気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2015年03月

◆今後について

こんにちは、しゅうです(^∇^)

今日は珠理奈の誕生日!おめでとう珠理奈!

珠理奈が18歳になるって感慨深い・・・

20歳になったらもっと思うんだろうなぁ

生誕祭は玲奈ちゃん含め1期生が参加するから激アツですな(・∀・)



さて・・・

次回なのですが

すいません、3月中はお休みをくださいm(_ _ )m

3月に入っても研修の残りがありまして

年度末なんで少しバタバタするんです(´・ω・`)

下手したら異動とかもあるやろうし・・・

今連載開始しちゃうと、3月中に終わらなかったら

当然4月に入ってしまうじゃないですか

私長編しか書かないし・・・(-。-;)

もし異動になってしまうと

確実に肉体的にも精神的にも書こうという気力がわいてこないと思うんですよね

なので、今から

心の準備をしつつ

考えている小説を

もしものために書き溜めておこうかなと思っております


去年は異動しないという変な自信があったのですが

今回は・・・なんかドキドキするんですよね・・・(・_・;)

みなさん、異動がないように祈っててください笑



それでは、みなさん

こんな作者からですが

長くお休みをいただくので一言。

学生の皆さん

春休み満喫してください!

卒業した方々!おめでとうございます!

なかなか会えなくなる友達とは思いっきり楽しんで遊んでください(^∇^)

これから社会人になる方々も

3月は遊んでください

研修とかあるかもしれませんが

遊んでください

今しか、気軽に旅行行こうとか言えませんから

社会人のみなさん!

お互い来年度も頑張りましょう!笑


小説は続けていきたいと思っていますので

4月になってからも覗きに来ていただけたら嬉しいです

よろしくおねがいします(^∇^)


気ままな詩人   しゅう

◆あとがき

『不器用太陽‐一年後、夏‐』をお読みいただきありがとうございました(^∇^)

今回、前半部分は菜々たんを出すために

だらだらと話しが進んで行ったので

これは本当にさやみるきーなのか?と思いながらみなさんヤキモキしていたことでしょう(^▽^;)

なので後半は結構ラブラブにしてみました笑

元ネタはNMBの『休戦協定』でございます

この曲めっちゃ好きで

聞いているうちに不器用太陽の続編を思いついたしだいです

歌ではギター投げつけて壊して出て行くっていう内容なんですけども

そうとう勢いよく投げつけんと壊れんやろと思って

他の方法を模索してたんですけど

いっそ濡らしちまうか(・∀・)となりました

まぁ雨降って地固まるってことで

仲直りの話しだしちょうどいい感じになりました笑

ちなみにギターのモーリスは私が使っているやつです

マーティンはいつか弾いてみたいなー・・・

憧れです


菜々たんの喫茶店は

淡路島にある、とある喫茶店がモデルです

最初この話を書いてる時、場所のイメージが淡路島だったので

いっそ喫茶店も参考にしちゃえと思って書きました

そこにはステージではなくギャラリーコーナーがあったのですが

大変おしゃれでございました(^∇^)



第一作目を書いた後に

みるきーのソロ曲のPV見たら似てるなーって思ったので

今回、歌わせてみました笑

で、最後は喫茶店で働いてもらおうと思いまして

このようなラストになりました


田中のばあちゃんの孫が菜々たんだということを

じわじわ出していきたかったんですが

最初からがっつりばれてるんんだろーなと思いながら書いておりました

伏線下手すぎな私。(´д`lll)

もっとうまく書けるように頑張ります(^▽^;)

不器用太陽-1年後、夏-23終

そして、土曜の夜

山本と渡辺は車に乗り込み

山田のカフェへと向かった


「わーおしゃれやなぁ」

渡辺は店内をきょろきょろと見渡しながら席に座る

「いらっしゃい」

山田は嬉しそうに水を二つテーブルに置いた

「彩ちゃんは準備する?先食べる?」

「あ・・・じゃあ準備します」

そういって山本は持ってきたギターケースを抱え

店の奥にあるステージへと向かった

「へーあんな風になってるんや」

渡辺はステージ上で準備をする山本を見ながらにこにこしていた

「どうする?注文」

「あ、彩ちゃんの演奏が終わってからでもええですか?」

「もちろん。ほな飲み物だけでも聞いとこか」

「はーい」

渡辺はミルクティーを注文し

他の客のリクエストに答え、ギターを弾いている山本を嬉しそうに見つめていた

ギターの音色が店内を包み

ゆったりとした時間が流れる

(やっぱり、ギター弾いてる彩ちゃんはかっこええなー)

そんなことを思いながら

ティーカップに口をつけた


演奏が終わり

山本がペコッと頭を下げる

客からは拍手がおこり

渡辺も嬉しそうに手をたたく


すると、山本は椅子から立ち上がり、マイクを伸ばし始め

自分の背と同じくらいにする

「・・・今日は特別ゲストが来てて、今からその人と1曲歌わせてもらいます」

「え?」

その発言に渡辺はきょとんとする

他の客もざわざわと店内を見渡していた

「美優紀」

山本は照れくさそうに渡辺の名を呼んだ

「え・・・」

「ほら、みるきー行って」

山田が渡辺に近づき、ウインクをした

「でも・・・」

「な?ほら」

そういって山田は渡辺の背中を押した

「ねぇ、みるきーやない?」

「え?ホンマ?」

他の客も渡辺の存在に気づいてざわつく

「・・・」

渡辺は出ていかなければいけない雰囲気になり

ぺこぺこと頭をさげながら

ステージに向かう

「彩ちゃん。どういうこと?」

渡辺は山本に近づき、小声で言う

「・・・これ」

そういって山本は渡辺と目を合わせずに

しわくちゃの紙を見せた

「これって・・・」

渡辺はその紙を手にして驚く

「美優紀、ここのカフェに来たいってゆうてたやろ?せやから練習しててん・・・」

「あ・・・」

渡辺はハッとする

「・・・もしかして、この紙しわくちゃなんって・・・」

「あの日の雨で濡れたんや。ギターケースん中に入れてて・・・あの時、美優紀がいきなり車からギター引っ張り出すから焦ったわ・・・」

「彩ちゃん・・・」

渡辺はどうして山本がギターケースを手にしようとしたのかわかった

ギターケースのポケットに入っているこれを

何かの拍子で見られるのが恥ずかしかったのだ

「ホンマは近々ゆいはんに頼んで美優紀に休みくれるように頼むつもりやったんや。その・・・芸能界引退しても・・・美優紀、歌うんは好きやろ?・・・それやったら、一緒にやろうかなって思って・・・で、でも・・・その・・・迷惑やったかな?こんな選曲やし・・・」

「ううん。ありがとう。もう・・・そんなんやったら、最初からゆうてくれたらよかったのに」

渡辺はそんな不器用な山本のサプライズ計画を思いクスッと笑う

「う・・・うっさいなー。・・・・美優紀、アルペジオやから、いつもよりテンポゆっくりやけど・・・いけるか?」

山本は照れくさそうに言う

「うん」

渡辺はにこっと笑うとマイクを手に取り

「みなさん、こんばんは。みるきーです。卒業してしまいましたけど、今日は特別に聞いてください」

「やっぱりみるきーや!」

「えー!ホンマに!?」

渡辺の自己紹介に客たちはどよめく

「・・・」

「・・・」

山本と渡辺はそんな声を聞きながら

目を合わせ、静かに頷いた

渡辺はマイクに唇を近づけ

「それでは、聞いてください。優しくするよりキスをして」

それを合図に

山本のギターが鳴った



――――

それから日々は過ぎ・・・


「ゆいはん。遅くなってごめんなー」

昼の営業が終わった横山の店で

渡辺はエプロンが入った袋を渡す

「ええよ。どう?菜々さんとこ慣れた?」

「うーん。まだ勉強中かな」

そういって渡辺は苦笑いをする

「でも、まさか菜々さんのお父さんの銀二さんまで登場するとはなー」

「あははー。まぁ期間限定みたいやけどなー。でも助かってんねんで、睨みをきかせてくれて仕事に専念できるし」

そういって渡辺は笑う

「最近のネット社会は怖いなー。うちは年齢層高いからみるきー働いててもそんなに情報ひろまれへんかったんやけどなー」

そういって横山は苦笑いをする

渡辺が山田のカフェで歌声を披露してから

カフェでみるきーを見たという話しがネットで飛び交ったのだ

実際、その数日後

渡辺は働き始めたので

噂を聞きつけた客が顔を出すようになり

山田のカフェは瞬く間ににぎわいを見せた

渡辺が働くのは夜だけの約束だったのだが

てんてこ舞いの山田を見るにみかねた山本が

昼も働くように渡辺に提案したのだ

そして、女性二人では心配だと

山田の父である銀二が助っ人で来たのである

スイカ農家であるため出荷もあらかた終わり

カフェを手伝う時間は十分にあったらしい

銀二は昔、いろいろな野菜を育てて出荷していたのだが

つきつめた末にスイカ農家になったので

他の野菜にも詳しく、料理の腕も自然に身についているため

調理の腕前は娘の菜々よりも上だった

現在、盛り付けと飲み物は山田が担当し

調理は父親の銀二

ウエイトレスは渡辺

ということで落ち着いている

ちなにみ、銀二はガタイもよく、強面であり

日に焼けた肌がそれをいっそう増幅させていた

そのため、下心があったみるきーファンたちもその顔を見て

大人しくなっていた



「でも、彩とずっと一緒やったから寂しいんちゃうん?」

「いけるよー。土曜日は彩ちゃんも来てくれてるし」

「あーなんやええギターになってから、またギターバカになってるらしいやん」

「ふふっ。そうみたい。この前行ったらおばちゃんが私に愚痴ってた」

そういって渡辺は笑った

「何ゆうても聞かん時は、またみるきーが東京いったらええねん」

「ふふっ。そうやね。でも、いけるよ」

「え?」

「彩ちゃんの気持ち、ちゃーんと知ってるから」

「・・・ふーん。それはあの日、夜帰ってくる予定やったのに昼帰ってきたことと関係あるん?」

横山はにやっと笑う

「えへへー内緒。ほなね、ゆいはん。ありがとう」

「ええて。また食べに来てやー」

「うん」

そういって渡辺は戸に手をかけようとして

「ゆいはん」

振り返る

「ん?」

「たまにはひやひやさせるんもええな」

渡辺はニコッと笑う

「せやろ?」

その顔を見て、横山もニッと笑った


――――

帰り道

渡辺はY字路にある看板を見上げる

町のPR看板は

急な上り坂を登ったところから見える朝日の写真だった

その右端には最近作られたゆるキャラが写っていた

「・・・」

山本と自転車で2人乗りをして見た朝日を思い出す

「やっぱり生で見る方が綺麗なぁ・・・」

ぽつりと呟きながら

目線をさらに上にあげる

空は青く、夏の太陽がじりじりと渡辺を照らす

そのまぶしさに、渡辺は自分の手を掲げ

影を作り、目を細めた

『昼帰ってきたことと関係あるん?』

ふと、横山の言葉を思い出す

「・・・あるよ。ギターの配達時間やって無理ゆうて変えてもろたんやで」

渡辺はクスっと笑って

鞄に視線を降ろし

携帯を取り出し、操作する

その時

クラクションの音が聞こえ、振り返る

そこには見慣れた白いバンが止まっていた

「美優紀ー何してんねん」

「彩ちゃん。今日ゆいはんとこにエプロン返しに行っててん」

「ふーん。どや、配達ついでに乗ってくか?」

「うん」

そういって渡辺は携帯を手にしたまま

助手席に乗り込んだ

「今日は鈴木さんとこやから美優紀も行ってくれたら喜ぶわー」

「・・・」

渡辺は山本の横顔を見つめる

「ん?なんや?」

「ううん。なんでもない」

「ん?」

「ほら、彩ちゃん。前見なあぶないでー」

「あぁ」

山本は前を向く

「・・・あんなん聞いたら、帰って来るに決まってるやん」

渡辺は携帯を見つめ、ぽつりと呟く

「ん?なんや?」

「なんでもなーい。ほら、前見て」

渡辺はあわてて携帯を鞄にしまい

山本の腕に抱きつく

「こら、ホンマに前向かせる気でおるんか?」

「ええから、ええから」

「へいへい」

山本はフッと笑って、また前を見た




『伝言は1件です。ピー・・・帰ってこいや。ギターやどうでもええ。お前が・・・傍におってくれたらええんや』


車のエンジン音にまぎれて

鞄の中から、そんな声が聞こえた




FIN

不器用太陽-1年後、夏-22

次の日

「ほな店頼むわな―」

「美優紀ちゃんとなかよぅしなよー」

早朝、店の前で山本の両親は迎えに来てくれた友人の車に乗り込む

その表情は渡辺が戻ってきたのでほっとしているように見えた

「へーい」

「はーい、いってらっしゃーい」

そういって山本と渡辺は手を振って見送った


「ほな、配達行ってくるわ。店たのむでー」

「・・・えへへー」

「なんや?」

渡辺が照れくさそうにしているので

山本は車に乗り込む手前で立ち止まり

首をかしげる

「なんか新婚さんみたいやなー」

「な・・・」

山本は顔を赤らめる

「いってらっしゃい、あ・な・た」

渡辺は山本をからかうように、ニコッと笑った

―――


「まいどー。山本商店ですー」

山本は食材を持って山田のカフェに来ていた

「はーい。いつもありがとう」

パタパタとスリッパの音を響かせながら山田が玄関にやってくる

「今日はトマトがいいのはいってて・・・」

山本は食材の説明をし、山田は真剣な顔つきで頷いていた


「はい、お世話になりました」

説明が終わると、山田は料金を山本に渡す

「どうも。・・・あの」

「ん?どしたん?」

「美優紀・・・迷惑かけると思いますけど、よろしくおねがいします」

山本は頭を下げる

「ふふっ。なんや親みたいな事言うなー」

「ま・・・まぁ、幼馴染ですから。なんや・・・心配で」

山本は照れくさくなってぶっきらぼうに答える

「ううん。こちらこそやでー。みるきーがスタッフになってくれるとかテンションあがるわー」

山田はにこにこと笑う

「そ、そうですか?」

山本もつられて笑った

「あ、あの・・・明日、弾きに来ても良いですか?」

「うん!大歓迎やで!あ、もしかして、みるきーと来てくれるん?」

「あ・・・まぁ・・・」

山本はもごもごと答える

「ふふっ、楽しみにしてるな。あの曲、あんなとこで練習してたんは、みるきーに内緒にしたかったんやろ?」

「・・・え」

山本は驚いて固まる

「ふふっ。お姉さんをあなどったらあかんでー」

そういって山田は笑った

「・・・じゃ、じゃあ。私、配達ありますんで!失礼します」

「はーい。ありがとう」

山本はぺこっと頭を下げて店を出て行った

「・・・みるきーが好きになるんもわかる気がするなぁ」

そう呟いて、クスッと笑った


―――

夜になり

渡辺は山本家の台所に立っていた

「彩ちゃん、お醤油ってどこにあるん?」

「ん?あーここや。だいたい調味料ここに入ってるから」

そういって流しの下を開ける

「ありがとう」

「美優紀、料理とか作れるようになったんやな」

「まぁ東京でおったしね。お母さんも期限付きでついて来てくれてただけやから」

「ふーん・・・」

「彩ちゃんゴーヤ食べれた?」

「ああ、いけるで」

「良かったー。ゴーヤチャンプルーしようかとおもて」

そういって渡辺はてきぱきと準備を始めた

山本は手なれた様子でゴーヤを切る渡辺隣で見つめる

「ん?なに?」

「いや・・・手慣れてんなぁとおもって」

「惚れなおした?」

「な・・・か、感心しただけや。私、ちょっと2階ですることあるから。料理できたら呼んでくれや」

山本は顔を赤らめながら台所を出る

「もー・・・」

渡辺はそんな山本の後姿を見ながら口をとがらす

と、山本が立ち止まる

「あ、あのさ・・・明日は店早めに閉めて、菜々さんとこでご飯食べようかと思うねんけど・・・どうや?」

振り向き、ちらっと渡辺の顔色をうかがう

「うん!私行ってみたかってん」

「そ、そうか。ほな、よかった」

山本はホッとして2階へと向かった



バタン

山本は2階の自分の部屋に着くと

扉を閉め

壁にもたれかかっているナイロン生地のギターケースをそっと手に取る

そして、ケースの表面についているポケット中から

折りたたまれた紙を取りだした

あの雨の日に濡れて、乾いた後だったので

紙はずいぶんとよれてしまっていた

「はー・・・いろいろしてたら取り出すん忘れてたからなぁ・・・」

そっと中を開くと

そこに書かれた文字は滲んでいるなりにも、ちゃんと読めた

「よしっ」

山本は頷くと

今度はハードケースの中にしまわれていたギターを取り出し

チューニングを始めた


―――

「はーご馳走さん」

しばらくして渡辺に呼ばれた山本は1階で食事を摂り一息つく

「どうやった?」

「うまかったで」

「よかったー」

渡辺はにこにこしながら片づけを始める

「あ、するわ」

山本も立ち上がり

2人で並んで洗い物を始めた

「なぁ、彩ちゃん」

「ん?」

「さっきなんの曲練習してたん?」

「え・・・」

山本の手が止まる

「だって呼びに行ったら急に慌ただしく隠すんやもん。なー教えてや―」

渡辺は手が水で濡れているので、腰で山本の体をぐいぐいと押す

「あー・・・まぁええやん。さっさと洗って風呂はいろ。明日も朝早いんやし」

「えー」

はぐらかす山本を見て渡辺は口をとがらす

「ほれ、フライパンとかも洗ろてしまお」

山本は話題を変えようと渡辺の隣から離れ

コンロの上にあるフライパンを手に取る

渡辺はそんな山本を見てムッとし

何かを思いついたようにニヤッと笑う

「・・・お風呂入ったら寝るだけ?」

「はぁ?」

山本はきょとんとする

「東京でせっかくかわええ下着こうてきたんやけどなー」

「な・・・」

「昨日のはぶっちゃけ勝負下着やなかったし。あれだけ心残りやねんなー」

「・・・」

山本は昨日の事を思い出し

みるみる顔が真っ赤になる

「彩ちゃんと初めての時はめっちゃかわええ下着つけようって思てたんやけどなー」

「う・・・うっさいわ。ほれ、洗うで」

山本は真っ赤になりながら

渡辺を押しのけて、スポンジを手に取る

「なぁなぁ。どう?見る?」

渡辺はにこにこと山本の顔を覗き込む

「あーもう!ええから!ほれ、終わったし、風呂入るで!」

山本は渡辺を押しのけてフライパンを水切り台に置いて

手早くタオルで手を拭き背を向ける

「一緒に?」

渡辺は、すかさず後ろから山本に抱きついて尋ねる

「・・・別々や!」

ムキになる山本を見て

渡辺はにこにこと笑っていたのだった

不器用太陽-1年後、夏-21

―――――
「ほー・・・私がおらんところでそんな話しがあったんやな」

横山の店で

山本はいつもの席に座っていた

あの日、渡辺家であった出来事をかいつまんで話され

カウンターの向こうにいる横山を睨む

「・・・そない怒らんでもええやん」

「そやでー。はい笑って笑って」

そういって隣では渡辺がつんつんと山本の頬をつつく

「はい、お詫びの品」

そういって横山は刺し身の三種盛りを差し出す

「・・・ったく、思いつきにしては手のこんだことしやがって」

山本は刺し身を醤油につけ、もぐもぐと口を動かした

「でもわかったやろ?みるきーの存在の大きさに」

横山はニッと笑う

「・・・」

山本は、隣でじーっと見て来る渡辺と視線が合わないように

壁の方を見ながら黙って口を動かしていた

「まぁ彩んち行った時、みるきーのおばちゃんから東京に行ったって聞いてたらしいから、さすがに焦ったけどなー。口止めギリギリセーフやったわ」

「ごめんなー。お母さんそういうとこうっかりしてんねん」

渡辺は手を合わせて謝った

「え・・・ちょっと待てぇ!うちにいつ来てん?」

「ん?おとついの夜」

「なっ!まさか休みくれたんってゆいはんの仕業?」

「仕業って・・・おかげの間違いちゃうか?仕事無いと余計考えるかなーと思っておばちゃんらに頼みにいってん」

横山はニッと笑う

「まさか、里歩が飲みに誘ってきたんも・・・」

「まぁそやな。最近彩がこんから寂しいねん。って話ししたらまかしときーって連れて来てくれたで」

「なんか・・・してやられたって感じやわ」

山本は怒りを通り越して、もはや感心していた

「まぁ、里歩は嘘が下手やから・・・なんも話してなかってんけどな。どうせ彩は酔っぱらって閉店までおるやろうから、その時にみるきーが東京に行ったって話そうとおもててんけど。お客さんがみるきーが店辞めてしもたんかってゆうてきたから、里歩を誤魔化すんどうしようかとおもたわ。」

横山は苦笑いをする


ガラガラガラ・・・

戸が開く音がして

山本と渡辺は振り返る

「あー!みるきー!!」

そこに居たのは小谷だった

そして

渡辺の姿を見つけ、うれしそうに隣に座った

「もー!心配してんから!帰ってきてくれてよかったー」

そういって小谷はぶんぶんと渡辺の手をつかみ振る

「ごめんな、りぽぽ。はい、お土産」

「わーありがとう!」

「な?」

横山は山本に目をやる

「・・・ほんまやな」

山本も小谷の表情をみて、本当に事情を知らなかったのだと理解した



「もーゆいはんも人が悪いなぁ」

渡辺から事情を聞き、小谷は口をとがらせる

「まぁ怒らんの。はい、お詫びの品」

そういって横山は小谷にも刺し身の盛り合わせを差し出す

「うむ。許してしんぜよう」

そういって小谷は嬉しそうに刺し身を頬張った

「んーおいしー。だいたい、おかしいとおもてん。だって看板撤去してくれってゆうたんみるきーやのに、また東京行ったとかゆうから。これはなんかあるって私おもてたねんで」

小谷はさっきと打って変わって得意気に話す

「はいはい。そんなんゆうて本気にしてたんは・・・って、え?そうなんか?」

山本は驚いて小谷の方を見る

「え?私の読みの事?」

「いや、違うわ!看板の事や」

「うん、せやで。4月ぐらいからみるきーに言われててんけど、うちの町のPR看板のデザインがなかなか決まらへんくってさー。ずーっと先延ばしになっててん。」

「・・・」

山本はじろっと横山を見る

「まぁその話しはここでしてたから知ってたけど・・・さすがに工事の日にちまでは操作でけへんわ」

横山はそう言って苦笑いをした

「・・・でも、なんで看板はずしてくれってゆうたんや?」

山本は渡辺の方を見る

「だって、もう私アイドルやないのにあの看板あるんも変やん。でな、あそこの看板は役場が管理してるって聞いたからりぽぽにお願いしててん」

「そ・・・そうなんか」

「せやでー。前パチンコ屋の看板やったけど、つぶれた時に役場が看板の管理者になってん」

「へー。それで美優紀の看板になった時あんなにでかいライトがついたんやな」

ここらであんなライトが設置できるのは確かに役場くらいだろうと

山本は納得した

「まぁPRのモデル、みるきーに頼んだけど断られたんは残念やったけどなー」

「はぁ?そんな話しになってたんか?」

山本は驚く

「うん、でも私がまた看板に写ってたらなんのために撤去したかわからへんから」

そういって渡辺は苦笑いをした

「まぁ・・・そうか」

「それに、私はもう皆のアイドルやのうて彩ちゃんのもんやしなー」

そういって渡辺は嬉しそうに山本の腕に抱きつく

「なっ、なにゆうてんねん」

山本は先ほどの事を思い出して真っ赤になる

「ほぉ・・・」

その反応を見て、横山がニヤッと笑う

「えーなになに?どういうこと?」

意味がわからない小谷は2人に詰め寄る

「べ、べつになんでもないわ!美優紀も変な言い方すんなや」

「えーほんまやん」

「里歩、あとでじーっくり説明したるわ」

横山がにやにやしながら言う

「うん!」

「いやいや、待てぇって!里歩!なんでもないからな!」

顔を赤らめながら叫ぶ山本には迫力がまったくなく

渡辺と横山は声をあげて笑った

「えー?なんなん?」

そんな様子をみて小谷は一人だけ首をかしげていたのだった

不器用太陽-1年後、夏-⑳

話しは山本と渡辺が喧嘩をした日にさかのぼる

―――

横山の家でひとしきり泣く渡辺を慰めた後

横山は車で渡辺を送っていた

雨は止んだが

空は薄暗い雲がまだ覆っていた

「・・・」

車の中でも渡辺の表情は暗い

「大丈夫やって。彩やって時間がたてば落ち着いてくるから」

「・・・うん」

横山の励ましに力なく答える

渡辺の家まであと数メートルとなった時

横山はブレーキを踏み、止まる

「・・・」

俯いていた渡辺はその振動で顔を上げた

視線の先には車庫からゆっくりバックをしている車が

こちらに向き合おうとしているところだった

「ん?ていうかあそこって田中さんとこやんな。珍しいなぁ」

「え・・・」

渡辺は目を見開き

カチャッ

バタン!

渡辺はシートベルトを外し、車から降りる

そして

道路で腕を広げ、前から来る車の前に立ちはだかった

「え?ちょっ!みるきー!」

助手席に渡辺の行動が理解できず

横山は慌てて車から降りる

「みるきー!」

横山は渡辺に駆け寄る

「どないしてん!」

「あの車やねん」

「え?」

「あの車・・・昼、彩ちゃんちの配達の車の前に止まってたねん」

「じゃあ・・・昼見た彩の相手?」

「・・・そうやとおもう」

ガチャ・・・

淡いピンクの軽自動車から

女性がゆっくりと出てきた

「「・・・」」

渡辺と横山の顔が強張る


「み・・・み・・・みるきーやーー!!」

「「へ?」」

その甲高い声と渡辺の名前を読んだことにより

渡辺と横山は一気に力が抜ける

「あのっ!私、覚えてますか?」

その女性は渡辺にずいっと近づき顔を寄せる

「え・・・?えーっと・・・」

渡辺は困惑する

「あ、髪くくってるからあかんねな」

そういってひとつくくりにしていた髪をほどく

「あーーー!その声と髪型ー!」

渡辺はハッとする

「いやー!思い出してくれた?」

「うん!大阪の握手会の時いっつもきてくれてたやんな」

「そうそう!いやーめっちゃ嬉しいねんけど」

そういって2人は手を取りはしゃぐ

「あ・・・あのー・・・」

横山は事態を飲みこめず

おずおずと声をかける

「あ、すいません。私、山田菜々っていいます」

そういって頭を下げる

「菜々さんって言うんや。髪くくってたからわからへんかったわ」

「そりゃ握手会は気合入れて行くからなー」

「あ、あのー・・・田中さんとはお知合いなんですか?」

はしゃぐ2人に申し訳なさそうに横山はおずおずと声をかける

「え?あぁ。私、孫なんです」

「ま、孫さん?」

横山は目を丸くした

「そうなんよ。私、隣町でカフェしてるんやけど。水曜日は休みやから、ばあちゃんの様子見に来てるんです」

「そうなんですか・・・」

「あ、あの、聞きたいことがあるんです・・・。うちに来てくれませんか?」

渡辺は身を乗り出して言う

「え?え?ええー!ええの?」

山田は興奮して叫んでいた


―――

トクトクトク・・・

渡辺はキッチンでグラスに麦茶を注ぐ

両親は仕事のため、まだ帰ってはいなかった

渡辺はお盆にグラスを乗せ

「どうぞ」

リビングのテーブルに置く

「あ、ありがとうございます・・・」

山田はソファーに座り、固まっていた

「そんなに硬くならんでも・・・」

その隣で横山が苦笑いをする

「だって、みるきーの家やで!あんまりきょろきょろしても失礼やし・・・そう思たら動けへんくて・・・」

そう言って山田は麦茶を一口飲んだ

渡辺は斜め向かいに座り、山田を見つめ

「・・・あ、あの。菜々さん。今日防波堤で彩ちゃんとおうてましたよね?」

意を決して本題に迫る

「へ?あぁ、そうやで。みるきー知り合い?」

「私ら幼馴染なんです」

「へ?そうなん!?あ、せやから・・・」

そう言いかけて山田は口をつぐんだ

「なに?」

渡辺は身を乗り出す

「あ・・・えーっと・・・彩ちゃんからうちの店に連れてきたい人がおるってゆうてたから。それ、みるきーのことやったんかなぁって思って」

山田はしどろもどろに答える

「彩ちゃんが・・・?」

「せやで。歌うまいやつがおるからってゆうててん」

そういって山田はまた麦茶を飲む

「ほら、みるきーやっぱり思い違いやって」

隣で横山が小声で言う

「・・・あの。防波堤で、彩ちゃんと抱き合ってましたよね」

「み、みるきー」

横山は慌てる

「ごほっ!ごほっ!」

いきなりの問いかけに山田はむせる

「あービックリした・・・なにそれ?」

山田は息を整え、渡辺の方を見た

「私、見たんです。答えてください」

「・・・」

山田は首をひねり

「あー、ひょっとして私が風にあおられて海に落ちそうになった時のん見たん?」

「へ?」

「海に・・・?」

渡辺と横山は力が抜ける

「うん、いきなり強い風が吹いてなー。彩ちゃんが支えてくれんかったら海に落ちてるとこやったわー」

そういって山田は照れくさそうに笑った

「なんや・・・よかったな。みるきー」

横山はほっとして渡辺の方を見る

しかし、渡辺の表情は硬いままだった

「・・・私・・・どうしたらええんやろう」

そう呟き、目から大粒の涙がこぼれる

「え?え?みるきー?どないしたん!?」

山田は慌てきょろきょろとあたりを見渡し

近くにあったティッシュを勢いよく引っ張りだして、渡辺に渡した

「・・・うぅー・・・」

渡辺はティッシュを受け取り

ぐずぐずと泣くばかりだった

「ど、ど、どないしたん?私、なんかあかんことゆうた?」

「いやー・・・なんていうか・・・いろいろありまして。すいません、少し待っててもらえますか?」

「う、うん」

山田はこくんと頷く

リビングの気まずい空気に

横山は渡辺の手を引き、廊下へと連れ出した


「みるきー・・・いけるか?」

「私・・・東京行く」

息を整えながら、渡辺がぽつりと言う

「え?」

「最近ゆいはんとこの店に来てる人、音楽プロデューサーやねん。せやからその人に頼んで彩ちゃんのギター探してくる・・・」

「みるきー・・・」

「だって・・・そうせんと、私ホンマに最低やもん・・・」

「何もそこまでせんで・・・あ。」

そう言いかけて、横山は何かを閃く

「なに?」

「みるきー。東京いってきぃ」

「う、うん」

「で、うちの店辞めて菜々さんとこで働き」

「へ?」

今度は渡辺が驚く

「最近はみるきーのおかげでお客さんも増えたけど、その分酔ったお客さんに絡まれることも多くなってたやん。」

「ゆいはん・・・」

「母さんもフォローしてうまくかわすようにしてたけど・・・しつこい人やっておるしなぁ・・・。みるきー辞めさせたらゆうたら彩、理由きいてくるやろ?ホンマのことゆうたら怒ってお客さんにつっかかって行きそうやし・・・どうゆうたらええか考えてたんや」

そういって横山は苦笑いをした

「で、でも・・・」

「それに、お酒出る店より、カフェの方がみるきーらしくてええわ。な?」

「・・・え・・・う、うん」

渡辺は横山の勢いに押されて頷いた

「でな、ちょっと考えがあんねん」

「なに?」

「みるきー、しばらく東京におることってできる?」

「あ・・・でも、来週彩ちゃんのおばちゃんら旅行に行くから、それまでには帰らな・・・」

渡辺は顔を曇らせる

「あー・・・じゃあ、こうしよう。おばちゃんらが旅行に行く前の日まで東京におりな。その間、彩と連絡は一切とったらあかん。」

「え・・・でも・・・」

「ええて。今謝っても彩もムキになるだけやろうし、時間が開いたほうが気持ちも落ち着くしな」

「・・・」

「いけるって。それに・・・」

「なに?」

「たまには彩もひやひやさせたったらええねん」

そういって横山はニッと笑った


―――――

しばらくして

渡辺が落ち着いたので、2人はリビングに戻った

「もう、いけるん?」

山田はソファーから立ち上がり

心配そうな顔をしていた

「はい。すいませんでした。あの、いきなりなんですけど菜々さんにひとつお願いがあるんです」

横山は切りだす

「なに?」

「みるきーを菜々さんのカフェで働かせてもらえませんか?」

「え?ええっ!」

山田は驚く

「だ、だめかな・・・」

渡辺はその反応を見て申し訳なさそうに俯く

「なにゆうてるん!大歓迎や!」

そういって山田は渡辺にずいっと近づいた

「あ・・ありがとうございます」

その勢いに渡辺も顔を上げ、一歩下がった

「よかった。あの、でも働くのは再来週くらいまで待ってほしいんです」

横山が言う

「え?どないしたん?」

「詳しくは言えないんですけど・・・みるきー数日間東京にいくんです」

「え?なに?まさか復活!?」

山田は興奮する

「ううん。多分ステージには立つやろうけど・・・1回だけ。もう復帰はせぇへん。・・・ちょっとやらなあかんことができて、そのために立つだけやから」

「・・・そうなんや。うん、うちの店はいつからでもええからいってきて」

山田はニコッと笑う

「それで・・・お願いがあるんですけど」

横山が申し訳なさそうに、会話に入る

「ん?」

「みるきーが東京に行くこと・・・誰にも言わんといてほしいんです」

「え・・・?あ、わかった!」

山田はぽんっと手をたたく

「へ?」

横山はきょとんとする

「みるきーがステージに立つんはサプライズ演出なんやろ!?それがどっかから広まったらサプライズにならへんやんな!安心して、言わへんから!」

「は・・・はぁ・・・ありがとうございます」

そういう意味ではないのだが、横山は絶対に言わないだろうなという妙な安心感を覚えた

「菜々さん。ありがとう」

「ええよ!みるきーに会えて、しかも店で働いてくれるっていうんやもん!もう私にしたら今日がサプライズやで!」

「じゃあ・・・あと、もう一ついいですか?」

横山がおずおずと言う

「ん?」

「彩には今日みるきーと会ったことは内緒にしといてください。もちろん東京に行くってことも」

「え?でも、幼馴染って・・・」

山田は首をかしげた

「菜々さん。おねがい」

そういって渡辺は泣きはらした目で山田を見つめる

「・・・あーもう、そんな目で見つめられたらあかんて!」

そういって山田は身体をぶんぶんと揺らし、身もだえる

「あ・・・あの」

横山はその様子を見て驚く

「ご・・・ごめんな。あー・・・あかん。興奮してしもて、つい・・・」

山田は乱れた髪を整え、一息つくと

「・・・わかった。絶対に言わへん。約束する」

そういって頷いた

「ありがとう、菜々さん」

「ええよ!みるきーのためやもん」

2人は手を取りぶんぶんと振った

「あ、菜々さん」

「え?なに?」

横山の問いかけに、山田は渡辺の手を取ったまま首をかしげる

「彩には田中さんとこの孫っていうんも黙っといてもらっていいですか?」

「え?」

「その方がおもしろいですから」

そういって横山はニヤッと笑った

不器用太陽-1年後、夏-⑲

――――

渡辺の部屋のベッドで

2人は横になっていた

渡辺は山本の腕にもたれ

幸せをかみしめていた

山本は天井をみつめながら

高揚感に酔っていた


「えへへ・・・」

渡辺はきゅっと山本に抱きつく

「美優紀・・・」

山本は横を向き、渡辺の頭をなでる

渡辺は嬉しそうに山本の胸に顔を寄せた

その顔を見て山本もまた微笑んだ

――――

母親が帰ってくる時間が迫ってきてたので

2人は服を着てリビングに戻る

ジャーン・・・

「あーたまらん・・・」

マーティンのギターの響きに

山本は感動する

「なんや私が戻ってきたときより嬉しそうなんやけど」

渡辺は荷物の整理をしながらむすっとする

「そ、そんなことないわ」

山本はあわてて否定する

「まぁええけどー」

そういって渡辺は山本の隣に座る

「じゃあ一曲おねがいします」

「なにがええ?お客さん」

「彩ちゃんが作ってくれたやつ」

「おう」

山本はニッと笑って、ギターを構え直した

――――

「おかえりー。あ、彩ちゃん来てたん?」

少しして渡辺の母が帰ってきた

「はい、おじゃましてますー」

「はい、これお土産ー」

渡辺は東京土産を母に渡す

「ありがとう。ちゃんとできた?」

「うん。でも久しぶりの東京は疲れたわ。やっぱり地元がええなー」

そういって渡辺は笑った

「じゃあ、田中さんとこにお土産渡してくるな」

「そう?いってらっしゃ」

「彩ちゃん行こう」

「え?あ、あぁ」

渡辺は袋に2箱お土産を入れる

「2つあげても、ばぁちゃん食べれんのちゃうんか?」

「ん?あぁ・・・ええの、ええの。いこっ」

「あ、あぁ」

渡辺に促されながら

2人は田中家へとむかった

「こんにちはー」

「あら、彩ちゃんに美優紀ちゃん。いらっしゃい」

ひょこひょこと田中のばぁちゃんが現れる

「ばぁちゃん、私東京いっててん。これお土産ー」

そういって渡辺はお土産の袋を見せる

「まぁーわざわざすまんなぁ。ありがとう。まぁお茶でものんでいき」

「おじゃましまーす」

「おじゃまします」

そういって2人は中に入って行った

「はい、どうぞ」

田中のばぁちゃんは麦茶を机の上に置く

「ありがとう。はい、これ。おかきやから」

そういって1箱差し出した

「ありがとう」

「ん?もうひとつは?」

2つとも渡さないので、山本は首をかしげる

「あー・・・こっちは」

ガラガラガラ

勢いよく玄関を開ける音がした

「あーもう来てる!?ごめんなさーい」

「へ・・・?」

聞き覚えのある甲高い声に

山本は驚く

ドタドタドタ・・・

「みるきーごめんなー!おそうなってしもて」

そこに現れたのは山田だった

「え・・・な、菜々さん?」

「あー彩ちゃんも来てたんやー」

「菜々さん、これお土産ー」

「えーみるきーありがとう!」

山田はお土産を受け取りにこにこしていた

「あ、あのー・・・」

その様子を見て山本が話しをしようとした時

「菜々も麦茶でええかー?」

田中のばあちゃんがゆっくり立ち上がる

「あ、ええよ。自分でいれるから。ばあちゃんは座っといて」

「ほな適当にいれてやー」

田中のばあちゃんはまたゆっくり座り直す

「いやいやいや!」

山本は思わず立ち上がり

3人の視線が一気に山本に集まる

「どないなってんねん」

「へ?何が?」

山田は首をかしげる

「いやいや、なんで菜々さんがここにおるんですか?」

「え?そりゃみるきーによばれたからに決まってるやん」

「そうそう、お土産わたしたかってん。夜の営業前に呼んでごめんなさい」

「そんなん全然かめへんよー。こっちこそ遅くなってごめんなー」

そういって2人はにこにこと笑う

「いやいや・・・なんでそないに仲ええの?」

「私、みるきーのファンやねん」

「へ?」

「そうやねん。わたしもビックリしてんけど。握手会とかイベントととか良く来てくれてたねん」

「ばあちゃん家の斜め前がみるきーの生家やって知った時は衝撃走ったで、ほんま」

「え?ばぁちゃん?」

「へ?そやで」

そういって山田は田中のばぁちゃんをみつめる

「菜々は銀二の娘やでー」

そういってニッと笑った

「ええっ!」

山本は驚く

「え?だ、だって田中のばぁちゃん息子さんばっかりって・・・」

「銀二は婿養子に出したんや。三人も息子おったら一人くらい出さんとな。まぁ田中も山田も似たようなもんやし」

豪快に田中のばぁちゃんは笑う

「え・・・で、でも孫さん25歳くらいやゆうてたやん」

「あ、ばあちゃん、ちゃんと覚えてくれてたんやー。そやでー25歳」

山田はにこにこと笑う

「え、うそやん!・・・」

どう考えても三十路やろと言いかけて山本は口をつぐんだ

「あー!どうせめっちゃ年上やとおもてたんやろ」

山田はむすっとする

「い、いや。だって店するくらいですし・・・」

山本は苦笑いをする

「まぁええけど。みんなには三十路とかアラフォーとかゆうてよういじられんねん」

「・・・」

その気持ちは大いにわかるが、話しが進まないので山本は黙った

「ん?じゃあ、ばぁちゃんちに美優紀のうちわがあるんって・・・」

「そりゃもちろん!私があげたんや」

「はは・・・はぁ・・・」

そういってふんぞり返る山田を山本は力なく見つめていた

不器用太陽-1年後、夏-⑱

山本は顔を赤らめ、俯いたまま道を歩いていた

その隣には渡辺がにこにことキャリーケースを引きずりながら歩く

看板前で抱き合い

作業員たちに不思議そうに見られていたことに気づき

山本は慌てて渡辺の手を引き、退散したのだ

2人は渡辺の家へと向かって歩く

家に着くと渡辺は鍵を開け

山本も家の中に入った

「今日、お母さん急に出ていかなあかんようになってしもてなー、せやから駅から歩いててん」

そういって渡辺はキッチンに向かい

冷蔵庫から麦茶を出す

「そうなんや」

リビングで山本はソファーに座る

「はい」

渡辺はソファー前のテーブルに麦茶を2つ置き

山本の隣に座った

「・・・ごめんな」

渡辺は山本の方を向いて言う

「いや、私が悪いねん。・・・なぁ」

「ん?」

「東京行ってたってホンマか?」

「うん」

「その・・・」

「ん?」

「芸能界戻るんか?」

「え?なにそれ?」

「へ?」

山本はぽかーんとする

「だ、だってゆいはんが美優紀は店辞めて東京に行ったって・・・」

「あー店辞めたんはホンマ」

「え・・・」

「まぁちょっといろいろあって」

「いろいろってなんやねん」

そう問いただそうとした時

ピンポーン

玄関のインターホンが鳴った


「あ、きたきた」

渡辺は嬉しそうに立ち上がり、玄関の方に行ってしまった

「なんやねん・・・」

少しして渡辺がリビングに戻ってきた

「私が東京行ってた理由は・・・これ」

そういって透明のクッション材にくるまれたギターケースを見せる

「え・・・?」

「彩ちゃんのギター・・・探しててん」

「そんなんええのに・・・」

「だって、大事にしてたのわかってたし・・・だから東京の音楽プロデューサーさんとこに行っててん」

「え・・・」

「でも私、ギターのことようわからへんから・・・おんなじメーカーで許してもらおうと思って・・・」

そう言いながら梱包をはがし

「はい」

ギターケースを

山本に差し出した

「あ・・・あぁ」

山本はソファーから立ち上がり

柔らかな絨毯の上にケースを置き

ゆっくりと開けた

「え・・・ええっ!」

山本はロゴを見て驚く

「み、美優紀!これマーティンやんか!」

「うん、メーカー合ってた?」

そういって渡辺は山本の隣にすとんと座る

「いやいや!私のはモーリスや!」

「え?ちがうん?私Mって頭文字しか覚えてなくって」

「全然違うわ!」

思わず山本は突っ込みを入れる

ギターはピンからキリまであるのだが

山本は3万円のMorrisというメーカーのを使っていた

一方、渡辺が持ってきたギターはMartinという海外の一流メーカーなのだ

その値段はため息が出るほどのものだ

「えー・・・ギターでMからはじまるゆうたらそれやってゆうてたで」

「いやいや、そりゃ業界の人はそうゆうわ!これ、めっちゃ高かったやろ?」

「え?なんかプロデューサーさんが見つくろってくれたからわかれへん。支払いは私がステージに立ってくれたらそれでええって言われて」

「はぁ?」

「この町に私がおるんしってて、ゆいはんとこに飲みに来ててん。ずーっとステージ立ってくれって言われてたからこの機会にOKしちゃった」

そういって、てへっと笑った

「いやいや、そないなことしたらまた立ってくれとかいわれるやろ」

「うーん。まぁ言われたけど・・・もう戻る気はないってゆうたからいけると思うよ」

「せやけど・・・」

にこにこと笑う渡辺をよそに山本は表情が曇る

「前もゆうたやん。私は彩ちゃんの隣で歌ってるのが好きやって」

そういって笑った

「・・・」

山本はギターをそっとケースにしまい

「美優紀・・・」

渡辺を抱きよせる

「彩ちゃん・・・」

「もう、どこにも行くな」

「うん・・・もう・・・離したら・・・嫌やで」

「・・・離さへん」

2人は唇を重ねる

久しぶりの感触に山本の鼓動は高鳴る

「ん・・・はぁっ・・・さやか・・・ちゃん?」

激しいキスに渡辺は困惑する

「あかんか・・・?」

山本は渡辺を見つめる

「もう・・・そんな顔されたら・・・嫌っていえんやん」

「ええねんな?」

「へ?きゃっ」

そう言ったかみたかで渡辺の体は絨毯の上に押し倒されていた

「さ、彩ちゃん・・・その・・・ここリビングやから」

「あ・・・」

「へ、部屋なら・・・ええよ」

目線を合わせずに渡辺は顔を赤らめながら言う

「・・・ほないこか」

「うん・・・」

山本は手を差し出し、渡辺を引き起こし

立ち上がる

「へ?きゃっ」

立ち上がると同時に、渡辺の体はふわりと浮きあがり

気付けば、山本にお姫様だっこをされていた

「さ、彩ちゃん?」

「ちゃんと食べてんのか?ビールケースより軽いで」

山本はニッと笑い

歩を進める

「え?ちょっ・・・階段あんねんで」

その言葉で山本は立ち止まり、渡辺の方を見た

「いけるわ。この1年でどんだけ荷物かついでたとおもてんねん」

「せやけど・・・」

「いけるって。それに・・・」

「ん?」

「離さんといてってゆうたやんか・・・」

山本は顔を赤らめ、視線をそらす

「・・・彩ちゃん。うん!」

渡辺はきゅっと山本の首に腕を回した

「・・・ほな行くで」

そういって山本は顔を赤らめながら再び歩き出した





不器用太陽-1年後、夏-⑰

――――

チュチュン・・・

鳥がさえずる朝

「うわっ!あんたどこで寝てんのよ」

山本の母は居間で寝ている山本を見て驚く

「んー・・・」

母親の声に頭が響き、山本は寝返りを打つ

「いやっ!何?その背中?どこに寝そべってきたんよ!」

背中についた砂が畳を汚していて

母親は山本の身体をぺしっと叩く

「あー?なんやねん」

「なんやねんちゃうわよ!酒くさっ!もーこっち来て」

母親は山本を無理やり起こすと

居間から店の方に出てぺしぺしと背中をはたく

その振動で頭が揺れ、吐き気に襲われるが

山本は目を閉じてかろうじて耐えていた

「はい、ほなお風呂入ってきて」

そういって母は店の冷蔵庫から水のペットボトルを差し出す

「へーい・・・」

山本は水を飲みながら、ふらふらと風呂場へとむかう

「服ここに入れてよ。別に洗うから」

母親がいつもとは違うカゴを持ってきた

「あー・・・はいはい」

山本はばさばさと服を脱ぎ

風呂場の戸を閉めた


ザーーーー・・・


山本は髪を洗うでもなく

俯いたままシャワーに打たれ

「美優紀・・・」

そうぽつりと呟いた


―――

風呂から出てきた山本は自分の部屋に入り

ベッドでごろごろと寝がえりをうつ

「・・・はー・・・」

天井を見つめ、ため息しか出ない

今は何もする気になれなかった

渡辺が東京に行ってしまったということ事実が頭から離れなかった

「なにしてんねん・・・私は」

そう呟き

手で顔を覆う


自分が悪いことはわかっていた

あんなに怒鳴るんじゃなかった

無理やりにでも車に乗せて

ちゃんと話しあえばよかった

ギターが濡れてカッとなって・・・

あんな雨の中、美優紀を放っておいてしまった

だから・・・

だから、美優紀は・・・

「ほんま最低や・・・」

そう呟き、手で目のあたりを拭った


―――

しばらくして

山本は服を着替え

1階へと向かい、靴をはく

「あんた、どこいくん?」

「散歩や」

「この炎天下に?」

「ええねん。熱いほうが気ぃ紛れるから」

「はぁ?」

首をかしげる母親をよそに

山本はふらふらと店を出て行った


ミーンミンミンミン・・・

蝉の声が暑さを増幅させる

暑さで蜃気楼のように揺らめく道を

山本はとぼとぼと歩いていた

携帯を何度見ても

渡辺からの連絡はなかった

「・・・」

渡辺の泣き顔が浮かぶ

「・・・美優紀」

山本はまたポケットに携帯を差し込み

笑顔の渡辺を求めて

ふらふらと歩きだした


Y字路の看板が見えたころ・・・

「え・・・?」

クレーンがついた大型トラックと数人のヘルメットをかぶった人たちが見えた

そして

クレーンに乗っている人が渡辺の看板に手をかける

「なにしてんねん!」

山本は叫び、夢中で走りだした

「ちょっと待ってください!」

「え?な、なんや?」

血相を変えて走ってきた山本を見て

ヘルメットをかぶった大人たちは驚く

「その看板外さんといてください!」

「え?いやいや。外してくれって頼まれてるし、俺らにそんなん言われても」

日によく焼けたガタイのいい男が眉をひそめる

「そこをなんとか!おねがいします!」

山本は頭を下げる

「いやいや・・・そういわれても」

山本の勢いに押されながら男は困惑していた

「お願いします!お願いします!」

山本は頭を下げ続ける

「なんやねん・・・」

その様子に作業員立ちは顔を見合わせる

「おーい。はがしてええんか?」

クレーンの上にいた男が叫ぶ

「おーええでー」

「ちょっ!待ってください!」

「ねぇちゃんすまんな。こっちは仕事なんや」

冷酷にも作業員が渡辺の顔のあたりに手をかける

「あ・・・」

その瞬間

『彩ちゃん』

山本の脳裏に

笑顔の渡辺が浮かんで・・・

スッと消える


「美優紀!!」

山本は叫び

看板の下に駆け寄ろうとしたが

「ねぇちゃん、あかんて!危ないから!」

作業員たちが制止する

「やめぇや!はがすな!」

山本はじたばたと暴れる


看板の美優紀がおらんようになったら

この町から・・・

美優紀が消えてしまう・・・

ホンマに、帰ってこんようになってしまう・・・

ホンマに・・・


「ええから、やれ!」

クレーンの上で躊躇していた作業員が

日に焼けた作業員の言葉で

再び渡辺の顔に触れる


「美優紀ー!!」

山本は看板を見上げながら

渾身の力で叫ぶ



「・・・彩ちゃん?」

「へ・・・?」

山本と作業員たちはピタッと動きを止め

ゆっくりと左に向く

そこには

つばの広い白の帽子をかぶり、ピンクのワンピースを着た渡辺が立っていた

その手にはキャリーケースが握られていた

「みゆ・・・き・・・」

「え?え?」

作業員の男たちは看板と渡辺を何度も見比べ、困惑していた

「美優紀!」

山本は勢いよく渡辺に駆け寄り

「さやか・・・ちゃん・・・」

迷うことなく抱きしめた

その勢いに、ふわりと帽子が舞い

驚いた渡辺が手を離し、ごとんと音をたてて地面に落ちたキャリーケースの横に

静かに落ちた


「ごめん・・・怒ってごめん・・・」

山本は渡辺がここに居ることを確認するかのように

ぎゅっと力を入れる

「ううん、私も・・・ごめんな」

渡辺はそんな山本の背中に

そっと手を回した


「どないなってんねん・・・」

作業員たちはぽかーんと抱き合う2人を見て固まっていた

不器用太陽-1年後、夏-⑯

ガラガラガラ・・・

「あら、彩ちゃん。いらっしゃい」

着物姿の横山の母がニコッと笑った

「あ、ども」

山本はしばらく来ていないことに罪悪感を感じながら、頭を下げた

「いらっしゃい」

そういって横山はいつものカウンター席に座る2人の前に立つ

「彩、なんにする?」

「あ、今日はビール」

「えー市場は?」

小谷は驚く

「あー明日休みくれてん」

「へー珍しいなぁ。ゆいはん、私もビール」

「里歩は言わんでもわかってるで」

横山はくすっと笑って瓶ビールの蓋を開ける

山本はきょろきょろと店内を見渡す

渡辺の姿がどこにもないのだ

「なー今日みるきーは?」

山本が聞きたいことを小谷が代弁してくれた

「あー今日は休みやねん」

そういって横山はちらっと山本を見る

「えー?そうなん?ここんとこずっと休んでない?」

「・・・」

山本はバツが悪そうにビールをぐっと飲んだ

――――

「里歩!もうちょっと付き合えって」

「あかんて、明日仕事やで。もうこれ以上はあかんわ」

久しぶりのアルコールと勢いに任せて飲んだせいか

山本は悪酔いしていた

遅くなった店内は常連客がまばらに居るだけになった

「ママ、美優紀ちゃん辞めてしもたんやって?さびしーなー」

「え・・・?」

客の一人からそんな声が聞こえて

山本は固まる

「えっ!どういうこと?」

さすがに小谷も驚いたのか帰ろうとしていたのをやめて椅子に座りなおした

「・・・みるきー東京に行ってしもたんや」

横山はぽつりと言った

「え・・・?」

「えーなんで!?ゆいはんさっき休みやってゆうてたやん!」

小谷の叫び声が山本の胸をえぐる

「・・・そうなると思って、2人にはお客さん減ってからちゃんと話そうとおもってたんや」

横山はため息混じりに言う

「あのな、ここんとこずーっと来てるお客さんがおって、なんやみるきーの知り合いやったみたいやねんけど・・・芸能関係の人っぽくてな。隙があればずーっとみるきーと話してたんや」

「え?なにそれ?もしかして芸能界に戻って来いってやつ?」

小谷が身を乗り出す

「・・・」

山本の顔からは血の気が引いていった

「そうやろうな。みるきーいきなり辞めたやんか。せやからファンの人たちが復帰熱望してるみたいで、東京のイベント1回出てくれたらええからとかいうんがちらっと聞こえてきたりしてたんや」

「えーそんなん、1回だけやゆうて出てしもたら、もう一回とかゆうに決まってるやん」

「うん。せやからみるきーも渋ってたみたいやねんけどな・・・この前、ここ辞めて、東京に行くってゆうて・・・」

「そんな・・・急すぎやん!私何も聞いてないで!」

小谷の声が店内に響き渡る

「落ち着き、里歩。どうするかはみるきーが決めることや。落ち着いたらまた戻ってくるつもりで、言わんかったんかもしれへん」

「やからって・・・そんな・・・あ!で、でも、あのかんば・・・」

「里歩。とりあえず、今は待つしかないから。とりあえず、そういうことや。ほら、今日はもう帰り」

興奮している小谷を横山が制止し

「・・・うん。ほな、またな彩・・・」

小谷はそういって、肩を落として店を出て行った

「・・・」

山本はグラスを握りしめたまま動くことができなかった

「誰かさんが冷たくするから、愛想尽かしてしもたんかもな。」

「なっ・・・!」

横山の台詞にハッとして顔を上げる

「ゆうとくけど、今回は私もフォローしきれんかったで」

横山の表情は険しく、山本は言葉を飲みこんだ

「・・・帰るわ」

山本はそういってカウンターにお金を置くと

ふらふらと店を出て行った

――――

「うえっ・・・気持ち悪っ・・・」

山本はふらふらと電柱に寄りかかる

『愛想尽かしてしもたんかもな』

横山が言った言葉がぐるぐると頭の中を周り

まるで戒めるかのように

ずきずきと激しい頭痛に襲われた


「はぁ・・・」

山本は何とか歩を進めながら

Y字路までたどりつき

看板を見上げた

と、同時にくらっとして

看板の下で大の字になる

目の前にひろがった空は渡辺の看板を照らす光が強すぎて、星が良く見えなかった

『東京は星がきれいに見えへんのやもん』

1年前、渡辺がこの町に帰ってきた時に言っていた台詞を思い出した

あの時・・・

あの時も・・・

こうやって酒に酔うて

美優紀の看板の前でおったんやっけ・・・

「なぁ・・・美優紀・・・東京行ったってホンマか?」

看板の渡辺に話しかける

「ゆうてたやん。あの人は今?くらいにでるんが丁度ええって・・・」

耳を澄ましてみたが

あの時の様なヒールの足音は聞こえなかった

「なぁ・・・寂しそうな顔してたんはやっぱり、芸能界に未練があったからなんか?私に気ぃつかって、ないって笑ってたんか?」

返事は・・・ない

「それとも、私が怒ったから嫌がらせか?」

山本は寝たまま、ごそごそとポケットから携帯を取り出し

電話をかける

プルルル・・・

何度もコールが鳴り

『おかけになった電話番号は、現在・・・』

「なんやねん。看板も本人も無愛想やなぁ・・・」

山本の手の力が抜け

携帯が地面に落ちる

「帰ってこいや。ギターやどうでもええ。お前が・・・傍におってくれたらええんや」

そう呟き

一筋の涙がこめかみを伝って、地面に落ちた
ギャラリー
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