「・・・っ」

美優紀は薄暗い部屋の中で椅子にくくりつけられていた

逃げようと体をよじるが、椅子の後ろにくくりつけられた腕が痛むばかりだった

「なんなんよ・・・なんでこんな目に・・・」

美優紀は目に涙をにじませながらぽつりと漏らす

「それは、お前が契約者になったからだよ」

「!」

そこには美優紀を拉致した男4人がいた

「なんで・・・そのことしってんの?」

「さぁな。ここで死ぬお前には関係ない話じゃないか?」

リーダー格の男が美優紀に近づき、顎をつかむ

「っ!」

「でも、いいじゃないか。どうせ、消えたいって思ってたんだろ?」

「え・・・」

「学校にも、家にも居場所がない。信用してた友達にも裏切られたんだ。そりゃ、自暴自棄にもなるわな」

「なんで・・・知ってるん?」

「でもな、お前はまだガキだから構ってほしいだけなんだろ?本気で消えたいなんて思ってないだろ?だからさ、今からそう思うようにしてやるよ」

男はそういってニヤッと笑い

ドンッ!

「きゃっ!」

美優紀を床に倒した地面に散らばった木くずやガラスで美優紀のほほには小さな擦り傷ができる

「傷だらけの女を犯すのもいいかもなぁ」

「っ!誰があんたらなんかと」

「おーおー。威勢がいいねぇ」

ドンッ!

男の蹴りが美優紀の腹に刺さる

「がはっ」

目の前が白黒になり、星が飛ぶ

「おいおい、まだこんなもんじゃねぇぞ。いいか、今から抵抗するたびにお仕置きしてやっから。嫌だったらさわぐんじゃねぇぞ」

そういって男たちは美優紀を取り囲み縛っていたロープをほどき床に押し付け

制服を脱がそうとした

「いやっ!いややっ!」

美優紀は抵抗するが、力ではどうにもできない

「おーおーいいねぇ」

「興奮するぜ」

男たちはテンションがあがり、ベルトに手をかける

押さえつけていた男は美優紀の胸に顔をうずめようとした

そのとき、美優紀は近くにあった角材を手に取り

「っ!嫌やってゆうてるやろっ!」

男を殴った

「・・・」

男の顔からは気の破片が刺さり、血がにじむ

「・・・決めた。こいつ殺そう」

男はゆっくり立ち上がり

ナイフを手に取る

「っ!」

美優紀は上体こそ起こしたものの、倒された衝撃で立てないでいた

「死ねよ」

男はナイフを高く振りかざす


こんなことなら・・・アカリンと仲直りしとくんやった

美優紀は目に涙をうかべ、、目をつよく閉じた

「だらぁっ!」

突如、男の顔に蹴りがめり込む

「ぐはっ!」

カランカラン・・・

鈍い音と金属音が響き渡る

「ったく、お前はなんで変な男しかよってこんねん」

美優紀はゆっくりと目を開ける

そこにはサヤカが立っていた

そして、地面にはリーダー格の男が倒れていた

「サヤカ・・・ちゃん」

「ちゃんづけでよぶなゆうてるやろ」

サヤカは顔を赤くしながら口を尖らせる

「みるきー!」

そこに吉田が駆け寄り、美優紀を抱きしめた

「アカリン・・・」

「よかった・・・酷い・・・こんな顔にされて・・・ほかにもなんかされたんか?」

「ううん・・・大丈夫」

「よかった・・・」

そういって吉田がまた強く美優紀を抱きしめた

「アカリン・・・ごめんね。ごめんね・・・」

美優紀はぽろぽろと涙をこぼす

「ううん。謝らんでいい。私の方こそ・・・いっぱい酷いこといってごめん」

「ちっ・・・」

サヤカは照れ臭そうにその光景から目をそらす

「何俺らのことほっぽりだして仲良しごっこしてるわけ」

「な・・・」

サヤカに蹴られた男はゆっくりと立ち上がる

その首は真横に向いていた

「サヤカ!やりすぎだ!」

高橋は焦る

「みなみ、そこじゃないでしょ?なんであの状況で立ち上がれるわけ」

前田は血の気が引く

「そんな程度じゃ、俺は死なねぇの」

そういって男は首を持ち、ぐっと力を入れて戻す

「・・・こいつら、人間じゃない」

「あぁ・・・そういうこったな」

サヤカと高橋はぐっと身構え

「ゆきりん!敦子たちを頼む」

そういって2人は男たちの方に走り出す

ドカッ、バキッ!

鈍い音が響き、男たちは倒れる

殴った部分からは砂が舞った

「・・・ゴーレム?いや、まさか・・・そんなはずは・・・」

高橋は混乱する

「おい!なにぼーっとしてんねん」

サヤカの声にハッとし

「そうだ・・・とりあえずこの場を乗り切らないと」

高橋は我に返り

地面に手をついた

「サヤカ、さがれっ」

サヤカが素早く反応し

地面から尖った無数の石たちが男たちの胸を貫く

そして、動きが停止した

サァァッ・・・

貫かれた体は、砂になり宙を舞う

「やはり・・・こいつらはゴーレムか・・・」

高橋がそうつぶやいた瞬間

リーダー格の男は、ぐっと刺さっていた石を折り引き抜いた

傷はみるみるふさがっていく

「言っただろ?そんなんじゃ死なねぇよ」

そういって男は笑う

「なんで・・・お前だけ・・・ゴーレムが胸を射抜かれて消えないわけがない」

高橋はたじろぐ

ゴーレムは人の形を形成する際に、核がなければいけない

その核は胸にあり、そこを破壊されると人としての形を保つことができないのだ

「俺をこんな土の塊のやつらと一緒にするな。今はまだ一人だけ・・・力が足りないだけだ」

そういって、男は地面を蹴り高橋に向かってくる

「くっ!」

高橋は石の壁を使い攻撃を防ぐが、次々と壊されていく

サヤカも応戦するが何度でも立ち上がってくるうえに、人間離れした力で防ぐこともままならないでいた

「くそっ・・・どないなってんねん」

壁に打ち付けられたサヤカは肩で息をする

「サヤカちゃん!」

風の結界で守られたなかで美優紀が声を上げた

「うっさいわ。黙って見とれ」

無様な格好をみられたくなくて、サヤカはよろよろと立ち上がる

「契約者ひとり守れんで・・・何が炎使いや・・・」

サヤカはぽつりとつぶやく


『いいかい、サヤカ。もしお前が選ばれしものになって、契約者を見つけたときは、しっかりとその人を守るんだよ』

サヤカの脳裏に、シノの言葉がよみがえる

『それが、忠誠を誓う炎使いの生きざまだよ』

「うあああああっ!」

サヤカは勢いよく立ち上がり、男に向かっていく

今、炎は使えない

でも、私は・・・

契約者を守る・・・

それが・・・炎使いってもんやろ・・・ばぁちゃん!

「おぉ、威勢がいいねぇ」

男はサヤカの攻撃を受け流し

ガッ!

「ぐはっ!」

腹に一撃を浴びせた

サヤカはよろめき、地面に倒れこんだ

「サヤカちゃん!」

「だめよっ!ここから出たら危ないわ」

柏木は結界を張りながら美優紀を制止する

「出してよ!ここから出してよ!サヤカちゃんが死んじゃう!」

結界に阻まれ美優紀は空中をドンドンと叩く

「うるせぇな」

男が美優紀の方を向く

「炎使いは殺さねぇよ。でもな、契約者のお前は別にどうなってもいいんだぜ」

にやりと笑い、ゆっくりと足をすすめていく

「待てやっ!」

サヤカは立ち上がろうとするが、足に力が入らない

「いかせるかっ」

高橋はよろよろと地面に手をつき

男の前に尖った岩を突き出した

「ゆきりん、今のうちに逃げろ!」

「うんっ」

柏木は浮きあがろうとした

が・・・

バァァァン!

男が勢いよく岩を崩し

すでに柏木の目の前に居た

「っ・・・」

柏木は息をのむ

「行かれちゃ困るんだよ」

男はぐっと手を伸ばし

結界を破り、柏木の首に手をかける

「っ・・・くぅ・・・」

呪文が詠唱できなくなり、結界がなくなる

「ゆきりん!」」

高橋は叫ぶが、もう力は使えなかった

ここは霊樹からの供給範囲から外れている

高橋はそのことをすっかり忘れていた

視線の先には、前田が肩で息をして倒れ込んでいる

上級レベルの技を使いすぎて、前田の体力を消耗してしまっていたのだ

(しまった・・・)

「離せよっ!」

吉田は果敢にもその男にむかっていく

「なんだ、お前」

男は吉田を軽く振り払い、吉田は地面に打ち付けられる

「アカリン!」

美優紀は吉田にかけよる

「安心しろよ。そいつも消してやるからよ」

そういって、男は柏木を勢いよく放り投げる

「ぐっ!」

鈍い声をあげ、柏木は地面に打ちつけられる

「ゆきりん!」

高橋は上体を何とか起こし、柏木の方に近づく

男は今度は渡辺の腕をつかんだ

「なにするん!」

「これだよ、これ。俺は、これが欲しいんだよ」

そういって男は美優紀の掌に自分の手をかざす

紋章が初めて光った時の赤の色とは違い

漆黒の煙のようなものが浮き上がる

「ぐっ・・・」

手がじりじりと焼けるような感覚におそわれ、美優紀は顔をしかめる

「ぐあぁぁぁっ」

それと同時に声を上げたのはサヤカだった

胸をおさえ苦しむ

「な・・・なにがおきてるんだ」

高橋はその様子に困惑する



その時

シャッ!

窓から何かが飛んできた

カキン!

男の腕が氷り、一瞬指先の力が弱まる

美優紀はとっさに腕を振りほどき

黒い煙は消えた

「おまたせー」

窓の方を見ると

そこには楕円形の水の上に乗っている小嶋たちの姿があった