気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2014年08月

夏も終わりです

もう八月も終わりですねー(^∇^)

早いですねー

高校野球が終わったので

今年の夏も終わったなーと感じております・・・

が、

今年はちょっと違います!(・∀・)

わたくし事でございますが

今月、誕生日でして・・・

なので、

お休みをいただいて少し遊びに行ってきます( ´艸`)

リフレッシュ!(・∀・)

まぁ・・・そんなに長い休みはいただけないんですけれども

しばらくの間、更新お休みさせてください(;´▽`A``

本当は書きためて

更新しておきたかったのですが

なかなか思うように書けなかったので

すいません・・・(><;)

本当は高校野球が舞台だから

8月に書き終えたかったのですが・・・

珠理奈たちの高校野球は秋に持ち越します(;´▽`A``

皆さま、連載の中では9月半ばになっても気分は夏でお願いします笑

初恋の行方とプレイボール22

――――

「失礼します・・・」

珠理奈は玲奈の父に連れられて

カーテンを開ける

そこには酸素マスクをし、心電図をつけられ、点滴をしている玲奈の姿があった

見慣れない光景に

珠理奈は言葉を失う

「・・・さっきはごめんなさい」

ベッドの横のパイプ椅子で座っていた玲奈の母が立ちあがり

珠理奈に頭を下げた

「え・・・?」

「玲奈から聞きました。発作が起きた時に助けてくれたって。それに、前に倒れた時も助けてくれたって・・・それなのに、あんなにひどいこと言ってごめんなさい」

「いえ、そんな・・・」

珠理奈はわたわたと手を振る

「いや、本当にすまない。先生から発作の薬を飲んでいなかったら、危なかったと言われてね・・・本当にありがとう」

そういって父も頭を下げた

「いや・・・その・・・私は必死で・・・」

珠理奈はますます慌てる

「じゅり・・・な」

両親たちのやり取りを聞いて

玲奈が珠理奈の方にスッと手を伸ばす

薬のせいなのか目が少しうつろだった

「・・・母さん」

「そうね・・・」

両親はそっとカーテンを閉め

珠理奈と玲奈を残し出て行った

「玲奈ちゃん・・・」

珠理奈はパイプ椅子に座り

玲奈の手を握った

手は冷たかったが

きゅっと握り返してくれたのでほっとする

「・・・ごめんね。また、助けてもらっちゃった・・・」

玲奈は力なく笑う

「なにいってんの。助かってよかったよ」

「ありがとう・・・」

「・・・」

珠理奈は目から涙が溢れそうになるのを必死に耐えていた

「・・・私ね、産まれたときから心臓に病気があったの・・・」

玲奈はぽつり、ぽつりと話す

「小さい頃に手術して・・・良くなると思ってたんだけど・・・私の場合は良くならなくって・・・また手術しなきゃいけないの・・・」

珠理奈は玲奈の胸にあった傷跡を思い出しながら静かに聞いていた

「ちょっと難しい部位でね・・・成功率五分五分で・・・可能な限り・・・薬で様子みようって言ってたんだけど・・・もう、手術しなきゃ駄目なんだって」

「・・・」

珠理奈はキュッと手を握る

「小さい頃から・・・何度も入院して・・・学校もろくに行けなくて・・・友達もいなくて・・・正直、もし急に死んでも未練なんてなかった・・・」

「玲奈ちゃん・・・」

「でもね・・・彩が私の存在に気づいてくれたの・・・病気のことなんか気にせずに普通の同級生として声をかけてくれて・・・うれしかった」

「・・・」

「でも・・・まさか走っちゃうなんてね・・・私、みんなと居たいって・・・大会も応援したいって思ってたのに・・・バカだな・・・」

そういいながら玲奈の目からは一筋の涙が流れていた

「・・・」

珠理奈はなにも言うことができず

ただただ涙をこぼさないように必死に耐えていたのだった

―――――

しばらくして

珠理奈が救急外来の扉を開けて出てきた

皆心配そうに珠理奈を見つめる

「・・・」

珠理奈は何も言うことができなかった

「みんな!!」

そこに遅れて横山と山本が駆け付ける

外の雨がすごいのか

2人ともびしょぬれだった

「珠理奈!玲奈はどないなってん!?」

事前に珠理奈と高橋が病院に連れて行ったということを聞いていた山本は

珠理奈に詰め寄る

「・・・・」

「おい!なんとか言えや!!」

「・・・なんだよ・・・」

「え・・・?」

ガッ!

「っ!」

いきなりの衝撃に山本はよろめく

気づけば珠理奈が山本の頬を殴っていたのだ

「・・・なにすんねん!」

山本もカッとなって珠理奈の頬を殴る

「おいっ!止めろ2人とも!!」

高橋が慌てて止めに入り

部員たちも2人の間に入る

「彩のせいだ・・・彩の・・・くっ・・・うっ・・・」

珠理奈はぽろぽろと涙をこぼす

「あ・・・」

山本はそんな珠理奈の姿を見て

振り上げていた拳を下ろした



「おいおい、病院では静かにっておそわらなかった?」

後ろの救急外来の扉から

白衣の女性が現れた

珠理奈もごしごしと涙をぬぐい

その女性に注目する

「あー!君、松井珠理奈だよね?」

「へ?」

「いや、野球雑誌に載っててね。2年生のエースなんでしょ?」

そういって女性はにこにこと笑う

「あ、あの・・・あなたは?」

「あ、ごめんね。心臓外科医、中西優香です。今回、松井さんの手術を担当させていただきます」

そういってニコッと笑った


「で、野球部のみなさんに朗報なんだけど。松井さん、明日の手術がうまくいったら、またマネージャーできるよ」

「本当ですか!?」

中西の発言に皆、身を乗り出した

「うん、ただし術後の状態を見なきゃいけないからしばらくは入院だけどね」

「「・・・」」

皆の顔色が曇る

「玲奈ちゃん・・・練習試合しか見てなくて・・・今回の予選大会楽しみにしてたのに・・・」

柏木は涙ぐむ


「おいおい、何も試合は予選だけじゃないでしょ?」

中西が落胆している部員たちを見て言う

「でも、3年生はこれが最後の夏なんです!玲奈も一緒にベンチにいてほしかったのに・・・」

秋元も涙目になっていた

「だーかーらー。まだ夏は終わんないでしょ」

中西が言う

「え・・・?」

部員たちは皆、きょとんとする

「全国。全国大会になら間に合うよ」

そういって中西はにっと笑った


「先生!本当!?」

大島は中西の白衣をつかみ揺さぶる

「本当、本当。これでもアメリカに留学中でね。松井さんの症例も手術したことあるんだ」

そういって中西はウインクをする

「かー!!マジか!!ありがとう先生!!」

大島は中西に抱きついた

「おー日本でもハグされるとはおもわなかったよー」

そういって中西は笑った

「・・・そうだよな!全国があるよ」

宮澤も言う

「そしたら玲奈も試合見れるよな」

「そうだよ!勝ちあがればいいんだよ」

皆盛り上がる

「全国・・・」

珠理奈はつぶやき、掌を見つめた

「珠理奈」

山本に声をかけられ

珠理奈は顔を上げる

山本の唇の端からは、先ほど殴られた影響で

血がにじんでいた

「お前の文句はいくらでも聞く。ただ、その話は予選大会優勝してからや。」

「彩・・・」

「絶対勝つで!勝って、玲奈を全国に連れて行くんや!」

山本はぐっと拳を握る

珠理奈は玲奈が山本の事を好きになる理由が分かった気がした

そして、カッとなって殴ってしまった自分に嫌悪感を覚えた

「・・・うん。ごめん・・・殴ったりして」

「かまへん。お互いさまや。私も殴ったしな」

そういって山本は苦笑いをする

「ほれ」

そういって山本は手を差し出す

「・・・」

珠理奈は山本の顔を見る

「バッテリーは仲ようせなあかんって、誰かさんに怒られるで」

「あ・・・」

珠理奈は玲奈の顔が浮かんだ

「・・・うん、そうだね」

珠理奈はそういうと山本の手を握り

2人はにこっと笑った

「よしっ!じゃあ今日のところは解散だ。明日の試合に備えて帰って寝るように!風邪ひくんじゃねーぞ」

高橋が声を上げる

「「はい!!」」

全員がうなづく


「病院では静かにしてください!」

救急外来の看護師が扉を開け、高橋たちの方を睨む

「あ・・・すいません」

高橋は頭を掻きながら苦笑いをした

「ほれ、いわんこっちゃない。まぁ、でも良いチームだね」

中西はその様子を見てクスッと笑ったのだった

初恋の行方とプレイボール21

――――

珠理奈と高橋は

総合病院の救急外来の待合室で静かに座っていた

「・・・・」

お互い無言のまま

話をすることはなかった



そこに

入口の自動ドアが開くのも待ちきれないほどの勢いで

女性が入ってくる



「すいません!松井です!松井玲奈の母です!!」

救急外来の受付で

玲奈の母は身を乗り出す

「すいません。現在処置中で・・・少しお待ちください」

受付の女性が頭を下げる

「悪いんですか?どうなんですか?」

「すいません、私では答えられません・・・」

「母さん、やめないか」

母の後ろから

玲奈の父が肩に手を置き制止する

「落ち着けないわよ!玲奈が・・・玲奈が死ぬかもしれないのよ!!」

母の興奮は収まることなく、大声を上げる

その台詞に

珠理奈の胸は引き裂かれそうだった

「・・・松井さん。」

高橋はスッと立ち上がると

玲奈の両親の前に立つ

「この度は、このような状況になってしまい。大変申し訳ございませんでした」

そういって頭を下げる

「あ・・・あの・・・」

珠理奈も立ち上がり

「すいませんでした・・・」

珠理奈も頭を下げる

「・・・あなた、野球部ね」

玲奈の母は珠理奈の練習着姿を見て言う

「はい・・・」

「どうして・・・」

「え・・・?」

「どうしてこんな目に合わせたの!?あの子は生まれつき心臓が悪いの!何させたのよ!!」

母は珠理奈の肩をつかみ叫ぶ

「あ・・・」

その形相に

珠理奈は何も言えなくなってしまった

「お母さん落ち着いてください!珠理奈は玲奈さんが倒れたところに居合わせただけなんです」

高橋が横から言う

「そうだぞ、止めないか!今そんなことを言っても仕方ないだろう」

父はそういうと

珠理奈から母を引き剥がす

「松井さん。先生からの説明がありますので中へどうぞ」

看護師が声をかける

「いこう」

玲奈の父は母とともに救急外来に入って行った


「・・・」

珠理奈は玲奈の両親が去っても

その場から動くことができなかった

「珠理奈・・・座ろうか」

高橋が優しく声をかける

「・・・先生・・・私・・・玲奈ちゃんにもしもの事があったら・・・」

珠理奈は帽子で顔を隠しながら声を詰まらせる

「何いってんだよ!そんなことになんねぇよ!縁起でもないことゆうじゃねぇ」

高橋はそういうと

珠理奈の背中をパンっと叩いた


―――――

少しして

「先生!!」

話しを聞いて、学校にまだ残っていた3年生たちが病院に駆け付けた

「・・・みんな・・・来てくれたのか」

「玲奈は?」

大島が高橋に詰め寄る

「まだわからん。ご両親も出てきてないし・・・」

「そう・・・」

大島の表情は曇る

「玲奈ちゃん・・・」

「りんちゃん、泣いちゃだめだよ」

思わず泣き出す柏木を宮澤がそっと慰める

「とにかく・・・来てくれてうれしいんだが・・・時間がかかるかもしれない。ここは私に任せて帰れ」

「嫌です」

大島は高橋を見つめる

「玲奈も大事な仲間です。待ちます」

そういって大島の後ろで3年生たちもうなづいた

「・・・はぁ。静かに座ってろよ」

「「はい」」

そういって3年生たちは待合室のソファーに座った


―――

しばらくして

救急外来のドアから玲奈の父が出てきた

珠理奈たちは思わず立ち上がる

「ご心配おかけしました。今、薬で落ち着いています」

そういって父は頭を下げた

その報告で

部員たちはほっとして一気に力が抜けた

「ただ・・・心臓にこれ以上負担をかけれないので・・・明日手術をします」

「「え・・・」」

全員が凍りつく



「あの・・・珠理奈さんって方はどなたかな?」

「あ、私です」

そういって珠理奈はおずおずと手を挙げる

「玲奈が中に入ってきてほしいって言ってるんだ・・・」

「え・・・は、はい」

珠理奈はあわてて中に入っていった



「先生、玲奈って心臓悪かったの?」

「なんでいってくれなかったんだろう・・・」

「だまってずっと絶えてたのか・・・」

3年生たちは玲奈の病状を知って驚愕していた

「・・・松井から、病気の事は言わないでくれって言われててな。すまん」

そういって高橋は頭を下げたのだった

初恋の行方とプレイボール⑳

珠理奈は部室の鍵を閉め

グラウンドを走る

先ほどよりも雨足は強まっていた

「はぁー・・・よりによって雨とかついてないなぁ」

そう呟きながら

練習着姿でタオルを頭にかけ

慌てて走る


そして

校舎に近づいた時

「え・・・?」

珠理奈は思わず足をとめた

珠理奈の目線の先には

走る玲奈が横切っていったのだ

「うそ・・・」

珠理奈は青ざめ

あわてて玲奈の後を追いかける


「玲奈ちゃん!!」

珠理奈は叫び

「何やってんだよ!!」

玲奈に駆け寄ると

腕をつかみ自分の方に振り向かせる

「あ・・・」

珠理奈は玲奈の表情を見て

怒鳴ったことを後悔する

そこには

目に涙をためた

玲奈の姿があった

「・・・っ!」

玲奈は珠理奈に抱きつく

「・・・!!」

珠理奈は突然の事に驚いて固まった

「私・・・見ちゃった・・・」

玲奈はぽつりともらす

「え?」

「彩が・・・女の子といたの・・・」

玲奈はきゅっと珠理奈のユニホームをつかむ

珠理奈は先ほど彩が話していた幼馴染の事を思い出す

「・・・彩・・・あの子の事好きだと思うな」

玲奈はくぐもった声で言う

「そ、そんなのわかんないじゃん」

「わかるよ・・・」

「え・・・?」

「だって・・・好きな人の表情だもん・・・わかっちゃうよ・・・」

「玲奈ちゃん・・・」

「・・・振られちゃった・・・まだ、なんにもいってないのに・・・な・・・」

そういいながら

玲奈の身体からずるずると力が抜ける

「玲奈ちゃん!!」

珠理奈はあわてて玲奈を抱きとめるが

「ちょっ!玲奈ちゃん!!」

玲奈は全身の力が抜けており

受け止めきれなくなる

「くっ!!」

珠理奈は渾身の力で

なんとか、その場にゆっくりと玲奈を座らせ

横から肩を抱き、支える


「玲奈ちゃん!!」

玲奈の肩を揺らすが

反応はなかった

「玲奈ちゃん!!玲奈ちゃん!!」

玲奈の息は小刻みで荒く

いつも白い顔色が

さらに白くなっていた

明らかに

以前倒れた時よりも

状態が悪いということは珠理奈でもわかった


「くそっ!」

珠理奈は玲奈の鞄に手を伸ばし

以前、口に入れていた薬を見つけ

玲奈の口に入れる

「誰かっ!!誰かー!!」

珠理奈は渾身の力で叫ぶ

「・・・なんだ?」

施錠にまわっていた高橋が

その声に気づき

校舎から出て来る

「おいっ!松井!どうしたんだ!!」

珠理奈が玲奈を抱えている姿を見て

高橋は血相を変えて駆け寄る

「先生!!救急車呼んで!!」

「わかった!!」

高橋はあわてて携帯を手に取り

電話をかける

「玲奈ちゃん!!しっかりして、玲奈ちゃん!!」

珠理奈は叫び続ける

その呼び声に反応することなく

冷たい雨が

無情にも玲奈の顔を濡らし続けていたのだった



――――――

その頃、総合病院では

診察が終わり、しずまりかえった外来で

中西は一人の患者の心電図を見ていた

「はー・・・こりゃまた・・・」

「・・・結構重いんですよ。それ、安静時にとった時のなんですけどね」

そういって久保田は中西にカルテを手渡した

「松井・・・玲奈・・・おいおいまだ高校生じゃないか」

中西は驚く

「そうなんです・・・。僕が引き継いだのは5年前なんですけど・・・もう薬で様子を見るのは限界かと」

「うーん・・・なんていうか、正直に言うとよくここまでもたせたよね」

中西の顔は真剣だった

「・・・難しい箇所なので、両親もできるだけ薬で様子をみたいということで・・・」

「・・・この子、かなり日常生活に制限かけてるんじゃない?」

「はい・・・運動制限、食事制限ともにあります・・・」

「だろうね・・・」

中西はため息をついた

「でも、最近女子野球部のマネージャーを始めたみたいで・・・」

「え?」

「それが影響したのかわからないんですけど・・・この前、発作が起きてしまったみたいで・・・」

「・・・運動制限かけてる子が急にそんなん始めたら、そりゃ起こるでしょ。なんで止めなかったの」

中西は睨む

「でも、松井さんのあんな表情、僕初めて見たんです。なんか生きる希望を見つけたみたいな感じで・・・だから、中西先生が帰ってきたら手術をお願いしたかったんです・・・けど」

「けど・・・?」

「夏には手術を受けないって・・・野球の大会があるからと・・・」

「・・・はぁー、そりゃまた・・・」

中西は頭をぽりぽりと掻く

「ぼ、僕も一応きつく言ったんですよ!でも・・・意志が固いみたいで」

久保田は俯いた

「・・・この子ってさぁ。どこの高校いってるの?」

「え?秋葉女学院です。たしか、そこの球場で明日試合するっていってましたよ」

そういって久保田は窓から見える球場を指差す

「そうかぁ・・・」

そういうと中西は椅子から立ち上がり

窓の外を見つめた

外は気がつけば雨が強く降り出していた

「あー明日試合できるかなー」

中西はぽつりと呟く

「え?」

その時

プルルル・・・

久保田のPHSが鳴る

「はい、はい・・・え!わ、わかりました!すぐ行きます」

「どうしたの?」

中西は首をかしげる

「それが、松井さんが発作を起こして倒れたみたいなんです!!今こっちに向かっていると連絡がありました」

「なんだって!?私も行く!」

「おねがいします!!」

そういって2人はあわてて救急外来に向かったのだった

初恋の行方とプレイボール⑲

―――――――

練習終了後も珠理奈と山本は投球練習を続けていた

「そろそろ帰るで、珠理奈。明日本番なんやから」

「うーん・・・もうちょっと・・・」

「気合入ってるけど・・・無理したら元も子もないでー。ほらなんか風も生ぬるいし・・・雨降りそうやんか」

そういって山本は空を見上げる

「・・・ねぇ、彩」

「なんや?」

その声で山本は珠理奈に目線を向ける

「・・・なんで玲奈ちゃんをマネージャーにしようと思ったの?」

「え・・・?」

生ぬるい風が2人をつつむ


珠理奈がまっすぐ見つめるので

山本は固まってしまった



「・・・玲奈ちゃんが病気なのに・・・なんで誘ったのかなと思って」

「あぁ・・・それか・・・」

山本は少し間を置き

ベンチに腰掛ける

「・・・私な、幼馴染がおんねん」

山本はぽつりと口を開く

「喘息持ちでさー。小さい頃はすぐに発作起こして・・・遊んでる時にも何回大人よびに行ったかわからへんかった」

「・・・」

珠理奈は黙って話を聞いていた

「でな、小学校の頃、私が野球始めた時な・・・そいつも野球するっていい出してん。発作何度も見てるから無理やゆうたんやけど・・・そいつ、無理じゃないって、病気を理由になんでもあきらめたくないってゆうてな・・・」

そういって山本はフッと笑った

「あの時、私はおもたんや。あぁ、こいつの可能性を私は無理っていう言葉で簡単に片付けようとしてたんやって。でな・・・玲奈見たときになんとなくその時の事思い出してん。せやから病気を理由になんでも無理やって思ってほしくないっておもてな」

「・・・そう」

「今じゃそいつも喘息もよくなって元気にやってるわ。」

そういって山本は照れくさそうに笑った

ポツ・・・ポツ・・・

「げ・・・ほらやっぱり雨やんか」

山本は空を見上げつぶやく

「あ・・・ホントだ・・・」

「明日、試合できるかなーその前に、はよ帰らんと風邪ひいたら大変やで」

珠理奈と山本はそそくさと後片づけをすると

部室に入る

「え・・・?」

山本は携帯を見て固まる

「どしたの?」

「すまん、珠理奈!私、先帰るわ!」

山本はあわてて着替えだした

「なに?どしたの?」

「・・・その、幼馴染が東京来てるみたいやねん。今学校に向かってるってメールきてん」

山本は顔を赤らめる

「えーマジ?私も会いたい」

「ええて、おうたら話し長くなるし、雨やし、な?また試合見に来ると思うからそんときにな」

山本はあわててまくしたてると

部室から出て行った

「・・・まさか・・・ね」

珠理奈は山本の慌てようを見て、嫌な胸騒ぎがしたのだった




―――――

「はーできたー!」

教室で柏木は大きく伸びをする

「間に合いましたねー」

玲奈も安堵の声をもらす

机には部員たちのために作られたユニホーム型の手造りのお守りが並べられていた

「さ、これで準備万端!遅くなっちゃってごめんね」

「いえ、大丈夫です」

「あー雨降ってきちゃった・・・」

柏木は教室の窓から空を見上げつぶやく

「あ・・・じゃあ早く帰らないといけませんね」

そういって玲奈は鞄を手にする

「そうだね。あ、私、たかみな先生のところによっていくから先帰ってて」

「え・・・でも」

「いいの、いいの。それに、佐江ちゃんたちも違う教室でいるみたいだから一緒に帰るんだ」

そういって柏木は照れくさそうに笑った

3年生たちは試合前に渡辺のデータをもとに対戦相手のビデオを見るというのが恒例なのだ

「あ・・・そうですか。すいません」

玲奈はぺこっと頭を下げると教室を後にした

(・・・一緒に帰るのか・・・いいなぁ)

玲奈は階段を降りながらそんなことを思っていた

最近、珠理奈と山本は遅くまで残っており

自分も待っていようとしたのだが

病気の事もあり、気を使われて練習が終わると横山と帰る日々が続いていたのだ


階段を下り、校舎を出る一歩手前で

勢いよく校門にむかって走る山本の姿を見つける

「あ・・・彩・・・」

玲奈はドキッとする

山本は校門前で立ち止まりきょろきょろとあたりを見渡していた

(もしかして・・・私が一緒に帰りたいって思ってたから?)

玲奈はそんな事を思いながら

校舎を出て

山本に声をかけようとした

その時

「彩ちゃーん」

「わっ!美優紀!抱きつくなって!」


「え・・・・」

玲奈は固まる

そこには嬉しそうに山本に抱きつく女の子の姿があった

玲奈はあわてて木の陰に隠れる


「大体なんで急に東京に来てん」

「だって明日試合やろー彩ちゃんの勇士みたいやんかー」

「あほ、まだ1回戦やで」

「だって、日程的に私が見れるんここしかないんやもん。あ、ちなみにうちのソフトボールは優勝したで!」

「え、マジか!?なんではよ言わんねん」

「えへへー驚かそうとおもてー。はい、風邪ひいたらあかんからはよかえろ」

「・・・お、おう。って私んちやんけ!」

「えへへーでも彩ちゃんのお母さんにはちゃーんと連絡してるからいけるで」

「ったく・・・いつの間に・・・まぁええわ。行くで」

山本はフッと笑うと

その女性が持っていた傘を持ち

2人でひとつの傘に入る

そして、歩きながら

山本はスッと傘を傾けた



「・・・あ」

雨が先ほどよりも勢いを増して振りだす中

玲奈は木の陰で呆然と立ち尽くしていた


傾けた傘は

その女性が濡れないように大幅に傾いており

山本の体半分は傘からはみ出て濡れていたのだ


(・・・彩はあの人の事が好きなんだ)

寄り添って歩く2人の姿が

残酷な現実として突き刺さる


「・・・っ!」

玲奈は目に涙をため

校門に背を向け

気づけば

走り出していた

初恋の行方とプレイボール⑱

それからも玲奈は病気の事を隠してマネージャーを続けていた

幸いにも、あの合宿の日以来大きな発作は起きていなかった


そして日々は過ぎ――――


ガラガラガラ・・・

空港で大きなサングラスをした一人の女性が

キャリーケースを転がしながら歩いてくる

そして、売店にたちよると

野球雑誌を購入した


空港をでると

タクシーに乗り込み、先ほど購入した雑誌を読む

「ふーん。日本のプロ野球はこうなってんの・・・」

そう呟きながらぱらぱらとページをめくり

夏の高校野球の記事になる

そこには注目選手たちの写真が載っていた

(・・・もうすぐ予選だよなぁ。今年はどこが来るかなぁ)

そう思いながらページを読み進め

「ん・・・?」

高校野球の後に

女子高校野球の特集が組まれていた

「・・・女子野球も注目されるようになってきたんだねぇ・・・」

そう呟きながら

記事を読む

そこには


『帝都女子 エース 前田敦子 』

と大きく書かれていた

(今は帝都女子が強いのか・・・)

その下に

『秋葉女学院 2年生エース 松井珠理奈』

と、小さく写真が載っていた

「ほー・・・後輩は頑張ってるのか」

そう呟き、ニッと笑った


「つきましたよ」

そういってタクシーの運転手は車を止める

「ありがとうございます」

そういって女性は雑誌をたたむと

車を降り、サングラスを外した

そこは、玲奈の通院している総合病院だった




その女性はすたすたと院内を歩き


ガチャ


医局のドアを開けた

皆の視線が一斉に集まる

「お久しぶりです。中西優香 只今アメリカから帰ってきました」

そういってニッと笑った


「中西さん!おかえりなさい!」

「久しぶりだなぁ」

そういって医局にいた医師たちは笑う

「えへへーでも休暇なんで正式に帰ってくるのはまだまだ先なんですけどね―。あ、これお土産ですー」

そういって中西も笑った

「中西先生!」

そういって声をかけてきたのは

玲奈の主治医、久保田 健司だった

「久しぶりー元気だった?」

「はい、中西先生もお元気そうで」

「ははっ元気だよ―」

そういって笑った

「あ、あの・・・帰ってきてさっそくで申し訳ないんですが・・・」

「ん?」

申し訳なさそうな口ぶりに中西は首をかしげた


――――――

一方秋葉女学院では・・・


「はい、集合!」

高橋が声をかけ、皆整列する

「東京予選が明日から開催だ。今日は軽めに調整して、ゆっくり休むように」

「「はい」」

皆、明日の大会を思い気合の入った声をあげた

「勝って勝って勝ちまくって、決勝で帝都女子倒すぞ!」

高橋は予選表の書いてある紙をぐしゃっと握りつぶす

帝都女子はシードで、ブロックが違うため決勝まで当たらないのだ

「・・・一番気合入ってるのたかみな監督じゃない?」

指原が高橋の形相をみてひきつる

「・・・女の嫉妬は恐ろしいから」

指原の隣で渡辺はぼそっと呟く

「なんかいったか?」

高橋はキッと睨む

「さっしーです」

そういって渡辺は指原をつきだす

「ちょ!まゆゆだって言ったじゃん」

「・・・」

渡辺はそっぽを向く

「指原、今日は捕球の練習重点的にしようか」

高橋はにこにこと笑う

「・・・あのー・・・目が笑ってませんけどー・・・」

高橋の形相をみて指原は血の気が引いたのだった


―――

「みなさーん、タオルどうぞー」

休憩時間に玲奈は濡れタオルとスポーツドリンクを配る


「・・・ありがとう」

渡辺は受け取りお礼を言う

「わっ!まゆゆがお礼言った!」

隣で指原が驚く

「・・・別に」

渡辺は少し顔を赤らめる

「玲奈もマネージャーに慣れてきたから、まゆゆも心を開いてきたってことだねー」

そういって指原はさっきの仕返しとばかりに渡辺の肩をつんつんとつつく

「・・・うるさい」

「ははっ、さっしーあんまり言うと、この後の練習できつーい球が飛んでくるぞ」

そういって大島が笑う

「げ、それはまずい・・・」

指原はあわてる

その様子を見て部員たちが笑う

「でも、ホントによくやってくれてるよ。入ってくれてありがとうな、玲奈」

そういって大島は笑う

「ホント、仕事も覚えるの早いし。助かってるよ」

そういって柏木も笑う

「あ・・・ありがとうございます」

玲奈は顔を赤らめて照れる

「つれてきてくれた山本に感謝だなー」

宮澤が山本にむかって笑う

「ははっ、見る目あるでしょ?」

山本はスポーツドリンクを片手に笑う

「・・・」

玲奈は山本をちらっと見る

「おっ!なんだなんだ?実はいい感じなのか2人?」

宮澤が雰囲気を察して言う

「な、何ゆうてるんですか!そんなんちゃいます!」

山本はあわてる

「・・・」

玲奈は顔を赤らめてうつむく

「別にいいんだぞー。佐江たちみたいにべたべたしなきゃ」

大島は笑う

「これでも控えめになってますけど」

「そうそう、練習中はあくまでマネージャーだし」

宮澤と柏木は反論する

「・・・ごちそうさん」

珠理奈はやいやいと盛り上がる部員たちを割って

玲奈にスポーツドリンクの容器を手渡すと

グローブをもってグラウンドに戻って行った

「あ、うん・・・」

玲奈は戸惑いながら珠理奈が去っていくのを見つめていた

「あっ、待てや珠理奈」

山本もあわててミットを持ち珠理奈の後を追いかける



「人間かわるもんだなぁ。あの学校一のモテモテ君が野球に没頭するなんて」

そういって秋元がつぶやく

「いいじゃん、それでこそうちのエースってもんだよー」

そういって宮澤が笑う

「あぁ、今年はもしかしたら・・・もしかするかもしれないな」

そういって大島はニッと笑った


「・・・」

玲奈はグラウンドで投球練習をする2人を黙って見つめていた

「玲奈ちゃん、ちょっと・・・」

そういって柏木が声をかける

「は、はい」

玲奈はあわてて振り向く

「あの作業するから今日も残れる?」

「はい、大丈夫です」

そういって玲奈はうなづいたのだった

お知らせ

こんにちは、しゅうです(^∇^)

今回の連載いかがでしょうか?

とりあえず、作者としては第一章が終わったって感じです(^▽^;)

ちょっと第二章は構成をまだ悩んでおりまして

納得できない点もあるので修正しまくっております


毎日更新していたのですが、2,3日は更新できないかと思います

しばしお待ちを(;´▽`A``


高校野球は地元は負けてしまったのですが

逆転とか、負けてる高校のチームが涙流してるのとかみたら

青春やなぁと感動しております

スポーツは良いですな(^∇^)

なんか小説もスポーツ系が盛り上がるのかな?

『あの日の約束』も結構好評でございました(^∇^)

さやみるきー小説ですが、読んでいない方は

この機会によろしければ読んでみてください☆

初恋の行方とプレイボール⑰

ゴールデンウイークが明けてから

女子野球部の練習はより一層気合が入っていた

玲奈もマネージャーをしながら部員たちを支えていた

そして

部員誰もが驚いたことは

珠理奈の女たらしがぴたりと止まったことであった

練習終り、いつも違う女の子と帰っていたのだが

今は誰よりも遅く残り投球練習を続けていた

そんな珠理奈の態度を見て

山本も残り、練習に付き合うようになっていた

――――

「私のことはもうどうでもいいってことなんでしょ!?」

昼休み部室前で高柳の声が響き渡る

「ちゅり、ごめん。今は野球に集中したいんだ・・・」

そういって珠理奈は頭を下げる

「・・・なによ!もういい!」

パンッ!

高柳は珠理奈の頬を叩くと

その場から走り去っていった

「・・・つーきいたわー」

珠理奈は頬を抑え苦笑いをする

「おー修羅場や修羅場ー」

「なんか前もこんな光景みたわー」

そういって山本と横山が校舎の陰からひょこっと顔を出す

「げ、見てたの?」

珠理奈は焦る

「あんなにでかい声でもめてたら嫌でも目に付くわ」

「うーん・・・まぁ・・・でもこれで野球に集中できるから」

そういって珠理奈は苦笑いをした

「はー1年の時とは考えられんなぁ」

そういって横山は感心する

「なんやそれ?」

「1年の時、珠理奈のこと気にいってる女子たちが昼休み誰が珠理奈と弁当食べるかでもめて、修羅場やってん。で、それに懲りた珠理奈は昼休みは部室で弁当食べるようになったってわけや」

「へー・・・そんなことがあったんか」

山本はじーっと珠理奈を見る

「なっ!む、昔の話だから!」

珠理奈はあわてる

「ま、ええわ。今は真面目に野球やってくれてるから」

そういって山本は笑った

「にしても・・・彩がピッチャーやってそんなに熱が入るんやったら、もっと早く投げてたら良かったな」

横山は笑う

「え?・・・あぁ、うん。そうだね」

珠理奈はぎこちなく笑う

「なんや?えらいぎこちないなぁ。他にわけでもあるんか?」

「え?なんもないよ・・・ほら、前田さんとも戦ってますます気合入ったってのもあるなーって思って」

そういって珠理奈はとりつくろう

玲奈がひたむきに心臓の病気を隠し、マネージャーをしているのを見て

自分も真面目に野球に打ち込まなければと思ったということは

口が裂けても言えなかったのだ

「そうやな。それで3年生たちもますます気合入ってるしな」

横山は珠理奈の答えに納得し、うなづいた



部室のドアを開けると

そこには誰もいなかった

「あれ、今日玲奈ちゃんは?」

珠理奈は首をかしげる

「あぁ、今日休みやって」

山本はベンチに座り

弁当を広げながら言う

「え・・・?」

珠理奈はドキッとする

「なんか定期的に病院にいかなあかんらしくて、今日受診日やゆうてたで」

山本はもぐもぐと口を動かしながら言う

「あぁ・・・そうなんだ」

珠理奈はほっとしてベンチに腰掛ける

「ふーん・・・」

横山は山本と珠理奈を交互に見つめる

「なに?」

「なんや?」

2人は不思議そうに首をかしげる

「いや、なんでもない。さ、食べよ食べよ。いただきまーす」

そういって横山は弁当を食べ始める

(これはひょっとすると・・・ひょっとするんか?)

横山はそんなことを思いながらゴクッとご飯を飲み込んだのだった


――――――

その頃、玲奈は

一人で総合病院の待合室にいた

両親が付き添うと言ったのだが

この前の合宿で倒れたという報告を親の前でするのはためらわれたので

一人で行くと言い張ったのだ

「37番の方―」

受付で名前を呼ばれ玲奈はそそくさと荷物を持ち

診察室に入った


「え・・・!発作がきた?」

医師は玲奈の発言に驚く

「は、はい・・・あ、でも薬でおさまりましたから」

玲奈はあわてて言う

「いやいや・・・松井さん。最近そこまでひどい発作起きてなかったよね」

「あ・・・はい・・・」

玲奈はうつむく

確かに苦しくなることはあったのだが

あそこまでひどいのは久しぶりだったのだ

「前にも言ったと思うけど、確実に心機能が低下しているんだよ。最近、野球部のマネージャー始めたって言ってたよね。無理してるんじゃない?」

「そ、そんなことありません!」

玲奈は思わず前のめりになる

「・・・」

医師は玲奈のそんな表情を見るのが初めてだったので

ぽかんと口を開け驚いていた

「あ・・・す、すいません」

玲奈は顔を赤らめながらうつむいた

「いや、いいんだ。ごめんね、そんな松井さんの表情初めて見たから」

そういって医師は笑う

「は、はぁ・・・」

玲奈の顔はますます赤くなった

「でもね、松井さん。病は気からとは言うけど・・・こればっかりはどうしようもないんだ。いっそ今、手術した方がマネージャーも続けられると思うんだけど・・・」

「でも・・・五分五分なんですよね」

「・・・いや、今なら確率は7割・・・いや、8割になるかもしれない」

「え?」

「アメリカに留学してる先生がいてね、夏にこっちに帰ってくるんだ。心臓外科の名医でさ。今回の帰国は休暇らしいんだけど頼みこめば何とか夏休みに手術が受けられるかもしれないんだけど・・・」

「・・・夏、ですか・・・」

玲奈は野球部員たちの顔が浮かんだ

もし手術を受けたら試合を見ることができなくなる

でも、今の時期を逃せば手術の成功率は落ちる

(・・・でも・・・私は・・・)

玲奈はキュッと拳を握る

「・・・夏には、手術は受けません」

「え・・・」

医師は驚く

「私、今楽しいんです・・・。夏は大会があるし・・・近くで応援したいんです」

玲奈はまっすぐ医師を見つめた

「松井さん。本気で言ってるの?」

「はい」

「次、倒れたら・・・命が危ないんだよ」

医師は強い口調で言う

「・・・それでも・・・私は、みんなと一緒にいたいんです」

「・・・はぁ。負けたよ」

そういって医師は苦笑いをした

「発作の薬、肌身離さず持っててね。でも、僕はご両親にも話す義務があるんだけど」

「だ、大丈夫です。私から話します!それに、大会が終わったら、ちゃんと手術は受けます」

「・・・無理したら駄目だよ」

医師の目は本気だった

「はい・・・」

玲奈はしっかりとうなずいた



会計を終え

玲奈は駐車場を歩く

以前見た桜の木は新緑の若葉がきらきらと輝いていた

「・・・」

玲奈はその葉を見ながら

木陰を歩く


あんなに医師に強く自分の意見を言ったのは初めてだと思い

ぽかんと口をあけた医師の顔を思い出し

くすっと笑った


そして

桜の並木道が終わり

太陽が玲奈を照らす

そのまぶしさで思わず下を向く

そこには

桜の木の陰に続き、自分の影ができていた

『あんたはちゃんとここにおる』

山本の言葉が玲奈の脳裏をよぎった


(不思議だなぁ・・・前はこんなこと思わなかったのに・・・)


玲奈はその影を見つめ

くるっと桜の木のほうに振りかえった

桜の葉が

こんなにも綺麗だと思ったのは

初めてだった


「・・・私・・・生きたい・・・あなたたちが咲くのを、これから何回も・・・何十回も見たい・・・」


そう呟き

キュッと胸を抑えたのだった

初恋の行方とプレイボール⑯

「ん?」

バスに乗り込んだ珠理奈は首をかしげる

2人掛けの席で横山と玲奈が一人ずつ座っていたのだ

(・・・これは・・・あれだよなぁ)

そう思い

前に座っている横山の方に座ろうと座席の背もたれに手をかける

「あ・・・」

その様子を見て、玲奈が少し立ち上がり珠理奈を見つめる

「え?」

珠理奈は首をかしげる

「珠理奈、はよ座れや!後ろ積んでんねん」

「わっ、わかったよ」

後ろから山本に押され

珠理奈は玲奈の横に座った

「なぁゆいはん、前田さんなんやけど・・・」

「あぁ、あの人の投球はな―」

前の席の横山と山本は

前田の話で盛り上がっていた


「・・・いいの?」

珠理奈は小声で言う

「・・・」

玲奈は携帯を手に何かを打ち出した

『昨日、ありがとう』

ディスプレイに映し出された

文字を見て珠理奈は玲奈を見る

「・・・」

玲奈はまた手を動かし

『今日、ずっと心配してくれてたでしょ?』

「あ・・・」

珠理奈は顔が赤くなった

「ふふっ・・・さすがに私でもわかるよ」

珠理奈の反応に玲奈はくすっと笑う

「でも、今日は試合のあともなかなか話せなかったから・・・」

そういって玲奈は珠理奈の方を見る

「ありがとう」

そういってニコッと笑った

「あ・・・うん・・・」

珠理奈は玲奈の笑った顔にドキッとして

帽子を深くかぶる

「あ・・・」

玲奈は珠理奈の手を握る

「え?な、何?」

珠理奈はいきなりの事に驚く

「珠理奈、血出てるよ」

「え?」

気づけば中指の爪のところから血が滲んでいた

「あー・・・でも、もう乾いてるし。大丈夫だよ」

「駄目だよ、ちゃんと消毒しなきゃ。救護バックここにあるし」

そういうと玲奈は足元に置いていた救護バックから消毒液と絆創膏をとりだす

そして手際よく消毒し

「はい.。あんまり無理しちゃだめだよ。」

そういって珠理奈の手に絆創膏を巻いた

「あ、ありがとう」

珠理奈は巻かれた絆創膏を見て

なんだか胸の奥がくすぐったい気持になった



「でさ・・・」

玲奈はもじもじと顔を赤らめる

「ん?」

「・・・私変なこと言ってなかった?」

玲奈は珠理奈に耳打ちする

「え?」

珠理奈はきょとんとする

「あのとき・・・もうろうとしてて・・・あんまり覚えてないの」

玲奈はぼそぼそと耳打ちし

不安そうに珠理奈を見つめた

珠理奈の脳裏に

『彩にはいわないで』

と涙目で訴える玲奈の姿がよぎる

「・・・大丈夫だよ」

「よかったー・・・」

玲奈はほっとして

微笑む

珠理奈は微笑みながら

胸の奥が今度はきゅっと締め付けられるような感覚を覚えたのだった


――――――

「すー・・・すー・・・」

バスの車内では部員たちの寝息が聞こえていた

トン・・・

「ん・・・?」

珠理奈は肩にかかる重みで目を覚ます

「な・・・」

珠理奈の顔は見る見る赤くなる

玲奈が自分の肩にもたれかかり

寝息を立てていたのだ

珠理奈は玲奈の寝顔を見て

昨日の事を思い出す

(あの時・・・なんでキスしようとしたんだろう・・・)

玲奈の唇を見て

珠理奈の顔はさらに真っ赤になった

今まで関係を持ってきた女の子たちを思い返すが

こんなにも胸がドキドキすることなどなかった


(・・・でも)

珠理奈は玲奈から目線を外し

山本が座っている前のシートを見つめた

(・・・)

珠理奈は玲奈が山本を見つめている表情を思い出し

ため息をついた

そして、手に巻かれた絆創膏を見つめ

(・・・今はこれで十分か)

そう思い

玲奈がずり落ちないように

身体を動かさず、ずっと耐えていたのだった

初恋の行方とプレイボール⑮

珠理奈は軽快にボールを投げて行く

帝都女子も負けじと打線をつなげ

2アウト、ランナー1、2塁

バッターは・・・

前田敦子

(・・・前田さん)

珠理奈は前田を見つめ

気持ちを落ち着かせるために深呼吸をする

一方

前田は冷静にバッターボックスに立つ

「・・・なんや、打つんも左かいな」

山本の言葉に

前田は目線を落とす

「・・・見ない顔だね」

前田はぽつりと言う

「今年から転校してきたもんでね」

「・・・そう」

「なんや。えらい口数少ない4番さんやな」

「・・・」

前田は黙って構える

パンッ!

珠理奈の1球が山本のミットに入る

「・・・ふーん」

そして

2球目も前田はバットを振らなかった

「・・・珠理奈、良い球投げるようになったねー」

前田はそう呟き

カァァァン!

「あ・・・」

山本は思わずキャッチャーマスクを外し立ち上がる

「「おおーーーーー!!」」

歓声が飛び

外野のフェンスをゆうに飛び越えて行った

「・・・」

前田はグラウンドをゆっくりと走り

そしてホームベースを踏み

山本を見る

「4番は野球で語るもんだよ・・・」

そういってフッと笑いベンチに戻って行った

「な・・・」

山本は前田の後姿をただ見つめるしかできなかった


――――
次の攻撃は山本からだった

(見とれよ・・・)

山本は先ほどの事があり、気合を入れて構える

「ふーん・・・さっきのキャッチャー、4番だったんだ・・・」

前田はフッと笑う

「きやがれ!」

山本は叫ぶ

「・・・じゃあ、語ってもらおうかな・・・」

そういって前田は大きく振りかぶり

「野球でっ!」

ボールを投げる

パンッ!

「な・・・」

山本は固まる

「ストライク!」

審判の声が響く

「くそっ!」

(ベンチで見てるよりめちゃくちゃ早いやんけ・・・)

山本は焦る


続いて

パンッ!

山本はバットを振ったが

前田の球の方が早く、振り遅れる

「ストライク!」


「・・・2ストライク・・・こんなもんかな?4番さん」

前田はキャッチャーからボールを受け取ると

スッと帽子を直しながらつぶやいた

「・・・くそっ!」

山本はぐっと構え

前田を睨む

カァァァン

打った打球はファールだった

「お、当たったね・・・」

前田はつぶやく

次の球もファールであり

山本は粘る

(よしっ・・・タイミングあってきたで。次は決める・・・)

そう思い、ぐっとバットに力を込めた

「・・・」

前田は帽子を静かに直し

「じゃあ・・・これはどうかなっ!」

勢いよくボールを投げた

「もらった!」

山本はタイミングを合わせバットを振る

が・・・

「な・・・」

球が勢いよく下に落ち

パンッ!

山本のバットは虚しく空を切った


「ストライク!バッターアウト!!」

「なんや・・・今の球・・・」

山本は呆然と前田を見つめていた

前田はボールを受け取り

フッと笑った


「な、何・・・今の球・・・」

玲奈はスコアをつけるのも忘れてぽかんとする

「でたなー前田の縦スライダー・・・」

ベンチで高橋がつぶやく

「あの球打てるやつはそうそういねーからなー・・・」

大島も腕を組みながら見つめる

「・・・ちょうどいい。投げるときの動画も撮れたし」

渡辺はタブレットパソコンを操作しながらつぶやく


「・・・君、次のバッターに代わりなさい」

審判の声に山本はハッとする

「あ・・・す、すいません」

山本はあわててバッターボックスから離れる

その時

前田がニヤッと笑うのが見えた

「くそっ!今度は絶対打ったるからな!」

山本が苛立ちながらベンチに戻って行った

―――――

試合の流れは前田の登場でガラッと変わり

気づけば大差をつけられ

6対2で秋葉女学院の負けとなった




「あーやっぱ前田さん強いわー」

指原は荷物をまとめながらつぶやく

「負けてもいい。良いデータがとれた」

そういって渡辺は黙々とタブレットパソコンを操作する

「・・・はいはい。帰りの荷物も私が持ちますよ」

指原はため息をついて渡辺の鞄を肩にかけた


珠理奈たちはマイクロバスに荷物を積みこんでいた

「高橋先生」

そこに、ジャージ姿の女性が声をかける

「あー篠田先生。どーもどーも」

高橋は駆け寄り一礼する



「珠理奈、良い球投げるようになってますね」

そういって笑った

この女性は篠田麻里子

帝都女子校野球部監督である

「いやー今年はみんな気合入ってますからね」

そういって高橋は笑う

「いやーなんか残念だなぁ」

「はい?」

「うちに来てくれたら、前田が引退したあとのエースだったのになぁ。もったいない」

「そりゃ、どういう意味で?」

高橋は少し眉をひきつらせる

「秋葉女学院も昔は強かったですけどね。今は個々の能力が優れている子がいても全体がねー」

そういって篠田は秋葉女学院の生徒たちを遠目に見る

「・・・いや、今年はチームワークも良いし私は期待してるんですけどねー」

高橋は額の血管が浮き出るのを

拳をぐっと握り必死に耐える

「あー麻里ちゃん。いたいたー」

篠田の後ろからジャージ姿の女性がもう一人現れる

「にゃ・・・にゃんにゃん!」

高橋はさっきまでの苛立ちとは別に

顔が真っ赤になった

「たかみな久しぶりー」

そういって手を振る

この女性は小嶋陽菜

高橋と大学時代の同級生である

「な、なんで?」

「ん?私、今日救護当番で来てたの。ちなみに今は帝都女子にいるんだよー」

そういって左腕の腕章を見せる

小嶋は養護教諭なのだ

「試合見たよー。たかみなのところも強かったねー。あんまりルールわかんないけど」

そういって小嶋は笑う

「こら、にゃろ。いっつもルール教えてるんだからいい加減覚えてよね」

「ごめーん。でも、麻里ちゃんが説明してくれても専門用語多くてわかんないんだもん」

そういって、小嶋はてへっと笑う

「にゃろ・・・?」

高橋は篠田のその呼び方と

小嶋の甘え方を見てすべてを察する

「すいません、話が長くなってしまって。では、東京予選で会いましょう」

篠田は帽子をとり、一礼する

「じゃーねー。たかみなー」

そういって小嶋は篠田と腕を組みその場を後にした

「・・・」

高橋はその姿を見つめ

くるっと部員たちの方に振りかえる

「てめぇら!明日からビシビシ特訓すっからな!!打倒、帝都女子!!」

高橋の目は明らかに血走っていた

「ど、どうしたんですか?いきなり・・・」

玲奈はたじろぐ

「・・・監督も複雑だってことよ」

柏木がポンっと玲奈の肩をたたく

「はぁ・・・」

玲奈はわけがわからずきょとんとする

「まぁ、でも打倒帝都女子ってのはみんな思ってることだけどね」

そういって柏木は苦笑いをする

玲奈は部員たちに目をやる

確かに皆、真剣な顔で高橋を見つめていた



「・・・珠理奈、帰ったら変化球練習すんで」

「あぁ、よろしく頼む」

珠理奈と山本の目線の先には

遠くでバスに乗り込む

前田の姿があったのだった
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