気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2015年07月

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑯

『彩ちゃんの・・・あほっ!!』

山本の頭の中は

先ほどの台詞がくわんくわんと響いていた



「あぁー・・・れなちゃーん・・・」

珠理奈は去っていく玲奈の後姿を見つめながら

届かない手を伸ばす


「・・・うー・・・気持ち悪い」

山本の抱きついていた兒玉は

込み上げて来るむかつきに手で口を押さえる

「ほ、ほらはるちゃん!行こうっ!すいませんでした!」

宮脇は慌てて兒玉の身体を支えると

一礼してホテルの中に戻っていった



「・・・彩のバカっ!玲奈ちゃんにせっかく会えたのに話しもでき・・・」

珠理奈は振り返って山本を見て

言葉を飲みこむ

そこには今にも泣き出しそうな悲壮な顔をした山本が立っていた

「え・・・っと。あー・・・だ、大丈夫だよ。明日ちゃんと話しすれば・・・」

「・・・嫌われてしもた」

とっさにフォローしようとした珠理奈の言葉を遮り

ふらふらと山本はホテルに入っていった

「え・・・ちょっ、彩ー」

珠理奈もあわてて後を追いホテルに入っていった


――――

「・・・みるきー。大丈夫?」

すたすたと歩く美優紀の後ろから玲奈がおずおずと声をかける

「・・・」

美優紀はぴたっと立ち止まり

俯く

「・・・私、最低や。こんなんが彼女なんやったら・・・彩ちゃん嫌いになるよな・・・」

美優紀はくぐもった声で言う

「みるきー・・・」

玲奈はそっと美優紀の肩に手を置き

「大丈夫だよ。彩がみるきーのこと嫌いになんてなるはずないから。ちゃんと話ししよう。ね?」

「・・・でも」

「大丈夫。あの子に・・・ヤキモチ妬いたんだよね」

「・・・」

美優紀は黙って頷いた

「わかるよ・・・。だから、謝ろう」

「うん・・・」

美優紀はぐすっと鼻をすすり、頷いた


――――――

さて、ホテルでは懇親会も終わり

選手たちは皆部屋へと戻って行った

「あちゃー・・・」

野本はぽりぽりと頭を掻く

そこにはテーブルに突っ伏して寝ている篠田と中西の姿があった

「会長、飲ませすぎですよー」

野本の横で大島が苦笑いをする

「んーそこまで飲んでないぞ。私は」

野本はけろっとした顔で言う

「・・・さすが、酒豪」

大島は苦笑いをした

野本はザルであり、ハイペースで飲むため

そのペースに合わせて飲んでいた中西と篠田は見事につぶれてしまったのだ

「うーん。篠田君も家に帰るつもりだったみたいだけど・・・ホテルに言って、もう一部屋とるか」

「あ、私んとこ使ってください」

大島が言う

部屋割を決める際に選手は23名、ペアを組んでいくとツイン部屋を1人で使える人がいると思われていたのだが

アメリカから帰国した大島用に、あらかじめ1部屋とっているということを野本が言い忘れていたのだ

そのため、部屋割は大島を除いた22名で決められ、ペアが組まれていた

「佐江たちんとこに入れてもらいます。もともと、この後話しするつもりでしたし、そのまま寝ちゃう可能性の方が高かったんで」

秋元と宮澤は同じ部屋であり、仲のいい3人の話しは懇親会だけではつきなかったらしい

「ははっ。気持ちだけもらっとくよ。帰国してすぐだ、話すのも良いがゆっくり休め。それに、一泊くらいこの二人に払ってもらうから」

野本は笑って、大島の肩を叩いた

「そうですか?じゃあ、部屋まで運びます」

そういって大島はニカッと笑った


―――

珠理奈と山本は部屋に戻ってきていた

覇気のない山本はよろよろとベッドに突っ伏す

「彩ー。スーツ皺になるよー」

「・・・」

「ほらー。いつまでもうじうじしないでさー」

「・・・」

「もー・・・」

親睦会が始まる前と逆になった光景に珠理奈は苦笑いする

珠理奈はスーツをハンガーにかけると

携帯を見る

玲奈からのメールが来ており、今日は美優紀のところに泊るという連絡が来ていた

「玲奈ちゃん、美優紀ちゃんのところに泊るってさー。きっとうまく話ししてくれてるだろうし、明日会ってきなよー」

「・・・こういうとき、どうしたらええんや」

山本はぽつりと漏らす

「えー・・・うーん。それは2人の問題だからなー・・・。あ、そうだ」

「ん?」

「彩たちにしかできない仲直りの方法、あるかも」

「ほんまかっ!」

山本は勢いよく起き上がる

「早っ!」

珠理奈はそんな山本をみて苦笑いをした

――――


翌日

「んー・・・」

大島はベッドのなかで目を覚ましす

昨日の夜、秋元たちと話しはしていたのだが

結局、野本に言われた通り自分の部屋で寝ることにしたのだ

寝ぼけ眼をこすりながらベッド近くの時計に目をやる

時刻は朝5時・・・

就寝してからそれほど時間はたっていなかった

「・・・」

カーテンの隙間からは朝日がうっすら差し込んでいた

大島はそっとカーテンを開け、朝日を全身で浴び、ぐっと伸びをした


「ん・・・?」

大島はふとホテル下に目をやった

そして

「相変わらずだなぁ・・・」

そう呟き、ニッと笑った



「んー・・・」

篠田はふと眼をさまし、ガンガンと響く頭痛に顔をゆがませ寝がえりをうつ

向きを変えた時に、手に何か柔らかいものが触れるが

気にせずにそのまま目をつぶっていた

「ん・・・りおーん・・・」

いきなり篠田の頭は何者か抱え込まれる

「は?」

篠田は驚いて目を開けた


そこには中西が口をとがらせて

篠田に迫ってきていたのだ

「わーーー!!何やってんだっ」

「ぐっ!」

篠田は思いっきり腕を伸ばし中西の顔をのけぞらせた

「いったー・・・って、あ、麻里子様。おはよー」

中西は首を押さえながらにこにこと笑う

「いやいや、なんでそんなに普通なんだ」

「ん?」

呆れてため息をつく篠田をみて

中西は辺りを見渡した


ダブルベットに篠田と2人・・・

中西は下に来ていたタンクトップ

篠田はホテルの寝まきを来ていた

そして2人とも下はズボンを脱いでいて生足が出ている・・・

「やだー。麻里子様ったらー」

中西は手を頬にあてて、きゃっと恥ずかしそうにする

「・・・殴っていいか?」

篠田は眉間にしわを寄せな、静かに言った

「あははー冗談冗談。きっと昨日酔い潰れたから野本会長がホテルとってくれたんでしょ?別々んとこに運ぶのもめんどうだから一部屋でーみたいな感じでさ」

「・・・だろうな。お前とは何もないと信じたい」

篠田は起き上がり、床に脱ぎ散らかされたスーツを拾う

「あーひどいなぁー。んーでも、楽しかったなぁ」

中西はぐっと伸びをし

「さて、顔洗って診察いきますか」

フッと息を吐くとベッドから起き上がる

「休みじゃないのか?」

「ん?入院してる患者はいるからねー。診察は毎日しないと」

「・・・真面目なのか不真面目なのかわからんやつだな」

篠田は中西を見てフッと笑った


少しして、2人は朝食をとりに1階のレストランに来ていた

レストラン内には既に朝食を取っている選手達の姿もあった

「すいませんでした、会長」

篠田は頭を下げる

「いやいや、いいんだよ。ホテル代は2人に払ってもらうしなー。部屋ダブルで悪かったなー。急だったからツインもう空いてなくってさー」

野本はコーヒーを飲みながらにこにこと笑っていた

「でも、2人とも部屋に着くなり服脱ぎだしてさー。見てるこっちがあせったよ」

「え・・・」

篠田はどきっとする

「んで、ベッドに入るなり寝ちゃうからさー笑っちゃったよ」

「はは・・・そうですか・・・」

篠田は真相を知ってホッとした

「いいんですよー。楽しかったですし。それにしても野本会長はお強いですねぇ。今度までにもう少しお酒鍛えておきます」

中西はにこにこと笑う

「ははっ。そうだなー。そうしてもらおうかー。まぁとりあえず食べなさい」

「はーい」

「・・・すいません」

中西と篠田はそう言って席に着いた


「山本さん・・・あの・・・昨日はすいませんでした」

兒玉は今にも泣きそうな顔で山本に頭を下げていた

その隣で、宮脇も頭を下げる

「いや、もうええから」

「そうそう、仕方ないじゃん。体調大丈夫?」

山本と珠理奈は朝食を掻きこみながら言う

「あ・・・は、はい」

兒玉はその姿に圧倒されていた

「ごっそうさん」

「私もー」

2人は勢いよくお茶を飲み

ガタガタと椅子から立ち上がる

「・・・」

兒玉はまだバツが悪そうにその場に立ち尽くしていた

山本はそんな児玉を見て、フッと笑い

「ホンマに怒ってないで。ただ、今日は出かけなあかんから急いでんねん。また合宿でな」

そういって山本は児玉の頭をなでた

「は、はいっ!あ、あのっバッティング練習一緒にさせてもらえますか?」

兒玉は目をきらきらさせながら言う

「おぉ。ええで。ほなな」

「はいっ」

山本はニッとって手を振って去って行った

「よかったね、はるちゃん」

「うんっ!」


兒玉と宮脇は顔を見合わせて笑った



一方、別の席では宮澤と秋元は食事をしながら話しをしていた

「今日どうするー?さっしーたちに会う?」

「そうだなー。でも、リーグ戦終わったばっかだから、今日はりんちゃんと東京デートかなぁ」

「へいへい。仲がよろしいこって」

「えへへー。才加は家帰るの?」

「あーそうだなぁ。まぁ帰っとこうかなぁ」

「うんうん。じゃあみんなと会うのは明日だねー。あ、そういや、優子まだ来てないなー」

「あーそうだなぁ。部屋ノックしても出てこなかったし。時差ボケってやつかなぁ」

「まぁ昨日も遅くまで話しこんじゃったからなぁー」

「そうだなー」

「・・・ねぇ才加」

「ん?」

「私さ、昨日の話し聞いてますます楽しみになってきちゃった」

「そうだなぁ・・・高校ん時に優子が言い出した時は、みんなそうなったらいいなーくらいだったのにな」

「うん、いつのまにか皆の夢になってきちゃったね」

「そうだな、あいつはホント不思議な奴だよ」

宮澤と秋元はクスッと笑った


―――

朝食を終えた

中西と篠田はロビーまで出てきていた

「麻里子様はどこ行くの?」

「・・・家に帰るんだ」

「あー。まぁスーツ皺だらけだになっちゃったし、着替えとか持ってないもんねぇ」

「・・・まぁ、というか・・・」

篠田は言葉を濁しながら歩く

と、ホテルの入り口から一人の女性が入ってきた

(おーめっちゃ美人じゃん)

中西はその女性を見つめる

と、その女性がつかつかとこちらに向かってきた

そして

「麻里ちゃん」

むすっと頬をふくらませて、篠田を見る

「陽菜・・・」

篠田は苦笑いを浮かべ後ずさりしていた

「え?」

中西は篠田とその女性の顔を交互に見る

「もー昨日、帰ってくるって言ったのにー」

「ごめん・・・その・・・酔ってて、ここに泊ったんだ」

「連絡くらいしてよー。朝起きたら居ないし、心配したんだから」

「・・・朝起きたらってことは、寝てたんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、いいんじゃない?」

篠田は苦笑いをする

「もー連絡しなくなるっていうのは関係が冷める原因になるのー」

「あのーすいません」

中西が2人の横から声をかける

「麻里子様の・・・?」

「あ、はじめまして小嶋陽菜っていいます。麻里ちゃんの彼女でーす」

「あーそうですかぁ。私は中西優香って言います。いやーお綺麗ですねー。いいなぁー麻里子様」

「えー?そうですかぁー?麻里ちゃん、ほめられちゃった」

「・・・ナチュラルすぎるだろ」

初対面で普通に話しをする中西と小嶋に

篠田は苦笑いをする

「中西さんはコーチとかですか?」

「いや、しがない医者ですよー。学生の時は野球やってたんですけどねー。麻里子様とは高校時代のライバルみたいなもんです」

「えーそうなんだ。高校の時の麻里ちゃんってどんな感じでした?」

「今と変わらずクールな感じですよー」

「そうなんだー。でも、家では甘えるんですよー」

「へー」

中西はにやにやと笑う

「・・・陽菜。もういいから」

篠田は小嶋がしゃべるのを制止しようとする

「いいじゃん。でも、お医者さんかぁ。麻里ちゃんが教師やめちゃって学校もつまんないから、私も看護師に転職しようかなー」

「え?」

「私、保健室の先生なんですよー」

「ほー。養護教員ですか。てことは、職場恋愛かー。いいなー麻里子様。いやーナース服似合うと思いますよ。どうですか、うちの病院でぜひ」

中西は小嶋を見てニヤッと笑う

「おい」

篠田はじろっと中西を睨む

「あははー。じゃあ私はこれでー。」

中西は篠田が本格的に怒る前にスッと身を引いて去って行った

「ったく・・・」

篠田は中西の背中を見ながらため息をついた

「麻里ちゃんがムキになるの珍しいねー」

「あいつは人の神経を逆なでさせるのがうまいんだ」

「そう?いいコンビだと思うけど」

「はぁ?」

篠田は眉をひそめる

「もー怒んない怒んない。さ、かえろっ。陽菜お腹すいちゃったー。麻里ちゃんご飯作ってねー」

小嶋は篠田の腕にすっと抱きつく

「・・・はいはい」

篠田はフッと笑い

2人はホテルを後にした

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑮

――――――

さて、珠理奈たちが会場から走り去る前

後ろから熱い視線で見つめる人物がいた

「・・・」

彼女は博多ウォーブラ サード 兒玉 遙

今年からプロ入りしたルーキーだ

「はるちゃん。声かけなくていいの?」

その横で兒玉の顔を覗きこむのは

同じく 博多ウォーブラのルーキー セカンド 宮脇 咲良だ

「だって、まだみんな話してるし・・・」

「もーさっきのミーティングでもそうやって言って、結局話しかけなかったじゃない。小谷さんがせっかく紹介してくれようとしたのに、隠れちゃうし・・・」

「うぅー・・・」

兒玉は口をとがらせて俯く

「今なら小谷さんも岸野さんもいるから大丈夫だよ」

「うー・・・でも・・・余計に緊張する・・・」

兒玉はもじもじと俯いていた

その時、珠理奈が山本の手を引いて会場から出て行ってしまった

「あっ、今がチャンスだよはるちゃんっ!外ならゆっくり話しできるかもっ、行こう」

「え・・・あ、ちょっと待って。水のんでから・・・」

緊張を誤魔化すために、兒玉は慌ててテーブルに置かれていた水をぐっと飲み干す

「ん・・・!」

兒玉は驚いた表情を見せたあと

グラスを勢いよくテーブルに置いた

「え?はるちゃん・・・?」

宮脇は驚いて兒玉に近づく

兒玉からはアルコールのにおいがいしていた

「え・・・?うそ?お酒?大丈夫はるちゃん?」

宮脇は置かれたグラスに目をやり、青ざめる

「・・・えへへー。山本しゃーん!」

兒玉はにこにこと笑いながら山本たちを追って走り出した

「へ?ちょっ、はるちゃん!」

宮脇は慌てて兒玉の後を追い、走り出した



「あれー?私、焼酎どこにおいたかなー?」

「もー野本会長ー。いろんな席に行くからどっかでおいてきちゃったんじゃないですか?」

「気をつけてくださいよ。未成年も居るんですから・・・」

「あーすまんすまん」

野本はぽりぽりと頭を掻く

既にビールに飽きた野本、篠田、中西の3人は焼酎やワインにシフトしていたのだ

「まぁいいや。お前らのワインもらおうかなー」

「どーぞどーぞ」

中西は嬉しそうにボトルを手に取る

「・・・」

篠田も酔いが回ってきたのか眉をひそめることなく、グラスに入ったワインを飲んでいた



―――――


「んー・・・でぇへん」

ホテル前で携帯を耳にあてたまま美優紀は口をとがらせていた

「やっぱり盛り上がってるんだよ・・・」

その隣で、玲奈が苦笑いをする

「はぁ・・・やっぱり今日は諦めなあかんかなぁ」

「・・・うん」

玲奈は携帯に目をやる

珠理奈からの連絡は来ていなかった

「・・・ごめんな。玲奈ちゃん。付き合ってもらって」

「ううん。仕方ないよ。明日だね・・・」

そういって2人は肩を落とし

ホテル前の交差点の信号を渡った


少しして

「玲奈ちゃんっ!」

勢いよくホテルの自動ドアから飛びだした珠理奈は

きょろきょろとあたりを見渡す

「えー?どこ?」

「なんや?おらんのか?」

山本もあたりを見渡しながらそわそわしていた


「あのっ!山本しゃんっ!」

「へ?」

山本はホテルの入り口の方から声をかけられて振り向く

そこにはスーツを着た女の子が立っていた

にこにこと笑うその顔は、心なしか赤くなっていた

「えーっと・・・?」

山本は首をかしげる

「はるちゃんっ!」

遅れてスーツの女の子が息を切らせて走ってきた

「あのっ私、博多ウォーブラの兒玉遙っていいましゅ」

「あ、宮脇咲良です」

兒玉の挨拶に、宮脇も続けて頭を下げる

「あー。里歩んとこの。えーっと確かセカンドとサードやったよな」

山本は早く美優紀を探したかったのだが、無下にすることもできないのでニコッと笑う

珠理奈も勢いよく山本に話しかけてきた兒玉たちの方に視線を奪われていた

「あ、あのっ。私、昔秋葉女学院と準決勝であたった福岡商業にいたんでしゅ」

「あー。あそこの選手やったんや」

「私、あの時山本さんのホームラン見て敵だったけど感動したんでしゅ!それ以来ずっと憧れてちぇ!」

兒玉は興奮気味に身を乗り出して言う

「す、すいません。はるちゃん会場で間違ってお酒のんじゃったみたいで・・・」

隣に居る宮脇は慌てて説明に入る

手には自販機で買ったと思われる水のペットボトルが握られていた

「え?そうなん?大丈夫か?そう言われると確かに顔赤いなー」

山本は驚く

「えへへー大丈夫れすー心配してくれてるんでしゅかー?」

兒玉はにこにこと笑っていた


―――

「・・・?」

車の音にまぎれて

名前を呼ばれた気がして

玲奈は振り返った

「珠理奈っ!」

ホテル前では珠理奈と山本がきょろきょろとあたりを見渡していた

「彩ちゃん!」

美優紀もそれに気づき、2人は元来た道を走る

しかし、車道を挟んでいるので2人は玲奈たちの姿に気づいていなかった

「玲奈ちゃん、電話や!」

「うんっ!」

玲奈は鞄から携帯を取り出し、電話をかけようとした時

「・・・誰あれ?選手かなぁ?」

美優紀の声に玲奈は通話ボタンを押す前に顔をあげる

そこには

ホテルから出てきた2人組が珠理奈たちに話しかけている姿があった

「あ、信号変わった!行こう!」

「う、うん」

ぼーっと見つめているうちに信号が変わり、美優紀が走り出す

玲奈もあわてて、その後に続いた

―――

「えーっと宮脇さんやったよな。兒玉さんかなり酔ってるみたいやから休ませたってくれるか?私らちょっと知り合いが近くまできてるから今から会うねん」

山本は申し訳なさそうに苦笑いをした

「あ、す、すいません!はるちゃん、とりあえず中入ろう」

宮脇は慌てて兒玉の腕をつかむ

「えー・・・私まだ山本しゃんと話ちたいっ!」

「ホントに大丈夫?さっきから呂律まわってないじゃん」

珠理奈が隣で苦笑いをする

「・・・しちゅれいな!かちゅぜつ(滑舌)は元々悪いんでしゅー!」

兒玉はキッと珠理奈を睨む

「す、すいません・・・それは本当なんです」

宮脇は苦笑いをしながら頭を下げた

「そ、そうなんだ・・・」

珠理奈はぺこぺこと頭を下げる宮脇を見て、苦笑いをする

「えへへー。あのっ山本しゃんっ!」

兒玉はそんなやりとりを気にせず、熱い視線を山本に向ける

「ん?」

「好きでしゅ!!」

そういって兒玉は勢いよく山本に抱きついた

「・・・お、おう」

山本は反射的に兒玉を抱きしめ、苦笑いをする

「えへへー。山本さぁーん」

「は、はるちゃんっ」

先ほどとはうってかわって大胆な兒玉の行動に、宮脇は慌てていた


「・・・ふーん。なんや、楽しそうやね」


「「え?」」

その声に、山本と珠理奈はゆっくりと視線を右に向ける

そこには腕を組みながらにこにこと笑う美優紀と

携帯を手に、驚いている玲奈の姿があった

「玲奈ちゃんっ!」

「美優紀!」

2人は駆け寄ろうとしたのだがだ

山本は慌てて兒玉を引きはがそうとするが

兒玉はひっついて離れなかった

「え?ちょっ・・・」

わたわたしている間に

「おじゃまやったみたいやな。玲奈ちゃん、行こう」

美優紀は玲奈の腕をつかむと、くるっと踵を返す

「え?あ、う、うん」

玲奈は美優紀に腕を引かれるまま

困惑した顔で珠理奈たちを見る


「え、ちょっと待てや美優紀!」

山本は思わず叫ぶ

「・・・」

美優紀は立ち止まり

振り返って、キッと山本を睨む

そして

「・・・彩ちゃんの・・・あほっ!!」

思いっきり叫んだ

「な・・・」

その勢いに、山本たちは固まる

「ふんっ!もうしらん!」

美優紀はぷいっとそっぽを向いて

歩き出した

玲奈は慌てて山本たちと美優紀を交互に見ながら

手を合わせ、ごめんねのポーズをして

美優紀の後を追ったのだった

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑭

「おー来た来た。なにやってんだよー」

大広間の会場でビールを片手に大島が手をあげる

「すいません!」

山本と珠理奈は勢いよく頭を下げる

「ほれ、お子ちゃまは烏龍茶なー」

そう言って宮澤がグラスを両手にもって珠理奈たちに差し出した

二人はそれを受けとると

マイク前に立っている篠田を見た

「・・・」

篠田はグラスを片手に眉間にシワを寄せて山本たちの方を見ていた

「あーあ。めっちゃ怒ってんじゃん。彩のせいだからねー」

珠理奈は小声で山本に耳打ちする

「う・・・うっさいわ。お互い様やろ。」

山本は横目で珠理奈をにらんだ後

ひたすら頭を下げていた

「はいはーい、麻里子様乾杯しないとー」

そんな山本を見かねて中西が言う

「・・・わかってる。というか、なんでここにいるんだ」

篠田の眉間のシワがよりいっそう深くなる

「えーお祝い事は人が多い方がいいじゃない。ねー野本会長」

中西はニコニコしながらビールを手に笑う

「そうそう。まぁいいじゃないか篠田君。ほら、挨拶挨拶」

その隣で、野本もにこにこと笑う

「・・・えー、みなさんリーグ戦お疲れさまでした。世界大会に向けてこれからこのメンバーで一丸となって頑張っていきましょう」

篠田はグラスをスッと上にあげ

「乾杯!!」

「「かんぱーい!!」」

会場内に選手達の声が響き

グラスが高々と上がった


――――

乾杯後の会場は皆わいわいと盛り上がっていた


「はい、麻里子様ー飲んで飲んでー」

中西は篠田のグラスにビールを注ぐ

「そうだそうだー。篠田君、飲みが悪いぞー」

野本もそういって自分のグラスのビールを飲む

「お、野本会長はお強いですねー。ささ、もう一杯」

「おーありがとう」

「・・・はぁ」

中西と野本の掛け合いに篠田はため息をつき、ビールをぐっと飲んだ





「あー今日はどうなる事かとおもったわよ。最初ボールばっかりでコントロール悪いし」

別の席では白石、橋本、珠理奈、山本が話しをしていた

「はは・・・すいません」

珠理奈は苦笑いをする

「・・・麻衣。ペース落とさないと・・・」

隣で橋本が言う

「だいじょうぶよー。めでたい席なんだから飲まないとー」

白石は橋本の肩に手を回しにこにこと笑っていた

「・・・なぁ、白石さんって酒弱かったんか?」

山本は珠理奈に小声で話す

「いや、私もここまでとは思わなかった・・・」

珠理奈は橋本に絡む白石を見ながら苦笑いをする

「もう・・・飲みすぎ。明日どうなっても知らないからね」

「だいじょうぶー。それよりさ、明日久しぶりにキャッチボールしない?」

「え?」

「だって奈々未の球、高校以来受けてないんだよー。どれだけ早くなったかみたいしー」

白石はそういってにこにこと笑う

「もう・・・わかった」

橋本は困ったように笑っていたが

その顔は嬉しそうだった

「「・・・」」

珠理奈と山本はそんな2人のやり取りに見入っていた

というか、普段つんけんしている白石の甘える姿が貴重過ぎて目が離せないと言う方が正しかった

「あれをツンデレっていうんか?」

「そうだね・・・」

山本の発言に、珠理奈はこくこくと頷いていた



―――


「でなーこいつ中学ん時になー」

「もーその話しはええわっ!」

珠理奈たちの席は岸野、小谷が加わり山本の昔話で盛り上がっていた


珠理奈は皆が盛り上がっている隙に

そっと携帯を取り出した

バイブ音が鳴っていたので、何かしらの連絡がきているとわかっていたのだが

見るタイミングを失っていたのだ

そして

メールを起動し

「えっ」

思わず声が出る

その声に反応して白石たちが一斉に珠理奈に視線を向けた

「いや・・・あー彩、トイレ行こう。ねっ」

「はぁ?」

「いいからっ」

困惑する山本の腕を引き

珠理奈は会場を後にした



「なんやねん?」

会場を出るまで腕を掴まれていた山本は怪訝そうに言う

「これ」

珠理奈はさっき来ていたメールを見せる

『あのね、今みるきーとホテルの近くに来てるんだけど・・・ちょっと会えないかな?』

と書かれていた

「えっ!マジかっ!?」

山本は慌てて自分のポケットを探るが

「あ、私焦って携帯部屋に置いてきてしもた・・・」

「はぁーだめだねぇ彩は。美優紀ちゃん怒っちゃうよー」

珠理奈は玲奈が来ていることを知ってすでに口元を緩ませていた

「う・・・と、とにかく、来てるんなら会おうや」

「もちろん!あ、でも会ったら2人きりにしてねー」

「こっちの台詞や」

2人はニヤッと笑い

勢い走り出した

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑬

―――


ジャーーー・・・

珠理奈はジャージの裾を肘まで上げると

バシャバシャと顔を洗い、タオルでごしごしと顔を拭き

鏡に映る自分の顔を見る

「はぁ・・・せっかくOKでたってのに・・・」

珠理奈はそう呟いて肩を落とす

リーグ戦に優勝した喜び、世界大会選抜

そして、なにより玲奈の形成外科の手術が許可されたこと・・・

嬉しいことだらけなのにも関わらず

一番喜びを伝えたい人に、今日会えないという肩すかし感は半端ではなかった

「珠理奈ー。はよせぇーよー。遅れたら怒られるでー」

ドア越しに山本の声が聞こえ

「はーい。わかったよー」

珠理奈は気を入れ直し、歯磨きを始めた

(くそー・・・こうなったら、明日は1日デートだな。どこ行こう・・・でも、せっかくだからゆっくりしたいよなー・・・)

珠理奈はしゃこしゃこと歯を磨きながら考える・・・

(あ・・・彩って家帰んないかなぁー。玲奈ちゃんにここに泊ってもらうとか・・・)

珠理奈は歯ブラシを置き、口をゆすぐ

(というか・・・彩って美優紀ちゃんとしたのかなぁー?前あった時は無いって言ってたし・・・)

「・・・」

タオルで口を拭き、珠理奈は洗面所の扉を開ける

山本は鏡の前で髪を整えており

後はスーツの上着を着るだけになっていた

「ほれ、珠理奈のスーツもそこに出してるから着・・・」
「彩ってさー美優紀ちゃんとエッチした?」

山本の言葉を遮って出た珠理奈の言葉に

山本はみるみる顔を赤らめ

「な・・・なに言い出すねん!いきなりっ!」

思わず叫んでいた

「もーうるさいなー。ちゃんと答えてよー」

珠理奈は口をとがらせながら

ジャージのファスナーを下ろし、服を脱ぎ始める

「・・・っ」

山本は気持ちを落ち着かせようと椅子に座り

「・・・まだや」

俯きながら答えた

「えーっ!どんだけー!?もう3年でしょ?昭和かよッ!」

珠理奈はスポーンと勢いよく首からアンダーシャツを脱ぎ、山本の方を見た

「悪かったなっ!しゃあないやろ、お互い家には親おるしそういうタイミングが無いねん」

山本は怒鳴るが、顔を赤らめているので全く迫力がなかった

渡辺が大阪からこっちに引っ越ししてくる際

母親も一緒についてきたのだ

『一人暮らしさせるより安上がりでぇなぁ』と、にこにこ笑う美優紀の母に

山本は少しがっかりしたのだった・・・



「タイミングは作るもんでしょうが」

珠理奈は苦笑いをする

「う・・・こういうときだけもっともなこと言いよって・・・」

山本はプイッと視線をそらせる

「・・・あ、じゃあさ!行ってきたらいいよ」

珠理奈はYシャツを着ながら話す

「は?」

「ラブホ」

「・・・っ!!なにゆうてんねん!!」

「えーだってさー。親が居て出来ないんでしょ?だったらそういう手もあるじゃん」

珠理奈は身支度を完了させ、にやにやと笑う

「で、でも・・・そんなとこ行ったことないし。ましてや女同士って・・・」

「大丈夫、大丈夫。何事も経験が大事ってねー。ああいうとこはプライバシー重視してるし、わかんないよ」

「・・・なんで詳しいねん」

「・・・あははー。玲奈ちゃんと付き合う前にちょっとねー」

珠理奈は笑って誤魔化す

「・・・ど、どうやって入ったらええねん?」

「お、意外と興味あり?」

「う、うっさいわ!」

「空いてる部屋に入ったらいいんだよ」

「あ、なんや映画で見たことあるわ」

山本の脳裏に

薄暗い電灯の下に部屋のパネルが貼られてあり、隣に小さい小窓の受付がある映像が浮かんだ

「受付で・・・お、大人2枚とかゆうたらええんか?」

「・・・なにそれ?なんの昭和の映画見たの?つーか、それホントに映画見るときに言う台詞じゃん」

「・・・」

山本は反論しようとしたが、何も言えずに顔を真っ赤にして唇をへの字に曲げる

「普通に部屋に入ったら大丈夫だよ。料金だって中で払えばいいし」

「そ、そうなんか・・・」

「携帯でも検索かければ結構出て来ると思うけど」

「・・・へー」

山本は素直に感心しながら頷いていた

「あ、なんならもう今日呼び出して泊っちゃいなよー」

「そ、そうか・・・?・・・ん?ちょっと待て珠理奈。私を部屋から出して玲奈連れ込もうとしてないか?」

「あ・・・ばれた?」

「そういうことか・・・ったく、素直に頷いてた私はなんやねん」

「興味深々だったじゃん。なんならテクニックも教えたげようか?」

珠理奈がニヤッと笑う

「いらんわ。はぁー・・・考えてみれば珠理奈は女ったらしやったんやった・・・すっかり忘れてたわ」

山本は頭を抱え、ため息をついた

「失礼な。今は、玲奈ちゃん一筋だし、私だって3年間何もしてないよ!彩とちがってかなり我慢してるけど」

珠理奈はふんっと胸を張り答える

「・・・自慢するととこちゃうで」

山本は白けた目で珠理奈を見る

「でも、美優紀ちゃんも待ってるんじゃない?奥手過ぎたらそのうち大学の知らない男に奪われちゃうよー」

「な・・・!それは珠理奈やっておんなじやんか!」

「・・・へへん」

突っかかる山本の言葉を、珠理奈は鼻で笑った

「な、なんやねん」

「私は大丈夫だもんねー。許可がおりたしっ」

珠理奈はにやにやしながら言う

「・・・なんやねん。気持ち悪いなぁ。それに許可ってなんやねん?」

「それは秘密ー」

「はぁ?言えやー」


コンコン・・・

2人の部屋のドアがノックされる

「おーい。もう時間過ぎてんぞーお前ら待ちだー。早くしろー」

廊下で秋元の声が聞こえた

「げっ!?」

山本は時計を見る

時刻は既に18時を過ぎ、長針は10分を指そうとしていた

「やばっ!」

山本は慌ててスーツの上着をつかむ

「あーあ。彩が興味深々だからー」

珠理奈はにやにやしながら上着を羽織る

「うっさいわ!ほれ、いくでっ!秋元先輩!すいません」

山本は一足先にドアを開けて、秋元に頭を下げる

「はーい」

珠理奈はポケットに携帯を入れ

小走りで部屋を出たのだった

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑫

「・・・よしっと。玲奈ちゃん打てたー?」

ショッピングセンターのベンチに腰掛けている美優紀が

横に居る玲奈の方を向いた

「うん・・・もうちょっと」

玲奈は真剣に携帯画面を見つめながら

文字を打つ

球場を出た2人は、近くにあるショッピングセンターに移動していた

そして、お互いに

「今日は会えないみたいだから帰るね」というような内容を送り

後でホテルに来てるといって驚かそうと言うことになったのだ

「・・・うん。できたよ」

送信終了と言う文字を確認した玲奈は

パッと顔をあげる

「うん、ほな行こか」

美優紀はベンチから立ちあがり、玲奈もそれに続いた


ショッピングセンターの中に入った2人は

服などを物色しながら歩く

そして

美優紀は下着コーナーで足を止めた

「こういうん彩ちゃん好きかなぁ・・・」

美優紀は飾られたマネキンを見て呟く

「へ・・・?」

玲奈はその発言に驚き、顔を赤らめた

「あ・・・えーっと。なんでもない」

玲奈の反応に恥ずかしくなった美優紀も顔を赤らめていた

「「・・・」」

2人は互いに視線をそらし

並べられた色とりどりの下着を見つめる

「・・・玲奈ちゃんは、その・・・もう経験ある?」

「え・・・な、ないよ」

ぽつりと呟く美優紀の言葉に

玲奈は動揺する

「そう・・・なんや。なんや私だけやないんやな」

「え・・・?」

「ほ、ほら、彩ちゃん奥手やから。こういうんって勝負下着とかいうやんか・・・」

美優紀はもごもごと言う

「みるきー・・・」

「そ、それに・・・秋にアメリカ行ってしまうし・・・。世界大会とかゆうたら彩ちゃん、これまで以上に野球ばっかりになるし・・・。もうちょっと私のこと見てほしいっていうか・・・だから・・・その・・・」

もじもじと言う美優紀を見て

玲奈はキュンとする

「彩はみるきーのことが好きだから、大事にしたいんじゃないかな?」

「・・・でも、幼馴染でずーっと一緒におってな、付き合い始めて3年・・・なんもないってなったらもう恋人越えて老夫婦やんなぁ」

美優紀はため息をついた

「そこまでいかなくても・・・」

玲奈は苦笑いをする

「好きやったら、そういうことも期待してしまうんやけど・・・キスするんまでにも時間かかったし、気長に待ってるつもりなんやけどなぁ。それやのに彩ちゃんは野球、野球、野球って・・・私いつまで野球に負けてるんやろう」

「うーん・・・まぁ確かに彩は野球好きだよね」

「もう、度を超えた野球バカやで。誕生日とかクリスマスとかほしいもんは決まってスパイクとかジャージとか・・・野球関係ばっかりやし、遊びにいってもバッティングセンターあったら必ず入るし」

「はは・・・」

恥ずかしくて口ごもっていた口調は

いつの間にか苛立った口調に変わっていた

「もう・・・私、待ってんねんけどなぁ・・・」

「・・・」

『玲奈ちゃんがいいって言うまで・・・待つよ』

美優紀の台詞に

玲奈は珠理奈に言われた台詞を思い出した


そして、今日のガッツポーズ・・・


・・・珠理奈も

ずーっともやもやしてたんだろうなぁ


立場は違えど

3年間キスだけで我慢してきた珠理奈を思い

玲奈はマネキンにつけられた下着を見つめていた・・・


―――――

試合数日前――

珠理奈と玲奈は夜、電話をしていた

「珠理奈お疲れ様。疲れてない?」

「大丈夫だよー。この調子で行ったら、リーグ戦優勝できそうだよ。まぁリリーガルも勝ってるから東京で決勝かなー」

「そうなんだ。じゃあみるきーと応援にいかなきゃ。といっても対戦相手だけど」

明るい口調の珠理奈の声に、玲奈はくすっと笑う

「うん!見に来てよ!決勝は4月初めの金曜日になりそうなんだ」

「え・・・」

玲奈は部屋のカレンダーを見て言葉に詰まる

「どうしたの?」

「ごめん。その日、病院の診察日なの」

「あーそうなんだ」

「日にち変えてもらおうかなぁ。今ならまだ春休み中に行けるかも・・・」

「病院何時から?」

「午前中。10時半からだよ」

「そうなんだ。試合13時からだから間に合うんじゃない?」

「うーん・・・結構待つから」

「でも、心配だからさ、受診してきてよ。ね。その方が私も安心だし!」

「・・・ありがとう、珠理奈」

玲奈はくすっと笑う

「えへへ・・・」

珠理奈は玲奈の優しい口調に、自然と口元がにやけていた

「あ、あのね・・・」

と、電話口から歯切れの悪い玲奈の声が聞こえた

「うん。どしたの?」

「今年、二十歳になるから・・・傷の事聞いてみようと思うの」

「え・・・?」

「あ、あの。前から言ってた、形成外科で傷、綺麗にしてもらうってやつね」

「玲奈ちゃん・・・それって・・・」

珠理奈の心臓はドクンと跳ねる

「う、うん・・・OKでたら・・・その・・・」

そう言って玲奈は黙ってしまった

「・・・っー・・・」

珠理奈はその次に出て来る言葉を察して

言葉にならない喜びをかみしめながら

携帯を持っていない反対の腕でガッツポーズを何回も繰り返す

「玲奈ちゃん!」

「は、はい」

「OKでたらさ、私がマウンドに居る時に合図してほしいんだ」

「え・・・?」

「手で大きく丸して」

「う・・・うん。でも、3塁スタンド側じゃ見えないんじゃ・・・」

「大丈夫!彩に頼むから!」

「え?」

「バックネット裏!一番いい席取ってもらうからっ!」

「でも、そしたら私リリーガル側で応援することになるけど・・・」

「そんなのいいよ!玲奈ちゃんの姿が見えるのが一番の応援だから!どっちチーム側とか関係ないからっ!」

「う、うん・・・」

玲奈は珠理奈の勢いに負けて、電話口なのに思わず頷いてしまった

「よしっ!じゃあ私、彩に電話するね!玲奈ちゃん約束だからね」

「う、うん」

「じゃあ、おやすみー」

「おやすみー・・・」

プープー・・・

「・・・もう。はしゃぎすぎだから・・・」

いつもは切るのをごねる珠理奈が早々と切ったことに

玲奈は携帯画面を見つめ苦笑いをしていた


――――


「・・・」

ホテルの一室で珠理奈はベッドに突っ伏していた

「・・・おい。ええかげん起きろ。懇親会始まるで」

洗面所から出てきたジャージ姿の山本は

先ほどと変わらない珠理奈の体勢に苦笑いをする

「・・・だってぇ」

珠理奈はごろんと向きを変え

山本の顔を見る

「しゃあないやろ。優勝投手をすぐに帰してくれるほど記者も甘ぁないってことや」

山本はそういいながら、懇親会に着るスーツを用意していた

「彩がもうちょっと手早く答えてくれたらなー。ゆいはんと一緒でマジレッサーなんだから」

「はぁ!?あのな、意気込みは真面目に答えるやろ普通。あれでもはよ終わらせたほうやで」

「・・・はぁー」

突っかかって来る山本をかわすように、珠理奈は反対方向にごろんと転がる


部屋決めの後、記者たちに囲まれてしまった山本と珠理奈は

早々と終わらそうとしていたのだが

次々に来る質問を性格上スルーすることができない山本は

すべてに対して真面目に回答していた

珠理奈はその隙に逃げようとしたのだが

そのタイミングで白石が出てきてしまったのだ

記者たちはすかさずストークスのバッテリーとして2人を囲み

そのままインタビューが再び始まってしまった

焦りと苛立ちのなか、インタビューも終わり

更衣室で携帯を手に取ると

玲奈から『優勝おめでとう。お疲れ様(・ω・)でも、今日は会うの無理そうだって指原先輩が言っていたので帰ります。明日は練習ある?会えそうなら教えてね』

というメールが来ていて

珠理奈はそのまま自分の野球バッグに突っ伏したのだった・・・



「はぁ・・・玲奈ちゃーん・・・」

珠理奈はため息をつき、横を向いて丸まる

「・・・ったく。何回名前呼んだら気が済むねん。明日会えるやろうが」

「今日がいいんだよ!だって・・・」

珠理奈はがばっと勢いよく起き上がり

言いかけた言葉をつぐむ

「な、なんやねん・・・」

山本はその勢いに驚いき身体をのけぞらせ固まっていた

「・・・ううん。なんでもない」

珠理奈はもそもそと起き上がり

洗面所へと向かった


「はぁ?なんやねん。私やって会えるんなら今日会いたかったわ・・・」

山本は口をとがらせながら

Yシャツの袖を通した

◆お知らせ

こんにちは(・∀・)ノ
しゅうです(^-^)

初プレどうですか?
朝早くから読んでくださる方もいて、
ありがたい限りでございますm(__)m

とりあえず玲奈の卒業までには間に合わせたいと思っているのですが、ちょっと仕事が積んでおりまして(^-^;
少し更新止まります。
うーん10日くらいには再開できたらええかなぁ…(-_-;)
ゆっくり更新ですが、待っていただけたら嬉しいです(^_^;)




初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑪

―――

「高橋先生!」

球場前で柏木と話しをしていた高橋は声をかけられて振り向く

「おー横山!久しぶりだなぁ」

高橋は手を挙げてにこっと笑った

「はい、先生もお元気そうで」

「おう、横山も元気でやってるか?」

「はい!」

「向こうでも野球やってるんだって?」

「はい、まぁ勉強との両立大変ですけど、何とかやってます」

「そうかぁー。若いうちの苦労は買ってでもしろっていうしな。まぁ大学生活楽しめよ」

「・・・それ、社会人になってから言う台詞じゃないんですか?」

「ねーさっしー。佐江ちゃんに会えた?」

横山と高橋が向かい合って話している横で

麻友と柏木が話しに割って入る

「ったく、人が真面目な話ししてるのに・・・」

高橋は口をとがらせる

「まぁまぁ。先生怒んない。実はさー記者の人が多くて会えなかったんだー」

指原はぽりぽりと頭を掻く

「そっかぁ。携帯にメール送ったのに返信ないから、まだまだかかるってことか」

柏木は携帯の画面をにメールの通知がないのを確認して鞄にしまった

「やっぱり今日は無理だね。じゃあ、私は帰るから」

麻友はそう言うと片手を挙げ、去ろうとしたが

「だーめ。麻友。今日は皆でご飯食べるよ。先生おごってくれるんですよね?」

柏木に腕をつかまれる

「え?そんなこと言って・・・」

「いやーさすが、高橋先生!いや、監督!ありがとうございます!」

否定しようとした高橋の言葉を指原が遮る

「麻友、何が食べたい?やっぱり焼き肉とか行く?」

すかさず柏木が麻友に尋ねた

「・・・お寿司かな」

「げっ!?」

寿司と言うフレーズに高橋はドキッとする

「先生!ゴチになります!」

指原はにこにこと頭を下げる

「ちょっと待て!行くなら回転ずしだぞ!」

「はい、決定ー。行きましょ、先生」

柏木がにこにこと笑う

「う・・・は、はめられた・・・」

高橋は柏木と指原の連携プレーで

奢らざるをえない状況になってしまった

「はは・・・先生、いきましょうか」

横山は先輩たちの息のあったプレーを見て苦笑いをしていた


―――

病院の白い建物が

夕日でオレンジ色に染まる頃

中西はこそこそと裏手に回り

きょろきょろと人が居ないのを確認しながら

1階の窓に手をかける

が・・・

ガダッ・・・

「げ・・・」

窓には鍵がかかっていた

中西は昼間、この窓から抜けだしたのだが

誰かが開いているのに気づいて閉めてしまったらしい

(くそー・・・誰だよー。閉めたのー・・・)

そう思って焦っていると

カーテンが開き


カチャ・・・


「あ・・・」


カラカラカラ・・・


擦りガラスの窓がゆっくり開き

「・・・おかえりなさい。先生」

肩くらいまでの長さの黒髪の看護師が

中西に笑いかける

その顔は半ばあきれているような、ホッとしたようなそんな表情がだった

「りおーん!・・・っ!」

中西は嬉しくなって声を上げ、慌てて手で口をふさぐ

「もー・・・早く戻ってきてください」

「はいはーい。よっと・・・」

中西は勢いをつけ、窓から病院内に入った

中は外来の用具庫で、窓はロッカーの陰に隠れて死角になっているのだ

「はー助かったよ李苑。ありがとう。」

中西はニコッと笑う

「先生、いい加減ここから抜け出すの止めてくださいよ。この時間に私が居たからいいですけど・・・他のスタッフだってここ出入りしてるんですから。鍵開いてたらそりゃ閉めますよ・・・」

看護師はため息をつきながら窓を閉める

この女性は

東 李苑

ここの外来看護師だ

「李苑が私の外来についてくれたら止めるかなぁ」

「それ、私なら抜けだすの手伝ってくれるからってことですか?ダメですよ。私のメインは整形外科ですから」

中西が近づくのをさらりとかわし

東は用具庫の棚のほうに移動し

物品整理を始めた

「それに、私が整形のほうが抜けだして帰ってくる時にドキドキしなくて済むんじゃないですか?」

東はくすっと笑う

「うー・・・まぁそれを言われると・・・」

中西はぽりぽりと頭を掻いた

この用具庫は松葉杖や骨折の時に使うギプス用具、固定器具などを置いており

整形外科の処置についている東は、夕方になると物品整理のためにこの用具庫に入ることが多いのだ

中西は帰国後、平日の試合を見るためにここから抜け出していて

ある日、李苑と鉢合わせて以来

内緒にしてもらうよう頼みこんでいたのだ


「でもさー李苑がついてくれたら仕事がはかどるなーって思うよ」

中西は隠してあった白衣とYシャツを広げ

上の服を脱ぎ、着替え始める

「もーそんな冗談言って。主任に聞かれたら怒られちゃいますよ」

東はクスっと笑いながら物品の個数を確認していた

「結構本気で言ってるんだけどなぁ・・・」

「え?」

ぽつりと呟いた中西の台詞が聞こえなくて

東は中西の方を見た

「あ・・・」

擦りガラスから差し込む夕日が

中西の横顔を柔らかく照らしていた

その姿にドキッとする

「・・・よし。」

中西は白衣に袖を通し、ピシッと両手で皺を伸ばす

そして、視線を東の方にむけた

東は自分が見惚れていたことに気づかれないように

慌てて手にしていたバインダーに目をやった



物品整理を終えて

東はきょろきょろとあたりを見渡しながら

ドアを開け

外来の通路を進む

中西もこそこそと後をついて行き

心臓外科の外来部屋までたどり着いた

「げ・・・」

部屋に入った中西は思わず声を漏らす

診察室のデスクに山盛りになったカルテが積まれていたのだ

「主任、今日ずーっと中西先生のこと探してましたから」

東も山積みのカルテを見て苦笑いをした

「はー・・・なんでこう日本ってこんなにも書くことが多いのかねぇ。アメリカはもっと簡潔だったよ」

中西はため息を漏らしながら椅子に座り

一番上のカルテをペラペラとめくる

「仕方ないですよ。抜けだした分、ちゃーんと仕事してくださいね、先生」

「あははー。きびしいなぁ李苑は」

「そうですか?見逃してる分、優しいと思いますけど」

苦笑いをする中西をみて、東はくすっと笑った



「・・・ねぇ、李苑。」

中西はカルテを置いて、椅子から立ち上がる

「はい」

「・・・今度、デートしない?」

「へ・・・?」

ワントーン下がった中西の声に

東はドキッとする

中西は既に東との距離を詰めていて

手を伸ばせば触れられる距離に来ていた

「だめかな?」

中西はニコッと笑う

「・・・えっと」

中西に見つめられて東は体温がみるみる上昇して行くのを感じていた

「あら、担当の私にはそんな話ししてくれないじゃないですか、先生」

「「え・・・?」」

スタッフ側の通路を仕切っているカーテンの前に

いつの間にか一人の看護師が立ってにこにこと笑っていた

「しゅ・・・主任」

東はとっさに中西から離れる

「先生、おかえりなさい」

その看護師はにこにこと笑っていたが

目は笑っていなかった

「・・・あははー。実絵子さん、ただいまー・・・」

中西はひきつった笑顔でその看護師の名前を呼んだ

この女性は

佐藤 実絵子

ここの外来の主任看護師であり、心臓外科の担当である

昼間、循環器の久保田に中西の居場所を尋ねたのも彼女である

「どこ行ってたんですか?先生」

「えーっと・・・あーでも入院中の患者さんも診察しましたし、外来だって終わらせましたしー・・・」

「カルテ整理、今からおねがいしますね」

佐藤は中西にずいっと近づき、にこにこと笑う

「は、はいっ」

中西は慌ててデスクに座り

カルテを手に取った

「・・・ふふっ。頑張ってくださいね先生」

東はそんな中西を見てクスッと笑った

初恋の行方とプレイボール‐3年後-⑩

さて、中西が篠田と球場前で別れる少し前・・・



「はー・・・やっぱり記者の人多いなぁ」

「そうだね・・・」

「もーこんなにおったら彩ちゃんにあえんやんか」

球場を出た玲奈たちは

関係者入口の方に向かったのだが

既に記者たちが待ち構えていて

圧倒されていた

そこに、一人の女性が記者の隙間から出て来るのが見えた

「あ、指原先輩!」

「え?」

横山の驚きの声に、玲奈もその女性を見る

「おー由依に玲奈ー。久しぶりー」

指原も2人の姿に気づき

手を振りながら走ってきた

「お久しぶりです」

横山の後に続いて、玲奈、そして美優紀も頭を下げる

「あ、彩の彼女の・・・」

「美優紀です」

美優紀はニコッと笑う

「そうかー彩の彼女がいたからかー。いーなーバックネット裏の席。彩がチケット用意したんでしょ?」

「えへへー。そうなんです」

美優紀はにこにこと笑う

「でも、玲奈はストークスの応援してたから複雑だったんじゃない?」

「え・・・でも、なんか両方頑張ってほしいって思ってて」

「またまたぁ。珠理奈が打たれたら心配そうにしてたやんかー」

「そ、そんなことないよ」

そう言いながら、玲奈は顔を赤らめていた

「はいはい。うちの部のメンバーは恋人と仲がいいこって」

指原はにやにやと笑う

「でも、今日会うのは難しそうだよ」

「え?」

「中まで記者の人居てさー。珠理奈と彩つかまってたから」

「えー」

「・・・そう、ですか」

指原の言葉に、美優紀が口をとがらせ、玲奈は肩を落としていた

「なんか、聞いた話だとこの後はホテルで懇親会もあるみたいだし。珠理奈は優勝したからストークスとしてのインタビューも詰まってるだろうし、離してくれないんじゃないかなぁ」

「そうなんですか」

すっかり意気消沈してしまっている2人の代わりに

横山が答える

「ゆきりんもみんなで集まれないかって言ってたから偵察に行ったんだけど、見るからに無理そうだったから出てきたんだ。今から報告に行くとこ」

「あ、さっき渡辺先輩にもお会いしたんですよ。柏木先輩も来てたんですね」

「うん。ちなみに高橋先生もいるよー」

「えっ!ホンマですか?」

横山の目がきらきらと光る

「う、うん。まだゆきりんたちと一緒に居ると思うよ」

「・・・」

横山はちらっと玲奈と美優紀を見る

「いってきー、ゆいはん。憧れの先生なんやろ?」

それを察した美優紀はニコッと笑う

「え・・・でも」

「私の事はええから。なんやったら玲奈ちゃんも」

「え?私は・・・いいよ。東京に居るし。ゆいはんは会うの久しぶりだからゆっくり話ししてきて」

「え・・・ええの?」

横山は嬉しい半面、戸惑っていた

「ええって。それに、この後彩ちゃんたち誘ってご飯行こうっていう計画もダメみたいやし。明日以降いけるか彩ちゃんに聞いてみるから」

「あ、ありがとう。ほな、今日はこれで。指原先輩、一緒に行っていいですか?」

横山は2人に頭を下げ、指原の方を向いた

「ん?いいよー。じゃあ、また彩たちの連絡がつき次第集まろうね―」

「はーい」

「お願いします」

指原と横山が去っていくのを

玲奈と美優紀は手をふりながら見送った


「・・・別に、行ってもよかってんで玲奈ちゃん」

美優紀は玲奈の顔を横目で見る

「んー。でも私は東京に居るし。先生には会おうと思ったら会えるから」

玲奈は苦笑いをする

美優紀は秋葉女学院の生徒ではないため、面識があると言っても仲間と昔話をするところには居ずらいだろうと

玲奈はこの場に残ることにしたのだ

「・・・玲奈ちゃんは優しいなぁ。そう言うところに珠理奈は惚れたんやろうなぁー」

美優紀は玲奈の気遣いを察してニコッと笑った

「え・・・そ、そんなことないよ」

玲奈はわたわたと手を振りながら答える

「あ、ホンマはもうちょっとまったら珠理奈が出てくるかもしれんっていうんもあった?」

「え・・・」

玲奈はドキッとして真っ赤になった

「あー当たったー。遠距離ってなかなか会えんから、ちょっとの時間だけでもっていう気持ちになるよなー。わかるでー」

美優紀は彩との遠距離恋愛を思い出し、うんうんと頷く

「べ、別に・・・その・・・お、おめでとうって言えたらそれでいいの。なんか、こういうのって今日言わないと・・・ねぇ・・・」

玲奈は真っ赤になりながら、しどろもどろに言う

「・・・玲奈ちゃん。あかんで。」

「え・・・」

「今のめっちゃかわええやん!私、今ドキッってしてしもたわ」

「そ、そんなことないよ」

「そういう控えめなところがええねんなー。珠理奈も好きになるわ」

照れる玲奈を美優紀がからかっていると

「すいません、今から選手たちは移動しますので、取材はこの後行われるホテルでの記者会見でおねがいします。場所は―――」

球場関係者の人が記者の人たちに話しをしているのが聞こえた

「あー・・・でも、ホンマにあかんみたいやなぁ」

「・・・そうだね」

記者たちがホテルの場所を聞いて、電話をしたり、移動したりしているのを見ながら

2人はため息をついた

「あ、せや。ホテルの場所も分かったし、乗りこまへん?」

「えっ?」

「だって、懇親会あるって言ってたやん。で、そこで電話して、実はこのホテルに居まーすってゆうたら2人とも驚くはずやで」

「そ、それはそうかもしれないけど・・・そう簡単に入れるものなのかな?」

「大丈夫やって。いくら注目されてきだしたってゆうても、まだガード甘いはずやから。警備もすり抜けれるはず」

美優紀はぐっと親指を立てる

「で、でも・・・」

玲奈はうつむく

「んー。わかった。じゃ、懇親会終わったら出てきてもらおう。ホテルの裏とかにおって、会うん」

「うん。2人が怒られないなら、その方がいいかな」

玲奈も納得して頷いた

「うんうん。なんやドキドキするなー。玲奈ちゃん、今日はうちに泊るってゆうてもええよー」

「へ?」

「だって、久しぶりの再会やから2人でゆっくりおりたいやろ?」

「そ、それはそうだけど・・・泊りって無理じゃない?」

「え?だって珠理奈は神戸からきてるから泊りやろ?懇親会もホテルってゆうてるし、そこに泊るんやない?せやから、玲奈ちゃんも珠理奈の部屋で泊ったらええやんな」

「へ?そ、そうなのかな?で、でもそんなのダメだよ!私は部外者だし・・・バレたら迷惑かかっちゃうよ」

「えー。私はできたら泊りたいけどなぁ。最近彩ちゃんと、ちゃんとおうてないしー」

美優紀は口をとがらせる

真面目な山本はリーグ戦が近くなると

練習時間を倍にするため、結果美優紀と会う時間がなくなるのだ

「と、とにかく。それまで時間つぶそう。ご飯行く?」

「うん!あ、玲奈ちゃんまだ時間ある?せっかくやから買いもんもせぇへん?」

「うん。いいよ」

「決まりー。ほな行こう」

「うん」

美優紀は球場に背を向けて歩き出す

「・・・」

玲奈は後ろを振り返り


「・・・会いたかったなぁ」


そう、ぽつりと呟き

球場の出入り口を見つめていた
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