ザワザワザワ・・・

街の雑踏が、美優紀を現実世界へと引き戻す

その後、美優紀は両親と暮らすことを拒み

母方の祖父母の家がある東京で暮らすことを決めた


「東京で会うとか・・・最悪。なんなん」

美優紀はぶつぶつ言いながら

街を見渡す

どこに行こう・・・

正直、東京に来てから

遊ぶ友達も居なかったので

いつも公園にいるか、駅前の店を転々と歩くかくらいしかしていなかった

・・・街での遊び方は全部吉田に教えてもらった

だから、一人でどうすごしたらいいのかというのは正直よくわかっていなかったのだ

「・・・ホンマ・・・最悪」

美優紀はぽつりと漏らした

そこに

「お、君ひとり?俺らとカラオケでも行かない?」

いかにもチャラそうな男4人が声をかけてきた

「いかん」

美優紀はさらなる苛立ちを感じ、そこから去ろうとする

「待てよ。ねーいいじゃんちょっとだけ」

男が腕をつかむ

「離してよ!」

美優紀は勢い任せに腕を振りほどこうとしたが

「っ!!」

腕が折れそうなほどに握りしめられ、顔をゆがませる

「素直についてきてくれたら痛いことしないからさ」

男は冷ややかな顔でいう

「誰が・・・あんたらとなんか」

「おいおい、言っただろ。おとなしくしろって」

そういって、男たちは美優紀を囲み

スッとナイフを出した

「!」

「な、いい子にしてろ」

「・・・」

美優紀は恐怖で声が出なかった

「おーいいのー?じゃあカラオケ行っちゃいますかー」

じろじろと見ている人たちに不信感を与えないよう

男たちは声をあげ、盛り上がる

「じゃあ、行こう」

そういって、美優紀を取り囲んだまま男たちは歩き出した

「声出したら、殺すよ」

そう耳元で言われ、美優紀は青ざめる


なんなんよ・・・

今日、ホンマに最悪・・・



―――

一方その頃

「で、吉田さん。なんで学校まで来たの?」

前田ががまっすぐに吉田を見つめた

「みるきーに・・・謝りたかってん」

「謝る?」

宮澤は首をかしげた

「別にええやろ。大阪でいろいろあってん」

吉田はぷいっとそっぽを向いた

「それは渡辺さんが学校に来ないのと関係あるのかな?」

篠田が問う

「え・・・みるきー学校行ってないん?」

「そ。今進級できるかの瀬戸際ね」

前田はふっととため息をつく

「なんで・・・ちゃんと行ってると思ってたのに・・・」

吉田はうなだれる

「大阪で何があったか、教えてくれないかな?」

篠田は優しい口調でいう

「いやや。あんたらにゆうたって変わらへんし」

「・・・やれやれ、教師は嫌い・・・か」

篠田はため息をもらす

「おい」

壁にもたれて話を聞いていたサヤカが口を開く

「ええ加減何があったか話せや。全然話進まへんやんけ」

サヤカはつかつかと吉田の方に歩み寄る

「あんた何?みるきーの友達?」

「はぁ?あいつは私のけ・・・」

「わー!そ、そうなんだ、おんなじクラスの子なんだよ!」
   
高橋は契約者というワードを出す前に制止する

「吉田さん、お願いっ!私、渡辺さんの担任なんだ。何があったか教えてくれないかな?学校に来て欲しいんだよ」

その勢いに乗じて、宮澤は手を合わせる

「・・・」

吉田は黙ったまま視線をそらす

「仕方ない。親御さんくるし、説得してもらおうかな」

前田がポツリという

「え・・・みるきーのお母さん来てんの?」

吉田がピクッと反応した

その反応を前田は見逃さなかった

「知ってるの?お母さんのこと」

「・・・」

理事長室はしばしの沈黙につつまれ

「言われてん」

吉田はゆっくり口を開き

「・・・もう、うちの子と付き合わんといてって・・・」

絞り出すように、言った

「なんだよそれ?ひどくねぇか?誰と付き合おうが自由だろうよ」

高橋はカチンとする

「仕方ないんや。私は定時制。かたやみるきーは有名な進学校やで。言われるんも無理ないわ」

吉田は皮肉っぽく笑う

「でも・・・ちょっとうらやましかってん」

「え?」

「私んとこにそうやって言いに来るってことは、少なからずみるきーのこと心配してるってことやろ?」

「・・・」

高橋は眉をひそめる

「私には、そんな心配してくれる人おらへんから」

「どういうことや」

サヤカが訪ねたが

「そこまで言わなあかんの?みるきーと何があったかゆうただけでええやろ」

そういって、吉田ははぐらかし

席をたった

「待ちなさいよ。そういわれても、気になってきたんでしょ?」

前田のセリフに、吉田の体はぴくっと動く

「だから、謝りたかったんでしょ?」

「・・・」

「あなた、友達思いのいい子ね」

前田はにこっと笑った

「うっさいな!」

吉田は顔を真っ赤にしながら部屋を出ていこうとしたが

「まぁ、待ちなさいよ。やみくもに探しても仕方ないでしょ?」

「え?」

「サヤカ、出番」

「は?」

前田のセリフにきょとんとする

「おい、敦子!吉田さんがいるんだぞ!」

高橋は焦って止める

「いいじゃない。一人なら、記憶消すのも体力しれてるでしょ?それに、私こういう子嫌いじゃないの」

前田はくすっと笑った

「はぁ・・・しゃーねぇなぁ」

高橋はため息をつき、サヤカの方に向き直った

「サヤカ、お前には言ってなかったが、私らは契約者の居場所を知ることができる」

「契約者?何それ?」

吉田はきょとんとする

「ま、いいから、いいから。ここで起きたことは他言無用でお願いするぜ」

高橋は苦笑いをし、説明を続けた

「目を閉じて、意識を集中しろ。そして、渡辺さんの姿を思い描くんだ」

「はぁ?」

「とにかくやれ、そうだなーイメージは空から探してるって感じだ。集中力が高まったら、いきなり上空から地上に引き込まれるような感じになって、今渡辺さんがどこにいるかがわかる」

「そんなんゆうても、ここらへんの土地やわからんで」

「大丈夫。たかみなが思念を地図に起こしてくれるから」

小嶋はぽりぽりと口を動かしながらいう

「にゃろはよくこの状況で食べてられるね」

篠田は苦笑いをする

「さ、そういうわけだから、今言ったとおりにやってみ」

「・・・」

サヤカは反抗したくなったが、祖母の顔をがうかんだ

この件であいつが学校に行ってくれるようになるんなら・・・仕方ないか

サヤカは目を閉じ

意識を集中させる

学校の天井を突き抜け、空から町を見下ろす

高橋はサヤカの肩に手をおき、目を閉じ反対の手をスッとかざした

そこには石板が現れ、地図が示される

「な・・・なにこれ?魔法?」

吉田はあっけにとられ、後ずさりする

「そうだよ。ここにいるみんなはちょっと特殊でね。だから、君の嫌いな教員とも少し違うと思うよ」

篠田がその背中を後ろから受け止め、優しく語りかけた

「え・・・」

「みんな心配してるんだ。渡辺さんのこと。そして、君と仲直りできるようサポートしたいとおもってる」

「・・・」

「だから、少し信じてみて」

そういって、ニコッと笑った


「・・・」

サヤカの意識は空を飛び、町を見下ろす

そして、ぐっと引っ張られるような感覚になり

地上へと降りていく

そして・・・

そこには廃墟で椅子に縛られた美優紀の姿が映った

「なんやこれ・・・!」

サヤカはハッとして目を開けた

「どうした?」

「あいつ・・・縛られてた」

「え?」

「ようわからんけど・・・人気のないぼろぼろの建物におった!とにかく危ないんや!」

サヤカは苛立ち、怒鳴る

「待て、地図みろ。お前が降りて行ったのはここだ」

「ここって・・・かなり郊外だね」

篠田は眉をひそめ、携帯で地図が示された地区を検索する

「んー・・・」

小嶋は立ち上がり、篠田の携帯の地図を覗き込んだ

「あ、このあたりってなんか廃旅館があるところでしょ?」

「え?」

「なんか生徒たちが肝試しに行くんだーとか言ってて、やめなさいっていってたの」

「陽菜!そこの名前なに?」

「えーなんだっけ・・・たしか・・・なんとか旅館」

「・・・」

篠田は検索ワードに心霊スポット 旅館と打ち込む

「わかった!三笠旅館だ!」

「よしっ!みんな行くぞ!」

高橋は声を上げる

「待ちなさい、とりあえず玲奈もよばなきゃ。ケガしてたら治さなきゃいけないでしょ」

前田が制止する

「じゃあ、私と陽菜は玲奈を連れていく」

篠田がうなづき

「じゃあ、珠理奈もつれていこう。部活やったるだろうから私声かけてくるよ」

宮澤も言う

「頼んだぞ」

そういうと、高橋は柏木の方を見る

「りょうかーい」

柏木は手をかざし、ふわりと大きな球体を作った

「じゃあ、みんな乗って」

前田の合図にみな、球体の中に入る

「りんちゃん、無理しないでね」

「うん、大丈夫」

2人は見つめあう

「ほら、こんな時でもイチャイチャしないの。さ、吉田さんもいくわよ」

「え?」

「仲直りには、きっかけが必要だから」

そういって、フッと笑った