気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2015年07月

◆こんにちは

こんにちはーしゅうです(^∇^)

毎日暑い日が続きますが、皆さま体調など崩しておられませんでしょうか?(;´▽`A``

もう7月も終わりますねー

早いものです(・_・;)

7月はNMBのドリアン少年とか乃木坂の太陽ノックとか気に入ってる楽曲が発売になったので

聞きながらドライブしたりランニングしたりして

なかなか充実しておりました(^∇^)



書きたいものとかもいろいろあるのですが

なかなか筆がうまく進まず・・・

気付けばもう玲奈が卒業する8月が来てしまいます・・・

うーん・・・で、私も悔いの残らぬようにと思いまして

蔵出しをしようかと(・∀・)

昔、書きかけてて途中で止まってる作品がありまして

ちょっと手を加えて世に出そうかと思っております

2年前の作品なので、なんか改めて出すのもお恥ずかしいのですが・・・(;´▽`A``


更新は8月になると思いますが

待っていただけたら嬉しいです(^∇^)

あとがき

『初恋の行方とプレイボール‐3年後-』を読んでいただきありがとうございました

初プレシリーズも4作目!

今回で最後になります(^▽^;)

世界大会はー?という方、すいません

それは皆さまのご想像にお任せすることにいたしますm(_ _ )m

まぁ、なんとも丸投げな作者ではございますが

今回は

秋葉女学院チーム再結成

そして、愛すべき野球バカたちっていうのを書きたかったんですよねー

まぁ珠理奈たちの恋愛も最後までいくっていうのも書きたかったですしね

元々、初プレの続編を書いている時に

プロ野球チームとして皆が活躍してるっていうのとか

珠理奈と彩は別チームでとか

いろいろと構想ができていて

優子が後々プロ野球チームを作るって言うのも考えていました

そしたらまさかのNGT!Σ(・ω・ノ)ノ!

だから、新潟のプロ野球チームは優子が作るってことにしちゃえーと思いまして・・・笑

なんか、最後だからいろいろ詰めんだ感がすごいですが・・・ご容赦ください(;´▽`A``

ちなみにチーム名は県の鳥を英語にしています

名前決めるのめっちゃ時間かかった・・・(^▽^;)


私、この作品の中西先生が好きでございまして

篠田さんとの掛け合いとか李苑が登場したりとかで

結構脱線した部分が多かったですが

まぁそれもご愛嬌と言うことで・・・(^▽^;)

そして、やっぱり最後は「プレイボール」で終わらせようと思いまして

こんな感じになりました

やっぱり、秋葉女学院チームは不滅ってことで!笑


最終回の日がまさかの乃木坂の「太陽ノック」の発売日でおわりましたねー

意識は全くしていなかったんですが

「君の名は希望」がテーマの作品ですから、乃木坂の関係する日に終わることができて嬉しく思います

書いてはいないですが最後の試合のシーンは太陽ノックがかかっている感じのエンディングでご想像のほど、よろしくお願いします笑

この作品のシーンは春ですが・・・(;´▽`A``




一応、野球とは関係ない番外編で

玲奈とみるきーの視点から書こうかなぁとかも考えてたり

・・・ってシリーズ終わらんやないかっ!って感じですが

作者が挫折しなかったら

アップします(^▽^;)


皆さま、初プレ作品を愛していただき

ありがとうございました

この作品で読者さんが増えたり、いいね!の数が増えたり・・・

アクセス数もかなり伸びまして

何気なく書きだした作品が

こんなに続くとは思っていませんでした

本当にありがとうございました(^∇^)


玲奈の卒業前に終わらせることができて

作者としてはほっとしております(;´▽`A``


では、皆さま次回作までしばしお待ちください(^∇^)

初恋の行方とプレイボール‐3年後-24終

ブンッ!

「かーっ!奈々未の球も早いなー。前よりスピードでてんじゃねぇか?」

グラウンドで勢いよく空振りをした大島は

マウンドに立つ橋本を見て笑う

「・・・」

橋本は帽子を取り、ニコッと笑う

「ホント、昔よりスピード出てるわよ」

白石もマスクを外し、ニコッと笑い

ボールを投げた

「・・・ありがと」

橋本は照れくさそうに笑った


「なーに4人で楽しいことしてんの」

「そうそう、混ぜてくれなきゃなー」


「え?」

聞きなれた声に大島は振り向く

「佐江、才加!」

そこには練習着に着替えた宮澤と秋元の姿があった

「私も参戦させてもらえますか?」

2人の後ろから山本がスッと姿を現す

「彩!」

「私も球早くなってますよー」

「珠理奈!」

「優子先輩!」

「えっ、由依まで?」

次々に出て来る秋葉女学院メンバーに大島は驚く

「ど、どうして?みんなが・・・?」

大島はきょろきょろと皆の顔を見た

「ふふふ・・・それはー」

秋元たちの後ろから声がし・・・

「さっしーが皆に連絡してきたんだよ」

「あー麻友!私の一番いいとことったな!!」

指原を押しのけて麻友が静かに言う

「麻友・・・さっしー・・・」

「そんな人数じゃやっててもつまんないでしょ?だから皆に写メ送ったんだー。優子たちがキャッチボールしてるのをね」

指原は得意気に胸を張る

「どうせならさー。元秋葉女学院メンバーでまた野球したいっておもってさ」

「え・・・?」

大島は首をかしげる

「あのっ、私たちも参加させてくだしゃい!」

そこには兒玉と宮脇の姿があった

「私もー」

「負けた借りは返さないとねー」

「私もいますよー」

そして、そろぞろと世界選手権代表選手達が現れる

「み、みんな・・・」

「いやーホテルに行って声かけまくったらこんなに来ちゃったー」

指原はぽりぽりと頭を掻き、笑う

「ま、試合するには人数必要でしょ?」

「え?」

大島は首をかしげる

「おーなんだぁ?めちゃくちゃ集まってんじゃねーか」

「高橋先生!」

ジャージ姿の高橋の登場に

秋葉女学院のメンバーのテンションがあがる

「ははっ。あと、やっぱ監督にも居てもらわなきゃねー」

そういって指原はニッと笑った

「ったく・・・」

大島はニヤッと笑い

「よーし!じゃあ秋葉女学院チーム再結成だ!ドリームマッチだぜ!」

「「おーー!!」」

大島の掛け声に

元メンバーたちは腕を挙げて答える

「じゃあ、私たちは・・・連合軍ってわけね」

白石もフッと笑う

「いいんじゃない。あの時のリベンジだ」

橋本もクスッと笑い

「前田さんも参加しますよね?」

視線を前田の方に向けた

「え?あ・・・」

「そりゃもちろんっ!こんな面白いことに参加しないわけないっしょ!」

「みなみっ!」

困惑していた前田の肩をつかんだのは

元バッテリーの峯岸みなみだった

「敦子、やろうぜ」

「・・・うん」

峯岸の嬉しそうな顔に、前田はクスッと笑って頷いた

「はい、わかりました」

橋本はニコッと笑い

「じゃあ、元秋葉女学院以外の人はこっちに集まってくださーい」

そういって手を挙げた


――――

「結局、野球やん・・・」

「ふふっ。そうだね」

バックネット裏の観客席には

美優紀と玲奈が居た

美優紀は頬をふくらませていたが

玲奈はにこにこしていた

「おーいいねー。やってるやってる」

後ろから声がして2人は振り向く

そこには、中西が立っていた

「玲奈ちゃん、連絡ありがとね」

「はい」

ニコッと笑う中西をみて、玲奈も微笑んだ

「って・・・どうしたの?ジャージとか珍しいね」

「あー・・・これは。あはは・・・」

玲奈は苦笑いをする

池に落ちた時に濡れた服は乾いていなかったので

急遽珠理奈のジャージを着たのだ

「ま、いいか。それより・・・2人ともなんか顔が違うような・・・もしかして」

中西は2人の顔を見てニヤッと笑う

「へ・・・?」

「べ、別に何もないでー」

2人はぎこちなく笑う

「まぁもう大人だし。玲奈ちゃんにも許可出してたし結構結構。じゃあ、私はグラウンドに行ってくるねー」

中西は2人の表情ですべてを悟り

にやにやしていた

「え?先生ここで見ないんですか?」

玲奈は首をかしげる

「だって、審判がいるでしょー?ねー。麻里子様?」

そういって中西は後ろを見る

「・・・」

そこには腕を組んでグラウンドを見つめる篠田の姿があった

「あー何それ。人が連絡したってのにその表情」

「・・・うるさい。大体1回でいいのに、何回も立て続けに電話かけてくるな」

「だって、見逃したら後悔すると思ってさー。こんないい試合」

中西は篠田に近づいてにこにこと笑う

「おーやってるなぁ。皆オフなのに・・・ったく野球バカの集まりだな」

「野本会長!」

篠田は後ろを振り向き驚く

「中西君、連絡ありがとな」

「いえいえー。こんな面白い事、お知らせしないわけにはいかないですから」

中西は篠田と野本のもとに駆け寄り、ニッと笑う

「まったく・・・お前ってやつは・・・」

そういって篠田はため息をつく

「まぁまぁいいじゃないか。それより、中西君アメリカにもついてってくれるんだって?ありがとなー。英語できる人がいると心強いよ」

「なっ!」

篠田は勢いよく中西を見る

「もーそんな怖い顔しないでよ」

「大体、そんなに休み取れるのか?仕事は?」

「バケーションだよ、バケーション。ま、遅めの夏休みってやつ?」

「あのな、日本と海外じゃ休みの期間が違うだろ」

「大丈夫。向こうの留学先の病院にも日本での実績報告をするってことで医局長には話そうと思ってるから。まぁ、そりゃ皆が現地入りする時には間に合わないかもしれないけど」

「いいのか・・・そんなので」

篠田は呆れた顔で中西を見る

「だってさー。見たいじゃん」

「は?」

「世界大会、優勝する瞬間をこの目でさ」

中西はニッと笑う

「・・・ったく。勝手にしろ」

篠田はフッと笑う

「・・・よし。じゃあ、行くか」

野本は2人の表情を見てニッと笑うと

観客席を後にする

「はい」

「はーい。じゃあねー。2人とも楽しんで」

そう言ってには篠田と中西は野本に続いて観客席を後にした


―――

「はいはーい。審判は私らが務めまーす」

そういって中西はパンパンと手を叩きながらグラウンドに入る

「中西先生!」

麻友は目を輝かせる

「はい、でたー。・・・ぐふっ」

からかおうとした指原は麻友の肘鉄をくらい、うずくまる

「あーもう、鉄板だな」

そんな様子をみて秋元は苦笑いをした


「珠理奈に彩、おめでとう」

中西は2人の肩に手を置き、にこにこと笑う

「「は?」」

2人は中西の顔を見て首をかしげる

「大人の階段、ついに登っちゃったねー」

「な・・・」

「ええっ、なんでわかったの?」

顔を赤らめる彩とは対照的に

珠理奈は当たってことに驚いていた

「そりゃー彼女たちの表情をみればねー」

そういって中西はバックネット裏の観客席にいる玲奈と美優紀をちらっとみた

「へー先生、すごいねー。てか、彩も?やったじゃん」

「う、うっさいわ!そんなこと大きい声でうゆうな!」

「いいじゃん、別にー。で、行ったの?ラブホ?」

「あほっ!行ってないわ!家じゃっ」

「へー家なんだ」

「あ・・・。っ!わ、私ゆいはんとキャッチボールしてくるからなっ!」

山本は顔を真っ赤にして叫び、横山の元に向かう・・・

というより、逃げたと言うほうが正しい

「あーあ。そんなに照れなくてもいいのに」

珠理奈は山本の後姿をみながら苦笑いをした


―――――


「あれー?麻里ちゃん?」

しばらくして

辺りを見渡しながら小嶋が観客席に現れた

「あ、あの・・・篠田監督ならグラウンドに・・・」

玲奈はそういって指差す

「あーホントだー。もー・・・仕方ないなー」

そういって小嶋は玲奈たちの横に座る

「あ、あの・・・」

「野球好きな人って、どうしていつもこーなんだろうねー」

玲奈の言葉を遮って

小嶋がムスッとしながら言う

「わかりますー。いっつも野球野球ってゆうて、ホンマなんやねんって思いますよねー」

小嶋の発言に、美優紀が賛同する

「そうそう。野球の事になると他の事ほっぽり出しちゃうし」

「あーわかりますー」

2人は玲奈を挟んで盛り上がる

「・・・でも」

小嶋はグラウンドに居る篠田を見つめ

「あの嬉しそうな顔が好きなんだよねー」

クスッと笑った

「「・・・」」

玲奈は珠理奈の

美優紀は彩の表情をみる

2人ともメンバーたちと楽しそうに話しをしていた

「ほんま・・・悔しいけど、めっちゃええ顔」

「うん」

2人はクスッと笑う

と、そこに宮澤に近づく柏木の姿があった

「あ、柏木先輩・・・」

「あーずるいー。応援やから観客席におったのにー。玲奈ちゃん、私らもいこう!」

「え?あ、うん」

美優紀に腕をつかまれ、玲奈は立ち上がる

「いってらっしゃーい」

小嶋は座ったまま手を振る

「え?い、行かないんですか?」

「うん。もうすぐしたら帰るから」

「へ?」

「だって・・・やっぱり、ルールわかんないもん」

小嶋はそう言って笑った


―――

「彩ちゃん!」

「美優紀!」

玲奈の手を引いてグラウンドに来た美優紀を見て

山本は顔を赤らめる

「・・・って、玲奈。なんでジャージ?それ、珠理奈のやないんか?」

「あ、あはは・・・いろいろあって」

玲奈はまた苦笑いをした

「玲奈ちゃーん」

玲奈の姿を見て、珠理奈も駆け寄る

玲奈は2人が並んでいるのを見て

高校時代を思い出した

「ふふっ・・・なんか懐かしいね珠理奈と彩のバッテリー」

「・・・おう」

「そうだね」

2人は顔を見合わせてニッと笑う

「頑張ってなー2人とも」

美優紀もニコッと笑う

「うん、ありがとう。でも、その前に美優紀ちゃんには聞きたいこといっぱいあるんだけどなー」

「なっ!じゅ、珠理奈!とりあえず投球練習すんで」

美優紀に近寄る珠理奈を山本が肩をつかんで制止する

「えー」

「ほれ、いくぞ」

山本は珠理奈を無理やり引っ張り

珠理奈はそれにずるずると引きずられていた

「ふふっ、やっぱりええなぁ」

「うんっ」

美優紀と玲奈はそんな2人を見て微笑んだ



「よーし、じゃあ始めるぞー」

しばらくして

全員のアップが終了し

野本はキャッチャーの後ろに立つ


「佐江ちゃーんがんばってねー」

ベンチで柏木は手を振る

「あーわくわくするなぁ」

「うんっ!」

その隣で、美優紀と玲奈も立ち上がり

グラウンドを見つめていた


サァァァァッ・・・

その時

春風が吹き

桜の花びらをグラウンドに連れてきた


「・・・」

玲奈は空を見上げる

どこまでも青く

澄みきった空が広がっていた


3年前からすべてが始まった

生きる希望を失っていた私を

彩がみつけてくれてた

そして

珠理奈が支えてくれた

ううん・・・

珠理奈だけじゃない、野球部が・・・中西先生が・・・皆が私を助けてくれた

だから

生きたいと思った

心の底から、生きてみたいと思った

あの時があるから

今がある・・・そして・・・未来がある



生きている限り

明日は来る・・・

命あるところに希望がある・・・

そう・・・希望とは


「・・・明日の空・・・」

玲奈は空を見上げたままぽつりと呟いた

「え?」

不意に言葉を発した玲奈に美優紀は首をかしげる

「ううん。なんでもない。ほら、試合始まるよ」

そういって玲奈は微笑み

マウンドを見つめた

そう・・・

そこには・・・

大好きな人が立っていた




先攻は連合軍

バッターボックスに白石が立つ

マウンドには珠理奈

そして、キャッチャーは山本だ

「珠理奈。悪いけど、打たせてもらうわよ」

白石は腕を伸ばし、バットを珠理奈に向ける

「おーこわっ・・・」

珠理奈はぼそっと呟く

「ん?なんか言ったー?」

「いえ、何もー。手加減しませんからねー」

「当たり前よっ!」

そういって白石は足場を馴らす

「悪いけど、今回も勝たせてもらいますよ」

山本が白石を見上げる

「あら、3年前とは皆レベルが違うのよ。それに、そっちはプロじゃない人だっているし」

白石はフッと笑う

「ははっ。でも・・・私ら最強のチームですから」

山本はニッと笑い

前を見る

珠理奈の後ろには

大島や麻友、横山たちの姿があった

「言ってくれるじゃない」

そういって、白石もグラウンドで構える選手達を見る

「・・・でも、確かにいいチームね」

「え・・・」

山本は驚いて

顔を上げる

白石はフッと笑い

「さ!手加減なしよ!来なさい!」

そういって構える

山本もニッと笑い

「しゃっ!珠理奈っ!こいっ!」

嬉しそうにミットを構えた



「よーし、じゃあいくぞー」

野本はスッと腕を上げ

大きく息を吸い込む

全員がその手に注目し

目を輝かせていた


「プレイボーーーール!!」

「「おーーーーーーー!!」」


青い空に

選手達の声がこだました




FIN

初恋の行方とプレイボール‐3年後-23

「はっはっはっ・・・・」

秋元は肩かけ鞄を斜めにかけ

勢いよく揺らしながら走っていた

そして

ホテル前で

宮澤と柏木を見つける

「佐江っ!」

「才加!」

2人は顔を見合わせ

ニッと笑うと

勢いよく自分たちの部屋に向かった

「私ここでまってるからねー」


「うんっ」

「おう!」

ロビーで足を止めた柏木に

2人は後ろ手を挙げて返事をした


「・・・3年ぶりだな」

「あぁ!わくわくするよ!」

そういってエレベーターを待ちきれない2人は

勢いよく階段を駆け上がっていった

―――

3年前の卒業式の日

大島たちは卒業証書を手にグラウンドを目指していた

「あー。この試合が終わったら2人とは敵同士かー」

大島は卒業証書が入った筒を持ったまま

首の後ろに手を回し

晴れた空を見上げる

「まぁドラフトだからしかたないなー。でも、取ってくれるだけありがたかったよ」

その横を歩いている秋元はニッと笑う

「そうそう、住めば都だし。名古屋も絶対いいとこだよ」

反対側に居る宮澤もそう言って笑った

「うん、佐江ちゃんと居たら私はどこでもいいしねー」

宮澤の横で腕に手を回し、柏木も笑った

「・・・バカップル」

柏木の横で麻友がぼそっと呟く

「バカップルで結構。離れたら嫌だもん」

「・・・」

柏木の返答に、麻友は黙る

「おーおー。熱すぎて麻友も黙ったかぁ?」

秋元の横に居る指原は身体を前のめりにして麻友の顔をのぞく

「・・・」

麻友はそんな指原をじろっとみる

「・・・はーい。もう言いませーん」

指原は苦笑いをし、身体を戻す

「・・・」

グラウンドに入る手前で

大島が立ち止まる

「ん?どうした?」

秋元は首をかしげ

他の皆も立ち止まる

「私さ・・・決めたっ」

「え?」

「なになに?」

皆、大島の顔を覗き込む

「私、プロ野球の監督になる」

そういって大島はニッと笑った

「ええっ!」

「選手じゃなくて?」

「そりゃまた大きい夢だなぁ」

「・・・」

皆めいめいに違った反応を見せる

「いやー、皆の進路聞いてさー面白いなーって思ってよ」

「え?」

秋元は首をかしげる

「佐江と才加は私と同じプロだけど、さっしーは経済学で麻友はスポーツ医学、ゆきりんは栄養士だろ」

「うん、そうだね」

皆、頷く

「だからさ、作ろうぜ。みんなでプロ野球チーム」

大島はニカッと笑った

そんな大島を見て

皆ポカーンと口を開ける

「ははっ。いいじゃねーか。私が監督で、佐江と才加はコーチか選手。さっしーは経理担当でチームの運営。ゆきりんは栄養士として皆の食事管理して、麻友は医学の観点から選手を分析するトレーナー。うんうん、いいねー。最高だ」

大島は腕を組み、にこにこと頷く

「優子、チーム作るってそんなに簡単なことじゃ・・・」

秋元がそう言いかけた時

「・・・おもしろいじゃん」

麻友がフッと笑って

大島の前に立つ

「ただし・・・私を使うんだったら納得するくらい選手としても実績あげててよね」

「麻友・・・」

「私もー。使うんだったら給料は高くお願いしまーす」

指原も前に出て手を挙げる

「選手の栄養管理かぁ・・・佐江ちゃんの献立考えてたらいっぱいレシピできそうだなぁ」

柏木もニコッと笑う

「ははっ、おもしろいじゃん。あ、ちなみに私は優子がチーム立ち上げるんだったら年俸安くてもいいかんねー」

宮澤は指原を横目に見ながらニッと笑う

「あー、なに一人だけいい子ぶってんの」

「別にー。野球ができたらいいんですー私はー」

「あははー。ありがとうなー」

宮澤と指原が言い合うのを見ながら大島笑い

そして

秋元を見る

「・・・わかったよ。お前は言い出したら聞かないからなー。・・・ただし、条件がある」

「お、なになに?」

「やるなら、優子お前も選手として出ろ」

「え?」

「監督兼選手。それが条件だ」

「才加・・・おう!」

大島は秋元に抱きつく

「よーし、じゃあ皆でチーム作りますかっ!」

指原は卒業証書の入った筒を手に腕を伸ばし

ガッツポーズをする

「「おうっ!」」

「うんっ」

「・・・」

皆めいめいに頷いた

「ありがとうな、皆!さっ、じゃあ気合入れて最後の試合行くぞー!」

大島は空に向かってめいいっぱい腕を伸ばし叫んだ


――――


ガチャッ!

2人は部屋のドアを開け

野球バッグに荷物を詰めこむ




大島が言い出した夢は

いつしか現実味を増していた

麻友は学科首席を独走中

指原は経営学の傍ら、プロ野球の販売員として働いている

柏木は料理の腕もあげ、ちゃくちゃくとレパートリーが増えている

そして、宮澤と秋元は選手としてトレーニングをする一方

後輩の指導にあたり、コーチとしての技術も磨いていた

そして、大島も本場アメリカで監督やコーチの指導方法を学んでいた


「佐江!行けるか?」

「あ・・・ちょっと待って」

宮澤はごそごそと鞄を探り

「やっぱり、これつけなきゃね」

そういってリストバンドを見せてニッと笑った

「・・・そうだな。私もちゃーんと持ってるぜ」

秋元も宮澤と同じデザインのリストバンドを見せて笑う

それは、高校の卒業記念に

皆で買ったリストバンドだった


『今、東京、名古屋、神戸、博多だろ?次は東北・・・新潟とかどうだ?』

『『いいねぇ!』』

昨日の夜、この部屋で話しをしていた時に大島が言った台詞を思い出し

2人はニッと笑う

「行くぜっ!」

「おうっ!」

2人は力強く頷くと

また勢いよく走りだした

初恋の行方とプレイボール‐3年後-22

「はー・・・」

珠理奈は隣に寝ている玲奈を抱きしめながら

にやにやしていた

「・・・ん」

玲奈は珠理奈の胸に顔をうずめ

顔を赤らめていた

「ね?もう一回していい?」

珠理奈は玲奈の顔を見る

「だ、だめだよっ!その・・・」

玲奈は顔を赤らめながらもごもごと言う

「なに?」

「身体・・・もたないから・・・」

そう言いながら玲奈はシーツの中に顔をうずめる

「あーもう!かわいいなぁ玲奈ちゃんは!」

珠理奈はキュンとして玲奈をギュッと抱きしめる

3年のブランクはあると言えども

元々経験豊富な珠理奈のテクニックに

玲奈はついて行くのにやっとだった

というか、もう何も考えれなくなっていて

あっという間に終わりを迎えていた



ブーーッ・・・ブーーーッ・・・

「ん?携帯?」

「珠理奈のかな?出たら?」

「えー」

珠理奈は口をとがらせる

「大事な用事かもしれないでしょ?」

「はーい」

珠理奈はもそもそと携帯を手に取り

「あ・・・」

メールを見て驚く

そして

「玲奈ちゃん!」

嬉しそうに玲奈の方を向いた


―――――

「えへへー・・・」

美優紀はベッドの中で山本に抱きついていた

山本は美優紀の頭をなでながら

その余韻に浸っていた

「彩ちゃん」

「んー?」

「好きやで」

「おう・・」

山本は上目遣いで見る美優紀のおでこにキスをし

甘い時間を堪能していた

ピリリリ・・・

と、リビングの方から携帯が鳴る

「あ、携帯・・・」

「えーいややー」

起き上がろうとした山本を美優紀が抱きついて阻止する

「んー。ちょっと見て来るだけやから」

山本はポンポンと頭をなでると

そのまま部屋を出て行った

しばらくして

「美優紀っ!」

勢いよく山本が部屋に戻ってくる

「な、なに?」

豊満な胸があらわになっているのも気にせずに叫ぶ山本に

美優紀は驚いていた

「着替えて行くでっ!」

「へっ?」

にこにこと笑う山本に美優紀は困惑していた


――――

「東京も久しぶりだねー」

「そうだねー」

宮澤と柏木は手をつなぎながら久しぶりの東京デートを楽しんでいた

そこに

宮澤の携帯が鳴る

「おっ!」

宮澤は携帯を見て、ニヤッと笑うと

「りんちゃん!今日のデート予定変更!」

「へ?」

「行こう!」

そういって携帯の画面を見せる

「あー!うんっ!」

柏木は携帯画面に写っている写真を見て

嬉しそうに頷いた


―――――

「あーやっぱり実家はおちつくねー」

実家に帰った秋元はリビングでくつろいでいた

「ばあちゃんとこにも顔見せに行きなさいよー」

「はーい」

秋元は母に差し出されたコーヒーを飲みながら頷く

ブーッ、ブーッ・・・

と、携帯が鳴り

何気なく開く

「んっ!」

秋元は勢いよく立ちあがると

「ごめん!私ホテル戻る!」

慌てて鞄をつかみ

玄関に向かって走る

「えっ!ちょっと!」

「ごめん、またばあちゃんとこには行くからっ」

秋元は早口で言いながら

靴を履き

嬉しそうに駆けだして行った


――――

カタカタカタ・・・

麻友は大学の研究室でパソコンに向かっていた

パソコン画面には

今回世界大会に出る大島たちのデーターが書かれていた

ブーッ、ブーッ・・・

机の端にある携帯が鳴る

「・・・ふーん」

麻友はフッと笑うと

手早くデータを保存し

研究室から出て行った


―――

病院の心臓外科外来で

中西はパソコン画面に向かいキーボードを叩いていた

「あれ、先生。今日当番日ですか?」

スタッフ専用通路から東がひょこっと顔をだす

「あ、李苑。いや、今日は違うんだけどさー。李苑こそどうしたの?今日休みなのに」

「今日は救急の手伝いなんです」

「そうなんだー。どう?昼ごはんでも一緒に」

中西はにこにこと笑う

「残念でした。今さっき食べてきたとこです」

「なんだ。残念」

「先生は主任に怒られたからカルテ整理ですか?」

東はクスッと笑う

「あははー。李苑はきびしいなぁ。でも、言われてた分は昨日終わらせたんだよー。今やってるのは手術件数とかのデータを出してるんだ」

「どうしたんですか先生・・・?」

東は驚いて中西を見る

「そんなに?いやさ、秋にアメリカに行こうと思っててさ」

「え・・・?」

「ん?あー留学とかじゃないよ。旅行。女子野球の世界大会がアメリカであるから見に行きたくてねー」

「・・・先生はホントに野球が好きですね」

「あははー。で、長期で行きたいから向こうの留学してた病院で日本での実績報告って言う名目にしようと思ってね。今、院長に出す資料をまとめてるんだー。あ、メインが野球ってのは内緒ねー」

「そうですか・・・」

東はホッとする

「いなくなると思った?」

中西はニッと笑う

「べ、別にそんなこと思ってません。じゃあ私はこれで」

東は顔を赤らめて部屋から出て行った

「なーんだ。さびしいなぁー・・・・」

中西はため息をつく

ブーッ・・ブーッ・・・

「ん?」

中西はポケットから携帯を取り出し

「おー。いいねぇ」

ニヤッと笑った


「東さん、帰ってきたところでわるいんだけど松葉杖、外来から取ってきてもらえないかしら?」

「はい。わかりました」

休憩を終えて戻ってきた東は

早々に用事を言われ

再び、外来に足を進める

「・・・」

東はちらっと心臓外科の部屋を見る

が・・・

そこに中西の姿はなかった

「休憩かな・・・?」

東はそう呟き

器材庫の扉を開ける

サァァァッ・・・

器材庫のカーテンが

春風にたなびく

「もう・・・今日は休日だからここからでなくてもいいのに」

そう呟いて

東はクスッと笑った

初恋の行方とプレイボール‐3年後-21

「ん・・・」

山本はゆっくり目を開ける

「おはよー」

その横で美優紀がニコッと笑う

「ん?あー・・・すまん。寝てしもてた」

山本は机から身体を離し、ぐっと伸びをした

「はー。記事読んでたら知らんまに寝てしもてたわ」

「相変わらず文章読むん苦手やなー」

そういって美優紀は新聞を手に取る

「うっさいなー。読むよりプレーするん専門やねん」

「ふふっ。でも、彩ちゃんの写真もっと大きくてもええんやけどなー」

美優紀は口をとがらせながら言う

「世界大会はでっかく載るように頑張るわ」

「うん」

そういって美優紀はニコッと笑った

「・・・」

その笑顔に山本はドキッとする



ここで決めんと

あかんよな・・・


山本はそっと美優紀の頬に触れ

優しくキスをした

「ん・・・」

小さく美優紀の声が漏れる

山本はそっと唇を離し

美優紀を見つめる

「彩・・・ちゃん」

美優紀が俯いたまま山本のTシャツをキュッと掴む

「・・・みゆ・・き・・・?」

「その・・・部屋・・・行く?」

「お、おう・・・」

2人はぎこちなくリビングから美優紀の部屋へと向かった


パタン・・・

山本は後ろ手でドアを閉める

6畳ほどの美優紀の部屋はクローゼットと机そしてベッドがあった・・・

(くそー・・・こんなんやったら珠理奈からどうするか聞いとくんやった)

山本はドキドキする鼓動と混乱する思考にくらくらしていた

「・・・彩ちゃん」

美優紀は振り返り、山本を見つめた

その目はうるんでおり

頬は紅潮していた

「・・・」

その表情に、山本のもやもやしていた思考は一気に吹っ飛ぶ

「美優紀・・・」

「んっ・・・はぁっ・・・」

いつもと違うキスの勢いに

美優紀は山本のTシャツをキュッと掴む

「ええか・・・?」

「うん・・・」

優しい山本の口調に

美優紀は静かに頷いた



「彩ちゃんっ・・・」

「・・っ。美優紀・・・」

ベッドの中で2人は身体を重ね

荒い吐息が聞こえていた・・・


―――――


一方その頃

球場では

「いやー久しぶりだなー。敦子の球」

「そうだね」

大島と前田はキャッチボールをしながら話す

「やっぱり、敦子と話しするならグラウンドに限るわー」

「え?」

「懇親会でもほとんどしゃべんなかったじゃん。だからこうして2人でゆっくり話したかったんだ」

「そう・・・」

前田は嬉しそうな大島につられて、クスッと笑った


「どう?アメリカ?」

リズムよくミットにおさまるボールの音を聞きながら

前田が尋ねた

「んー。やっぱり本場はちがうなー。選手のレベルも高いしさ」

「そう・・・」

「まぁでも、今はあそこでがむしゃらにやって盗塁バンバンとってやろうかと思ってんだー」

「そっか、それが今の優子の目標なんだね」

「おう!でもなー私の目標はもっと違うところにあるんだー」

「え・・・?」

「私さ、プロ野球の監督になりたいんだ」

「え・・・?」

トンッ・・・

前田は驚き、球を受け損ねる

「おーめずらしっ。敦子でもそんなに驚くんだなー」

「・・・そりゃ、驚くよ。でも、ホントなの?」

前田は転がったボールを拾い

大島を見る

「おう、マジだぜ!実はちゃーんと手筈は打ってんだ」

「え?」

「どうせなら皆巻きこんじまおうと思ってな」

大島はニッと笑う

「ま、時期に分かるよ。ほれ、ボール」

ぽかんとしている前田に大島はグローブを見せて催促する

「あ、うん」

前田は大島にボールを投げる

「敦子もさアメリカ考えてるんだろ?」

「うん。まぁね・・・」

「この大会でアメリカと試合する時がチャンスだなー。いい球投げろよー」

「言われなくても、投げるよッ」

パンッ!

ひときわいい音が球場に響き渡った

「つー・・・やっぱいいなぁー。敦子、やっぱりアメリカ行けよ」

大島は前田の球を受けて、ニッと笑った

―――

「うー・・・頭痛い・・・」

「飲みすぎだから」

白石と橋本はグラウンドに続く通路を歩いていた

「それは言わないでよ・・・私だってあんなに酔うと思わなかったんだから」

白石は苦笑いをする

「でも、そんな状態でもキャッチボールしようって言うのは麻衣らしいよね」

「だって、1日でも休んじゃうと身体がなまっちゃうでしょ?」

「ふふっ。そうだね。かわんないねそう言うとこ」

「なにが?」

「高校の時、全国大会の決勝で負けた次の日もキャッチボールしてたなぁって思ってさ」

「あーそうねー。あの時はまさか珠理奈とバッテリー組むなんて思わなかったわ」

「ふふっ。なんだかんだ言いながら気に入ってるんでしょ?」

「な・・・別に気に入ってないわよ!あんな扱いにくいやつ」

「そう?私には楽しんでるように見えるけど」

橋本はムキになっている白石を見てクスッと笑った

「大体ねー。珠理奈は・・・」

白石がそう続けようとした時

「あ・・・」

橋本がグラウンド一歩手前で足を止める

「な、なに?」

「ふふっ。先約がいたみたいだよ」

そういって橋本は指差す

「・・・そうみたいね」

白石もグラウンドを見て

フッと笑った



―――


「えーでは、以上で終了します。今回出た案を元にサンプルを作りますのでその時にまた会議を行いたいと思います」

「「お疲れさまでしたー」」

会議室に声が響き

指原はガタっと立ち上がった


「あー・・・休日だってのに朝から会議とかついてないわー」

指原はぶつぶつ言いながら会場を後にする

昨日の世界大会のメンバー発表を受けて

グッズ販売のため商品開発部は急遽会議をすることになったのだ

今回、会議が行われていたのは野球協会であり

場所は昨日の球場のすぐそばにあった


パンッ!パンッ!

「ん?」

指原が球場近くを通りかかった時

ボールの音が聞こえた

そして

かすかに話声も・・・

(誰だ?今日試合とかあったっけ・・・?)

指原は首をかしげながら

球場に入って行った


関係者のパスカードを見せて難なく球場に入った指原は

観客席の階段を上がり

そして

グラウンドを見てニッと笑った

「こりゃ、みんなに知らせなきゃなー」

そういって、鞄から携帯を取り出し

素早く操作し始はじめた

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑳

―――

「おじゃましまーす」

美優紀のマンションについた山本は玄関靴を脱ぐ

「はーい」

美優紀は横で返事をしながらリビングへと進む

「あれ?おばちゃんは?」

山本は誰も居ないリビングを見て首をかしげる

「あー今日な、体調悪い人がおって代わったんやってー」

美優紀は冷蔵庫からペットボトルのお茶を出し

コップに注ぎながら答える

「へー・・・」

山本はキッチンにいる美優紀の方に振り返る

「・・・」

美優紀は勢いよくお茶を飲んでいた

ごくごくと鳴る喉じんわりと滲んだ汗・・・

そして、その下の胸のふくらみ・・・

山本は生唾を飲む

「あ、ごめん。はい」

美優紀は山本の視線を感じて

お茶を渡す

「あ、あぁ。すまん」

山本はハッとしてお茶を受け取り

気持ちを落ち着かせるためにぐっと飲む

「彩ちゃん、先シャワーどうぞ」

「んっ!!ごほっ!ごほっ!」

山本は動揺してむせる

「い、いける?彩ちゃん?」

「あ、あぁ・・・」

「もー勢いよく飲むからやでー。キャッチボールして汗かいたしなー。私は先にごはん食べてるから行ってきてー」

「お、おう・・・」

山本は頷き、風呂場へと向かった

「・・・」

山本はのそのそと服を脱ぎ

ザーーー

シャワーを浴びる

『タイミングはつくるもんでしょうが』

珠理奈の言葉が蘇る

「作ったって言うより降ってきたって感じやで・・・」

山本はそう呟き

顔を拭った


「お先ー」

「はーい」

風呂から出た山本はタオルで髪を拭きながらリビングへと戻ってきた

「じゃあ私も入るなー」

「おう」

美優紀はそういって山本と入れ替わりに

部屋から出ていく

山本はリビングにあるテーブルの前に

腰を下ろす

机にはスポーツ新聞が置かれており

昨日の記事が載っていた

そこにはでかでかと

『神戸ストークス優勝!そして女子野球世界大会開幕』

と書かれていた

記事には珠理奈がガッツポーズをしている写真と

リリーフカーで華麗に登場した大島

そして、小さく自分の顔写真が載っていた

「頑張らなあかんなぁ・・・」

そう呟き

記事を読む

高校時代にピッチャーとしても登板していた山本は

プロ後、キャッチャーとピッチャーどちらを取るか注目されていた

そして

山本の選んだ道はキャッチャーだった


プロでピッチャーを希望すれば

デッドボールによる選手生命の危機回避のため

もうバッターボックスには立てなくなる

打つことも好きな山本はそれが嫌だったのだ

元々、高校時代に全国大会で投げることができたことで

ピッチャーとしては満足していた

そして、何より

気付けば珠理奈の球に惚れこんでいたということが大きかった

別々のチームにはなってしまったが

キャッチャーをしていれば

また、珠理奈とバッテリーが組める

そう思ったのだ


サァァァッ・・・

リビングの開いた窓からは

心地よい春風がレースのカーテンを揺らしていた

―――

2年前・・・

「あーあ。今日で秋葉女学院のバッテリーもホントに解散だなぁ」

野球部の部室で

卒業証書を手にした珠理奈が口をとがらせていた

「解散ゆうても、また出来るわ。おんなじプロの世界でおるんやから」

「そうだねー。はーでも、玲奈ちゃんと離れ離れの方が私にはでかいけど」

「なんやねん。人がせっかくいいことゆうてんのに。遠距離恋愛の私を見習えや」

「彩は美優紀ちゃんが東京に来るんでしょ?私はいつまで離れてるかわかんないんだからねー」

珠理奈はムッと口をとがらせる

「そんなんゆうたって、毎日会えるわけやないで。だいたい、美優紀、東京の大学決まったってゆうてもどこの大学かまだ教えてくれへんし」

「そうなの?」

「おう、なんか入学してからのお楽しみーとかゆうてよ。とりあえず、3月末には引っ越してくるみたいやけどな」

「いいじゃん。私なんか来週には向こうで練習に参加だよ」

「そりゃ私も同じや」

「ま、今度からは敵チームだし、彩に打たれないように技磨いとくね」

「ほー。ゆうたな?じゃあ私はもっと練習して、お前からホームラン取ったるわ」

「ふーん。ま、三振に終わらないように頑張ってよ」

「はぁ?なんやねん!絶対打ってお前の悔しそうな顔見ながらホームベース踏んだるんやからな」

「はいはーい。期待してまーす」

「・・・最後の最後までお前は」

山本は眉間にしわを寄せる


ガラガラガラ・・・

「おまたせーって、なんやねん。2人ともまだ着替えてないん?」

部室のドアを開けた横山は苦笑いをする

その後ろから玲奈が顔をのぞかせていた

「玲奈ちゃんっ」

珠理奈は嬉しそうに玲奈の方に駆け寄る

「はいはい、珠理奈。その前に着替えなあかんで、島田らずーっとグラウンドでまってるやん」

横山は珠理奈が玲奈に近づくのを押し返す

「あ・・・いけね」

「ほんまや、ったく珠理奈がべらべら話しよるからおそうなったやんけ」

「はぁー?なにそれー」

山本と珠理奈は顔を近づけ睨みあう

「はいはい。もーええから。ほれ、着替えんで」

「・・・はーい」

「へいへい」

珠理奈と山本はぶつぶつ言いながらユニホームに袖を通す

「ふふっ。2人とも頑張ってね」

玲奈はクスッと笑った


パンッ、パンッ

ユニホームに着替えた2人はグラウンドで投球練習をする

今日は卒業記念に

後輩と試合をするのだ

2人でバッテリーとして試合をするのは

今日が最後になる

「さ、こんなもんかな。そろそろ試合しよか」

山本は立ち上がり

珠理奈に近づき、ボールを手渡した

「うん」

珠理奈はそのボールを見つめ

「彩・・・」

ゆっくりと顔をあげた

「なんやねん?」

「ありがとね」

「え・・・?」

突然言われた台詞に

山本は目を丸くした

「私、彩のおかげで野球が好きになった。ううん、楽しくなったって言う方が正しいかなぁ」

珠理奈はニッと笑う

「・・・はぁ?何、いきなりゆうてんねん。らしくないなぁ」

山本は照れを隠しながら言う

「あははー。いいじゃん。なんかさ、言いたくなっちゃったんだよね。最後の試合だからかなぁ。バッテリーはこれで一度解散だけどさ、また絶対受けてよね」

「おう、当たり前や」

「それまでにもっと早い球なげれるように鍛えとくね」

「・・・おう、楽しみにしとくで」

「「・・・ははっ」」

2人はお互いに照れくさそうに笑った


「おーい。アップすんだんだったら始めんぞー」

高橋が2人に声をかける

「お、ほな行くか」

「うん」

「目指せ完封やで」

「まかせてっ」

パンッ!

2人はハイタッチをし、皆のもとに駆けだした


――――

「あーさっぱりしたー・・・彩ちゃ・・・」

風呂から出てきた美優紀はリビングに居る山本を見て

「もー・・・」

クスッと笑った

「すー・・・」

春風に吹かれながら

山本は机に突っ伏して寝て息を立てていた

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑲

「こらぁっ!どこ投げてんねん」

「あははー」

無事に仲直りをした山本たちは河川敷でキャッチボールを続けていた

というより、美優紀がわざとボールを遠くに投げて

それを山本が拾いに行くという

キャッチボールとは言えない状況が続いていた

「はぁ・・・はぁ・・・わざとやってるやろ?」

山本はそういいながらボールを投げ返す

「えーちゃんと投げてるよー。野球のボールってソフトより小さいから感覚がイマイチやねんなー」

美優紀はボールを受け取り、にこにこと笑う

「さっきまで普通に投げよったくせに・・・」

「あ、ごめーん」

美優紀はまたボールを全然違うところに投げる

「くそっ!」

山本はボールを追って走り

パンッ

「しゃっ!」

高々とグローブを挙げ、取ったボールを見せる

「取れへんと思ったー」

「なめんなよ!取ったるわ!」

山本はニッと笑う

「お前のボールはどんなボールでもとったる」

「彩ちゃん・・・・」

「それが、バッテリーってもんやろ」

「・・・もう」

(やっぱり野球バカ・・・)

美優紀は眉をひそめ、笑う

「それに、ボールだけやないで」

「え?」

山本は美優紀に近づき

「さっきみたいなヤキモチやって、ちゃんと受け止める。せやから・・・」

山本は美優紀を真っ直ぐ見つめ

「ずっと傍におってくれ」

「彩ちゃん・・・」

「お前の気持ち・・・絶対、キャッチして投げ返すから・・・」

「・・・ふふっ。もぅ、キャッチャーバカ」

美優紀はギュッと抱きつく

「・・・悪かったな」

「今回は褒め言葉」

「ならええか・・・」

ぐーー・・・

美優紀のお腹から大きな音がなった

「あ・・・あははー。朝食べてないからお腹すいちゃった」

美優紀は照れくさそうに笑う

「なんや、そうなんか?」

「うん。お腹すいたし家帰ろうかな。彩ちゃんも来るやろ」

「お、おう」

山本は頷き

2人は美優紀の家へと歩き出した


―――

一方その頃・・・

「玲奈ちゃん大丈夫?」

「う・・・うん」

2人は珠理奈の宿泊しているホテルに来ていた

池に落ちた玲奈は濡れてしまったため

シャワーを浴びるために珠理奈の部屋に入ったのだ

「とにかくシャワー浴びてて。下着はとりあえず近くで買ってくるから」

「うん・・・」

珠理奈はホテルのルームウエアを玲奈に渡すと

部屋から出て行ってしまった


ザーーーーーー・・・

「はぁ・・・ドジだなぁ私・・・」

玲奈はシャワーを浴びながら呟いた



カチャ・・・

しばらくして

珠理奈は下着を調達し、部屋に戻ってきていた


ブオーーーン・・・

ユニットバスの部屋からはドライヤーの音が聞こえていた

「まさか池に落ちるとはなぁ・・・」

珠理奈は先ほどの事を思い出し、クスッと笑った


カチャ・・・

少しして、玲奈が戸を開けて出てきた

「・・・」

ぶかぶかのルームウエアを身にまとった玲奈に

珠理奈は目が釘付けになった

「・・・えっと・・・ごめんね、シャワー借りちゃって」

玲奈は申し訳なさそうに言う

「え・・・。あ、うん。いいよ、そんなの」

珠理奈はハッと我に返り

わたわたと手をふる

「こ、これ、下着」

そういって袋を玲奈に見せる

「あ、う、うん。ありがとう」

玲奈は恥ずかしそうにその袋を受け取ろうとした

その時

玲奈の胸元の傷が見える

(あ・・・)

珠理奈は初めて玲奈の傷を見た時の事を思い出した

そして・・・今までの玲奈との思い出が蘇る

「・・・」

珠理奈は袋を受け取ろうと伸ばした玲奈の腕を取り

抱き寄せた

「え・・・じゅ・・・珠理奈・・・?」

「・・・だめかな?」

珠理奈は耳元で囁く

「え・・・でも・・・傷が・・・」

「・・・前にも言ったよね、その傷は玲奈ちゃんが頑張った証拠だって」

「うん・・・」

「手術許可が出たって聞いて嬉しかったんだけどさ・・・その傷がある玲奈ちゃんとずっと一緒に居たから、無くなるの寂しいなって思って・・・」

「え・・・」

「その傷も一緒に愛したいんだ・・・」

「じゅり・・・んっ」

言葉を発しようとした玲奈の唇は

珠理奈に素早く奪われる

「・・・っ。はっ・・・んっ」

久しぶりの濃厚なキスに

玲奈は全身が痺れて力が抜けていく感覚に襲われる

「玲奈ちゃん・・・」

珠理奈は唇を離すと

そっとベッドに玲奈を押し倒した

「・・・珠理奈」

玲奈はうるんだ瞳で珠理奈を見つめる

「玲奈ちゃん・・・」

「・・・傷見ても・・・嫌いにならない?」

「なるわけない」

「ホント?」

「うん。絶対。約束する」

珠理奈は玲奈をじっと見つめる

「・・・そうだね。いままでずっと我慢してくれてたもんね」

玲奈はそっと珠理奈の頬に触れる

「玲奈ちゃん・・・」

「私の傷・・・・ちゃんと愛してくれなきゃ・・・やだよ?」

そういって、玲奈は微笑む

「もちろん」

珠理奈は優しく玲奈の唇にキスをした




「んっ・・・」

「玲奈ちゃん・・・」

珠理奈のキスは激しさを増し

玲奈は高鳴る鼓動と敏感になっていく身体に困惑していた

そして

珠理奈がゆっくりと玲奈の胸元をはだけさせる

「・・・」

そこには大きな傷跡があった

だが、3年たっていることもあり赤みも引き

白く盛り上がった皮膚が縦に刻まれていた

「・・・そんなに、見ないで・・・」

玲奈はとっさに手で傷を隠そうとするが

珠理奈がそれを止める

「綺麗だよ・・・すごく・・・」

そういって珠理奈は傷にキスをした

何度も何度も

傷の端から端まで丹念にキスを重ねていく

そして・・・

その唇は胸のふくらみに移る

「んっ・・・」

玲奈は身をよじりながら

きゅっとシーツをつかんだ

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑱

「・・・」

美優紀は山本を見つめたまま立ちつくしていた

「・・・ほれ」

山本は肩にかけているスポーツバックをごそごそとあさり

美優紀にあるものを投げた

「・・・っ」

美優紀は反射的にそれを受け取る

それはグローブだった

「・・・キャッチボール。しよか」

山本は下の河川敷を指し

照れくさそうに言った


「いくでー」

「・・・うん」

山本は持っていた野球ボールを美優紀に見せ、投げる

パスッ・・・

美優紀はそれを受け取り

グローブの中のボールを見つめる

「美優紀ー」

いつまでたっても投げてこない美優紀に、山本は声をかける

「う、うん」

美優紀は困惑しながらもボールを手に取り投げ返した

パンッ・・・

パンッ・・・

最初はぎこちなかったキャッチボールも

いつしかスピードがのり

軽快な音が響いていた

「・・・昨日の事なんやけどなー」

山本がキャッチボールをしながら言う

「・・・」

「あの子、昔うちの学校と対戦したことがある子やねん。で、私のホームランみて憧れてくれたみたいでなー」

パンッ

「ふーん」

パンッ

「で、間違って酒飲んで、抱きついてきたんや」

パンッ

「・・・そうなん・・・やっ!」

美優紀は力を込めてボールを投げる

パンッ!

「・・・っー。せやから、変な誤解すんなや」

パンッ

「別に誤解やしてないし」

パンッ

「・・・じゃあ、なんで怒ってん」

一向に機嫌が直らない美優紀に、山本は苛立ちを覚え始める

パンッ・・・!


美優紀はボールを受け取り

俯く

「・・・だって、彩ちゃん・・・人前でいちゃいちゃするの嫌いなくせに、昨日あの子が抱きついたら手ぇ回してたやん」

「え・・・?」

「・・・私やって・・・ヤキモチくらい妬くわっ!」

美優紀は思いっきりボールを投げる

「・・・っ」

トンッ・・・

動揺した山本はボールを受け損ね

ボールは草むらに転がった

「・・・」

山本は真っ赤になりながらそっぽを向く美優紀を見て

胸がくすぐったくなった

「・・・ははっ」

「何よ!笑うことないやん!」

「なんや、そういうことやったんか」

山本はすたすたと歩き、美優紀との距離を詰める

「・・・」

美優紀の目は少しうるんでいた

そして

「え・・・?」

山本は美優紀をそっと抱きしめた

「よかったー・・・嫌いになったんかと思った。ヤキモチか・・・驚かすなよ」

「・・・いやや」

美優紀は山本の腕の中で呟く

「え?」

「だって、いっつも野球ばっかりで、東京に来てもなかなか会えんし・・・好きかどうかわからんやん」

「美優紀・・・」

「そんなん・・・嫌や」

美優紀はくぐもった声で言う

「すまんかった・・・でもな・・・」

山本はすっと身体を離し、美優紀を見つめる

「お前の事考えんかった日は1日もないで」

「・・・っ」

美優紀の胸はドクンっと跳ねる

そして

「美優紀の事が大事やし・・・一番、好きやで」

山本は真っ赤になりながら言った

「・・・もうっ」

美優紀は嬉しくなって

山本に抱きついた

「私やって、めーっちゃすきやで」

「・・・おう」

山本はしっかりと背中に手を回し、美優紀を抱きしめていた


―――――

「んーいいなぁこういうの」

公園のベンチで

桜を見上げながら珠理奈は呟く

「そう?ならよかった」

珠理奈の隣で玲奈も桜を見上げながら

ベンチにもたれ、春風と穏やかな陽気に身を預けていた

美優紀の家の最寄り駅から始まったデートは

カフェで玲奈の朝食を軽く済ませた後

球場近くの公園のベンチでお花見をすることになった

ベンチの前には池があり

アヒルやカモに餌をあげている人たちもいた

「・・・」

珠理奈は桜を見上げる玲奈の横顔を見つめる

「・・・なに?」

その視線に気づいた玲奈は珠理奈を見て首をかしげる

「ううん。やっぱり、隣に玲奈ちゃんがいるのっていいなーって思って」

そういって珠理奈は玲奈の手に自分の手を重ねた

「・・・もう」

玲奈は照れくさそうに、珠理奈を見る

「玲奈ちゃん・・・」

珠理奈は身体をひねり、玲奈の顔に近づく

「・・・だめだよ。ここ、外だからね」

玲奈は重ねられている手と反対の手を珠理奈の顔の前に出し

制止する

「ちぇー・・・」

珠理奈は口をとがらせてベンチに座り直す

「ま、いっか。許可が出たしー」

珠理奈はにやっと口元を緩ませる

「ふふっ。あ、許可で思い出した。珠理奈、私心臓も問題ないから次の外来1年後になったの」

「えっ!ホント?よかったね!!」

「うん。来週形成外科の外来受診するの。手術は夏休みくらいにしようかなぁ」

「え?手術・・・?」

玲奈の発言に珠理奈はきょとんとする

「結構傷が大きいから、するとなったら入院になるって前から言われてたの」

「へ・・・?」

珠理奈の中で

許可がおりたらしたかった、妄想たちが音をたてて崩れて行った

(そうだったー・・・許可でたっていってもまだ傷治してないじゃん。あーミスったー・・・私昨日からもうOKだと思ってたよ・・・)

珠理奈は頭を抱える

元々、そういうことをするのは中西がアメリカから帰ってきた時に許可がでていたのだが

玲奈が傷が治るまで待ってと

頑なに拒否していたのだ

「あ、でも、珠理奈が世界大会から帰ってくる頃には傷も落ち着いて・・・ってどうしたの?」

先ほどとはうって変ってうなだれている珠理奈に玲奈は驚く

「ううん・・・なんでもない」

珠理奈は顔をあげ、精一杯の笑顔をつくる

「どう見ても大丈夫じゃないと思うんだけど・・・」

「ははっ。大丈夫だから・・・あ、私もさ夏、東京で合宿があるんだ。一か月くらいこっちに居るから、時間見つけてお見舞い行くよ」

「えっ、ホント?」

玲奈の顔がぱぁっと明るくなる

その笑顔に、珠理奈はキュンとして

玲奈を抱きしめた

「ちょっ!じゅ、珠理奈っ」

「だめっ!可愛すぎるっ!」

「もうっ!」

玲奈は珠理奈の胸の中で顔を赤くして暴れ

ベンチから立ち上がりプイッとそっぽを向く

「あー・・・・ごめん」

「もう、人が居るんだから・・・」

玲奈は顔を赤らめたまま口をとがらせる

その時

ブーーーン・・・

玲奈の横にスッと黄色い物体が飛んできた

「玲奈ちゃん蜂!」

「へ?きゃっ!」

真横に居る蜂に驚いて

玲奈はパニックになり

ベンチから勢いよく離れた

池の方に逃げる

そして

「玲奈ちゃんっ!」

「きゃっ!」

バシャーーン

池の周りの草に足をとられた玲奈は

池の中で尻もちをついていた

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑰

「・・・ふぅ」

ホテル近くの球場前で汗を拭いているジャージ姿の女性がいた

「敦子」

名前を呼ばれて、その女性は振り返る

「朝から精がでるねー」

そこには同じくジャージを着た大島の姿があった

「優子・・・」

「ほれ」

そういって大島は前田に紙袋を投げる

「なにこれ?」

「ホテルのモーニングのパン。どうせ練習に夢中になって時間過ぎちまうと思ったからよ」

「・・・」

「さ、それ食べたら中入ろうぜー」

「え・・・?」

「久しぶりにさ、敦子の球打ちたいからよ」

そういって大島はニッと笑った


―――――

「美優紀ー今日お母さん仕事いってくるなー。あ、洗濯もんだけ干しといてなー」

美優紀の部屋のドア越しに母の声が聞こえた

「んー・・・はーい」

「あ、すいません・・・」

美優紀と玲奈は布団の中で返事をしながらもそもそと起き上がる

「玲奈ちゃんゆっくりしていってなー」

そういってバタンと玄関のドアが閉まる音がした

「はぁ・・・」

美優紀はため息をついて、携帯を見た

彩からの連絡は来ていなかった・・・

「さ、ご飯にしよか。玲奈ちゃん今日、珠理奈と会うんやろ?」

「う、うん・・・」

「あ、でもその前に洗濯もんだけ干さしてなー」

玲奈はさっと起き上がり、部屋を出ていく美優紀の後姿を見つめていた


「・・・彩ちゃんのアホ」

美優紀はそう呟きながら洗濯物を干していく

「みるきー」

そこに、携帯を手にした玲奈が窓から顔を出す

「なに?」

「ごめんなさい。えっと・・・私、珠理奈と出かける前に家に取りにいかなゃ行けないものがあるのすっかり忘れてて、今から帰って取ってこようと思うの」

「あ、そうなん?」

「うん、ごめんね。だから、ご飯も大丈夫だから」

「そ、そう?」

「だから、みるきーもいつも通りランニングしてきて」

「へ?」

「だ、だって日課でしょ?休んじゃったら身体もなまっちゃうよ。必ず走ってね。じゃあね」

「う、うん・・・」

玲奈の勢いに押されて美優紀は頷いた



洗濯物を干し終えた美優紀は

再び携帯に目をやる

連絡はやはり来ていなかった

「もう・・・」

美優紀は口を尖らせる

自分で連絡を取ればいいのだが

昨日、怒鳴ってしまったのでどう連絡をとっていいかわからなくなっていたのだ

「はぁ・・・走ろ・・・」

こういうもやもやする時は

走ってすっきりしたほうがいい

そう思い、美優紀はジャージに着替え始めた

―――

美優紀の家の最寄り駅で

珠理奈はそわそわと携帯を見ていた

「珠理奈っ!お待たせ」

玲奈は息を切らしながら珠理奈に駆け寄る

「ううん。朝早くからごめんね」

「ううん。いいの。・・・ありがとう」

玲奈は息を整え、にこっと微笑む

「大丈夫だった?」

「う、うん。たぶん。でも、私走ってきてって念押してたからからかなり怪しかったかもしれないけど」

そういって玲奈は苦笑いをする

「はぁーでも、ホント野球以外はダメだなー彩は」

珠理奈はため息をつく

「ふふっ。まぁそこがいいとこでもあるんだけどね」

「さ、私たちもデート、デート」

そういって珠理奈は玲奈の手を握り歩き出す

「あ・・・」

久しぶりの珠理奈の手の感触に、玲奈は胸がくすぐったくなった

「玲奈ちゃん、どこいこうか?」

「んー。どこでも」

振り返って答える珠理奈に

玲奈はニコッと笑って答えた


―――


「はっはっ・・・」

美優紀は軽快に河川敷の土手を走る

美優紀のマンションは通っている大学からは少し距離がある

母と2人暮らしのため比較的家賃が安いところというのもこのあたりを選んだ理由でもあるが

東京でも自然が多く

ランニングするにはもってこいの場所で気に入っていた

「はっ・・・はっ・・・」

真っ直ぐ伸びた道の先に

一人の人物が立っているのがぼんやりと見えた

「あ・・・」

近づくにつれ、はっきりとする輪郭に美優紀は驚いて立ち止まる

「・・・よう」

そこにはジャージ姿の山本が照れくさそうに片手をあげていた
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