―――

「あーやっと終わった!」

「もー腕いたーい」

柏木と小嶋は机に突っ伏す

「はい、お疲れ様」

篠田は答案用紙を整えながら

「麻里ちゃーんご飯行こう」

「うん、そうだねー。陽菜頑張ったし。行こうか」

「やったー」

さっきとはうってかわって小嶋は元気になった

「じゃあ、焼き肉ねー」

「えーこの前もいったじゃん」

「いいのー」

小嶋は篠田の腕に抱きつく

「じゃあねゆきりん」

「まったねー」

篠田と小嶋は手を振る

「はーい」

柏木も手を振り、2人を見送った

「じゃあ私も佐江ちゃんとこいこうかなー」

柏木はそう言って、理事長室の戸を閉めた

―――

宮澤は部活が終わり、誰も居ない体育館に居た

ダムダムダム・・・

フリースローの位置でボールを何度かつき、スッと構える

「よっ!」

グルングルン・・・

宮澤の投げたボールはリングの淵を周り

シュッ!

入った

「よしっ」

「ナイッシュー」

後ろから声が聞こえ、宮澤は振り返る

「りんちゃん」

「お疲れ様」

柏木は宮澤に近づく

「もしかして、入れたのりんちゃん?」

「違うよー。風吹いてないでしょ?」

柏木はムッとする

「あはは、ごめんごめん。りんちゃんはあの時からずっと約束守ってくれてるもんね」

「そうだよー」

2人はクスッと笑った

―――

「お肉っお肉ー」

小嶋は篠田と腕を組みながらにこにこと歩く

「もーどんだけ肉好きなの」

篠田はクスッと笑う


ミンミンミン・・・

ジーーーー・・・

外に出ると

夕方でも校庭の木々から蝉の声が聞こえてきた

「・・・蝉・・・か」

篠田はぽつりと呟いた

「うん。夏って感じだねー」

「なんか、陽菜と初めてあった時のこと思い出しちゃった」

「え?」

「んー渡辺さんのせいかな?あの子の事、ちょっと気になってて調べてたんだ。そしたらさ、あの子実はめちゃくちゃ頭いいんだよ。中学の成績オール5だし」

「えーすごーい」

「それだけじゃないんだ。全国模試も上位に入ってて、それを見つけてうちの学園もスカウトしたみたいなの。まぁ大阪の高校に入るからって断られたみたいなんだけど、2年になって転校するからって声かけてたうちを選んだみたい」

「へー・・・」

「なんか、今楽しくなくて夜遊んでみたり、学校行かなかったり・・・いろいろ悩んでるんだろうなっておもって・・・私は不登校にはならなかったけど、あの時期っていろいろ考えるからさ」

「そうだねー。なんとなく、麻里ちゃんに似てるかもね」

「うん。なんていうか・・・敦子と私が合わさったって感じじゃないかな?佐江の話しだと家庭問題っぽいし」

「そうなんだ」

「だから、サヤカと出会ったのも運命じゃないかなって思うの」

篠田は茜色に染まる空を見上げる

「私が、あの時・・・陽菜と出会ったみたいに・・・ね」

「・・・そうかもねー」

小嶋も赤く染まった空を見上げて言った

――――――――――

少し、昔の話しをしよう

それは篠田と宮澤がこの学園の生徒だった時の話し・・・

「今日は3時までには学校から出ろよー」

秋晴れの光が降り注ぐ校舎で

担任の先生が教壇から言う

「なんでですかー?」

男子生徒が声を上げる

「ん?都内の学校の先生が集まって会議するんだよ。それまでに先生達もここで会議しなきゃいけないんだ」

「そうなんだー」

「先生も大変ですねー」

「ねぇ、駅前行こうよー」

「いいねー」

生徒たちはやいやいと話しをする

「こーら。あんまりハメはずしすぎんなよー。じゃあ、話しは終わりだ。気をつけてなー」

そういって、先生は教壇から出て行った

ガタガタガタ

先生が出て行ったか見たかで、生徒たちは椅子から立ち上がる

「ねーどこ行く?」

「ケーキ食べに行こうよー」

「今日おまえんちいっていい?」

「いいよー」

生徒たちは一斉に話しをしながら教室を出ていく

「・・・」

窓側の一番後ろの席で

黒縁めがねの女子高生はそんな様子を黙って見ていた

そして、彼女に誰も話しかけないまま

あっという間に、一人になった

「・・・」

静まり返った教室で

彼女は窓の外を見る


(・・・今ならいけるかもしれない)


彼女はゆっくり席を立ち、教室を出て行った

「おう、どうした?早く帰れよ?」

校内を巡視している先生から声をかけられ、ペコっと頭を下げる

見つからないように点々と場所を変え、時間をつぶす

そして、生徒たちの話声も聞こえなくなった頃

職員室に向かい

扉を開けた

会議をしているのは本当だった

薄暗い職員室には男性教員が一人バタバタと資料やら何やらを抱えてこっちに向かってきた

「どうした?何か用か?」

先生は明らかに焦っていた

おそらく会議に遅れているのだろう

「あ・・・田中先生って・・・」

とっさに嘘をつく

「あれ?話しきいてなかったか?もう皆会議いってるんだよ」

「そう、ですか」

「おーすまんすまん。遅くなって」

そこに稲田先生が現れた

分厚い眼鏡に白髪まじりの髪、そしてエンジ色のベストはまさに古典教師という風貌だった

昨年、定年を迎えたのだが臨時教員としてこの学校に居続けてるのだ

「あ、稲田先生。じゃあ、あとお願いします」

「はいはい」

そういって稲田は職員室に入って行った

「質問は今日は無理だと思うから、早く帰れよー」

そう言って、足早に階段を下りて行った

「・・・」

(臨時だから、稲田先生は会議には参加しないってことか・・・。つまり・・・留守番ってわけだ・・・)

そう思い、女子高生は階段を上り、踊り場で息をひそめる


ガラガラガラ

扉が開き

女子高生は顔をのぞかせた

稲田が職員室近くのトイレに入って行くのを見計らい

女子高生は音をたてないよう階段をおり、慎重に扉を開け

迷いなく教頭が座っている机まで足早に移動し

その後ろの壁にある鉄の箱に手をのばす

彼女は、職員室に何度も足を運んで、そこにあることを知っていた

ガチャ

中には学校中の鍵がかけられていた

女子高生は『屋上』とかかれた鍵をサッととり、扉を閉めて

職員室から出て行った

―――

一方その頃・・・

「今年の生徒会どうよ?」

霊樹の上で

高橋は顔写真と名前が乗った用紙を眺める

「んー。どうかなー」

「びみょー」

柏木と小嶋もその用紙を見ながら口をとがらせていた

「女子がいないんだよなー」

高橋は苦笑いをする

「うん。そうなんだよねー」

小嶋は髪の毛をくるくると回しながら言う

小嶋はめんどくさいと思ったり、気に入らないことがあると髪の毛を触る癖がある

「男子はめんどくさいんだよねー。この年頃って・・・。彼女だとか言い出すから」

柏木もため息をつく

小嶋と柏木は秋葉学園生徒会のメンバーと契約を結ぶようになっているのだが

なんせ、年頃の男子

目の前に小嶋や柏木が現れると、浮かれてしまって

秘密をばらしてしまう生徒が何人かいたのだ

高橋たちはその度に何度も記憶を消したりして余計なエネルギーを消費しており

負担もかかるため、女子と契約を結ぶ方向になっていた

「こりゃ、勧誘だな」

高橋はため息をつく

「えーめんどくさーい」

「候補とかいるの?」

小嶋と柏木は口をとがらせる

「んー。女子から人気が高い奴とか?頭がいい奴とかいないか?そうすりゃ、生徒会もいいかんじになるんじゃねぇか?」

「要は、私らが気に入った人を誘えっていいたいのね」

「ゆきりん、よくわかってるじゃん」

「えー。何百人って生徒いるんだよー。めんどくさいから、生徒会から選ぶんじゃないの?」

「いや、にゃんにゃん。生徒会から選ぶのは理事長とつながりができやすいからであって・・・」

「でも、もうたかみなの契約者、敬ちゃんじゃないじゃん」

「う・・・で、でもそういう伝統的な流れの方がいいだろ?それに、敦子だってのちのち理事長になるんだから」

「んーでも、それってずいぶん先の話しだよね」

「う・・・」

高橋は固まる

「まぁまぁ、陽菜。そんなにたかみなのこといじめないの。理事長になるかどうかはともかく、敦子はこの学校にのちのち勤務することが決まってるんだし。王女が来た時、そういう土台を作ってた方がいいってことでしょ?」

「そう!それだっ!」

高橋は身を乗り出す

「んーまぁたかみながそうしたいんならいいけど」

小嶋はふわりと浮きあがり

「めんどくさいから、いいなーって思う子がいたら誘っといて」

そう言って、学園の方に向かって飛んで行ってしまった

「あー・・・にゃんにゃん怒ったかなぁ?」

「いや、怒ってるんじゃなくて・・・ホントに興味ないんだと思うよ。たかみなはさ、真面目だからずーっと前田家に仕えてて、前田家も協力的だったけど・・・私らは結構間、間で契約者変えてるからね」

「そうだなぁ・・・あの時、歴史が変わらなきゃ2人ともずっと変わらなかったのかな・・・」

「それはもう言ってもしかたなんじゃない?まぁ、ここに居るのは私らの責任でもあるし。それに、私は陽菜と戦うの嫌だったから契約解除したの。途中で、歴史は変わっちゃったけど軌道修正はできてるからいいんじゃない?」

「そういってくれると、ありがたいよ・・・ホント」

高橋は安堵のため息をもらす

高橋は前田がいるため、生徒会でなくても契約者がいるのだが、小嶋と柏木は新たに契約者を見つけなければならないのだ

「んーとりあえず、契約者候補探してみるね」

「おう。すまんな」

柏木もそういってふわりと飛び立ってしまった

「・・・」

高橋は霊樹からおり、ふわりと地面に着地する

「・・・なぁレイラ。徐々に力が弱まってきてるんだ」

高橋は霊樹にむかって話しかける

「レナが成人するまで・・・むこうだと12年くらいか?・・・できれば避けたいと思ってたけど。無理みたいだ。・・・ごめんな力不足で。でも・・・レナが来たら、また結界を強くできると思うんだ。力だって・・・日本中どこにでも行けてた時代に戻れると思うんだ・・・だから・・・許してくれ。」

サァァァッ・・・

高橋の問いかけにこたえるように

木々がざわめいていた