そして、美優紀は家に帰らなくなった

正確に言うと帰りづらくなったのだ

両親が居ない隙を見て家に戻り、すぐまた出て行くという生活をくりかえす

学校も休みがちになっていたが

もともと、成績の良い美優紀はテストだけはいい結果を残していた

だが、美優紀を見つめる学生たちの目は変わっていった

まるで、汚れた何かを見るような目だった

「・・・」

そんな視線が嫌だった

だから、冬休みに入る頃には

不登校になっていた

そして

「美優紀、大事な話しがあるの」

両親に言われ、しぶしぶ美優紀は家のリビングに居た

ダイニングテーブルに並んだ両親、その前に座る美優紀・・・

目を合わせづらくて、思わずそらしていた

「お母さんたちね、離婚・・・しようと思うの」

「・・・」

思わず美優紀は両親を見た

父親は何も言わず、黙っていた

「そう・・・」

「だから、どっちについていくか・・・決めてほしいの」

「・・・どっちも嫌ってゆうたら?」

「いい加減にしろ。おまえはまだ高校生なんだ。どっちかについてきなさい」

父親の台詞にカチンとする

「なによっ!散々好き勝手やってきたお父さんにそんなん言える権利あるん?」

美優紀は立ち上がりガタっと椅子が大きな音を立てる

「おまえは子供なんだ!おまえこそそんなこと言う権利ない!」

「なによっ!都合のいいときだけ親ぶって!私は・・・私は・・・」

あんたらの都合のいい娘やない

そう言おうとする前に、涙があふれてきて

美優紀はたまらず家を出た

走って、走って・・・

吉田がいつも居る、駅前のあの場所まで走っていた

「・・・」

吉田は美優紀の姿をみると、座っていた花壇の縁から立ち上がり

美優紀の傍に歩み寄ってきた

「はぁ・・・はぁ・・・アカリン・・・」

美優紀は肩で息をしながら、さっきあったことを吉田に言おうとした

だが

「え?」

吉田は美優紀の横をすりぬける

「朱里ーお待たせー」

「どこいくー。カラオケー?」

後ろを振り返ると、派手な格好をした女子たちが吉田を囲んでいた

「うそ・・・」

美優紀はぽつりと漏らす

「そうやなー。カラオケしよー。朝までいっちゃう?」

「いいねー」

吉田は振り返ることもなく女子たちと話しをする

「・・・アカリン!」

美優紀は絞り出すような声で叫ぶ

「「・・・」」

一斉に女子たちの視線が美優紀に集まり、たじろぐ

「・・・」

そして、吉田も振り返り

ゆっくりと美優紀の方に歩み寄ってきた

「みるきー。もう、会うんやめよう」

「え・・・?」

衝撃的な言葉に、頭が真っ白になる

「ずーっとさ、遊んでる間も考えてたんだよねー。あんたとおってもつまらんのよなー」

「なに・・・それ?」

冷たく言い放たれた言葉に心拍数が上がる

「タイプの違う子と遊んだらおもしろいかなーって思ったけど、やっぱり合わんなーっておもって。だから、もうおしまい」

「アカリン・・・私は・・・」

美優紀は言葉をはなとうとしたが、喉の奥でつっかえて言葉にならなかった

「朱里ー。なにしてるん?早くいこー」

後ろで女子たちが口をとがらせていた

「わかったー。じゃあね。はよ帰って勉強でもしたら?」

吉田はそういうと踵を返し、去って行ってしまった

美優紀には、もう追いかけていく気力もなかった

そこにへたりこんでしまうのを必死に耐えるだけで

精一杯だった

「なによ・・・なによ・・・・」

美優紀の脳裏に、吉田との思い出が蘇る

優しくしてくれたん、全部演技なん?

笑ってくれてたんも・・・全部・・・

「っ・・・」

美優紀は肩をふるわせて泣いていた

家族も、友達も・・・なにもかも・・・失った気がした


もう、大阪になんていたくない

消えてしまいたい

そんな思いしか抱かなくなった