チュンチュン・・・

「ん・・・」

前田はベッドの上で目が覚めた

「・・・夢?」

前田はぼんやりと昨日の事を思い出す

「・・・」

そして、もそもそとベッドから出て

キッチンへと向かう

「敦子、おはよう」

「おはようございます」

そこにはお手伝いさんと母、敬子がいた

「おはよう・・・」

席につき、母の顔をちらちらと見る

「なに?」

「ううん・・・別に・・・その・・・調子いい?」

「うん、いいわよ。ありがとう」

敬子はニコッと笑う

(なんだ・・・やっぱり・・・夢だったのか)

そう思い、床に目をやる

が・・・

「え?」

そこにはいつもあるものがなかった

みなみの水のみ用の皿がないのだ

前田の脳裏に、昨日の事が蘇る

「あ、あの・・・お母さん」

「なに?」

「みなみ、みなかった?」

「・・・みなみ?」

敬子は首をかしげる

「みなみだよ!猫!猫のみなみっ!ずっといたじゃん!」

前田は思わず立ち上がる

「何いってんの?猫なんていないわよ」

きょとんとする母を見て、前田は愕然とした

お手伝いさんもきょとんとして、怒鳴ったことに目を白黒させていた

「うそ・・・」

前田は勢いよく部屋を出て、階段を上り、アルバムを広げる

「ない・・・ない・・・」

ページをめくってもめくっても猫のみなみはどこにもいなかった

(やっぱり・・・昨日の事は夢じゃないんだ・・・じゃあ・・・お母さんの病気の事も・・・)

「・・・っ」

前田は力なくうなだれた


母を心配させたくなくて、前田は家を出た

でも、学校には行く気になれなくて

近くの公園に入る

「・・・あ」

そこには、昨日見たみなみがいた

「ここにくるんじゃないかって思ってた」

「・・・」

「昨日の話し、聞いてたんだろ?」

「!!」

「敬子の部屋の前で倒れてたから・・・だから、敦子の記憶は消さないでおいたんだ」

「・・・じゃあやっぱり・・・昨日のことはホントなんだ」

前田はぽつりと言う

「・・・ちょっといいか?ゆっくり話そうぜ」

みなみは缶コーヒーを2本みせてニッと笑った

そして、みなみはすべてを話した

ここに来た理由、今いる意味・・・そして契約者になってほしいと

前田は、迷わず頷いた

そして、前田は秋葉学園に入学した

・・・みなみと共に


―――

「敦子?」

黙っている前田を高橋は不思議そうに見つめた

「・・・」

あれから10数年がたち、母親は脳腫瘍が大きくなり入院している

そのため、今は前田が理事長代理をしているのだ

記憶はまだ大丈夫だが

身体は思うように動かなくなってきている

「・・・そうだね・・・みなみは・・・かわんないよね・・・でも・・・」

前田は、みなみをぎゅっと抱きしめる

「私だけ・・・大きくなっちゃった・・・気づいたら・・・もう30歳手前だよ?」

「敦子・・・」

(私も・・・いつか・・・離れなくちゃいけなくなるのかな・・・でも・・・私は・・・)

「私は・・・一緒に歳を取りたい・・・みなみと・・・ずっと一緒にいたいよ」

「・・・ごめんな」

前田の腕の中で、高橋はぽつりと呟いた