―――

翌日

「え、にゃんにゃんもう契約者候補みつけたのか?」

今日も3人は霊樹で会議をしていた

今契約している生徒たちには次の生徒会役員が決まると契約を解消すると伝えていないため

そういう話しをするときは決まって霊樹でおこなうのだ

「うん、2年生の子ー。んーと・・・名前わすれちゃった」

小嶋はてへっと笑う

「なんだそりゃ」

「あ、でも、下の名前はわかるよ。麻里ちゃん」

「ほー。麻里ちゃんねぇ。にゃんにゃんが気にいるなんてよっぽどだなー」

「うんうん」

高橋と柏木は頷く

「んー。なんかあの子といたらおもしろそうっておもったの」

小嶋はニコッと笑う

「いいなぁいいなぁ。なんか今回は期待できそうじゃねぇか」

高橋はニッと笑い

「ゆきりんはみつかったか?」

柏木に尋ねる

「え?」

柏木の脳裏に、宮澤が浮かぶ

「あ、何その間?もしかしているの?」

こういう時だけ、小嶋は鋭かったりする

「なんだよなんだよー。2人して仕事はやいなー」

「あ、いや、でも・・・候補ってだけで。どうだろうなーって感じだし」

そう言いながら、柏木は顔が赤くなっていくのを感じていた

(何照れてんのよ・・・)

自分でもわけがわからなかった

「で、誰誰?」

小嶋がずいっと近寄る

「その・・・宮澤佐江っていう子・・・バスケ部の1年生」

「ほーバスケ部か・・・そういや、クラスでも聞いたことある。イケメン女子って」

高橋は顎に手を当てて記憶をめぐらす

高橋は現在前田と同じクラスで1年生としてこの学園にいるのだ

(やっぱり・・・人気なんだ)

柏木の胸はちくりと痛む

「いいじゃん。スポーツやってる子は人気あるから立候補しても通るぜ」

「え、でも・・・まだ1年生だし・・・」

「大丈夫だって。2年生が主流だけど、1年生が立候補しちゃだめだっていう決まりはないし。副会長くらいいくんじゃねぇか?それに、敦子にも立候補してもらう予定だしよ。まぁ、本人はしぶしぶだけど」

高橋は苦笑いをする

「ねぇねぇ、今からその子見に行こうよ」

「お、いいねぇ」

小嶋の提案に、高橋はニッと笑う

「えっ!」

「いいじゃん。バスケ部だからまだ部活やってるだろー」

「うんうん」

そういって2人はふわりと浮きあがる

「ちょ、ちょっと待ってよ」

柏木も置いていかれないよう、慌てて浮き上がった


キュッキュッ!

ダムダム!

体育館では女子バスケ部が2チームに分かれて試合をしていた

「佐江ー!いけー!」

ダムダム・・・

シュッ!

「「ナイッシュー――!!」」

宮澤が華麗なレイアップシュートを決め

拍手と声援が響く

「ほほう」

「かっこいいねぇ」

「・・・」

窓の外からその様子を3人は眺めていたが

柏木だけやたら前のめりだった

「集合!」

「「はい!!」」

監督が招集をかけ、生徒たちは集まる

「いよいよ明日からウィンターカップの予選だ。昨日練習できなかったのは申し訳なかったが、リフレッシュできて逆に良かったかもしれない。今日も早めに切り上げて、明日に備えるぞー」

「「はい!!」」

「じゃあ、軽くシュート練習して終わりだ。いいな」

「「はいっ!!」」

そういって、生徒たちはまた散って練習を再開する

「へー明日試合なんだねー」

「みんな気合入ってるなぁ。青春だわ。青春」

小嶋と高橋が話しをする横で

(そっか・・・試合前だから内緒で昨日も練習してたんだ)

柏木は宮澤を見つめていた

(・・・試合、見に行ってみようかな)

柏木はなんだか、わくわくしていた

―――

そして、試合当日

柏木は都内の会場に来ていた

今日は高橋も小嶋も居ない

一人で見に来ていたのだ

入口のトーナメント表を食い入るように見て

秋葉学園の文字を探す

「あった・・・」

試合は2試合目・・・

1試合目には既に赤ラインがひかれていた

(やばっ、もう始まってるじゃん)

行こうかどうしようか迷っていたことを後悔しながら

柏木は慌ただしく会場に入った


体育館内は生徒たちであふれ、独自の応援歌や垂れ幕が観客席を彩っていた

「すごい・・・」

柏木はきょろきょろとあたりを見渡しながらその場の雰囲気にのまれていた

秋葉学園の垂れ幕を見つけ、制服姿も見つけたので

開いている席を探すが見当たらず

席の後ろで立ち見をすることにした

試合は後半戦だった

柏木は宮澤の姿を探す

(いた・・・)

10番のユニフォームを着た宮澤はコートを走り回っていた

シュッ!

宮澤は華麗なレイアップシュートを決める

「「ナイッシューー!」」

観客席から声援が飛ぶ

「ねーあの10番の子かっこよくない?」

「うん、イケメン。シュートもうまいしさー」

「まだ、1年生らしいよー」

「えーすごーい」

生徒たちの会話が聞こえて来る

(やっぱり・・・人気あるんだなぁ)

柏木はなんとなく、複雑な気持ちになった

そして・・・

試合は進み

58対60

秋葉学園が負けていた

観客の話しでは相手は去年準優勝の成城高等学校・・・

周りの話しからすると有名な強豪校らしい

試合時刻まで5分を切り

生徒たちの声援に熱が入る

ドンッ!

スパッ!

ピーーーーー!

宮澤のシュートを阻止した相手がファールとなり

宮澤のフリースローになる

幸いシュートは入ったので60対60の同点になった

残り時間は1分半・・・

宮澤のフリースローに皆が集中する

宮澤は青ざめているように見えた

(あ・・・)

柏木はハッとした

(あの位置・・・ずっと外してたやつだ)

宮澤はドリブルシュートは入るのだが、フリースローがめっぽう弱いのだ

ダムダム・・・

何度も何度もボールをつき、ふーっと深呼吸をして

構える

「「・・・」」

その一挙手一投足を

全員がかたずをのんで見つめていた

シュッ!

ボールが宙を舞う

「あ・・・」

柏木は思わず声を漏らす

(入らない)

柏木は瞬時にわかってしまった

風使いである柏木は、ボールが起こす微妙な風の動きを感じることができるのだ

ドンッ

反射板にボールがあたり

グルングルン・・・

リングの淵を回る

その様子をリング下で選手達がみつめる

グラッ・・・

ボールが淵からこぼれそうになる

(だめっ!)

柏木はとっさに手をかざしていた

ふわっ

会場に風が起こり

パサッ!

「「入ったーーーー!!」」

ワッと一気に歓声が上がる

選手達も宮澤を取り囲んで肩をたたいて喜んでいた

「守りきるよっ!」

「「はいっ!」」

キャプテンの声に、皆頷き

守りに徹する

そして

ビーーー!

試合が終了し、秋葉学園は1回戦を突破した

「佐江ーやってくれるじゃん!あの成城に勝ったんだよ!」

「うんうん。正に奇跡だよー」

先輩たちが宮澤にかけよる

「あ、ありがとうございます。あ、あの、なんかあの時・・・風ふきませんでした?」

「え?そう?」

「ボールに夢中で気付かなかったけど」

先輩は首をかしげる

「そう・・・ですか。なんか・・・こう・・・ふわっと浮き上がるっていうか・・・」

宮澤は手でボールの形をつくり

その時の事を伝えようとする

「まぁいいじゃん、入ったんだから!」

「そうそう!風さえも巻き起こす奇跡ってやつ?かっこいいじゃん」

「は、はぁ・・・」

「佐江フリースロー苦手なのに、ここぞってところは決めてくれるんだからー」

「次もたのむね」

「はいっ!」

宮澤たちはコートの中央に並び、一礼する

(よかった・・・)

柏木はホッと安堵のため息をついた


そして、秋葉学園はその後も勝ち続け、ベスト8まで残った


「みんな、今日はよく頑張った!でも、明日もあるんだ、まだまだ気合入れてけよ!」

「「はいっ!」」

秋葉学園の体育館で生徒たちの声が響く

「じゃあ、軽くシュート練習したら帰るように」

「「はいっ」」

皆、ボールをつきシュートを入れていく

「佐江」

「キャプテン」

声をかけたのはキャプテンの大鳥 舞だ

「初戦のフリースロー、決めてくれてホントによかったよ。ありがとう」

大鳥はニコッと笑う

「いえ・・・」

宮澤は照れ笑いをする

大鳥は周りをちらっと見て

「ずっと練習してた努力の結果かな?」

こそっと言った

「え・・・キャプテン・・・」

「なんで、遅くまで体育館が開いてたか考えたことなかったの?」

「え・・・まさか」

宮澤はハッとする

「そういうこと。先生には私が責任もって施錠しときますって言ってたんだ」

大鳥はクスッと笑う

「な・・・なんで?」

「実は、私も1年の頃は遅くまでのこってやってたんだ。あぁいう練習って誰かがいるとなんか気恥かしいだろ?だから黙ってたんだ」

「先輩・・・」

「そうそう、鳥ちゃんなんてしばらく私にも言ってくれなかったんだから」

後ろから声がして振り返る

そこには副キャプテンの千田 理奈が居た

「理奈。まだそのこと怒ってんの?」

大鳥は苦笑いをする

「だってー」

千田は口をとがらせる

「一人でやってたら理奈にばれて、みんなが残るようになったの。そしたら1回遅すぎて最終夕食時間に間に合わなくてさー・・・けっこうな人数だったから怒られちゃって・・・それ以来中止になっちゃったんだけどね」

大鳥はクスッと笑う

「えっ、そうなんですか?」

バスケ部は全国から推薦で来ており、寮生活なのだ

寮は部活がない日は6時に寮生全員で食事

部活がある日は最終9時までに食堂で夕食をとるようになっている

2年生は全員で14人、顧問は黙っていたのだが

教頭が注意してきたらしい

「うん。でも、そのおかげで私もシュート率あがったし、皆団結できたきがするから結果オーライなんだけどね」

「そうそう、よきかなよきかな」

千田はにこにこと笑う

「じゃ、じゃあ・・・なんで、私の練習止めなかったんですか?中止になったんだったら・・・」

「うーん。なんか、1年前の自分を思い出してさ。おねがいしちゃった」

大鳥はクスッと笑う

「いつまで続くかなーと思ってたけど。4月からずっと・・・佐江はホント骨のある奴だよ」

「キャプテン・・・」

「他の1年生も気付けばいいのにー」

千田は口をとがらす

「ま、それはこの予選が終わったら変わるんじゃないかな?」

大鳥は他の1年生達をみる

皆、一心不乱にリングに向かってボールを投げていた

女子バスケ部の2年生たちはレベルが高いのだが

宮澤はその中でスタメン出場していたのだ

そのため、他の1年生も負けていられないと思っているのだろう

「みんな佐江に感化されてるよ」

「そ、そんな」

「いれくらいがいいのよ。それでこそチームも強くなるんだし。このまま行って打倒聖光!」

千田はぐっと拳を握る

千田の言っている聖光学園は強豪校で秋葉学園とは永年ライバル関係にある

夏の総体で負けてしまったことを千田は誰よりも悔しがっていたのだ

「はいっ!」

宮澤も拳を握る

「こら、理奈あんまり炊きつけない」

大鳥は苦笑いをする

「ま、あんまり気負いしないでね。仲間を信じれば必ず勝てるよ。今日みたいな奇跡だっておこるんだから」

「おー鳥ちゃんいいこというー」

「ちゃかさない。じゃあ、練習戻ろうか」

「はいっ!ありがとうございました!」

宮澤は頭をさげ、他の1年生とともにシュート練習をし始めた

反対のコートでは大鳥たち2年生がシュート練習をしている

宮澤はそれをちらっとみて、にやける顔を隠すようにリングにむかってボールを投げた

キャプテンに認めてもらえたことが

何よりも嬉しかった

宮澤はフリースローは苦手なものの、スピードやドリブルシュートの能力にたけており

いわば速攻の選手として

数校から推薦の話しが出ていた

そんな矢先、高校のウインターカップを見に行って

大鳥の3ポイントシュートに一瞬で心を奪われた

綺麗なフォームで

リングに吸い込まれるように入って行くボール

聞けばまだ1年生だという・・・

1歳しか違わないのに、この存在感・・・

宮澤はこの人とプレーしたいと思った

そして、宮澤は秋葉学園を選んだ

大鳥にコツを教えてもらっていたのだが

やはりフリースローは苦手なままだった

先輩に追いつきたくて、先輩みたいになりたくて

ずっとずっと練習してきた

それが、今日・・・少し近づいた気がして

嬉しかった

―――

みんなが帰った後も

宮澤はいつものように遅くまで練習していた

「・・・頑張るなぁ」

柏木は窓の外から、その様子を見ていた

(でも・・・いいな)

「決めた・・・」

柏木はスッと降り

宮澤の反対方向に立つ

ガンッ!

「あっ!」

リングにボールがはじかれ

勢いよく転がり、体育館入り口のほうに向かう

宮澤はボールを拾いに行こうと小走りになる

が・・・

キュッ・・・

足を止めた

「・・・」

転がったボールの先には人がいたのだ

「誰?」

「・・・シュート」

「え?」

「シュート。教えに来たの」

柏木はニコッと笑った