そして・・・

8月9日

みるきーの劇場での卒業公演の日が来た

リハや何やらでバタバタしてて

人も多いから狭い楽屋は熱気を帯びていた

んで、卒業生もまた集まってるから

きゃいきゃいと話しが盛り上がる

「・・・」

私はスッと席を立ち

観客席入口のドアをそっと開ける

ちょうど、BⅡのリハ中だ

みるきーは楽しそうに、笑ったり

真剣な顔をしたり

ころころと表情が変わる

こうやって観客席からみるきーをみることなんてなかったなぁ・・・

チーム違っても選抜とかでずっと一緒やったし・・・

「釣られてんで」

「!」

その独特な声にびくっとする

「山田・・・おどかすなや」

「別におどかしてないやん。彩が勝手に驚いたんやろ。みるきーばっか見てたから」

「・・・」

なんやねん。私は山田にもばれるくらいわかりやすいんか?

そう思うと、なんか情けなくなってきた

「もーなによその顔」

「いや、なんでもない」

私たちの話声は公演曲にかき消されて

舞台上のメンバーたちは特に気にしている様子はなかった

「・・・寂しくなるな」

「先に出てったやつが言うなよ」

「まぁ・・・そうやけど。私が出ていくんとみるきーが出ていくんでは話しが違うやん。」

「・・・」

「アイドルのみるきー見れるん。これで最後なんやな」

「・・・せやな」

私は舞台上のみるきーを見ながらぼんやりと呟く

「せやから・・・僕はいないなんかな」

「え・・・?」

山田の台詞に思わず振り向いた

「だって、あの歌みるきーが卒業してしもたら、違う子がセンターするやん。みるきーはおれへんから」

「・・・」

とたんに鳥肌が立った

みるきーは卒業後、芸能界には居ない

この業界で会うこともなくなる

全く違う世界の人になる

あの曲を歌うこともなくなる・・・

だから・・・僕はいない・・・?

「どないしたん。彩?」

「い、いやなんでもない」

くそーなんで山田のくせにうまいこと言うねん

でも・・・

私はみるきーを見つめる

おらんようになってからあの曲歌うのは相当ダメージくるな・・・

そう思い、胸が痛くなった

「でも、その方がお互い素直になれてええんちゃう?」

「はぁ?」

「彩とみるきーは全然性格違うのに負けず嫌いなん似てるから。もう競い合うようなことにならんかったら仲良くなるんちゃう?」

「・・・」

「卒業する今ならばこそ・・・やろ?」

「なんやねん。歌詞の受け売りかい」

「ちーがーう。近くで見てたからわかるの!でも、あの歌詞ホンマようできてるわー。秋元先生すごい見てるよなー」

「・・・」

まぁ、それは私も思った

あの歌詞を見た時はホンマに鳥肌が立った

だって、私の心境が書かれてるって思ったから・・・

「ま、だからみるきーが卒業した後は友達になれるんやない?」

「は?」

私は山田の台詞に眼を丸くする

「あ、戦友って感じのほうがしっくりくるかな?ほら、たかみなさんと優子さんみたいな。あ、でももう運命の人って言ってたし・・・そのまま卒業後もそういう関係で・・・」

「いやいやいや・・・何ゆうてんねん。いきなり」

「え?だってみるきーゆうてたやん。友達にはなれなかったけどって」

こ、こいつ・・・私がみるきー好きって気付いてないんかい

私は山田の天然具合に力が抜け、壁にもたれて

くくくっと笑いを堪える

「え?なに?どしたん彩?」

「いやなんでもない。なんか山田のおかげでええ感じに気ぃ抜けたわ」

「え?」

私は山田の肩をぽんっと叩き

その流れで山田の横をすり抜け観客席のドアを手に取る

「あ、あとな。みるきーは今後も友達やのうてそのまま運命の人ってことにしとくわ」

そういって、山田の方を向いた

「・・・うん。せやな」

山田は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐにニコッと笑った

どうやら、私の口角は相当あがっていたらしい

「さ、ほないこか」

「うん」

私らは楽屋へと向かう

みるきーの最後の公演に花を添えるために・・・


今日は泣かずに隣におれそうや・・・

ありがとうな・・・・山田