泣かないって決めていた

最後まで笑顔でいようって

しんみりするのは私の性にあわないから・・・

でも、無理だった

この劇場からすべてが始まって

彩ちゃんと並んで歌って、踊って・・・

いろんな思い出がつまっている場所だから

最後に1期生の皆が来てくれて

デビュー当時のことが蘇ってきて

みんなとやったから頑張れたって思ったら

涙が止まらなくなった

みんな、ホンマにありがとう

―――

「では、改めまして。みるきーさん!」

「「卒業、おめでとーーー!!」」

公演終わりの舞台で

クラッカーと拍手が鳴り響く中に私は居た

「みんなありがとう」

私は笑顔で応える

「みるきーさん。今までありがとうございました」

「やっぱり、さみしいー・・・」

みんなめいめいに言葉をかけてくれて

私はハグしたり、なぐさめたり大忙しやった


そして、金子支配人が私の卒業公演のボードを持ってきてくれた

私はまじまじとそのボードをみる

カシャ

「え?」

カメラの音を聞いて顔を上げると

彩ちゃんが微笑んでた

「おつかれさま」

「うん。ありがとう」

私もにこっと笑った

―――

そして

私は誰も居ない舞台に居た

端から端まで歩いてみたり

客席の方に背を向け

まじまじと舞台の背景を見てみたり

そして・・・

0番の位置に立ち

そのしるしを見つめた

もうその番号は

私にはカウントダウンが終わったゼロに見えた



「もう、劇場閉めるで」

その声に、ハッと顔を上げた

「彩・・・ちゃん」

観客席に彩ちゃんの姿があった

「ったく。どこ探してもおれへんねんから・・・」

彩ちゃんは口をとがらせすたすたと私の目の前まで歩いて

客席の一番前で私を見つめていた

もう、なんかファンみたいやん

私、もうアイドルやないねんで・・・

「あ、せや!」

私はハッとして声を上げる

「ど、どないしてん」

「私なーやりたかったことがあんねん」

そういって舞台袖に走り

マイクを一本とってきた

「はぁ?」

彩ちゃんは首をかしげている

「夢のカウントダウンは・・・もう終わったんやで」

「え?」

「アイドルの私は、今日で終わりやから」

私はクスッと笑って

0番よりも少し左に立った

「なんでセンターちゃうねん」

「ええの。ここが私のセンターやねん。NMBで私の位置は・・・ここやから」

「みるきー・・・」

私は微笑み

「私、渡辺美優紀は普通の女の子に戻ります」

そういってマイクを置き

ゆっくりと立ち上がって、彩ちゃんを見つめた

「・・・なんやねん。なんかいろいろまじっとるで」

「ええの。もー変なツッコミとかいらんから」

私は舞台からトンッと降りて

彩ちゃんの目の前に立つ

2人の目線はぴったりと合った

普通の女の子に戻ったから・・・

もう・・・ゆうてもええよな?

「あのな、彩ちゃん」

「ん?」

「私な・・・彩ちゃんのことが好き。ずっとずっと・・・大好きやってん」

「・・・・」

彩ちゃんの顔はみるみる真っ赤になっていく

そして、口をへの字に曲げて私の方を見つめた

いや・・・睨んでるってくらいの勢いやけど・・・

「あ、あのなっ!私も・・・みるきーのこと・・・す」

言葉を遮ったのは

彩ちゃんの唇に置かれた

私の人差し指だった

彩ちゃんはどうしていいかわからず固まっていた

あかんよ

これ以上ゆうたら・・・

ルール違反やろ?

私はクスッと笑い

「おんなじ気持ち?」

そう尋ねた

「・・・おう。おんなじ・・・気持ちや」

彩ちゃんは真っ赤になりながらも、真剣に答えてくれた

・・・今は、それで十分・・・

「じゃあ、待ってる」

「え?」

「彩ちゃんが卒業するまで・・・その言葉待ってるから」

「みるきー・・・」

「あ、でも言いたいからって卒業するんとかやめてやー」

「なっ!あたりまえや!ちゃんと完全燃焼してから卒業するわ!」

「うんっ。あー言えたからすっきりしたー」

私は爽快感でぐっと体を伸ばす

「かーっ!人が言えんのに自分だけすがすがしい顔しやがって」

「あ、言いたかったん?へーそうなん。そんなに彩ちゃん私の事」

「はぁ?あ、あほなこと言うな。別にそんなんやないし」

「さっきおんなじ気持ちってゆうたん誰よ」

「そ・・・それは・・・」

「ふふっ」

真っ赤になりながらもごもごとしどろもどろになる彩ちゃんを見て

私は噴き出してしまった

「「はははっ」」

私らの笑い声は劇場内に響き渡った