

「そうだね・・・」

篠田は寝っころがり、青い空を見つめる

太陽が近くて、眩しくて・・・痛いくらいだった


でも、初めて

生きているんだ

そう、思えた


「あー熱い。かえろっか」

「え、はやくない?」

篠田は余韻に浸る余裕もなく、がばっと起き上がる

「だって、太陽近いんだもん。もう終わりー。おりまーす」

「ま、待ってよ」

「やだー」

小嶋は悪びれもなく言う

「じゃ、じゃあ今度また空の上つれてってよ」

「えー。無理だよ」

「な、なんで?」

「だって、契約者じゃないし。今日は見つかっちゃったからサービスしたけど。今日が終わったら記憶消えてるから」

「え・・・?」

「正確には消すんだけどね。柴田さんが死にたいって思ってた記憶も消すようにしてみるから」

「篠田だって!って・・・それはどうれもいい。消さないでよ」

「えー。無理ー」

「ま、待ってって」

篠田は思わず小嶋の腕をつかんだ

「どうしたら消さないでいてくれるの?このこと誰にも言わないから」

「んーそう言われても。一応決まりだし」

小嶋は口をとがらせた

「契約者・・・じゃないから?」

「うん。そういうこと」

「じゃあ・・・私を契約者にしてよ」

「え?」

篠田は真っ直ぐ小嶋を見つけた

「私、変わるから・・・なんでもするから・・・だから、契約者にして」

「・・・」

小嶋は困惑したが

嫌な気はしなかった

契約者でもない初めて会った人に、自分の話しをしたのは初めてだった

この人にならいってもいいかな

そう、自然に思っていたのだ

「あ、そうだ」

小嶋はハッとする

「生徒会」

「え?」

「今度生徒会の立候補あるでしょ?それに出てよ」

「なんで?」

「今は生徒会の人と契約結ぶことにしてるの。だから、出てくれたらなってあげる」

「わかった。約束する」

篠田は深く頷いた

「じゃあ、立候補してね」

小嶋はクスッと笑った


僕の彼女は魔法使い20

―――

「あーやっと終わった!」

「もー腕いたーい」

柏木と小嶋は机に突っ伏す

「はい、お疲れ様」

篠田は答案用紙を整えながら

「麻里ちゃーんご飯行こう」

「うん、そうだねー。陽菜頑張ったし。行こうか」

「やったー」

さっきとはうってかわって小嶋は元気になった

「じゃあ、焼き肉ねー」

「えーこの前もいったじゃん」

「いいのー」

小嶋は篠田の腕に抱きつく

「じゃあねゆきりん」

「まったねー」

篠田と小嶋は手を振る

「はーい」

柏木も手を振り、2人を見送った

「じゃあ私も佐江ちゃんとこいこうかなー」

柏木はそう言って、理事長室の戸を閉めた

―――

宮澤は部活が終わり、誰も居ない体育館に居た

ダムダムダム・・・

フリースローの位置でボールを何度かつき、スッと構える

「よっ!」

グルングルン・・・

宮澤の投げたボールはリングの淵を周り

シュッ!

入った

「よしっ」

「ナイッシュー」

後ろから声が聞こえ、宮澤は振り返る

「りんちゃん」

「お疲れ様」

柏木は宮澤に近づく

「もしかして、入れたのりんちゃん?」

「違うよー。風吹いてないでしょ?」

柏木はムッとする

「あはは、ごめんごめん。りんちゃんはあの時からずっと約束守ってくれてるもんね」

「そうだよー」

2人はクスッと笑った

―――

「お肉っお肉ー」

小嶋は篠田と腕を組みながらにこにこと歩く

「もーどんだけ肉好きなの」

篠田はクスッと笑う


ミンミンミン・・・

ジーーーー・・・

外に出ると

夕方でも校庭の木々から蝉の声が聞こえてきた

「・・・蝉・・・か」

篠田はぽつりと呟いた

「うん。夏って感じだねー」

「なんか、陽菜と初めてあった時のこと思い出しちゃった」

「え?」

「んー渡辺さんのせいかな?あの子の事、ちょっと気になってて調べてたんだ。そしたらさ、あの子実はめちゃくちゃ頭いいんだよ。中学の成績オール5だし」

「えーすごーい」

「それだけじゃないんだ。全国模試も上位に入ってて、それを見つけてうちの学園もスカウトしたみたいなの。まぁ大阪の高校に入るからって断られたみたいなんだけど、2年になって転校するからって声かけてたうちを選んだみたい」

「へー・・・」

「なんか、今楽しくなくて夜遊んでみたり、学校行かなかったり・・・いろいろ悩んでるんだろうなっておもって・・・私は不登校にはならなかったけど、あの時期っていろいろ考えるからさ」

「そうだねー。なんとなく、麻里ちゃんに似てるかもね」

「うん。なんていうか・・・敦子と私が合わさったって感じじゃないかな?佐江の話しだと家庭問題っぽいし」

「そうなんだ」

「だから、サヤカと出会ったのも運命じゃないかなって思うの」

篠田は茜色に染まる空を見上げる

「私が、あの時・・・陽菜と出会ったみたいに・・・ね」

「・・・そうかもねー」

小嶋も赤く染まった空を見上げて言った

――――――――――

少し、昔の話しをしよう

それは篠田と宮澤がこの学園の生徒だった時の話し・・・

「今日は3時までには学校から出ろよー」

秋晴れの光が降り注ぐ校舎で

担任の先生が教壇から言う

「なんでですかー?」

男子生徒が声を上げる

「ん?都内の学校の先生が集まって会議するんだよ。それまでに先生達もここで会議しなきゃいけないんだ」

「そうなんだー」

「先生も大変ですねー」

「ねぇ、駅前行こうよー」

「いいねー」

生徒たちはやいやいと話しをする

「こーら。あんまりハメはずしすぎんなよー。じゃあ、話しは終わりだ。気をつけてなー」

そういって、先生は教壇から出て行った

ガタガタガタ

先生が出て行ったか見たかで、生徒たちは椅子から立ち上がる

「ねーどこ行く?」

「ケーキ食べに行こうよー」

「今日おまえんちいっていい?」

「いいよー」

生徒たちは一斉に話しをしながら教室を出ていく

「・・・」

窓側の一番後ろの席で

黒縁めがねの女子高生はそんな様子を黙って見ていた

そして、彼女に誰も話しかけないまま

あっという間に、一人になった

「・・・」

静まり返った教室で

彼女は窓の外を見る


(・・・今ならいけるかもしれない)


彼女はゆっくり席を立ち、教室を出て行った

「おう、どうした?早く帰れよ?」

校内を巡視している先生から声をかけられ、ペコっと頭を下げる

見つからないように点々と場所を変え、時間をつぶす

そして、生徒たちの話声も聞こえなくなった頃

職員室に向かい

扉を開けた

会議をしているのは本当だった

薄暗い職員室には男性教員が一人バタバタと資料やら何やらを抱えてこっちに向かってきた

「どうした?何か用か?」

先生は明らかに焦っていた

おそらく会議に遅れているのだろう

「あ・・・田中先生って・・・」

とっさに嘘をつく

「あれ?話しきいてなかったか?もう皆会議いってるんだよ」

「そう、ですか」

「おーすまんすまん。遅くなって」

そこに稲田先生が現れた

分厚い眼鏡に白髪まじりの髪、そしてエンジ色のベストはまさに古典教師という風貌だった

昨年、定年を迎えたのだが臨時教員としてこの学校に居続けてるのだ

「あ、稲田先生。じゃあ、あとお願いします」

「はいはい」

そういって稲田は職員室に入って行った

「質問は今日は無理だと思うから、早く帰れよー」

そう言って、足早に階段を下りて行った

「・・・」

(臨時だから、稲田先生は会議には参加しないってことか・・・。つまり・・・留守番ってわけだ・・・)

そう思い、女子高生は階段を上り、踊り場で息をひそめる


ガラガラガラ

扉が開き

女子高生は顔をのぞかせた

稲田が職員室近くのトイレに入って行くのを見計らい

女子高生は音をたてないよう階段をおり、慎重に扉を開け

迷いなく教頭が座っている机まで足早に移動し

その後ろの壁にある鉄の箱に手をのばす

彼女は、職員室に何度も足を運んで、そこにあることを知っていた

ガチャ

中には学校中の鍵がかけられていた

女子高生は『屋上』とかかれた鍵をサッととり、扉を閉めて

職員室から出て行った

―――

一方その頃・・・

「今年の生徒会どうよ?」

霊樹の上で

高橋は顔写真と名前が乗った用紙を眺める

「んー。どうかなー」

「びみょー」

柏木と小嶋もその用紙を見ながら口をとがらせていた

「女子がいないんだよなー」

高橋は苦笑いをする

「うん。そうなんだよねー」

小嶋は髪の毛をくるくると回しながら言う

小嶋はめんどくさいと思ったり、気に入らないことがあると髪の毛を触る癖がある

「男子はめんどくさいんだよねー。この年頃って・・・。彼女だとか言い出すから」

柏木もため息をつく

小嶋と柏木は秋葉学園生徒会のメンバーと契約を結ぶようになっているのだが

なんせ、年頃の男子

目の前に小嶋や柏木が現れると、浮かれてしまって

秘密をばらしてしまう生徒が何人かいたのだ

高橋たちはその度に何度も記憶を消したりして余計なエネルギーを消費しており

負担もかかるため、女子と契約を結ぶ方向になっていた

「こりゃ、勧誘だな」

高橋はため息をつく

「えーめんどくさーい」

「候補とかいるの?」

小嶋と柏木は口をとがらせる

「んー。女子から人気が高い奴とか?頭がいい奴とかいないか?そうすりゃ、生徒会もいいかんじになるんじゃねぇか?」

「要は、私らが気に入った人を誘えっていいたいのね」

「ゆきりん、よくわかってるじゃん」

「えー。何百人って生徒いるんだよー。めんどくさいから、生徒会から選ぶんじゃないの?」

「いや、にゃんにゃん。生徒会から選ぶのは理事長とつながりができやすいからであって・・・」

「でも、もうたかみなの契約者、敬ちゃんじゃないじゃん」

「う・・・で、でもそういう伝統的な流れの方がいいだろ?それに、敦子だってのちのち理事長になるんだから」

「んーでも、それってずいぶん先の話しだよね」

「う・・・」

高橋は固まる

「まぁまぁ、陽菜。そんなにたかみなのこといじめないの。理事長になるかどうかはともかく、敦子はこの学校にのちのち勤務することが決まってるんだし。王女が来た時、そういう土台を作ってた方がいいってことでしょ?」

「そう!それだっ!」

高橋は身を乗り出す

「んーまぁたかみながそうしたいんならいいけど」

小嶋はふわりと浮きあがり

「めんどくさいから、いいなーって思う子がいたら誘っといて」

そう言って、学園の方に向かって飛んで行ってしまった

「あー・・・にゃんにゃん怒ったかなぁ?」

「いや、怒ってるんじゃなくて・・・ホントに興味ないんだと思うよ。たかみなはさ、真面目だからずーっと前田家に仕えてて、前田家も協力的だったけど・・・私らは結構間、間で契約者変えてるからね」

「そうだなぁ・・・あの時、歴史が変わらなきゃ2人ともずっと変わらなかったのかな・・・」

「それはもう言ってもしかたなんじゃない?まぁ、ここに居るのは私らの責任でもあるし。それに、私は陽菜と戦うの嫌だったから契約解除したの。途中で、歴史は変わっちゃったけど軌道修正はできてるからいいんじゃない?」

「そういってくれると、ありがたいよ・・・ホント」

高橋は安堵のため息をもらす

高橋は前田がいるため、生徒会でなくても契約者がいるのだが、小嶋と柏木は新たに契約者を見つけなければならないのだ

「んーとりあえず、契約者候補探してみるね」

「おう。すまんな」

柏木もそういってふわりと飛び立ってしまった

「・・・」

高橋は霊樹からおり、ふわりと地面に着地する

「・・・なぁレイラ。徐々に力が弱まってきてるんだ」

高橋は霊樹にむかって話しかける

「レナが成人するまで・・・むこうだと12年くらいか?・・・できれば避けたいと思ってたけど。無理みたいだ。・・・ごめんな力不足で。でも・・・レナが来たら、また結界を強くできると思うんだ。力だって・・・日本中どこにでも行けてた時代に戻れると思うんだ・・・だから・・・許してくれ。」

サァァァッ・・・

高橋の問いかけにこたえるように

木々がざわめいていた


僕の彼女は魔法使い⑲

チュンチュン・・・

「ん・・・」

前田はベッドの上で目が覚めた

「・・・夢?」

前田はぼんやりと昨日の事を思い出す

「・・・」

そして、もそもそとベッドから出て

キッチンへと向かう

「敦子、おはよう」

「おはようございます」

そこにはお手伝いさんと母、敬子がいた

「おはよう・・・」

席につき、母の顔をちらちらと見る

「なに?」

「ううん・・・別に・・・その・・・調子いい?」

「うん、いいわよ。ありがとう」

敬子はニコッと笑う

(なんだ・・・やっぱり・・・夢だったのか)

そう思い、床に目をやる

が・・・

「え?」

そこにはいつもあるものがなかった

みなみの水のみ用の皿がないのだ

前田の脳裏に、昨日の事が蘇る

「あ、あの・・・お母さん」

「なに?」

「みなみ、みなかった?」

「・・・みなみ?」

敬子は首をかしげる

「みなみだよ!猫!猫のみなみっ!ずっといたじゃん!」

前田は思わず立ち上がる

「何いってんの?猫なんていないわよ」

きょとんとする母を見て、前田は愕然とした

お手伝いさんもきょとんとして、怒鳴ったことに目を白黒させていた

「うそ・・・」

前田は勢いよく部屋を出て、階段を上り、アルバムを広げる

「ない・・・ない・・・」

ページをめくってもめくっても猫のみなみはどこにもいなかった

(やっぱり・・・昨日の事は夢じゃないんだ・・・じゃあ・・・お母さんの病気の事も・・・)

「・・・っ」

前田は力なくうなだれた


母を心配させたくなくて、前田は家を出た

でも、学校には行く気になれなくて

近くの公園に入る

「・・・あ」

そこには、昨日見たみなみがいた

「ここにくるんじゃないかって思ってた」

「・・・」

「昨日の話し、聞いてたんだろ?」

「!!」

「敬子の部屋の前で倒れてたから・・・だから、敦子の記憶は消さないでおいたんだ」

「・・・じゃあやっぱり・・・昨日のことはホントなんだ」

前田はぽつりと言う

「・・・ちょっといいか?ゆっくり話そうぜ」

みなみは缶コーヒーを2本みせてニッと笑った

そして、みなみはすべてを話した

ここに来た理由、今いる意味・・・そして契約者になってほしいと

前田は、迷わず頷いた

そして、前田は秋葉学園に入学した

・・・みなみと共に


―――

「敦子?」

黙っている前田を高橋は不思議そうに見つめた

「・・・」

あれから10数年がたち、母親は脳腫瘍が大きくなり入院している

そのため、今は前田が理事長代理をしているのだ

記憶はまだ大丈夫だが

身体は思うように動かなくなってきている

「・・・そうだね・・・みなみは・・・かわんないよね・・・でも・・・」

前田は、みなみをぎゅっと抱きしめる

「私だけ・・・大きくなっちゃった・・・気づいたら・・・もう30歳手前だよ?」

「敦子・・・」

(私も・・・いつか・・・離れなくちゃいけなくなるのかな・・・でも・・・私は・・・)

「私は・・・一緒に歳を取りたい・・・みなみと・・・ずっと一緒にいたいよ」

「・・・ごめんな」

前田の腕の中で、高橋はぽつりと呟いた
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