気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2014年03月

明日から

3月も終わりですね(^∇^)


早いもんです


最近はアクセス数も増え


いいねの数も増えました


ありがとうございます(*^▽^*)


さて、明日から4月ですね


特に私としては変わりは無いですが


本日、急に仕事が入りまして・・・(;´▽`A``


少し更新できません



まぁ「あの日の約束」的にも第1章が終わったみたいな感じになっていますので


もう少しお待ちください(><;)


今日はゆっくりNMBのDVDコンプリートボックスを見ようと思っていたのに・・・


なんか辛い(iДi)


少し見てテンション上げよう・・・(・∀・)


あの日の約束22

放課後――


「はい、今日から剣道部に入部する2人紹介しまーす」


岸野が部員たちを集めて話す


「えっ!ホンマですか!!」


「何年生ですか?」


山田と福本は岸野に詰め寄る


そんな様子をにこにこと渡辺は見ていた


「落ち着け!とりあえず入ってもらうわ。おーい」


岸野は3年生をなだめながら道場の入り口のほうに声をかける


「「失礼します」」


そこには


上下紺色の道着を着た横山


上下白色の道着を着た山本の2人が並んだ


「2年の山本彩です」


「同じく2年の横山由依です」


そう言って2人は頭を下げる


「・・・・きゅ・・・救世主やー!!」



山田は2人の前に走り歓喜の声を上げる


「入ってくれてホンマにありがとう」


山田はにこにこと横山の手を握る


「は・・・はい」


思わぬ歓迎に横山は照れてしまう


「山本さんって・・・あの山本さん?中学のとき有名選手だった・・・」


福本が山本を見て訪ねる


「そうでーす」


渡辺は山本の横に行き


腕にくっつき、にこにこと笑った


「もーはなれーや」


「ええやんかー彩ちゃんの袴姿はやっぱりええな―♪しかもショートになったからちっちゃいころ思い出すわ―」


そういって渡辺は山本が振り払おうとするのをもろともせず腕にしがみついていた


「はいはい夫婦漫才はそれぐらいにして、皆自己紹介しーや」


岸野が手をパンパンとたたく


「だ、誰が夫婦漫才や!」


山本は顔を赤らめて突っ込んでいた



めいめいに自己紹介をし


練習を行うことになった


そして


岸野が道着に着替え道場に入ってくる


「あれ、岸野先生もするん?」


山本は不思議そうな顔をする


「せやで、部員少ないから入ってくれるねん」


隣で渡辺が言う


「ふーん。そうなんや」


「ちなみに岸野先生は剣道3段やで」


「えっマジか」


山本は驚き


岸野が面を付けている姿を見る


「それであの肩幅なんか・・・」


ぼそっと呟く


「こら山本!誰が肩幅でっかマンやねん」


岸野がビシッと山本を指差す


「うわっ!そんなんゆうてないやん!」


山本は慌てる


「彩ちゃん。岸野先生に肩幅のことゆうたらあかんで」


渡辺はこそっと耳打ちをする


「・・・今のでわかったわ。もっとはよ言えや」


山本はひそひそと話しをする


「・・・いらんこと言わんと早よしいや」


山本の隣で横山は淡々と面を着けていた



――――

「いやー横山先輩ほんま強いっすねー」


「いや・・・そんなことないで」


「もーまたそんな謙遜して!これで天王寺に勝てるで!」


「いやいや、私らも頑張らなあかんから」


更衣室で練習を終えた部員たちがワイワイと騒いでいた


「・・・」


山本は山田、福本、小笠原に囲まれている横山をぼーっと見ていた


「彩ちゃん?もしかして拗ねてる?」


そんな山本を渡辺が横から覗き込む


「別にそんなんちゃうわ。あいつの強さは私が一番知ってるからな」


「ふーん・・・」


「・・・よかったなって思っただけや」


「え?」


「なんか入る前に迷惑ちゃうんかとかゆうてたから馴染めるか心配だったんやろうなっておもてな」


「ふーん・・・彩ちゃん優しいやん」


「はぁ?いきなり何ゆうてんねん」


山本は照れてそっぽを向く


「えへへー私は彩ちゃんのことちゃんとわかってるよ♪」


渡辺はきゅっと山本の腕に抱きつく


「うっさいわ!ほらもう帰るで」


山本はさらに赤くなる


「はーい。みんな帰りましょー」


渡辺は横山たちに声をかけ


皆は部室を後にした


ワイワイとたわいもないことを言いながら


下校する


「・・・」


横山はふと立ち止まり


山本たちをの背中を見ていた


(これが・・・部活仲間ってことかな・・・)


「おい!ゆいはん!何してんねん」


山本が振り向き声をかける


「そうやでーはよせなおいてくでー」


隣で渡辺がにこにこと笑う


他の部員たちも立ち止り


横山が来るのを待っていた


(・・・里歩。わかってくれる人たち見つけたで・・・)


横山はふっと笑い


「・・・すまん、今行くー」


そう言って


みんなの方に向かって走り出した


あの日の約束21

「ほんまにありがとうな」


「ええよ。今日はゆっくり休んどき」


電車から降り


帰り道を歩きながら話す


「せや、今度はうちの道場きてくれんか?父さんにも紹介するわ」


「あぁ、いつもこっそり道場使わせてもらってたからちゃんと挨拶せないかんな」


横山はにっと笑う


「う・・・ええねん。たぶんばれてるだろうけど・・・」


山本はバツが悪そうに呟く


「ははっ。ほなまた明日」


横山はそう言って分かれ道で手をふる


「おう、またな」


2人はそう言って別れた


「・・・さ、ちょっと気合いいれなあかんな」


そういって山本はある場所に足をすすめた






その頃


渡辺は自宅でふくれっ面で携帯を眺めていた


山本からの連絡がないのだ


何度も何度もメールを送っても


『心配せんでええ。生きとるわ』


としか返ってこなかった


「せめて何処におるかゆうてよ・・・家にもおらんし・・・」


渡辺は呟く


ピリリリリ・・・


その時


携帯が鳴る


渡辺は慌てて通話ボタンを押す


「もしもし?」


『みるきーか?』


いつもの声に渡辺はほっとする


「もーどこいってたん!彩ちゃんのあほ!」


『な・・・開口一発そんなん言わんでええやんか』


「心配したんやから!またどっかで怪我でもしてたらとかおもたんやから!」


2年前の事故以降


渡辺は山本と連絡が取れないとすぐに心配になるのだ


『あーもう。すまんかった。なぁちょっと外でてきてくれるか。もうすぐそこまで来てんねん』


「うん。わかった」


そう言うと渡辺は電話をしながら階段を下り


玄関を開けた


外は薄暗くなっており


外灯が点々と道を照らしていた


「彩ちゃん?どこー?」


携帯を手に左右に首を振る


『こっちや』


携帯の声とリンクして直接耳に入ってくる声が聞こえた


渡辺は右を向く


「え・・・」


渡辺は思わず携帯を耳から外す


外灯に照らされた山本は


長かった髪をバッサリ切り


ショートカットになっていたのだ


そして防具袋と竹刀を持っていた



「・・・っ!彩ちゃん!」


渡辺は山本の元に走り抱きつく


「わっ!ちょっ!ぼ、防具背負ってるんやからそんなに勢いよく来んなや」


山本は転びそうになるのを必死で耐え


結果、渡辺を抱きしめる形になった


「・・・連絡せんでわるかったな」


「ううん・・・ええねん。彩ちゃん・・・お帰り」


「・・・あぁ。ただいま。・・・遅くなってしもてごめん。」


「ホンマやで。2年待ったわ」


渡辺は涙をぬぐいながら笑う


「待たせた分、ちゃんと練習してきたねんで。」


「もしかして・・・ゆいはん?」


「そうや。稽古付き合ってもらっててん。明日、一緒に入部届け出すわ」


「ホンマ?ホンマに!?」


渡辺は山本の体を揺らす


「ちょっ・・・落ち着けって!」


山本は渡辺の動きを止める


「そうでなかったら、髪や切れへんわ」


「彩ちゃん・・・」


「打倒天王寺や、そんで全国目指すで!」


「うん!」


渡辺は再び山本に抱きつく


「もーわかったから!はなれーやー」



そう言う山本も照れ臭そうに笑っていた



――――――――


次の日


「岸野先生」


「ん?」


職員室でコーヒーを飲んでいた岸野の前に


山本と横山が姿を現す


「おー山本えらいすっきりしたやないか」


岸野が山本のショートカットをみて言う


「ええまぁ」


山本は照れ臭そうに頷く


「で、なんや?2人してまた授業に出んとか言いに来たんか?」


岸野はそう言ってコーヒーをすすった


「いや、授業には出ますよ。なぁ。」


山本はそう言って横山の方を見る


「そうです。これ、出しに来ました」


そういうと2人は


岸野の前に入部届けを突き出した


「・・・」


ボタボタボタ・・・


「わー先生たれてるたれてる!!」


山本は焦る


「あ、あぁすまん。って熱っ!!」


岸野は唖然として


飲んでいたコーヒーを滴らせていたのだ


「まぁ部員も少ないし入ってくれて嬉しいわ。ほな今日の放課後顔合わせな。」


慌ててティッシュで拭きながら答える


「よろしくお願いします」


そういって2人は一礼して職員室を後にした


「どうやったー?」


職員室前で渡辺が出迎える


「あぁ出して来たで」


「なんかめっちゃ驚かれたわ」


そういって山本と横山は笑う


「えへへーなんか嬉しいなー。はよ放課後ならんかな―」


渡辺はにこにこと笑う


キーンコーンカーンコーン・・・


「あ、やばっ」


「・・・その前に授業やな」


そう言うと3人は廊下を走る


横山と山本は足が早く渡辺はその2人を追う形になった


「・・・さすがにもうサボらへんようになったんやな」


「だってそうせな部活でれんやんか」


「・・・今回のテストが赤点でも出れんらしいで」


「うそっ!マジか!?」


そんな会話を後ろで見ながら


渡辺は微笑み


「えーい!」


間に入り2人と腕を組んだ


「わっ!」


「みるきー!びっくりするやろ!」


とっさのことに2人は驚き渡辺の方を見る


「えーやん。2人とも足早いから引っ張って―」


渡辺はにこにこと笑う


「・・・しゃあないなぁ。とばすで!」


山本は横山の方をみる


「ははっ。そうしよか」


横山も笑い


3人は廊下を駆け抜けていった






「あーあ。今は廊下は走るなって言うんは野暮やなぁ」


岸野は職員室の入り口から3人を見てふっと笑った





あの日の約束⑳

それから


土日はみっちり横山の道場で稽古をした


師範の指導で


なんとか上段も板についてきた


「指導ありがとうございました」


山本は師範の前に正座し礼をした


「なかなか様になってきたな。また、週末は由依と一緒に帰ってきたらええわ」


そういって師範はにこにこと笑う


「はい!ありがとうございます」


山本はそういってまた頭を下げる


「そうや由依。野菜もってかえってくれ」


「うん。わかった。彩、ちょっと先に荷物まとめよって」


そういうと師範とともに家の方に向かう




「あ、間にあった!彩ちゃん」


そういって道場に入ってきたのは


横山の幼馴染の小谷だった


土曜日に青年部の練習で山本と話しをして意気投合していたのだ


「部活なかなか終わらんかったからもう帰ってたらどうしようかとおもたわ」


小谷は息を切らしながらほっとした顔をする


「そんなに焦ってきてくれたんか?ありがとう」


山本は笑った


「あのな。彩ちゃんに言いたいことがあってん。」


「え?」


「ありがとう」


そういうと小谷はにこっと笑う


「な、なにが?」


「由依ちゃん、昨日の稽古すごく楽しそうだったから。私うれしかってん」


「ははっそうなん?」


「うん、剣道部も入ってくれるみたいやし。すっごく嬉しいわ」


「そうか、そんなに喜んでもらえたら嬉しいわ」


「私な、由依ちゃんと全国大会いこうって昔約束してん」


「え・・・」


「今は学校も違うし、一緒に行くのは無理になってしもたけど・・・。でも、彩ちゃんたちならインターハイまで勝ち上がってくれるって信じてるから」


「おう、インターハイで会おうな」


そういって2人は笑った


「お待たせ―って里歩きてたんか」


野菜を持った横山が道場に現れる


「うん」


小谷は嬉しそうににこにことしていた


「・・・何話してたんや?」


「・・・別に。内緒やでー」


そういって小谷はまた笑った


そんな小谷を見て横山は不思議そうな顔をした



「じゃあまた来ます。」


「ほなな」


防具袋と野菜を手に山本と横山は歩き出した





――――――


ガタンガタン・・・


電車にゆられながら


大阪へと


行きとは反対に今度は横山がうたたねをしていた


「・・・約束か」


山本はそう呟き


自分の掌を見る


ずっとずっと小さい頃


とても大事な約束をした




――――――


時はさかのぼり


山本彩5歳


「今日から隣に引っ越してきた渡辺といいます」


「あら、これはご丁寧にどうもー」


玄関で母親の声が響く


彩は2階の階段上から


その姿を見ていた


「あら、うちも同い年の子がおるんです。彩ー彩ー」


母親が階段上に居る彩を手招きする


彩は軽快に階段を駆け下り


母親の隣に行く


「この子がうちの娘の彩ですー」


「はじめまして。彩ちゃん。おばちゃん隣に引っ越してきたんですー」


「はじめまして」


彩は頭を下げる


「で、この子が・・・」


そういうと背中に手を回し


「うちの娘の美優紀っていいます」


母親の足にしがみつき


恥ずかしそうに顔をのぞかせていた


「・・・」


彩は美優紀を見て


動けなくなってしまった



「まーかわええなぁ。美優紀ちゃんよろしくねー」


母親同士が話しをする中


彩と美優紀はお互い見つめ合っていた


――――


2人は同じ幼稚園だったのだが


途中からきた美優紀はなかなかなじめずに一人で居ることが多かった


彩はそんな美優紀の姿をみつめるだけだった


単純に


どう話しかけていいのかわからなかった



ある日


「かえしてー!」


数人の男子たちが


手のひらサイズのクマのぬいぐるみを宙に投げてあそんでいた


その様子からして


美優紀の持ち物だということは


彩にはわかった


「なにしてんねん!!」


彩は男子たちの前に立つ


「彩ちゃん・・・」


美優紀は、べそをかきながら彩の方をみつめた


「人のもんやろ!かえしたり!」


彩はそんな美優紀の顔を見てさらに怒りが増す


「なんやねん!女のくせに生意気やで!」


「そうやそうや!」


男子たちはターゲットを彩にかえると


向かってきた


「やったるわ!」


そういって彩と男子たちは殴り合いのけんかを始め


美優紀はおろおろとそれを見つめるのだった


――――


「ホンマにすいませんでした」


山本の母は頭を下げる


「いえ、いいんですよ。子供たちの喧嘩ですし・・・」


保育士はそういって苦笑いをした


彩がかかってきた男子たちを次々にやっつけていったのだ


幸い大した怪我もなかったのだが・・・


こうしてお迎えの時間の際に事情が告げられたのだ


「もう!あんたも謝り!」


そういって山本の母は彩の頭をぐいっと下げさせる


「私悪くないもん!」


そういって彩は頬を膨らましていた




「へーそんなことがあったんや」


食卓で父が味噌汁を啜りながら頷く


「そうなんよ、お父さんからも彩になんかゆうて!」


母は怒りが収まっていないようだった


「わるうないもん!」


彩はその一点張りで


勢いよく箸を置くと


2階に昇って行った


「あー・・・じゃあちょっと話ししてくるわ」


そういうと父は彩の後を追いかけた



暗い部屋で彩は泣いていた


「彩・・・電気つけるで」


そういって父は電気をつける


彩は顔を必死に隠した


「どうして殴ったりしたんや?」


「だって・・・みゆきちゃんが・・・いじめられてたから・・・」


「・・・」


「だって・・・大事な人は守らなあかんって・・・父さんゆうたやんか・・・」


彩は涙をぽろぽろこぼしながら言う


「・・・そうか」


そういうと父は彩の頭をなでた


「美優紀ちゃん守ったんやな。えらいで。でもな、暴力と守るってのは違うねんで」


「え・・・?」


「まぁ今の彩には難しいかな・・・あ、せや。父さんええこと考えたわ」


そういうと父は彩に耳打ちする


「うん!そうする!」


彩はにこっと笑い涙をぬぐった


「うん、ほなご飯食べよか」


そうして2人で階段を下りて行った



――次の日


美優紀はぬいぐるみを抱え


ぽつんと座っていた


両親は共働きで


休日も2人とも家に居なかった


食卓に置かれたお弁当が


美優紀のお昼ご飯だった


「・・・」


寂しくないと言えばウソだった


ぬいぐるみをぎゅっとより強く握る


そして幼稚園の通園鞄に吊るされたクマのぬいぐるみに目をやる


それはいつも仕事で家に居ない父が誕生日プレゼントに買ってくれたものだった


それを昨日男子たちに取られ


困っていたところを彩が助けてくれたのだ


でも


お礼を言えず


ただ、だまって見つめることしかできなかった




ピンポーン


突然のチャイムにびくっと体を震わせる


ピンポン、ピンポン、ピンポーン!


連続してチャイムが鳴り


「みーゆーきちゃーん!!」


聞き覚えのある声が玄関から響いた


「・・・!」


美優紀ははっとして玄関に走り


ドアを開けた


そこには


道着姿の彩がにこっと笑っていた


昨日のけんかでできたのか


頬には絆創膏が貼られていた


「あ・・・」


美優紀は驚き固まる


彩はそんな美優紀の腕をつかみ


「美優紀ちゃん!剣道しよう!」


そういって笑った


「え・・・」


「父さんがゆうててん!美優紀ちゃんも剣道したらええんやって!そうしたら男の子なんかに負けへんって!!」


「で、でも・・・」


美優紀はとまどう


彩は真っ直ぐ美優紀を見つめた


「大丈夫や!もし美優紀ちゃんが強くなる前にまたいじめてくるような奴がおったら、私が守ったる!!いつでもそばにおって守ったる!!約束する」


「あ・・・」


美優紀はそのまっすぐな瞳に吸い込まれるように彩を見つめる


「いやや・・・」


「え?」


「守ってもらってばっかりや嫌や!私も強くなる!強くなって彩ちゃん守るねん!」


美優紀は彩を見つめにこっと笑った


「うん!ほな2人で強くなろう!」


そう言って山本は小指を差し出した


「うん!」


2人は小指を結び


「「嘘付いたら針千本のーます!」」



指切りをした





「なぁ、今みんな稽古してんね!行こう!」


そういって美優紀の手を引く


「彩ちゃん・・・昨日、ありがとう」


美優紀はそういって微笑んだ


「・・・べ、別にお礼やいらんわ」


彩は顔を赤らめる


そして


それを隠すように美優紀の手をとり走り出した


そんな彩をみて


美優紀はクスッと笑った


「なぁ彩ちゃん。いつもそばにおってくれるってホンマ?」



「ホンマや」



「じゃあ私も彩ちゃんのそばにずっとおる!」

「うん!ずっと2人一緒におろうな!」


「ほんま?それも約束やで」


「うん!約束や!」


そういって


2人はにこっと笑った



―――――


ガタンガタン・・・


電車に揺られながら




「・・・きっとみるきーは覚えとらんやろうな。それに・・・全然守れてへんわ」


山本はそういって


ため息混じりに笑った




あの日の約束⑲


その後


山本は食後の運動とは言えないくらいのハードな練習が待っていた



―――――



「はぁー」


風呂上がり


山本は敷かれた布団にダイブする


「ん・・・?」


自分の鞄の中から携帯が光っていることに気づき手に取った


そこには渡辺からの着信やらメールやらが入っていた


「あ・・・やべ・・・」


そう呟きぽりぽりと頭を掻く


「どうごまかそうかなー」


そう呟きながら


ごろんと布団の上で回転し仰向けになる


「ええかげん、剣道してるってゆうたらええねん」


ふすまに目をやると


ジャージにTシャツの横山が立っていた


「まぁ・・・この土日が終わったらな」


「えらいカッコつけるんやなぁ」


横山はふっと笑う


「別に・・・ええやんか」


山本はむっと口をとがらせた


「ま、ええけど・・・」


そういって横山は隣の布団の上に座った

「あ、せや」


そう言って山本は自分の鞄をごそごそと探り


すっと横山の前に座る


「これ、返すわ」


そう言って小説を差し出す


それは初めて会ったときに横山が山本に渡したものだった


「・・・読んだか?」


「あぁ読んだで」


山本は得意気に笑う


「で、どうやった?」


「読んだけど・・・目からうろこが落ちるような衝撃はなかったわ」


「ははっ、そんなん求められても太宰治も困るやろ」


そう言って横山が笑う


「ただ・・・」


「なに?」


「この本を貸してくれたあんたに出会えたことは感謝してる」


そう言って山本は横山を真っ直ぐ見つめた


「・・・な。なにゆうてんねん。恥ずかしいやっちゃなぁ」


いきなりのことに横山は照れてしまい


必死でとりつくろう


「なぁ、一緒に剣道部はいらへんか?」


「えっ・・・。でも・・・今から入っても迷惑やろ」


横山は中学時代のことがよぎりためらった


「大丈夫や。」


「え?」


「そんなん私やって今から入るし、みるきーやっておるんや。なんも迷惑ちゃうやん」


山本はにこっと笑う


「一緒に全国大会行こうや!」



そういって山本は右手を差し出す


「・・・」


横山は山本の右腕を見つめる


その腕はうっすらと赤く腫れ


稽古にどれだけ耐えてきたかを物語っていた


(そういえば・・・こんなに同世代と稽古したことなかったな・・・)


山本としてきた稽古の日々を思い出し



『由依ちゃんのことわかってくれる人はおるよ』



そんな小谷の台詞がよぎった



少しだけ


少しだけ・・・信じてみてもいいのかもしれない


そんな思いが横山の手を伸ばす



「・・・ま、のりかかった船やしな」


横山は照れ臭そうに


山本の手を握った



「よっしゃ!決まりや!これからもよろしくな!・・・ゆいはん!」


山本はにこっと笑った


「よろしく。・・・彩。」


横山も照れながら笑った



2人の間にはしっかりと硬い握手が交わされていた


あの日の約束⑱

駅からバスに乗り


すこし歩くと


京都の風情に似合うたたずまいの道場が現れた


「はー・・・すごすぎやろ・・・」


山本は道場を見つめる


「ほら、いくで」


横山は淡々と門をくぐる


「お、おう・・・」


山本も慌てて後を追った



「失礼します」


「おー由依。お帰り」


道場で素振りをしていた師範は


手を止めてにこにこと笑う


「は、はじめまして。山本彩と申します」


そういって山本は頭を下げる


「おー由依が友達を連れてくるなんて珍しいな」


「じいちゃん。今日はお願いがあってきたねん」


「ん?なんや?」


師範はきょとんとする


「私に、上段を教えてください」


そう言って山本は頭をさげた



「ほぉ、こりゃまた・・・」


師範は髭をなでながら少し眉をひそめる


「・・・私からもお願いします」


そういって横山も頭を下げた


「・・・由依。わかった・・・ただし、厳しいぞ」


そういってにっと笑った


「覚悟はできてます」


そういって山本は真っ直ぐに師範を見つめる


「言ったな。では、着替えて練習といこうか」


そう言った師範の目つきは変わっていたのだった



――――――――


「はぁはぁ・・・」


山本は道場で天井を見つめていた


「ほれ、立たんか!」


師範の克が遠くで聞こえる


「しっかりしいや!天王寺倒すんやろ!」


横山が山本の顔を覗き込み声をかける


「はぁ・・・はぁ・・・そうや・・・そうやった・・・」


山本はよろよろと起き上がり構えた


「おねがいします!!」


そういって師範に向かって行った



――――


「ふむ・・・そろそろ少年部が来るころだ。終わりにしようか」


師範はそう言うと竹刀を納める


「は、はい・・・ありがとうございました」


山本はそう言うと


床に倒れこんだ


「おいっ!」


横山は山本に駆け寄る


「うーむ。とばしすぎたかなぁ・・・由依、うちで休ませてあげなさい」


「はい」


横山は自分の面をとると


すばやく山本の防具を外し


肩を担ぐ


「2年やってないゆうてたけど、ええ筋やな」


「・・・そうでなかったら、ここまで連れて来てないわ」


横山は後ろを振り向き言う


「・・・ええ友達ができたな」


そういって師範はにこっと笑った


「・・・別に」


横山はぷいっとそっぽを向き道場を後にした


「おーおー照れとる照れとる」


師範はそんな孫の姿を微笑ましく見ていた



――――


「・・・あ」


山本は額に当たるタオルの感覚で目が覚める


「気ぃついたか?」


横山が山本の隣で声をかける


「あ、あぁ・・・ここは?」


「道場横のじいちゃん家や」


「そうなんや・・・」


「剣道しだしてから倒れてばっかりやな」


「あーホンマやで・・・」


山本は苦笑いをしながら起き上がる


「・・・なぁ。なんでそんなに必死になってるんや?いくら天王寺に勝ちたいってだけじゃそこまで必死にならんやろ」


「・・・あーそうやなぁ。あの女がいらんこと言わんかったら此処まで腹たたんかったやろうな」


そういって山本は天井を見つめる


「いらんこと?・・・渡辺さんのことでも言われたか?」


「・・・そうや」


山本は当てられて少しギクッとしたが


素直に認めた


「・・・幼馴染なんやってな」


「そうや。あいつは5歳んときに奈良から引っ越してきたんや。それからの付き合いになるわ」


「そうか・・・私にもおるで、幼馴染」


「へーそうなんや」


「その子も剣道やっててん。ま、覚えてないかもしれんけど2年前戦った時の副大将や」


「あー・・・なんとなく覚えとるわ。なかなかできるやつやなって思ったで」


「ま、うちの道場出身なめたらあかんで」


「ははっ!なら、うちの道場もなめたらあかんで」


2人は目を合わせて笑った


「ふー。お、起きたか?2人ともーご飯食べてくやろ?」


指導を終えた師範が汗をぬぐいながら現れる


「うん、ありがとう。じいちゃん」


「え、ええんか?」


山本は申し訳なさそうに言う


「ええよ。じいちゃんの煮物うまいで、食べていき」


そういって笑った





「うまっ!」


山本は目をキラキラさせながら頬張る


「やろ。ご飯おかわりいるか?」


「あ、すまん」


山本はお茶碗を横山に渡す


「ははは、いやー山本さんはいい食べっぷりだ気にいった」


師範は2人のやり取りをみてニコニコと笑っていた


「ありがとうございます」


山本はニコニコと笑う


「じいちゃん。褒めすぎたら調子乗るからあかんで」


「ええやないか由依。なんなら今日泊っていきなさい」


「えっ!」


「じいちゃん!」


「明日休みやしええやろ。それに日がないんやろ?土日もみっちりここで練習したらええやないか」


そういって師範は笑った


「ホンマですか!?ありがとうございます!」


山本はそういうと携帯を取り出し


「うん、そうやねん。いけるわ。うん、うん・・・」


そういって電話を切り


「親にも許可取ったんで、お世話になります」


「おーそうかそうか。ほな、ぎょうさん食べて練習するか」


「はい!」


「もー・・・しゃあないなぁ」


盛り上がる2人を見て


横山はため息をついた


あの日の約束⑰

一週間後――



「彩ちゃーん?」


渡辺は屋上のいつもの場所に上り


山本の姿を探す


「えーおらへん・・・」


渡辺はむすっと口をとがらせる


今日はテスト最終日であり


午前中で学校が終了していた


テスト終わりに山本の教室に行くと


すでに山本の姿は無かった


屋上に来ているとおもったのだが


此処にも居ない


「・・・最近彩ちゃんどないしたんやろ」


そういって口をとがらせた


一緒に帰ろうといっても誤魔化されたり


真面目に授業に出たり・・・


まぁ寝てて怒られてるみたいやけど・・・


それに


テスト期間中もすぐに姿が見えなくなっていたのだ


今日こそはと思ったのだが・・・


「はぁー・・・しゃあないなぁ部活行こう」


渡辺はそうつぶやくと梯子を下りていった


―――――


「はぁーなんとか誤魔化せたで」


山本ははぁはぁと息をあらげながら駅前まできていた


背中には防具袋と竹刀を背負っていた


「そんなんで息上がってたら試合できへんで」


隣では横山が平然とした顔でいた


「あのな、あんたから言われた筋トレメニュー毎日やってるから筋肉痛が酷いねん」


「ま、真面目にやってるんは褒めとくわ。・・・ええ加減、渡辺さんにゆうたらええのに」


そういって横山はやれやれと笑う


「あかん、こんな状態で言えるかいな!」


山本はムキになっていう


「・・・はいはい。ほな、いこか」



そういって2人は電車に乗り込んだ


今日は横山の道場で稽古をつけるため


京都に向かっていた


電車に揺られながら山本はうたた寝をしていた


そんな山本を横山は黙って見つめていた



指導してくれと言われた日から


山本は道場の鍵をこっそり持ち出し


2人は毎日稽古をしていた



横山のメニューはかなりハードだったのだが


山本は必死にくらいついていた


しかし


長時間剣道の練習をしていると


右腕に力が入りにくくなり


竹刀のコントロールが難しくなっていた



「はぁっ・・・はぁっ・・・」


剣道場で右腕の痛みに耐えながら


山本は竹刀を握る


「・・・」


横山は構えながらそれを黙って見ていた


「・・・大丈夫や!まだ、やれる!」


そういって山本は構えると横山に向かって竹刀を振り上げる



パアァァンッ!


「ぐっ・・・!」


山本の振り上げた竹刀は横山にはじかれ


虚しく転がった


山本は右手を押さえうずくまる


「・・・やっぱり、まだ長時間は無理やな」


「ま、まてや!時間がないねん!」


山本はよろよろと起き上がる


「・・・今日はこれで終わりや」


そう言うと横山はコートの端に座り面を外す


「お、おい!待ってくれや!頼む!」


「終わりや。無理したら試合出れんようになるで」


「う・・・」


山本はしぶしぶ横山の隣に座り面を外した



横山は黙って山本の横顔を見つめ



「なぁ・・・上段・・・やってみるか?」


ぽつりと言う


「え?」


思いもよらない台詞に山本は驚き


横山の方を見た


「上段なら、左手で竹刀振りおろして片手打ちしてもいけるから。それに、腕上げてるから小手を狙われにくいしな」


「ほ、ほんまか!?」


「あぁ、じいちゃんに頼んでみるわ」


「ありがとう横山!」


そういって山本は横山に抱きついた


「ちょっ・・・大げさやで。ま、京都までいかなあかんからテスト終わってからな。それまでは筋トレとテスト勉強しときぃや」


そう言って横山はクスッと笑った


「う・・・わかったわ。まかせとけ!」


そういって山本は笑った



ガタンガタン・・・


『次は―――駅―』


独特なアナウンスが電車内に響き渡る


「あ、ほら、おりるで」


横山は山本を起こす


「ん?あ、あぁ・・・」


山本は寝ぼけた目をこすりながら


慌てて駅を降りたのだった


あの日の約束⑯

――――――


ガタンガタン・・・・


小谷を乗せた電車が目の前を通り過ぎていく


横山は電車が過ぎた方を見つめながら


2年前のことを思い出し


ため息をついた




小谷はその後、剣道の名門校に進んだが


横山は地元の高校に進み


部活に入ることもなかった


ただ祖父の指導の元


道場で剣道は続けていた


そして急な親の転勤で


この5月に大阪に行くことになったのだ


横山にとっては


京都に居ようがが大阪に居ようが


どちらでもよかった


ただ、毎日淡々とした日々を過ごしているだけだったので


何も変わらないと思っていた


しかし


選択体育が剣道になっていた時は


さすがに眉間にしわを寄せた


剣道の経験者ということで


目立ってしまったら・・・


部活に入れと言われるのだろうと思い


サボることにした


屋上に行ってみると


鍵が壊れていてすんなりと入れた


静かに本を読んでいただけなのに


渡辺と山本が大声で話をするので


嫌でも聞こえてしまっていた


(・・・あの時の喧嘩はそういう理由やったんやな)


渡辺のいう約束というのは


どういうものなのだろうか・・・


もしかしたら


私と里歩のように全国大会に行くことなのだろうか


「ん・・・?」


考え事をしながら歩いていた横山は


足を止める



住宅街の一角に


倉庫を改修したような外観で


剣道場 虎楼館


という看板がかかっていた


横山はきょろきょろとあたりを見回す


考え事をしていたら


いつもと違う通りをあるいていたようだ


「・・・大阪は入り組んでてようわからへんわ。こりゃ里歩のこといえんなぁ・・・」


そういって頭を掻き


看板を見つめる


「・・・こんなところに道場やあったんや」



今日は休みなのか


声は聞こえず


静まりかえっていた


「・・・なにしてんねん」


「あ、すいませ・・・」


横山は声のする方に振り向き


固まる


そこにはジャージ姿で髪の毛を一つにくくり


スポーツバッグをもった山本が立っていた


「なんや。あんたか・・・」


「あんたとはなんや!」


山本はムスッとする


「私が何してようが関係ないやろ」


「いや、関係あるで」


山本はそういうと道場を指差す


「ここ、うちの道場やから」


「・・・はぁっ!?」


横山は目を丸くした


「おーさすがに驚くんやなぁこれは」


山本はニヤニヤと笑う


「ま、正確にいうと何人かの師範たちが共同でやってて、父さんがその一人ってことなんやけどな」


「・・・あんたもか」


「何が?」


「うちも・・・道場やってんねん」


「ええっ!!」


山本はバッと身を引いて驚く


「さすが大阪。リアクションでかいなー」


横山はふっと笑う


「まぁ納得したわ・・・普通上段や指導者がおらな使えんからな」


「じいちゃんが上段の使い手でな師範やねん・・・龍心館っていって京都ではちょっと有名やねんで」


「そうなんや・・・なぁ、あんたんち、ここらへんなんか?」


「いや・・・たまたま気晴らしに違う道歩いてて、道場があったから見てたんや・・・」


横山は道に迷ったと言えず取り繕う


「ふーん・・・そうなんや。なぁ・・・ちょっと時間あるか?」


「・・・あるけど」


「ちょっと付き合ってくれんか?」


そういって山本は親指を立て


道場の方を指した



―――――


道場に入ると


中は試合ができるくらいの広さだった


「ほれ」


そういって山本は鞄から道着を出し横山に渡した


「あそこが更衣室みたいなもんやから」


「・・・な」


「まーええからええから」


戸惑う横山を山本は強引に部屋に押し込む



電気を付けると


そこには


ここの門下生たちの賞状やトロフィーなどが飾られていた


「なんや。ここ、結構賞とってるやん」


そう呟きながら眺める


「ん・・・?」


その一角に


小さい女の子2人が写っている写真を見つける


「・・・これ・・・あいつらか」


その写真には


賞状を持った山本と渡辺が嬉しそうに写っていた


『彩ちゃんと約束したから』


『もう一回勝負してくれへん?』


昼間に聞いた渡辺の言葉と頭を下げる姿が蘇る


「・・・しゃあないぁ」


そう呟き


横山は道着をつかんだ


――――――


山本は準備体操をして


素振りをしていた


ガラッ


横山が扉を開け出てくる


「おー白袴もなかなか似合ってるやん」


「・・・」


「ほれ」


そういって山本は竹刀を差し出す


「・・・」


横山は竹刀を受けとらず


山本を見つめる


「横山・・・頼む、稽古つけてくれ」


そういって山本は頭を下げた


「・・・やらんやらんいよったのに、えらい風の吹きまわしやな」


「・・・昨日の試合も効いたけど、今日絶対に勝ちたい相手に出会ってしもてな」


「・・・誰や?」


「天王寺女学院や」


山本の目には闘志が宿っていた


「あんたにこんなこと頼むのは申し訳ないとおもてる。でも、たのむ!稽古つけてくれ!」


そういって正座をし床に頭を付けた


「・・・2年のブランクは相等やで・・・それでもするか?」


横山もしゃがみ山本に問いかけた


「覚悟はできてる」


そういって山本は顔を上げる


「わかった。・・・せや、最初にゆうとくけど私、剣道になったら性格変わるからな」


「大丈夫や!どんな稽古でも耐えるわ」


「そうか。わかった・・・」


そういうと、すっと竹刀を持つ


「ほな、やろか」


竹刀を持った横山の目つきが変わる


「お、おう・・・」


その目を見た山本は


自分の言ったことはとんでもないことだったのかもしれないと


これから行われる試練がよぎったのだった







あの日の約束⑮

――――――



そして試合当日


大阪難波東中学に勝った横山たちは


第2試合、第3試合と勝ち進み


ついに準決勝まで勝ち上がる


昼休憩


横山は会場外の売店に行くため外に出る


「みんな、なんでそんなこと言うん!?」


会場裏の駐車場で


小谷の声が聞こえた


「里歩?」


横山は不思議に思い


声の方に歩いて行った


「だって、準決勝まで来たけど全部横山さんが勝ったからやし」


「そうやで、こんなんなんか違う!」


チームメイトがめいめいに言葉を放ち


小谷は一人で応戦していた


「でも、石橋ちゃんが怪我で出れんくなったから、由依ちゃんに頼んだんやで!全国大会行けたら石橋ちゃんも一緒に・・・」



「里歩ちゃん。私、こんなんやったら全国大会いかんでええ」


石橋が呟く


「え・・・」


「だって、みんなで3年間やってきたからこそ意味があるんや。そりゃ怪我した私も悪いけど・・・みんなを応援することで私も試合に参加してるつもりやった・・・」


「・・・でも」


「はっきり言って、横山さんや呼ばんといてほしかった」





「・・・!」


横山の胸はドクンと跳ねる




「なんやねん!そんないい方せんとい・・・・て。・・・由依ちゃん・・・」


小谷は目の端に横山が居るのに気が付き


固まる


「・・・っ!」


横山は何も言えず


その場から走り去ってしまった


「由依ちゃん!」


小谷は慌てて後を追いかけたのだった



「はぁはぁ・・・由依ちゃん・・・」


小谷は横山を追いかけて走り


息を切らしていた


会場の運動公園を走り回り


野球場の方まで来てしまっていた


立ち入り禁止のフェンスが横山の足を止めさせる


横山はピタッと止まり


小谷の方を向く


「由依ちゃん・・・ごめん」


小谷はただただ頭を下げた


「私がわるいねん。みんなと一緒にもうちょっと部活やりたくて・・・わがまま言って・・・ホンマにごめん」


「・・・もうええよ。」


そう言って横山は小谷の横を通り過ぎようとうする

「由依ちゃん!」


小谷は横山の腕をつかむ


「こんなんやったら、出るんやなかった・・・」


そういって肩を震わせた


「あ・・・」


横山の瞳に涙がにじんでいることに気づき


小谷は動けなくなってしまった





その後、横山は荷物をまとめ


会場を後にした


4人になった北野中学は


あっさりと負けてしまったのだった








あの日の約束⑭

――――


横山が剣道を始めたのは3歳のころだった


祖父が剣道の師範であり


孫の横山は毎日稽古をしていた


10歳になると


横山は大人としか稽古をしなくなった


道場では


少年部、青年部と時間帯が別れていたのだが


幼いころから祖父に鍛えられた横山は


少年部では相手になる子がいなかったのだ


そのため青年部で練習をしていた






「なぁなぁ、ゆいちゃん中学は剣道部入るやろ?」


幼馴染の小谷が少年部と青年部の交代時間に横山に話しかける


「・・・」


横山は首を横に振った


「えーなんで?」


「じいちゃんが今は試合に出たらあかんって・・・高校生になるまで駄目って」


そう言って横山はうつむく


横山の技術は同年代のレベルをはるかに超えており


大会に出てしまうと


優勝することは目に見えていた


そのため祖父は高校になるまで試合には出さないと決めていたのだ


「・・・そうなん?」


「うん。せやから部活ははいらへん。ごめんな」


「でも、高校になったら部活入ってええんやろ?」


「うん」


「じゃあ、里歩、由依ちゃんと一緒の高校行く!」


「え?」


横山は不思議そうに首をかしげた


「そんで、由依ちゃんと一緒に全国大会行って優勝すんねん」


そういってにこっと笑った


「里歩・・・」


横山は嬉しそうに笑う


「私、それまでに由依ちゃんに追いつけるように頑張るから」


そういって小指を出す


「え・・・?」


「全国大会行こうな!約束!!」


にこっと小谷は笑った


「・・・うん」


横山は小指を指しだし


照れ臭そうに笑った


そして中学生になり


横山は変わらず道場で稽古を続けていた


横山の祖父は上段の使い手であり


中学生になった横山も上段の練習を始めた


日々、大人と勝負をしていく中で


突きも上達していった

小谷は部活仲間と過ごすことが多くなり


話すのは道場の時ぐらいになってしまった


試合の話しや部活仲間との話しをしている小谷をうらやましく思ったが


高校生になれば自分もそういう体験ができるのだと思い


それを支えに過ごしていた



そして


中学3年生の時


事件は起きた



「お願い由依ちゃん!この通りや!!」


放課後、教室で小谷は横山に手を合わせて頭を下げていた


「いや・・・でも、じいちゃんから言われてるし」


「わかってる、1回だけでええねん」


なおも小谷は頭を下げる


横山は困惑した



今週末、近畿大会が京都で行われるらしく


横山たちの通う


北野中学も出場できることとなったのだ


京都ということもあり


特別枠で1校、抽選で選ばれたらしい


小谷は中学入学後


剣道部に入部したが


経験者は小谷と石橋という生徒のみだった


この2人は強いのだが


今回石橋が体育で足をねん挫してしまい


試合に出れなくなったらしいのだ


毎回、団体は1回戦敗退だった北野中学にとって


近畿大会に出れるということは


この上ないチャンスだった


「もう、うちら3年生はこの大会で引退やねん。でも、この大会勝ったら、全国大会いけんねん。もう一回石橋ちゃんとも試合一緒にできんねん!せやからお願い!!」


小谷は頭を下げる


「・・・う、わかったわ・・・。」


横山は小谷の勢いに負ける


「ほんま!ありがとう由依ちゃん」


小谷はうれしくなり横山に抱きついた


「もー・・・まぁ里歩も練習頑張ってるしな・・・」


そういって笑った





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