高橋は散らばった破片を手に取る

手に取った瞬間、破片は土となり崩れてしまった

「・・・」

床に目をやると他の破片も土になっていた

「たかみな、なんだったのあいつ」

篠田は眉をひそめる

「わからない。ただ・・・私らの世界から来た可能性は大いにある」

「え・・・」

「詳しい話しはあとだ、またあんな奴が来たら困っからよ。さっさとここから避難しようぜ」

高橋は立ち上がり、柏木に目くばせをした

そして、球体に乗り皆で一斉に廃旅館を後にした



ジャリ・・・

高橋たちが去った後、一人の人物がその部屋に入ってきた

「やはり・・・王女の力は絶大か・・・いいね。ますます欲しくなった」

そういってニヤッと笑った


―――

「あー疲れたー」

「なんだったのかしらあのゴーレム」

理事長室に戻った高橋たちは、ホッとして雑談をし始める

「まぁ、それはおいおいね…今はこっちの問題解決の方が先だと思うけど?」

篠田は苦笑いをして高橋たちはに言う

高橋たちはの視線は美優紀と吉田の方を向いた

「・・・」

2人は気まづそうに互いをちらりと見る

「あんな戦いに巻き込んじゃったけど、あれがあったから話す気にはなったんじゃない?」

「「・・・」」

2人は見つめあう

美優紀も心配して抱きしめてくれた吉田を無下にはできないが

まだ意地を張り素直になれないでいた


そこに

ドンドン!

勢いよく理事長室のドアが叩かれ

ガチャ!

「失礼します!」

一人の女性が勢いよく入ってきた

「おかあ・・・さん」

美優紀は目を丸くする

「美優紀!あなた、こんなとこにいたの?家にもいないっていうから!」

美優紀の母はつかつかと近づく

「・・・」

その剣幕に美優紀は固まってしまっていた

「まぁまぁ、お母さん落ち着いてください」

宮澤がなだめるが

「あなたは黙っててください!」

「す、すいません」

その勢いに、無意識に背筋が伸びる

「あら・・・あなた・・・」

母は吉田がいるのに気づき、怪訝な顔をする

「・・・」

吉田はうつむき、固まっていた

その表情を篠田は静かに見つめる

「あなた、なんでこんなところにいるの!?」

「そ・・・それは・・・」

吉田は口ごもる

「あなたのせいね?東京でも美優紀に余計なこと吹き込んだんでしょ!?もう2度と近づかないでって言ったのに!」


「え・・・」

その台詞に美優紀は固まる

「ごめんなさい・・・でも、私みるきーが東京に行ってから、連絡も一切取ってなかったんです。でも・・・どうしても・・・謝りたかったんです」

「謝る?そうよね。成績優秀な娘をたぶらかして遊びに連れまわしてたんだから!でもね、あなたのせいで美優紀の人生はめちゃくちゃなのよ!今更謝ったってどうしようもないんだから」

「・・・」

吉田はうつむき、ぐっとこらえていた

「・・・もうそのぐらいに」

篠田が母と吉田の間に入ろうとした、その時

「ええかげんにせぇよ」

サヤカがスッと間にはいる

「な、何よあなた?」

「私はこいつらの・・・友達や」

「サヤカ・・・」

吉田は目を丸くする

「いろんなことゆうてるけどな。そんなにこいつが悪いんか?私はそうは思わんけど」

「あなたに何がわかるのよ!どうせ、あなただってそいつの仲間なんでしょ?美優紀をまた悪いほうに連れて行こうとしてるんでしょ!」

母親は半ばヒステリックになっていた

「うっさいわ!」

その声以上の大きさで、サヤカは叫んでいた

「こいつは、ホンマに美優紀のこと思ってここまで来たんや。そうでなきゃ、あんな危ないとこまでいかへんわ!大体な誰とおるかなんて本人が決めることなんや!黙っておれや!」

「サヤカちゃん・・・」

美優紀の頬から一筋の涙が流れた

「お前もお前や!ちゃんと言え!親なんかな、気づいた時には死んでるんや!ちゃんと自分の足で歩け!」

「!!」

「何よあなた!失礼ね!」

母はサヤカのほうに食ってかかろうとしたが

「その子の言うとおりだよ」

後ろから、落ち着いた声が聞こえ

皆、一斉にドアのほうに視線を向けた

そこには美優紀の祖母がいた

「おばあちゃん・・・」

「やれやれ、血相変えてうちに来たと思えば、美優紀がいないとわかるとすぐに出て行ってしまったから・・・学校に行くんだろうとは思っていたけど・・・少々うるさすぎやしないかね」

祖母はひょこひょこ歩き、中に入る

「先生方すいません、うるさくして」

祖母はぺこぺこと頭を下げる

「い、いえ・・・」

宮澤たちも反射的に頭を下げた

祖母は母のほうに視線を向け

「いいかい。今、美優紀は私が預かってるんだ。おまえさんがとやかく言う筋合いはないよ」

「何言ってるのよ!私は美優紀の母親なのよ!」

「美優紀はあんたの物じゃないよ」

「!!」

「美優紀は昔から手のかからない子でね。大阪の家に遊びに行った時も本を読んでいるようなこだったよ」

祖母は美優紀の方を見つめ微笑む

「小さいころから塾に行かせたり、習い事させたりして・・・本当に賢い子だったよ。でもね・・・いつも、寂しそうだったよ」

「!!」

母ははっとする

「おまえは知らないだろ?私と散歩に行くと、美優紀は歌を歌ったり、鳥や虫を見つけては近寄っていくような好奇心旺盛な子だったんだ・・・なのに、家に居たら途端におとなしくなってね・・・。だか、気づいたんだよ。この子は両親にほめられるように、両親の目に届くところではおとなしいいい子にしなきゃって・・・無意識にそう思っちまったんだろうねぇ」

「おばあちゃん・・・」

「だから、今回のことで東京にくるって聞いたとき、美優紀もやっと自分の意思を出すようになったんだなと思ってうれしかったんだよ。だから、自分がどうしたいのかゆっくり決めたらいいと思って何も言わなかったんだ」

「だからって、黙りすぎよ!美優紀はこのままだと留年しちゃうのよ!」

「・・・それでもいいじゃないか」

「え・・・」

母はたじろぐ

「美優紀はあんたに反抗して、愛されてるかどうか試したかったんだよ」

「!!」

真意をつかれて、美優紀ははっとした

「美優紀」

「・・・なに?」

祖母はにっこり微笑んで

「おまえさんはいい子だよ。どんな風になろうとも、私の孫だもの」

「・・・っ」

美優紀の目から涙がぽろぽろとこぼれる

「だから、言いたいことはちゃんといいなさい。時間はかかってもいいから、納得できるまでね」

「ばあちゃん・・・」

サヤカはその面影をシノと重ねていた

美優紀は袖で涙をぬぐうと、サヤカのほうに近づき

くるっと母の方を向いた

「お母さん。私、ずっと寂しかった。ほめてくれるのはテストでいい点とった時だったし、私はそれを望まれてるから、期待に応えなきゃってずっと思ってた」

「美優紀・・・」

「でも、高校に入ってお父さんとお母さんの中が悪くなって・・・私はどうしたらいいのかわからなかった。そんな時、朱里が私を助けてくれたの」

「みるきー・・・」

「そりゃ、世間では不良って言われるかもしれんけど・・・。私のことちゃんと見てくれた!ホンマになんでも言い合える友達やった!急に、もう会われへんって言われて・・・また世界が暗くなった。私をわかってくれる人がおらんようになったから・・・でも、それもお母さんがゆうたことやったんやね・・・」

美優紀はまっすぐに母を見つめ

「お母さん、朱里は私の大事な友達や。何を言われてもそれは変わらへん」

「美優紀・・・あなた本気で言ってるの」

「うん。私、逃げてばっかりやったけど・・・気づいたんや」

美優紀はちらっとサヤカの方を見て、フッと笑った

「自分の足で、あるかなな」

「・・・」

その顔に、サヤカは見とれてしまった

「だから、もう迷わへん。学校はちゃんと行く。だから、朱里をそんな風に言うんはやめて」

「・・・」

母は何も言い返せなくなっていた

「そういうことのようですので、よろしいでしょうか?」

その間に合わせて、前田がフッと微笑んだ

「娘さんの補習は私たち教員が夏休みに行わせていただきます。まだ、進級は間に合いますよ」

「・・・」

「よろしくお願いします」

母の代わりに、祖母は微笑んで頭を下げた