気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2014年01月

初めての彼女 番外編3 ②

――――


「ふぅ・・・終わったな」


秋元はホワイトボードを消しながらつぶやく


「まったく・・・佐江が途中で居なくなるから対応とか大変だったんだからな・・・」


そういって後ろを振り返り


「って何してんの!?」


思わず叫ぶ


そこには荷物をまとめてそそくさと出て行こうとしている宮澤がいた


「才加ごめん!人待たせてるから!後は任せたっ!」


宮澤は手をぱんっと合わせ、走り去って行った


「おい!佐江!・・・ったく今度メシおごれよなー」


秋元はため息をつくと


再度片づけに取りかかった



――――――


「・・・まだかなぁ」


柏木は腕時計を見る


待っていてと言われてからもうすぐ1時間が経とうとしていた


「すいませんお待たせしちゃって!」


息を荒げながら宮澤が柏木の前に現れた


「いえ・・・」


柏木はちらっと宮澤を見ながら頭を下げた


「あーおなかすいたー。柏木さんは何か食べました?」


「いえ・・・まだですけど」


「じゃあ、もういい時間ですし此処でご飯食べましょう」


「え?あ、あの」


「いいんですって。待たせちゃったし此処はおごりますから」


「いえ・・・でも・・・」


「すいませーん。オムライスと唐揚げプレートお願いしまーす」


宮澤は戸惑う柏木をよそに注文をする


「ここのオムライスおいしいですから。たべてみてください」


そういって笑った


「は、はぁ・・・」


柏木はすっかり宮澤のペースに乗せられてしまっていた



「で、お話なんですけど・・・どのような感じなんですか?」


一瞬にして宮澤の顔が真面目になり


柏木がドキッとしてしまった


「あ、は、はい・・・」


柏木は自分の気持ちを落ち着かせるように一呼吸おいて話し始めた


「私、救急外来で看護師してまして・・・最近、夜勤になると私がいるかどうか確認の電話が入ってきたり、腹痛や腰痛だと言ってひと月に何度も救急外来に来ている人がいるんです」


「そうですか」


「はい・・・直接的なものは無くて、スタッフも私にその人の対応が当たらないように注意してくれているんですが・・・」


柏木はごくりと息をのむ


「この前・・・夜間入り口の前で居るのを見てしまって・・・」


「それって・・・」


「私が勤務が終わる時間帯でした」


柏木はうつむく


「幸い出る前に気づいて職員専用の出入り口から出て事なきを得たのですが・・・怖くて・・・」


「見たのは何時ごろですか?」


「あれは夜6時ぐらいだったと思います・・・」


「・・・夜勤のときは大丈夫なんですか?」


「夜勤は夕方入って朝までいるので大丈夫なんです。わりかし人もいますし・・・」


「そうですか・・・」




「お待たせしました―」


そこに店員が料理をもって現れ


話しが中断する



「よし、じゃあ食べましょう」


宮澤は柏木にスプーンを差し出す


「あ・・・はい」


とっさに柏木は受け取る


「明日日勤ですか?」


「へ?は、はい」


「じゃあ私が見張っときますよ。その男」


「え・・・?」


「私が責任もって担当させていただきます」


そう言うと宮澤はにこっと笑った


「あ、ありがとうございます」


柏木はほっとして頭を下げる


「じゃあ、食べましょ。ねっ」


宮澤はフォークで唐揚げを刺し


「はい、どうぞ」


柏木の前に置かれたオムライスの端に唐揚げを乗せる


「唐揚げもおいしいですから」


そう言って


にこっと笑った


急に真面目になったかと思えば


子供みたいに屈託のない笑顔を見せたり


ころころ変わる宮澤の表情に


「ふふっ・・・」


柏木は思わず吹き出す


「へ?何か変なこと言いました?」


柏木が急に笑ったので宮澤はきょとんとする


「いいえ。何でもないです」


「えーなんでもなくないでしょー」


口をとがらせる宮澤を見ながら



(なんで人気があるのかちょっとわかったかも・・・)


と納得したのだった


初めての彼女 番外編3 ①

初めての彼女番外編になります


設定はこちらからどうぞ http://ameblo.jp/k-re48/entry-11696382323.html



――――


「以上で終了となります」


少し広めの会議室で


スーツを着た背の高い女性2人が


ホワイトボード前で一礼する


会場内にいる女性たちも


一同に礼をした


「では、これから少しの間質問を受け付けますので・・・」


そう言い終わる前に


女性たちが一斉に立ち上がり


前で講義をしている女性たちに駆け寄る


「あ、あのとりあえず一列に並んでください」


「そうですよー。ご協力よろしくお願いします」


2人はあわてて左右に用意してあった


長机に座り


1対1で対応に応じる


女性たちは並びながら順番が来るのを今か今かと待っていた


そんな中その光景を後ろの方で椅子に座ったまま見つめる女性がいた



「ねーどっち派?」


「私はやっぱり秋元さんかなーあの真面目な感じが」


「えー宮澤さんは気さくで話ししやすいよ」


まだ列に並んでいない人のそんな会話が耳に入ってくる



(なんなの・・・これ?)


彼女の名前は柏木 由紀


秋葉総合病院 救急外来勤務であり


小嶋の後輩でもある


以前、患者のなかでストーカーまがいの人がいると言うことを小嶋に相談したら


後日、名刺をもって救急外来に現れたのだ


名刺の裏にはこの講義の日時と場所が記載されていた


たまたま休みだったので参加することができたのだ


講義自体は女性の被害をどう防ぐか、その対処法などの話であり


参考になったのだが・・・


(これ・・・明らかにこの2人目当てできてる人いるでしょ・・・)


柏木は少し顔が引きつった


そして持ってきていた名刺に目をやる



秋葉西署 生活安全課 宮澤 佐江 ・・・


柏木は顔をあげて


質問を受けている左側の方を見た


宮澤の相談を受けたい人の行列を見て


ため息をつく


(・・・秋元さんだっけ・・・あの人は)


宮澤を諦めて


一緒に講義をしていた秋元という女性の方に相談しようかと反対側を見る


そこには宮澤に引けを取らないの列ができていた


(だめだ・・・帰ろう・・・)


柏木はため息をついて荷物をまとめ


会議室を後にした



――――


2階のエントラスから1階に伸びる階段をおり


会場を後にしようとした時


「ちょっとまって!」


上から声が聞こえた


「へ?」


柏木は思わず振り顔をあげた


そこにはエントランスの手すりに身を乗り出している


宮澤の姿があった


「柏木さんですよね!?」


「は、はいそうですけど」


ぽかんとする柏木をよそに


宮澤は階段を下りて


柏木の前に駆け寄る


「あーよかった。違う人だったらどうしようかと思った」


宮澤はにこっと笑う


パンツスーツで緩やかなパーマがかかったショートヘアー


ボーイッシュとはこういうことを言うんだろうなと


柏木は思った


「小嶋さんの後輩なんですよね?」


「へ?あ、そ、そうです」


柏木は宮澤の声ではっと我に返った


「でも、どうして私ってわかったんですか?」


「小嶋さんに1回写真を見せてもらったので」


「1回でわかるんですか・・?」


「うーん。職業病ってやつかなぁ」


宮澤は笑った


「それより、相談があるからきてくれたんですよね?なかなかあの状況では聞けなかったんだろうなぁと思って・・・すいません」


宮澤は頭をさげる


「いえ、いいんです。それにしてもすごい人気ですね・・・」


「うーん。名誉なことなのかどうかは分からないけど、こうして講義を聞きに来てくれる機会になればいいかなとは思ってます。自己啓発にもつながるし・・・」


宮澤はぽりぽりと頭を掻いた


「おーい佐江!早く戻ってこい!」


今度は秋元が2階から叫んでいた


「あーごめん。今行く」


宮澤は秋元の方を向いて手を振った


「頼むぞ―」


秋元はそう言うと足早に会議室の方に戻って行った


「柏木さん。この後時間ありますか」


「へ・・・?はい」


「じゃあ、あそこのカフェで待っててください」


宮澤は会場の向かいにあるカフェを指差す


「終わったら、話しお聞きします」


宮澤はにこっと笑い


一礼して階段を駆け上がって行った



「な・・・なんなの?いったい・・・」


柏木はしばらくその場で固まっていた


あとがき

まりこじ番外編いかがだったでしょうか


書き終えてUPしたときに


優子との三角関係をちゃんと完結させてないことに気づき


急きょ足しました・・・すいません(><;)


0時から4時前までに読んだ方いましたら


もう一度見てもらったら文章追加されてると思いますので


よんでいただけたらと思います


すいません(;´▽`A``


次の番外編3はさえゆきです


これで初めての彼女シリーズは終了します


最後までお付き合いいただけたら嬉しいですm(_ _ )m


初めての彼女 番外編2 ⑬

翌日 秋葉東署―――


「高橋さん今日機嫌いいですね」


大島はコーヒーを差し出しながら尋ねる


「おう!なんてったって昨日麻里子が白バイ隊合格したからなー」


「そうなんですか!?」


「そうなんだよーしかも最後はアドリブまで決めて文句なしの合格だったらしいぜ」


「そうですか・・・」


上機嫌な高橋とは対照的に大島は不安がよぎった


(篠田さん・・・告白したんじゃ・・・)


そんなことが頭の中をぐるぐると回っていた


大島はいてもたってもいられず


昼休みに小嶋の務める病院へと向かった


「あのすいません。にゃ・・・小嶋さんいますか?」


詰め所で身を乗り出して尋ねる


「小嶋さんなら今休憩中ですよ」


そういって看護師が呼びに言ってくれたが


「今どこかに行ってるみたい」


と、すぐに帰ってきた


「そうですか・・・」


大島はうなだれる


「あ、小嶋さん上に上がって行くの見たけど・・・もしかして屋上かな?」


別の看護師が言う


「ホントですか?ありがとうござます」


大島は大急ぎで屋上に向かった



秋風が少し冷たくなってきた今の時期に


屋上に好んでで行く人はおらず


小嶋が一人ポツンと街を眺めていた


「にゃんにゃん!」


大島は小嶋のところに駆け寄る


「え?優ちゃん?」


思わぬ大島の登場で小嶋は目を丸くした


「えへへ、にゃんにゃんに会いたくて来ちゃった」


そう言って笑う


「もー優ちゃんはいつも急だね」


小嶋も笑った


「何見てたの?」


「え・・・なんでもない」


そういって小嶋はくるっと向きを変えベンチに腰掛けた


大島は小嶋が見ていた方向に


秋葉西署があることに気がつく


「もしかして・・・篠田さんのこと考えてたとか?」


「え・・・」


小嶋ははっと顔を上げる


その表情がいつもと違うことを大島は見逃さなかった


「あ、当たりでしょ」


いつものように茶化していってみたが胸はずきりと痛んだ


「・・・麻里ちゃんの試験どうなったのかなって・・・」


ぽつりと小嶋がつぶやく


「え・・・?」


「だって最近全然連絡ないし。どうしてるのかわからないから・・・」


小嶋はうつむく


(にゃんにゃん・・・合格したの知らないんだ・・・)


大島は言いたい気持ちをぐっと押さえて黙っていた


「せっかくだから絶対合格して欲しいじゃない!だから私なりの願掛け!」


小嶋はそういうと勢いよく立ちあがり


「もう寒いから入ろう」


少し照れ臭そうに笑った


「あ・・・」


その表情をみた大島は


すべてを悟った


(そうか・・・あーあー負けちゃったか・・・)


大島はふっと息をもらし


微笑む


そして、今度は大きく息を吸いこみ


「にゃんにゃん!大好きだ―!」


大声で叫んだ


「へ?優ちゃん!ちょっ恥ずかしいから」


小嶋はあわてる


「えへへ。なんか言いたくなっちゃった」


「もーいつも言ってるじゃん」


小嶋はクスっと笑う


「いやー今どうしても叫びたい気分だったんだ。さっ下りよ」


大島は小嶋の背中を押しながら


いつもの明るいテンションで微笑んでいた





1週間後――


小嶋は駅前できょろきょろとあたりを見渡していた


「麻里ちゃん・・・いないなー」


ぽつりとつぶやく


ギプスが取れていからというもの


篠田はバイクに打ち込み

ずっと会えずにいたのだ



そして急に篠田から連絡がきて


この駅前に来てほしいと言われていた


道路沿いに面したショッピングモール前が待ち合わせ場所だった


「ねー彼女一人?」


若い男2人が小嶋に話しかける


小嶋はそっぽを向き無視をする


「ちょっ無視することないじゃん」


「ねーねー」


2人は小嶋に詰めよる


「ちょっ・・・!」


小嶋はなんとか逃げようと身をよじる


「ちょっとそこの2人ー!」


道路の方から声が聞こえた


「あー?なんだよ」


「いっ・・・」


最初は威勢のよかった男たちだったが


すっと引き下がり


小嶋の前から立ち去った


「へ?」


小嶋は道路の方を見る




そこには白バイに乗った篠田の姿があった


「ごめんねー陽菜に用があるのは私だから」


そういってにやっと笑った


「麻里ちゃん!」


小嶋は篠田に向かって駆けだした


「お待たせ」


篠田は照れ臭そうに笑った


「おめでとう。合格したんだね」


「うん。今日が一人で公道デビューなんだ。陽菜にこの姿を見せたくてね。あっでもパトロール中だから内緒ね」


篠田はウインクをした


「あーいけないんだ。でも、嬉しい。ありがとう♪」


小嶋はにこにこと笑っていたが


その目には涙が光っていた


「あのさ。あともう一つ伝えたいことがあるんだ」



そういうと篠田は白バイから下り


ヘルメットを取って


小嶋を見つめる




「・・・陽菜のことが好きだ」




人や車でにぎわう駅前の通りが


小嶋には一瞬にして無音になったように感じた



ただ


篠田の「好きだ」という言葉だけが


頭の中を回っていた



「・・・っ!麻里ちゃん!」


小嶋はまた眼を潤ませ


篠田に抱きついた


「わっ!」


篠田はとっさに小嶋を抱きしめる


駅前の人たちの視線が一斉に2人に集中する


「こ、こら陽菜。みんな見てるから」


篠田はあわてて小嶋を離す


「もー麻里ちゃんってムードを大事にしないんだね」


小嶋はむっとする


「いや、私公務中だし。まずいから」


篠田は苦笑いをする


「公務中に告白してるのは誰よ」


「うっ・・・それは・・・あはは」


篠田は頭をぽりぽりと掻く


「わかった。じゃあ仕事終わったら連絡して」


「え?」


「それなら抱きついてもいいんでしょ?」


「そ、それって・・・」


篠田は目を丸くする


「うん。私も好きだよ」


小嶋は篠田に耳打ちする


「ホント?えーホントに!?」


篠田は思わず叫んでいた


そしてまた人々の視線を集める


「もー麻里ちゃん仕事中」


今度は小嶋が恥ずかしそうに笑った


「あ。そうだった」


そういって篠田も笑った




―――――――


こうして


2人はめでたく付き合うことになり


12月を迎えた


「忘年会?」


篠田の官舎でコタツに入っていた小嶋が首をかしげた


「うん、っていっても女子会みたいなもんなんだけどさ」


篠田はマグカップを2つ持って小嶋の横に座る


「で、なんで私も行くの?」


「いや、宮澤がさ病院で会ったのも縁ですし誘ってくださいよってさ」


「私たちが付き合ってること知ってるの?」


「いや、まだ言ってない。それに課がちがうからそんな言うタイミングもなぁ・・・」


そういって篠田はコーヒーを啜った


「ふーん」


小嶋は少し考えて


「じゃあ私と麻里ちゃんが付き合ってるって言おうよ」


「ぶっ!」


篠田は飲んでいたコーヒーでむせる


「あ、あのね陽菜。言ってることわかってる?」


「だって独身の女子警察官ばっかりなんしょ?」


「まぁそうだけど・・・」


「いーじゃん。行くからにはサプライズを用意しとかないとね♪」


小嶋は楽しそうに笑った


「ふふっまぁいっか」


篠田は笑って小嶋の頬に触れ


そっと唇にキスをした


「じゃあ私の大事な恋人を紹介しますか」


「うん♪」


小嶋はきゅっと篠田に抱きつく


(驚くかなぁ・・・でもまぁいっか)


篠田はくすっと笑って


小嶋を抱きしめ返した



陽菜がいなかったら


白バイ部隊の夢をあきらめていたかもしれない


支えてくれた大事な恋人を


胸を張って紹介しよう



この大切な


初めての彼女を・・・・






Fin









初めての彼女 番外編2 ⑫

「篠田の合格祝いしなきゃなー」



「ありがとうございます」



そんな話をしながら



帰る支度をする


「篠田。ちょっといいか」


本田が篠田に声をかけた



――――


本田は隊員たちから少し離れたところまであるく


「この辺だったな」


「え?」


篠田はきょとんとする


「篠田麻里子!」


「はい!」


名前を呼ばれとっさに篠田は敬礼をする


「白バイ部隊試験合格おめでとう。これからは同じ部隊で頑張ってもらうからな」


そういって手を差し出す


「本田さん・・・覚えててくれたんですね」


篠田は目に涙をためながら


手を差し出した


4年前に白バイ隊に入ると宣言した相手は


本田だったのだ

2人はしっかりと握手をする


「ははっこんなところで宣言されたんだ、忘れるわけないだろ」


「でも、入った時は本田さん何も言わなかったから・・・」


「訓練合格して晴れて白バイ隊員だろ?それまで俺は何も言わないって決めてたからな」


本田は笑う


「でもこれからだからな。気抜いたら許さんからな」


「はい!よろしくおねがいします」


篠田も片方の手で涙をぬぐいながら笑った


「パフォーマンスもするもんだなぁ。今年も志してくれたやつがいるみたいだ」


「へ?」


本田はそういうと手を離し


篠田の後ろを指差した




振り向くと


そこには真新しい制服を着た


女性警察官が立っていた


「じゃあな」


本田はすっとその場を離れる




「あ、あの!」


その女性警察官は篠田に近づく


「今日のパフォーマンス感動しました!私白バイ隊に入ります!」


「ホント?じゃあ待ってるよ。ただし、入ってきたら手加減しないからね」


「はい!よろしくお願いします!」


女性警察官は敬礼する


篠田も敬礼し微笑んだ


「篠田ー!そろそろ帰るぞー!」


遠くで同僚が声をかける


「はい!じゃあ卒業後同僚として会おうね」


「あっ!あのっ!」


女性警察官はあわてて呼び止める


「私、松井珠理奈っていいます!」


篠田は振り向くとにこっと笑い


「秋葉西署勤務 篠田麻里子です。待ってるね」


そういって部隊の方に走って行った


初めての彼女 番外編2 ⑪

篠田は白バイの訓練を毎日欠かさず行った


3か月のブランクは大きかった


そして


車体を倒すと事故のことが頭をよぎった


しかし


それ以上に合格しなければという気持ちが強く


トラウマもなんとか乗り切った



――――――――


着々と訓練を続け


10月まであと1週間となった


篠田は車庫でバイクのメンテナンスを行っていた


「篠田」


「はい」


そこに本田が現れる


篠田は急いで立ち上がり


ぴしっと背筋をのばした


「訓練の試験日を発表する」


「はい!」


「10月3日だ」


「え・・・その日はでも・・・」


篠田はためらう


「警察学校での白バイ隊の演技が卒業試験だ」


そういって資料を手渡す


そこにはパフォーマンスの手順と配置が載っていた


「え・・・」


篠田は固まる


最後の見せ場のソロ演技に篠田の名前があったのだ


「ほ、本田さん!」


篠田は顔を上げる


「それで決定だ。ちゃんと練習しとけよ」


「で、でも・・・」


「警察学校でパフォーマンスするんじゃなかったのか?」


「・・・本田さん」


篠田はハッとする


「じゃあな」


「ま、待ってください!」


去ろうとする本田を篠田が呼び止める


「この技の指導をお願いします!」


「・・・やるからには手を抜かないからな」


本田はふっと笑い


ヘルメットを手に取った


――――――――


そして


運命の日がやって来た



篠田は4年ぶりの警察学校を眺める


「懐かしいな・・・」


そう呟いた


あの日白バイ隊になると決意した想いが蘇る


(絶対成功させる!)


篠田はそう意気込んだ



警察学校生たちが集まりだし


駐車場の特設ステージ前はがやがやとにぎわっていた


いよいよパフォーマンス開始となった


豪快なエンジン音を響かせながら


隊員たちはパフォーマンスを行う


その技術に生徒たちの歓声があがる


そしていよいよ篠田の番になった


エンジン音を響かせながら


勢いよく走りだし


車体を倒しながらのS字カーブを描く


その速さは骨折する前と比べ物にならなかった


着実に演技をこなし


大きな円を描きながら周る


そしてその円は小さくなり


後輪から煙を巻き上げ


キィィィィッ!


勢いよく止まった



アスファルトから煙が上がり


その煙が晴れた時


おーーーーーーー!


っとひときわ大きな歓声が沸いた


そこにはタイヤのブレーキ痕で


丸が描かれていた


篠田はヘルメットを取りにこっと笑った



盛大な拍手で白バイ部隊のパフォーマンスは終了となった



「篠田―!やってくれるじゃねぇか!」


「見違えたよー!」


同期や先輩たちが篠田を囲む


「えへへ・・・特訓の成果がでました」


篠田は照れ臭そうに笑う


「篠田!」


その声で篠田を囲んでいた人だかりがすっと2つに割れた


そこには本田が立っていた


すたすたと篠田の方に歩く


「まったく・・・最後に急なアドリブ入れやがって・・・」


本田はぽりぽりと頭を掻いた


「すいません。でも試験・・・合格ですよね?」


篠田はにっと笑った


「それで丸ってか?ははっ大した奴だぜ」


本田は豪快に笑った


いままでそんな本田の顔をみたことのなかった隊員たちはぽかーんとしていた


「合格だ!公道走ることを許可する!」


「ありがとうございます」


篠田は一礼した


「やったな篠田―!!」


また隊員たちが篠田を囲む


「ただし!」


全員が一斉に本田の方を向く


「篠田のタイヤ、新品に変えとけよ」


そういって笑った


「「はい!!」」


隊員達は敬礼をして


また歓喜の声をあげたのだった


初めての彼女 番外編2 ⑩

大島が退院した


1週間後


篠田も退院を迎えた



無理せずリハビリを続け


骨も順調に回復していた



「荷物これだけか?」


「うん。ごめんねたかみな。付き合わせちゃって」


「いいんだよ。それに来たがってたやつもいたし・・・」


そういって高橋は苦笑いをする


「でさーにゃんにゃん今度デートしない?」


「えーその日は夜勤だからなぁ・・・」


その視線の先には荷造りそっちのけで話をする小嶋と大島の姿があった


「こら、優子そろそろ行くぞ」


「は、はい」


大島は高橋に呼ばれて慌てて荷物をもつ


「麻里ちゃん。改めて退院おめでとう」


小嶋は篠田の前でにこっと笑った


「ありがとう。陽菜」


「診察帰り良かったら顔出してね」


「うん。リハビリにも来るからまた寄るよ」


篠田もにこっと笑う


「さ、行きましょう!行きましょう!」


そんな様子が面白くなくて大島は急かす


「おう、じゃあ行くか」


そう言って高橋と大島は荷物を持って部屋を出る


「・・・陽菜。」


「何?」


「私、絶対合格するから」


「うん。麻里ちゃんならできるよ」


「ありがとう」


篠田と小嶋は見つめ合う


「ほらー篠田さん早く行きますよ!」


大島が勢いよく扉を開ける


「う、うん。今行く」


そういって篠田はあわてて部屋を出る


小嶋もそれに続いた


「じゃあ、気をつけて」


エレベーター前で小嶋が手を振る


「うん。それじゃあ」


3人は手を振りエレベーターの扉が閉まった




「篠田さんも退院したし、これで五分五分ですね」


「な・・・あのね、そんなにあからさまに・・・」


大島は闘志むき出しのため


篠田は苦笑いする


「なんだなんだー?何の話だー?」


高橋は不思議そうな顔をする


「「いや、別に」」


2人の声が重なる


「なんだよーホントに相性いいなー」


2人の間でライバル関係ができていることなど知る由もない高橋はにこにこと笑っていた



―――――――――


それからギプスが外れるまでの3ヶ月間


篠田はリハビリを続けながら


通院をしていた


病院に行った際には小嶋に会いに行ったりもしていた



そして


8月を迎え


ついに篠田のギプスが外された


「うん。もう普通に生活してもらっても大丈夫ですよ」


レントゲンと篠田の足を見て医師が言う


「ホントですか!?あ、先生・・・ちなみに走ったりするのも大丈夫ですか?」


「骨はくっついてきてるから大丈夫だけど・・・ただいきなり走ると痛いと思うからほどほどに」


「はい。ありがとうございます」


篠田は嬉しそうに一礼した


―――――


篠田はその足で


西署に向かった


そして


すぐさま白バイの練習場に足を運んだ


車庫には篠田の白バイがポツンと残されていた


「・・・長いこと待たせちゃったな」


そう呟きながらバイクに触れた


「ん?」


3か月も放置していたのに


バイクは埃ひとつかぶっていなかった


そして、転倒時に傷ついたところも修復され


綺麗になっていた


「おー篠田じゃないか。もう足大丈夫なのか?」


パトロールから戻ってきた同僚が話しかけてきた


「あ、うん。今日ギプス外れたから来たんだ」


「そうか、でも無理すんなよ」


「でも練習しないとさ・・・それより、このバイク・・・」


篠田は自分のバイクに目をやる


「あぁ、綺麗に治ってるだろ。本田さんが修理依頼してさ」


「そうなんだ・・・」


「感謝しろよ。毎日手入れだってしてたんだから」


「そうなんだ。みんなにお礼言わないと・・・」


「ちがうよ。本田さんだよ」


「へ?」


篠田は目を丸くする


「手入れは本田さんがしてたんだ。それに定期的に乗らないと調子悪くなるからってメンテナンスまでしてたんだぞ」


「本田さん・・・」


「あ、俺が言ったのは内緒だからな!」


そういうと同僚は手をふってさっていった


「本田さんが・・・手入れを・・・」


そう呟きまたバイクに触れる


篠田は目頭が熱くなった


ぐっと袖で目をぬぐい


かっと目を見開いた


その目は決意に満ちていた


(本田さんは信じてくれてるんだ・・・期待にこたえないと)


そしてバイクにまたがり


走り出した





「・・・やる気はあるようだな」



コースを走る篠田を


物陰から見ていた本田はそう呟くと


そっと去って行った


その顔には笑みがこぼれていた



初めての彼女 番外編2 ⑨

「・・・大丈夫?」



「・・・」



篠田は何も言わず小嶋をぎゅっと抱きしめた



「ま、麻里ちゃん?」



小嶋は驚く




「・・・怖いんだ」



ぽつりと篠田がつぶやく



「え・・・?」



「・・・このままじゃ・・・白バイ部隊から外されちゃう・・・」



肩を震わせながら篠田がぽつりぽつりと言葉を漏らす



「麻里ちゃん・・・」



小嶋は篠田の背中に手を回し



きゅっと抱きしめた



「麻里ちゃんなら大丈夫だよ。だから、今は無理しちゃ駄目」



「陽菜・・・」



篠田は小嶋を見つめる



「だから看護師の言うことは聞きなさい」



小嶋は篠田のおでこを人差し指でつついた



「ははっなにそれ」



「えへへ、やっと笑ってくれた」



「え?」


「ここのところ麻里ちゃん顔こわばってたから」



「陽菜・・・ずっと見ててくれたの?」



「だって麻里ちゃんは特別なんだもん」



「え・・・」



篠田の胸はどくんと跳ねる



「それって・・・」



篠田はどきどきしながら口を開く



「だって麻里ちゃんは私の初めての担当患者さんなんだもん♪」



「へ?」



篠田は予想外の答えに目が点になった



「あー呆れてるでしょ。私、整形外科初めてだったから回復過程とか、リハビリとかいろいろ勉強したんだからね」



小嶋はむっと頬を膨らませる



「・・・ははっ」



篠田は思わず噴き出す



(ホントにこの人は面白いなぁ・・・・でも・・・そういうところがいいんだよな)




「じゃあ、看護師さんの言うこと聞いてほどほどにします」


「そうそう♪もう少ししたら歩くのも痛くなくなってくるからね。急がば回れって言うじゃない?治療も焦っちゃ駄目だよ」


「はーい」


そういうと篠田はベッドに入る


「じゃあ私も仕事に戻るから」


そういって小嶋は扉に手をかけた


「陽菜」


「なに?」


篠田に呼び止められて振り返る


「ありがとう・・・」


少し照れ臭そうに篠田は笑った


「いいよ♪麻里ちゃんだもん」


小嶋はにこっと笑い部屋を出て行った


篠田はしばらく扉を見つめ



「まいったなぁ・・・好きだよなこれって・・・」



自分の気持ちを再確認するように


ぽつりとつぶやいた




――――――――


翌朝


「にゃんにゃーん」


ナースステーションに大島が現れる


「優ちゃん。今日退院だねおめでとう」


「うん。退院前ににゃんにゃんに会っておきたくてさ」


大島はにこにこと笑う


「退院しても無理しちゃ駄目だよ」


「うーんそれは保障できないなー」


「駄目だよー優ちゃん生傷絶えないんだから。去年なんて何回救急外来に来たと思ってるの?今回だって下手したら死んでるんだよ」


「あははー・・・」


大島はぽりぽりと頭を掻く


すぐに熱くなる大島は


現場でも一番に飛び込んでいくので


犯人検挙の際に怪我をすることが多かったのだ


怪我をして運ばれるのが決まって


この病院の救急外来であり


そこで小嶋と知り合っていたのである


「でも怪我のおかげで、こうしてにゃんにゃんに会えたから私はいいんだけどさ―」


大島は笑う


「もー」


小嶋は口をとがらせながらも大島らしい答えだと笑った


「また時間あったらご飯行こうよ。連絡するから」


「うん」


「じゃあ、篠田さんにも挨拶してくるから」


大島は小嶋に手を振って篠田の部屋に向かった



―――――――


「篠田さん失礼します」


扉を開けて大島は一礼する


「大島・・・どうした?」


篠田はベッドに腰をかけて足を上げる筋トレをしていた


「もーいいかげん優子ってよんでくださいよー」


「あ、うん。じゃあ・・・優子、どうしたの?」


少し照れ臭そうに尋ねた


「篠田さん。今日私退院します」


「そうか。おめでとう」


篠田はにこっ笑った


そんな篠田の表情をみて大島は驚く


「な、なんだよ?」


「いや・・・今日は表情がやわらかいなーと・・・」


「はぁ?なにそれ」


篠田は笑う


「いや、前まで顔が硬かったんで・・・つい。すいません」


「いいよ。事実だし。焦っても骨がくっつくには時間がかかるから無理はしないことにした」


「そうですか。・・・それ、にゃんにゃんに言われたでしょ?」


「え・・・?」


篠田は小嶋の名前が出てきて驚く


「あーやっぱり。すごいなぁにゃんにゃん」


大島は笑う


「ま、まぁ。病院では言うこと聞かなきゃな・・・」


篠田は照れ臭くなってぶっきらぼうに答える


「もー照れちゃって。わかってますよ」


「な、なにが?」


「でも私、負けませんから」


「へ?」


「にゃんにゃんのことに関しては先輩後輩関係ありませんから」


大島は真っ直ぐに篠田を見つめた


「・・・」


篠田は大島の瞳から目をそらすことができず固まってしまった


「では、失礼します」


大島はにこっと笑って部屋を出て行った




篠田は大島の瞳がしばらく頭から離れなかった


そして


急なライバル宣言が頭の中でぐるぐると回り続けていたのだった




初めての彼女 番外編2 ⑧

それからというもの


篠田はリハビリにより一層精をだすようになった


リハビリ室に通いつめ


リハビリ室が使えない時間は病棟の廊下をずっと歩き回っていた




時刻は21時前


その日も篠田は病棟の廊下を歩く


篠田の手に持っているものは


松葉杖から歩行器に変わっていた





「・・・」


小嶋はそんな様子をナースステーションで横目に見ていた


小嶋の前には篠田のカルテがあった


『職場復帰の意思強く、本日受傷側の体重制限を解く』


と書かれていた


最近、篠田が過剰にリハビリをしているので


骨に負担がかからないよう


まだ体重をかけてはいけないと数日間言い続けてきたのだ


今日はついに先生も根負けしたらしい


(あの様子じゃ、今日もずっと歩き回ってたんだろうなぁ・・・・)


小嶋は深いため息をつき


廊下に出た


「麻里ちゃん。消灯時間なんだけど」


廊下を歩いている篠田に後ろから声をかけた


「あ・・・うん。あと1周したら部屋に戻るよ」


篠田は後ろを振り向き苦笑いをした


「だめ。そんなこと言って1周じゃ終わらないでしょ。部屋に戻って」


小嶋はピシッと言う


「・・・わかったよ」


篠田はしぶしぶ部屋に戻った




――――


22時になり


小嶋がゆっくりと篠田の部屋のドアを開ける


篠田は布団にくるまり


扉とは反対側の方を向いていた


「・・・麻里ちゃん。痛み止め置いとくね」


そういって机の上に痛み止めを置いた


「・・・」


篠田の反応は無かった


小嶋はそれ以上何もいわず


そっと部屋を出て行った



0時になり


小嶋は部屋の巡視を行っていた


篠田の部屋に入ると


篠田がベッドに腰掛けていた



「麻里ちゃん・・・?」


「・・・どうして?」


篠田が口を開く


「え・・・?」


「どうして・・・痛いってわかったの?」


小嶋は自分が薬を置いた位置に目をやる


そこには飲み薬の殻が置いてあった


「・・・あれだけ歩き回ってたら痛くて寝れないでしょ」


そういってゆっくり篠田に近づく


篠田は小嶋の方を見ず、うつむいたままだった


うつむいた篠田を前に小嶋は口を開く

「・・・麻里ちゃん。なんでそんなに焦ってるの?」


「別に・・・」


「別にじゃないでしょ。リハビリも徐々にしないと限度を超えると逆に痛めるし、治りも悪くなるよ」


「陽菜にはわかんないよ」


うつむきながらぽつりと言った


「・・・ちゃんと話して、麻里ちゃん。」


「・・・関係ないよ」


そういって立ち上がり


小嶋を避けて部屋を出よう


踏み出した瞬間


「っ!」


左足の痛みにバランスをくずす


「麻里ちゃん!」


小嶋はとっさに篠田を支え


抱き合う形になった


初めての彼女 番外編2 ⑦

「どうぞ。」


病室に戻った篠田は高橋と大島に缶コーヒーを差し出した


「お、サンキュー」


「ありがとうございます」


高橋と大島はパイプ椅子に座り


篠田はベッドに腰掛けた


「改めまして、秋葉西署 交通課の篠田麻里子です」


篠田はにこっと笑った


「秋葉東署 刑事課 大島優子です!先ほどは失礼しました」


大島は椅子から立ち、勢いよく頭を下げ


そしてわき腹を押さえて静かに椅子に座った


「だから、勢い良すぎなんだって」


高橋は笑う


「だって・・・まさか先輩だと思わなかったんですもん・・・」


大島は痛みをこらえながら言う


「でも東なら去年まで私いたのに全然知らなかったよ」


篠田は首をひねる


「あーそれはな・・・竹内さんの下についてたからなんだよ」


高橋は苦笑いをする


「あー・・・それで」


篠田は納得してしまった


竹内刑事は都内の警察官の間では有名な敏腕刑事で


常に事件のために走り回っているため


署内にはほとんどいないのだ


そのため竹内刑事とペアを組むと


年内は数える程度しか署内で仕事をしないという噂話まで飛び交うくらいであった


「それに去年は私も大阪に出張に行ってたから、麻里子に紹介したくてもできなかったんだよ」


「あーそうだよねー。それに東は大きいから女性警察官同士の交流もないからなぁ」


高橋と篠田は2人でうなづいた


「あ、西ってことは私の同期に会ってませんか?」


大島がずいっと身を乗り出す


「もしかして・・・生活安全課の?」


「そうです、宮澤と秋元です。」


大島はにこにことうなづいた


「そうなんだ。この前お見舞い来てくれたよ」


篠田はこの同期はキャラ濃いなぁと密かに思ったのだった


「とにかく、署は違うけど仲良くやっててくれよ。同じ入院患者だしさ」


高橋は笑う



「篠田さんは入院期間どれくらいなんですか?」


「んー・・・まだわかんないんだよね。足に体重かけてもよくなったら自宅療養可能らしいんだ。リハビリには通わないといけないけど」


「そうなんですかー」


「優子はまだ退院できないのか?」


高橋は尋ねる


「私はあと1週間くらいらしいです」


「良かったじゃないか」


高橋は嬉しそうにしていた


「でも、まだ朝晩は抗生剤の点滴続いてるから採血結果によって変わるらしいです」


「そうかーまぁ退院したからってすぐに復帰できんしな。ゆっくり休んどけ」


「なにいってんですか。速攻現場復帰ですよ」


大島は高橋の方を見てぐっと親指を立てた


「おいおい、無茶すんなよ」


高橋は笑う


「あ、そろそろ戻んないと。では私はこれで失礼します」


大島は一礼すると部屋を出て行った


篠田と高橋は手を振りながら見送った




「元気な後輩だね」


篠田は笑った


「まぁな。威勢が良すぎるのが玉にきずなんだが、素質はあると思うよ」


高橋は腕を組みながらにやっと笑う


「それに、あの生命力。まさに刑事向きだな」


「そんなにひどかったの?」


「怪我自体は浅かったんだが・・・傷がもとで1週間くらい高熱が続いてな。集中治療室にいたんだ。さすがに意識もうろうで、どうなる事かと思ったぜ」


高橋は思い出しながら頭をぽりぽりと掻いた


「そうなんだ・・・」


「ま、今はご覧の通り元気だから。見舞いにいってもいないことが多いからリハビリに精出してると思ってたんだが・・・。まさか整形外科に居ると思わなかったなぁ」


「此処の看護師さんと仲いいのかな?」


篠田は大島と小嶋の関係が気になり尋ねる


「んー・・・私も詳しいことはわかんないんだ。すまん」


「そうなんだ」


「じゃあ私もそろそろ帰るな。リハビリ頑張れよ―」


そう言って高橋も病室を後にした





静かになった病室で


篠田はベッドに寝転がる


「・・・」


天井を見つめながら


大島と小嶋の関係を思い出していた


「・・・大島にとってここに来ること自体がリハビリなんだろうな」


ぽつりと呟く


どうみても


大島が小嶋のことを好きなのはわかった


そして


このもやもやした気持ちは・・・




コンコン



その時


部屋のノックが聞こえた


篠田はがばっと身を起こし


「ど、どうぞ」


慌てて返事をした




そこに現れたのは


白バイ部隊隊長


本田高志であった


訓練中、篠田を怒鳴っていた上司である


「調子はどうだ?」


「なんとか・・・」


篠田はおずおずと答える


「・・・今年入った隊員はみんな合格して公道を走ってるぞ」


「・・・そうですか」


「・・・足の状態を考えて、来年度入る隊員ともう一度訓練を受け直せ」


「・・・っ」


篠田は言葉につまる


「・・・話しはそれだけだ」


本田はくるっと向きを変え、扉の方に歩き出した


「待ってください!」


篠田は叫ぶ


本田は足を止めたが


篠田の方を振り向かなかった


「今年・・・チャンスを下さい!足が治ったらすぐにバイクに乗ります!・・・だからっ・・・」


篠田の声はくぐもる


気づけば目に涙がたまっていた


来年ということは


もう一度白バイ部隊に入るための試験を受け直せということだと


怪我をしている篠田に再度上司が推薦してくれる可能性は低く


今年を逃してはいけないと


篠田は焦っていたのだ


「篠田。バイク事故した奴は、事故の影響でバイクに乗るのが怖くなるんだ。大型車なら余計にな。」


「・・・大丈夫です!乗れます!」


「それに、入院したら筋力だって落ちる。バイクを乗りこなすには時間がかかる」


本田は冷たく言い放つ


「それでも・・・諦めたくないんです!」


篠田は松葉杖を使い


よろよろと立ちあがり


「お願いします!」


頭を下げる


床にはぽろぽろと涙が落ちる


「・・・10月。それ以上は待てん」


本田はそう言うと


篠田の方を振り向かず出て行った


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