「なんか懐かしいねー」

「そうだねー」

宮澤と柏木は昔を思い出し、感慨にふけっていた

「あの頃の生徒会楽しかったなぁ。麻里子様も意外と熱い人でよく議論したよ」

「そうだね。でも結局それをまとめるのは敦子っていうね」

「そうそう。実は誰よりも権限持ってた気がするよ」

宮澤は笑う

「でも、あの時の麻里子様の告白はしびれたなー」

「うんうん。でも、私は佐江ちゃんの言葉が嬉しかったよ」

「そう?なんか、勢いで麻里子様に便乗したみたいで自分ではあの後ちょっと気にしてたんだけどね」

「え?そうなの?」

柏木はクスッと笑う

篠田が3年になり、生徒会を引退した後は

宮澤が会長、前田が副会長に就任していた

だが、篠田の引退は契約解除ということになる

生徒会室で、その事実を知らされた篠田は

小嶋にずっとそばにいてほしいと言ったのだ

―――

「たかみなは、敦子にずっとついてるじゃん。そういう風にはできないの?」

夕日が照らす薄暗くなった校舎の生徒会室で篠田が言う

「もちろん、契約は続けることができるが・・・私らの力は最近弱まってきてて・・・ここの学校を出れば、契約者にも負担がかかるんだ・・・大学進学とかでこのあたりの地区をでると相当な負担になる」

「それは、私にってこと?」

篠田は尋ねる

「そうだ。それに、これから先は・・・本当にこの地区・・・いや、霊樹周辺でしか生活できない可能性だってあるんだ」

「・・・わかった。今はまだ大丈夫なんだね。じゃあ、契約は解除しない」

「え?」

「私、この学校にもどってくる」

「え・・・?」

その台詞に、一番驚いたのは小嶋だった

「陽菜は、私を変えてくれたんだ。4年間私の身体に負担がかかるなんてどうってことない。それに、ここは学校だし、教員になって戻ってくるよ」

「で、でも麻里ちゃんは生物学者になりたかったんじゃないの?」

小嶋によって生きることの意味を見つけた篠田は

生物学に興味をもった

死を考えていた彼女が、生を扱う学問を好きになったのだ

「それは、陽菜の身体が歳を取らないから・・・」

「え?」

「最先端の科学技術とかを学べば、何か手掛かりが見つかるんじゃないかなっておもって・・・」

「なにそれー。私に歳とらせたいの?」

「ちがうよ。私の方だよ」

「え?」

「どうやったら、歳とらないか・・・考えて、そういう結果になったんだ。ただ・・・一緒に居たいの。ずっと一緒に・・・生きていたいから」

篠田は俯く

「麻里ちゃん・・・ありがと」

小嶋は篠田の手を取る

「でも、私たちは生きてる世界が違うから・・・。だから、そんなに考えなくてもいいよ」

「考えるよ!・・・好きだから。陽菜の事が・・・好きだから。陽菜が他の人と契約結ぶの嫌だし、記憶がなくなるのだって・・・嫌なの」

篠田の目から涙がにじむ

「私も嫌だ」

話しを聞いていた宮澤が口を開く

「ねぇ、たかみな。私もりんちゃんとの契約解消するの嫌だよ」

「・・・佐江ちゃん」

「私も、ずっと一緒に居たい。私も教員になってもどってくる。大学だって東京にする。もし霊樹のそばでなきゃ無理だって言うんなら、この地区から通う」

「おまえら・・・」

「ねぇ、たかみな。王女様が来るのって、あと何年くらいなの?」

前田が口を開く

「え・・・あと・・・11、2年くらいか」

「じゃあ、私ら30前だね。大学いって、ここで就職して・・・丁度教員としてもいい時期なんじゃないかな?」

「え?」

「王女の契約者は生徒会長にして、私たち教員がフォローするのじゃ駄目なの?」

「あっ、それいい!」

宮澤は声を上げる

「それに、私もみなみと契約解消するつもりないよ。みなみだってそうでしょ?」

「う・・・でも、敦子に負担がかかるんなら・・・」

「今更そんなこと言わないでよ!私は一緒に居たいの!それに、みなみが居ない生活なんて・・・もう考えられないよ」

「敦子・・・」

「私も、同じ。陽菜が居ないなんて嫌だ」

「私も。りんちゃんにいてほしい」

「・・・」

高橋は黙る

「ねぇ、たかみな。私ね、ここ最近ずっと1年くらいで契約解除してたでしょ?それって、なんかピンとこないのもあってさ。別にそれでいいかなーって思ってたの」

小嶋は高橋の方を向いて話しだした

「でも、麻里ちゃんと契約解消する時期が来て・・・なんか、寂しかったの。私も・・・麻里ちゃんと一緒に居たい。ダメかな?」

「私も・・・佐江ちゃんがいい!この先も・・・ずっと!」

柏木も声をあげる

「おまえら・・・わかってるのか?私らの使命は・・・」

「わかってる。だから、せめて王女がくるまでは・・・好きにさせて。そこから、どうするか決めてもいいんじゃない?」

小嶋はいつになく真剣なトーンで言った

「・・・いつか、離れる日がくるんだぞ?ずっといる方が・・・辛いときだってあるんだぞ?」

「わかってる。でも、今離れるよりその方が、ずっといい」

柏木も真っ直ぐ高橋を見つめた

「そっか・・・みんな、いいパートナーに出会えたってことだか・・・」

高橋はフッと笑い

「じゃあ、2人には約束してもらう」

高橋は篠田と宮澤の方を向いた

「必ず、教員になって戻ってきてきてくれ。そして、王女が来る時・・・フォローしてほしいんだ。この世界で、生活ができるように」

「わかった」

「もちろんっ!」

篠田と宮澤しっかりと頷いた

――――

「ねぇ、佐江ちゃんはさ。教師になったこと後悔したことないの?」

「え?なんで?」

「だって、大鳥さんに憧れてたから・・・その・・プロとかそっちに行きたかったんじゃないのかなって」

「あー。ううん。全然。元々教員には興味あったしさ、それにこうしてバスケの顧問させてもらえてうれしいよ」

宮澤はニコッと笑う

「お・・・もしかして、佐江か?」

「え?」

聞き覚えのある声を聞いて振り返る

「お、当たった」

「佐江ー。久しぶりー」

そこには背の高い女性が2人立っていた

「大鳥先輩、千田先輩!」

宮澤は思わず駆け寄る

「今シーズンオフでさぁ。休暇取れたから久しぶりに遊びに来たんだよー」

「今は佐江が教えてるって聞いて、覗きに来ちゃった」

2人はにこっと笑う

大鳥と千田は大学もバスケを続け、実業団チームに所属しているのだ

いわば、プロの様なものである

「あー・・・でも練習終わっちゃったんですよねー」

「えーなんで?」

千田が尋ねる

「いや、今日テスト終わりで練習早く終わったんです」

「そうなんだ。で、生徒がいなくなった後こっそり練習してたの?」

大鳥はくすっと笑う

「もーそんなんじゃないですよー」

宮澤は口をとがらせる

「ねぇ、あの人は?」

千田が柏木の方を見る

「あぁ、ここの保健室の先生なんです」

柏木はぺこっと頭を下げる

「ん・・・?」

大鳥は首をかしげた

(どっかであったような・・・?)

柏木は宮澤と契約を結んだので、それまでに学校で会った人たちの記憶を消していたのだ

「佐江の彼女?」

そういって千田はにこにこと笑う

「はいっ!」

宮澤は迷うことなく頷いた

そして

「先輩達も順調なんでしょ?」

ニヤッと笑った

「そんなの当たり前でしょー。鳥ちゃんには私が必要なんだから」

「あはは。そういうこと」

千田に腕を組まれ、大鳥はにこっと笑った

―――
その頃

玲奈は寮にもどり、渡辺が渡してきた本に目を通していた

織田信長という名前は聞いたことあった

天皇から武士が政権を奪い

天下を統一した人物・・・

ヒスイがさらりと言って以来

歴史について学ぶことがなくなってしまった

レナはなんとなく疑問に思っていたのだが

『いずれ、あなたは日本に行くことになるかもしれません・・・歴史はその時に学んでください』

そう言われた

ヒスイの顔が寂しそうだったので

玲奈はそれ以上詮索できないでいたのだ

「たっだいまー」

部屋のドアが開き、部活を終えた珠理奈が部屋に入ってきた

「おかえりなさい」

玲奈は本を閉じ、珠理奈の方をむく

「いやーやっぱりバスケはいいわー。ずっとできなかったからさー楽しかったよー」

珠理奈はニコニコと笑いながら荷物を床に置く

「よかったね」

嬉しそうな珠理奈の顔を見て、玲奈はクスッと笑った

「玲奈ちゃん今日は何してたの?」

「私は、図書室でいたよ」

「ふーん。借りてきたの?」

「あ、うん」

珠理奈は玲奈の机をのぞき込み

「あー織田信長だ。かっこいいよねー。」

そう言った

「珠理奈は知ってるの?」

「え?信長?知ってるよー本能寺の変は私でもしってるからね」

あまり勉強が得意ではない珠理奈は苦笑いをしながら言う

「本能寺の変・・・?」

「あ、そっか。玲奈ちゃんは異世界の人だから日本の歴史とか詳しくないよね。明智光秀っていう家臣が信長に逆らって討つんだよ」

「そうなんだ・・・」

玲奈はぱらぱらとまだ読んでいない後半のページをめくる

『本能寺の変』

というフレーズが目にとまり、ページを止めた

そこには刺し絵がはいっており、炎の中で刀を構え今にも刺し合おうとしている2人の武士が居た

「これこれー。こっちが信長だよー。ちょび髭だし」

そういって、珠理奈は左の人物をさす

「そうなんだ・・・」

「でもさ、光秀もすぐに殺されちゃって三日天下とかいわれてるんだよー。その後は豊臣秀吉が天下とってさー」

「そうなんだ」

「私、唯一そこだけは歴史好きなんだよねー」

そういって珠理奈は笑う

「そっか。じゃあ、ちゃんと読んでみようかな」

「え?」

「珠理奈の話しきいたら、なんだか面白そうだし」

玲奈はニコッと笑う

「・・・」

珠理奈はその顔にドキッとする

ドンドンドン!

「わっ!」

「きゃっ!」

いきなり戸がたたかれ、珠理奈と玲奈は声を上げる

「珠理奈!大変やっ!」

その声は横山だった

「な、なんだよ。ゆいはんか・・・」

珠理奈は戸を開ける

「今、宮澤先生から連絡が来て、栄堂工業の大鳥さんと千田さんが来てるって!!」

「えっ、マジ!?」

珠理奈は声を上げる

「誰?それ?」

「女子バスケ界のアイドルみたいなもんやな。プレー技術もさながら、ルックス抜群で人気なんやで」

「そうなんだよ!すっごくカッコいいんだから!」

珠理奈は興奮しながいう

「なんや、宮澤先生の先輩なんやって。今から体育館に来れないかって連絡があってバスケ部に声かけてんねん」

「行く行く!あ、玲奈ちゃんもいこうよ」

「え?」

「見るだけでも、価値あるからさ」

「そうそう!ほな、私他の子にも声かけて来るから」

「わかった!行こう、玲奈ちゃん」

「え、う、うん・・・」

珠理奈は玲奈の手を引き走りだす

「・・・」

玲奈は握られた手を見つめ

胸があったかくなるのを感じていた


そして、珠理奈たちバスケ部は大鳥と千田に指導を受け

最後は宮澤も混じり試合をした


「やっぱり佐江ちゃんかっこいいなー」

そう言いながら、見つめる柏木の横で

楽しそうにプレーをする珠理奈を見て

玲奈はクスッと微笑んだ