「えーっと ・・・この学校の生徒・・・だよね?」

制服姿の柏木を見て、宮澤は首をかしげる

「うん。私は柏木由紀。3年生なの」

「えっ?3年生って・・・勉強とかいいんですか?」

3年生は部活も引退し、現在受験に向けて猛勉強中であった

「え・・・んーまぁ。それはいったん置いといて。シュート、うまくなりたいんでしょ?」

柏木は誤魔化すように笑い

フリースローラインに立つ

そして

ふわっ

「きれいだ・・・」

宮澤は思わず呟く

素人の柏木はフォームもまるで出来ていなかったが

ボールが宙を舞う軌道は

ものすごく美しかった

スパッ

ボールは吸い込まれるように入った

「すごい・・・すごいよっ!どうやったらそんなに綺麗にはいるの!?」

宮澤は興奮して柏木に詰め寄っていた

顔が近づき

柏木は顔が熱くなる

「あ・・・ご、ごめんなさい。先輩にタメ口とか、失礼ですよね」

「ううん、いいよ。あ、あのね。投げる時に風を起こすイメージでやるといいんだよ」

柏木は照れて早口になる

「風・・・?」

「そう。ボールに回転をかけて風をおこすの。風っていっても小さな空気振動みたいな感じだけど」

「んー?なんかむずかしいですね」

「じゃあ、ボール持って」

柏木は宮澤をフリースローラインに立たせる

そして

少し離れて手をかざす

「投げて」

「え?」

「いいから。シュートして」

「は、はい」

宮澤はスッと構える

「え?」

誰かが、自分の腕や足を曲げているような感覚に襲われる

まるで、後ろから誰かが抱きついて操っているみたいだった

そして

跳んで、ボールが手から離れた瞬間

指先からふわっとボールが浮き上がるような感覚があった

スパッ

ボールは反射板にあたることなく入った

「すごい・・・」

「ね?この感覚だよ。あなたは力は入りすぎててブレてるの。優しく浮き上がらせる感じそれくらいがいいと思うよ」

柏木はボールを拾い微笑む

「すごい!すごいよっ!どうやったの?さっきの何?魔法?あ・・・ご、ごめんなさい」

宮澤は興奮してまたもタメ口になる

「ふふっ。いいよ。気を使わなくても。それに、私はあなたにお願いがあってきたの」

ころころ変わる宮澤の様子がおかしくてクスッと笑う

「え?」

「宮澤佐江さん。あなたに私の契約者になってもらおうとおもって」

「契約者・・・?」

「うん。ここの3年生って言うのは仮の姿なの。私は異世界からきた魔法使い」

「え・・・?ホントに?」

「うん。で、正確には風使い」

柏木は持っているボールを空中で浮き上がらせる

ボールはその場でくるくると回っていた

下に手をかざし、そこから風を送っているのだ

「すごい・・・浮いてる」

「だから、ボールの軌道とかは少しの風とか空気抵抗とか感じてわかっちゃうの」

「ホントに・・・魔法とかあるんだ・・・」

「驚いた?あ、でも他の人には内緒にしててね。そうしないと記憶消さなくちゃいけなくなるから。そうなると、さっきの感覚も消しちゃうからね」

そういって、ウインクをした

「うんっ!わかった!誰にも言わない!あのさっ!もう一回、もう一回さっきのやってもらってもいい?契約者でもなんでもなるからさ」

宮澤は目を輝かせる

(またタメ口になってる・・・)

柏木はクスッと笑い

「いいよ。何度でも」

そういって、手をかざした


宮澤は本当に何度も何度も練習した

ボールが離れていく感覚

力加減

明日の試合に向けて身体に叩きこもうとしていた

「どう?なんとなくわかった?」

「うん。ちょっとやってみる」

そういって、宮澤はふーっと深呼吸をして

ふわっ

ボールを投げた

スパッ!

「入った!!」

宮澤は柏木の方をむいて笑う

「・・・」

その笑顔に、柏木はドキッとした

「ありがとう!よしっ。もう少し練習だ」

「頑張るね。もう遅いし、あんまりやると明日に響くよ」

「だって、出来るようになったのうれしいんだもん。今のうちに身体にたたきこまなきゃ」

そういって、宮澤はまたシュート練習をする

が、さすがに身体は疲れており

ボールはリングの淵を回る

「えいっ」

柏木は手をかざし、こぼれそうになったボールを入れた

ふわっ

下から突き上げるような風が吹いた

「・・・」

宮澤は目を見開く

この感覚・・・まさか・・・


「ほら、身体が疲れて回転が変になってるからもうこの辺で―」
「なに、今の?」

柏木が言いきる前に、宮澤の言葉がかぶさる

「え?」

「今、落ちそうになったボール入れたよね?」

「うん」

「私、この風感じたの2回あるんだ。ひとつはこの体育館・・・もう一つは・・・今日の試合で」

「・・・だって、あんなにぐるぐる回って期待させて落ちるなんて嫌じゃない。だから、少し手伝ってあげたの」

「・・・じゃあ、今日の試合も?」

「うん。なんか負けてほしくなくて。だからこうして教えに―」

宮澤の耳には後の言葉は聞こえてこなかった

『ずっと練習してた努力の結果かな?』

頭の中では大鳥の言葉がずっと回っていた


認めてもらえたと思ってたのに・・・


「なんでそんなことしたんだよ!!」

「っ!!」

宮澤の声が、体育館に響き

柏木はびくっと肩を震わせた

「自分でやらなきゃ・・・意味ないんだよ!そんなズルして、嬉しい奴なんていない!」

宮澤は叫び

体育館から出て行った

「・・・」

柏木は反論することも、追いかけることもできなかった

宮澤が怒ったことが

怒鳴ったことが

ただただ、悲しくて仕方がなかった

「っ・・・。なによっ・・・私は・・・ただ・・・」

(あなたが、頑張ってたから・・・力になりたかっただけなのに・・・)

言葉にならない想いが

涙になってあふれ出た