気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

2016年11月

僕の彼女は魔法使い⑲

チュンチュン・・・

「ん・・・」

前田はベッドの上で目が覚めた

「・・・夢?」

前田はぼんやりと昨日の事を思い出す

「・・・」

そして、もそもそとベッドから出て

キッチンへと向かう

「敦子、おはよう」

「おはようございます」

そこにはお手伝いさんと母、敬子がいた

「おはよう・・・」

席につき、母の顔をちらちらと見る

「なに?」

「ううん・・・別に・・・その・・・調子いい?」

「うん、いいわよ。ありがとう」

敬子はニコッと笑う

(なんだ・・・やっぱり・・・夢だったのか)

そう思い、床に目をやる

が・・・

「え?」

そこにはいつもあるものがなかった

みなみの水のみ用の皿がないのだ

前田の脳裏に、昨日の事が蘇る

「あ、あの・・・お母さん」

「なに?」

「みなみ、みなかった?」

「・・・みなみ?」

敬子は首をかしげる

「みなみだよ!猫!猫のみなみっ!ずっといたじゃん!」

前田は思わず立ち上がる

「何いってんの?猫なんていないわよ」

きょとんとする母を見て、前田は愕然とした

お手伝いさんもきょとんとして、怒鳴ったことに目を白黒させていた

「うそ・・・」

前田は勢いよく部屋を出て、階段を上り、アルバムを広げる

「ない・・・ない・・・」

ページをめくってもめくっても猫のみなみはどこにもいなかった

(やっぱり・・・昨日の事は夢じゃないんだ・・・じゃあ・・・お母さんの病気の事も・・・)

「・・・っ」

前田は力なくうなだれた


母を心配させたくなくて、前田は家を出た

でも、学校には行く気になれなくて

近くの公園に入る

「・・・あ」

そこには、昨日見たみなみがいた

「ここにくるんじゃないかって思ってた」

「・・・」

「昨日の話し、聞いてたんだろ?」

「!!」

「敬子の部屋の前で倒れてたから・・・だから、敦子の記憶は消さないでおいたんだ」

「・・・じゃあやっぱり・・・昨日のことはホントなんだ」

前田はぽつりと言う

「・・・ちょっといいか?ゆっくり話そうぜ」

みなみは缶コーヒーを2本みせてニッと笑った

そして、みなみはすべてを話した

ここに来た理由、今いる意味・・・そして契約者になってほしいと

前田は、迷わず頷いた

そして、前田は秋葉学園に入学した

・・・みなみと共に


―――

「敦子?」

黙っている前田を高橋は不思議そうに見つめた

「・・・」

あれから10数年がたち、母親は脳腫瘍が大きくなり入院している

そのため、今は前田が理事長代理をしているのだ

記憶はまだ大丈夫だが

身体は思うように動かなくなってきている

「・・・そうだね・・・みなみは・・・かわんないよね・・・でも・・・」

前田は、みなみをぎゅっと抱きしめる

「私だけ・・・大きくなっちゃった・・・気づいたら・・・もう30歳手前だよ?」

「敦子・・・」

(私も・・・いつか・・・離れなくちゃいけなくなるのかな・・・でも・・・私は・・・)

「私は・・・一緒に歳を取りたい・・・みなみと・・・ずっと一緒にいたいよ」

「・・・ごめんな」

前田の腕の中で、高橋はぽつりと呟いた

僕の彼女は魔法使い⑱

――――

その頃、前田と高橋は住んでいるマンションに居た

「んーおいしい」

前田は目の前のショートケーキをおいしそうに頬張る

「敦子はすきだよなぁ。ここのショートケーキ」

キッチンで紅茶を入れた高橋は前田の前にティーカップを置いた

「うん、この味はずっと変わんないんだもん」

「あの店、最近息子さんに変わったんだよな?でも、変わらないってすごいよなー」

そういいながら、高橋はケーキの箱からチョコケーキを取り出し、自分の前の皿に置いた

「ちょっと、反省してんだろ?渡辺さんの事」

「・・・」

「・・・昔の自分見てるみたいだったからか?」

「・・・そうかもね」

前田はフッと笑う

「敦子が落ち込んでる時、いつもここのケーキ買って帰ってたよな」

「うん。嬉しい時も悲しい時も・・・特別な時も・・・ここのケーキだった」

前田はフォークを置き、呟いた

「・・・」

カッ

高橋は黙って猫になり

そして、前田の膝に乗った

「そうだね・・・みなみは・・・いっつもこうやって慰めてくれてたよね」

「まぁな。そりゃ、かわんねぇよ」

(・・・かわんない・・・か・・・)

前田はみなみをなでながら昔の事を思い出す

―――

前田は中学にはいったころから不登校になっていた

家から一駅離れたところの中学に入り、普通に生活していたのだが

その年、秋葉学園が移転をしたのだ

元々秋葉学園は都心近くの私立高校だったのだが

大々的に田舎の土地を購入し、教育、部活設備を整え

寮もでき、全国から推薦入学を受け付けるなど精力的に活動していた

前田は理事長の娘ということがバレ、人の目を気にするようになっていた

頭も良く、整った顔立ち、立派な家に住んでる・・・

そんな状況に他の生徒たちはひがみもあったのであろう

前田は同世代たちの見る目が嫌になって休みがちになっていた

家で居る時はいつも飼い猫のみなみは傍に居た

そして、中学3年の冬・・・

母である理事長の前田敬子が脳梗塞で倒れたのだ

幸いマヒも残らず、大事にはいたらなかったのだが

しばらくの休養を余儀なくされた

前田は母のお見舞いにも行かず

ずっと部屋に引きこもっていた

母親が退院し、自宅に戻っても

顔を合わせない日々が続いた

ある夜、前田はふと目が覚めた

水でも飲もうとキッチンに向かうために部屋を出る

ふと見ると、母親の部屋から少し光が漏れていた

「―――」

「そう。そうなの?」

中からは楽しそうな声が聞こえてきた

前田は眉をひそめた

父は海外出張中で不在だった

昼間はお手伝いが一人いるのだが夜は居ない・・・

(誰と話してるの?)

前田はそっと扉に近づいた

そこには、飼い猫のみなみがいた

ベッドにもたれる母の膝の上にちょこんと乗り、向かい合っている

「敦子はさ、ちゃんと勉強してんだぜ。それに敬子のことも心配してるけど・・・行くにいけないっていうか・・・素直じゃないっていうのかな?そういうとこ昔からかわんないよな」

「そうね」

敬子はクスッと笑う

(みなみが・・・しゃべってる!?)

前田は目を見開く

「ねぇ、みなみ」

「ん?」

「私ね、病気になっていろいろ考えたの。親が早くに死んで、理事長やらなきゃいけなくなって・・・敦子にはずいぶん寂しい思いをさせてしまったわ・・・」

「敬子・・・」

「お父さんだって海外出張長いし。家族旅行もしばらくしてないし・・・。それに、学園移転建設で敦子のことかまってあげれなかった・・・」

「それに関しては・・・すまないと思ってる。もしかしたら・・・敬子が病気になったのだって、私がいるからかもしれない・・・」

みなみは頭を下げる

「なにいってんのよ。それは関係ないでしょ。それに、許容範囲外になったのは前学校があった都心部近くだったんでしょ?今はこっちに学園もうつったんだし、この家だってセーフなんだから」

敬子はフッと笑う

「私はさ、みなみにいっぱい助けてもらったよ。小さい頃からずっと一緒にいて、嬉しい時も悲しい時も・・・傍に居てくれてありがとうね」

「敬子・・・」

「だから、学校の移転は私の小さな恩返しなの。私のエネルギーを使っているかもしれないってどうせおもってたんでしょ?」

「・・・」

「そんな顔しないの」

うつむくみなみをみて、敬子は顔を両手で挟み口角をにーっと上げる

「うぐぐ・・・」

「あははっ。でも、あれだけ近くにしたら、王女様が来た時も安心でしょ?」

敬子は手を緩め、にこにこと笑う

「そうだな。感謝しているよ。今回の生徒会もなかなか楽しいみたいだぜ。王女が来る時はどうなってるかなー」

みなみはてしてしと乱れた毛を肉球で直す



秋葉学園が創設された時、高橋たちは生徒会から契約者を決めるという決まりを作ったのだ

高橋は前田家とずっと契約を結んでいたのだが、小嶋や柏木はそうではなかった

いい契約者と出会うまでは、お互い散らばらずにいた方がいいということで

学校で生徒として過ごすようになっていた

ちなみに、秋葉学園の理事長は代々高橋の契約者となっており

理事長と繋がりをもてる生徒会メンバーを契約者とした方が何かと便利であり

小さい組織のため、ばれたとしてもすぐに記憶を消すことも可能という利点もあった

そのため、小嶋と柏木は1~2年で契約者を変えているという状況である

「あ、ってことは・・・そんときはついに会長が契約者だなー。理事長の敬子には私がついて、副会長にはゆきりんとにゃんにゃんがついて・・・おー補佐完璧だなー」

「・・・違うよ」

「え?」

敬子のトーンが下がったので、みなみは首をかしげる

「その時、そこに居るのは私じゃない」

「何いってんだよ?」

「みなみ・・・私との契約、解消してほしいの」

「・・・」

「敦子の・・・傍にいてあげて」

(!!)

前田は自分の名前が出て、声を上げそうになるのを耐える

「・・・」

「あの子、まだどこの高校うけるかも決めてないの。私は秋葉学園に来てほしいと思ってる。でも、私の口からそんなことを言ったら・・・きっと反発して絶対受験してくれないから・・・。だから、みなみからお願いしてほしいの」

「・・・私から言っても、かわんねぇかもしれねぇぞ?」

「大丈夫よ。ずっと一緒にいたみなみが頼めば」

「・・・」

「みなみ。敦子を説得して、秋葉学園に来たらみなみも生徒として通ってほしいの。あの子・・・ずっと一人でさびしかったのにそれを言えないで居たんだと思うの・・・なんかね、病室で一人でいたら・・・あの子の気持ちちゃんと分かってあげられてなかったっておもって・・・胸がね痛くなっちゃったの・・・」

「敬子・・・」

「ダメな母親よね・・・。それにね、今度また倒れたら・・・その時は・・・わかんないじゃない」

「なに・・・いってんだよ?」

「脳梗塞になって・・・いろいろ検査したじゃない?そしたら・・・脳の奥に小さな腫瘍がみつかったの」

(!!)

前田は手の隙間からするりと出ていきそうな声を必死にとどめた

(それって・・・お母さん・・・死ぬかもしれないってこと?)

「複雑なところで、取り出すことはできなって言われたの。まだ小さいから、どれくらいの期間で大きくなって行くかわからないって。5年なのか10年なのか・・・それとも来年なのか・・・」

「・・・」

「だからね、こんな私より若くて元気な敦子の方がいいと思って」

敬子は笑った

「ふざけんなっ!」

みなみはぴょんっと跳ね

その瞬間カッ!と光を放つ

「そんな状況の敬子ほっとけるわけねぇだろ!」

(!!!)

そこには、見ず知らずの小柄な女性がいた

前田は猫のみなみが人になったり、母が病気だということが分かったりと

自分の理解できる範囲をとうに越えていて

ただひたすら声を出さないように必死に耐えていた

「ありがとう。でもね・・・みなみは敦子の事も気になるでしょ?」

「・・・」

「心配でしょ?」

「・・・っ」

声をあらげて上下していた肩が・・・今度は小刻みに揺れ出しだ

「それにね・・・先生から・・・言われたの・・・記憶をつかさどるところにも影響が出てくる恐れがあるって。腫瘍がおおきくなったら、その器官を圧迫して・・・いろんなことを忘れるかもしれないって・・・みなみのこと、そんな風に忘れるくらいなら・・・あなたの手で消してほしいの」

「敬子・・・」

「そんな顔しないで」

「・・・」

「みなみはホントに敦子のとこ、大事にしてくれたよね。敦子が生まれたら私よりも号泣してさ、こけそうになったり危ない場所に行こうとしたら必死に止めて・・・ずっとみてきてくれたじゃない・・・だから・・・」

敬子の声がくぐもる

「私がいなくなっても、みなみがいれば寂しくないでしょ?それに、敦子は今一人でさびしい思いをしてるから・・・みなみが傍にいてあげて・・・契約者になって・・・ずっと・・・傍にいてあげて」

「敬子・・・」

「私は、あなたの契約者になれて幸せだったわ。ずっと、前田家に仕えてくれて・・・ありがとう。出会えて・・・よかった」

敬子の目に涙が伝う

「・・・礼をいうのは・・・こっちの方だ・・・」

みなみはベッド近くに膝をつき、敬子の手を握った

「・・・敦子をよろしくね」

敬子はそっと目を閉じる

「・・・っ。まかせろ・・・。約束だ・・・。」

みなみは肩を震わせながら

呪文を詠唱する

金色に輝く見たこともない文字が2人をぐるりと取り囲み

「・・・」

みなみは敬子の額にキスをした

カッ!!

まばゆい光が部屋の中に溢れる

「っ・・・」

前田は思わず目を閉じた



僕の彼女は魔法使い⑰

――――

「どこやここ・・・」

美優紀につれられ、サヤカは駅前に来ていた

田舎でも、駅前だけは栄えており制服姿の学生が何人もいた

「駅前やん」

「駅?なんやそれ」

「・・・なんか説明するんめんどくさい」

見るものすべてが初めてのサヤカはずっと美優紀に尋ねてばかりだったので

美優紀はそろそろ嫌気がさしていたのだ

「もう、ええから。実践あるのみ!契約やって解消できんのやったら、この世界楽しんだらええやん」

そういって、美優紀はサヤカの手を引いた

「な・・・」

サヤカはなんだかとても気恥かしくなり

「一人で歩けるわ」

そういって、美優紀の手を振り払う

「・・・ま、ええけど」

美優紀は口をとがらせ、歩き出した


美優紀は商店街を歩く

「クレープでも食べようかなぁ」

「なんやそれ?」

「食べもん」

「うまいのか?」

「おいしいで」

「・・・」

「食べもんには興味あんねんな」

「・・・」

サヤカはぷいっとそっぽをむく

「じゃあ食べる?んーでもお金あんまないしなー」

美優紀はクレープ屋の前で値段を見る

サヤカはお金をもっていなかったので、都心部まで2人分の旅費を払うということも出来なかった

それに、高校生のお小遣いでは限界もある

なので、駅前をぷらぷらするしかなかったのだ

「んー・・・はんぶんこしよか」

美優紀はそう呟き、イチゴのクレープを頼んだ

サヤカはクレープができるのを不思議そうに見つめる

美優紀はそれを横目で見ながら、クスッと笑った

「はい、食べてみ」

商店街の中腹にある広場のベンチで

美優紀はサヤカにクレープを差し出した

サヤカはがぶっとクレープにかぶりつく

「どう?」

「・・・」

サヤカには黙ってもぐもぐと口をうごかす

「もーなんかいいや」

美優紀は口をとがらす

「・・・いつものほうがうまい」

「え?」

「いつもくれてた・・・どら焼き。あれが一番うまい」

サヤカはそういって口の端についた生クリームを親指でとり、舐める

「たべる?」

「え?」

「いつもばあちゃん持って行けってくれんねん。それに、今日はようけ持ってきてたし」

美優紀は鞄の中からどら焼きを取り出して渡した

「・・・」

サヤカはじっとどら焼きを見つめる

「あ、そうかいつも皮だけあげてたから・・・ホンマはこんな感じやねん。中にあんこはいってんねんで」

「あんこ?」

「んーこれとはまた違う甘いやつ」

生クリームを指して美優紀は言った

「ふーん」

サヤカは包みをあけ、またかぶりついた

「うまっ!」

先ほどとはうってかわってサヤカは目を輝かせ一心不乱に食べる

「そんなに?」

美優紀は祖母たちのどら焼きをおいしいといってくれて、なんだかくすぐったくなった

「んぐっ!」

サヤカは勢いよく食べたので、どら焼きをのどに詰まらせる

「えっ!ちょっと待ってよ!」

美優紀は鞄からペットボトルの水を取り出し、あわててサヤカに渡した

「んぐっ、んぐっ!ぷはっ!」

サヤカは勢いよく水を飲み

「ん」

美優紀の方に手をさしだした

「なに?」

「・・・」

「もう一個?」

「・・・」

サヤカは黙って頷いた

その表情が可愛くて、美優紀はクスッと笑う

「ええよ。今日はいっぱい持ってきたし」

美優紀は持っていたどら焼きを全部サヤカに渡した

「全部・・・食べてええんか?」

「え?うん」

「そうか」

サヤカはそういって一心不乱にどら焼きにかぶりつく

「もーどんだけ?ゆっくり食べよー」

美優紀はそんなサヤカを見て、クスッと笑った



◆おしらせ

こんばんは、しゅうです

「僕の彼女は魔法使い」略して「僕マ」←言いたいだけ

いかがでしょうか?まだまだ謎があり

全体がぼんやりーとしてるので、どないやねんって感じですが

すいません

少し、連載止めます(^^;)

来週にはアップ出来るかと思いますので、よろしくおねがいします☆




僕の彼女は魔法使い⑯

「くそっ・・・めんどくさいやつやで」

理事長室をでて、裏山を目指し走っていた

『契約者の一人も守れないの?』

前田の言葉がよぎり

サヤカはイラッとする

(そんなに言うなら守ったるわ)

サヤカは更にスピードを上げた


「おやおや・・・あんなにスピード出したら怪しまれちゃうんじゃない?炎使いさん」

校舎の窓から誰かがぽつりと言った


――――――

ダムダム・・・

体育館で珠理奈はリングを目指して走っていた

そして

キュッ!

バッシュの音が響き、珠理奈の身体がふわりと浮かぶ

レイアップシュートだ

シュッ!

「ナイッシュー」

体育館に女子たちの声が響き渡る

「くーっ。やっぱいいよなぁ!1週間もお預け喰らってたからテンションあがるわー」

珠理奈はボールをつきながら列に並ぶ

現在、シュート練習の真っ最中だ

「でたでた、バスケバカ。まぁ、新人戦まで日もないしなー。頑張らんとな」

隣に並んでいた横山はクスッとわらう

「うん」

「試合でもそんぐらい入れてくれたら何も言わんのやけどなー」

「う・・・」

その台詞に珠理奈は固まる

練習ではバンバンシュートが入るくせに、試合になるとからっきしなのだ

「ま、私も人の事言えんけど・・・今年の目標はとりあえず皆シュート率上げる。それやな」

「へーい」

珠理奈は口をとがらせる

「はー。絶対外さんような奴おれへんかなー」

「そんなやついたら救世主だっての」

「それもそやな」

そういって横山と珠理奈は笑った


――――

玲奈は図書館に居た

「ふー・・・」

深呼吸をし、本の匂いをかぐ

玲奈は本の匂いが好きなのだ

セイレートに居た時もたくさんの本を読んでいた

日本に行くのは王家の務めだと、勉強に力を入れられ

一人で居た玲奈にとって本は友達のようなものだった

セイレートの言葉と日本語は同じなのだ

だから玲奈は勉強も、こうして文章を読むのも何ら支障ない

それに・・・玲奈の学力はすでに日本で言う大学レベルくらいのものなのである

『おそらく、今はこれくらいまで進んでいるでしょう・・・』

そういいながら、ヒスイが勉強を教えてくれたのを思い出す

だが、玲奈にもひとつ苦手とする科目があった

「あ・・・」

玲奈はある本棚の前で立ち止まる

そこは、歴史のコーナーだった

玲奈は『近代の産業』とかかれた本を手に取る

中には写真なども載っておりパラパラとめくる

玲奈は日本の歴史について何も知らなかったのだ

正確にいえば・・・ヒスイが教えてくれたのは戦国時代までだった

(そうだ・・・)

玲奈はハッとして

本棚に目を移した

その時

「歴史、好きなんですか?」

「え?」

玲奈はびくっとする

そこには生徒会長 渡辺麻友がいた

「ごめんなさい。驚かせて。私は渡辺麻友。生徒会長をしてます」

「あ・・・松井玲奈といいます」

玲奈は頭を下げる

「私も歴史好きなの」

そういって、麻友はスッと本をとる

「特に、戦国時代が」

そういって、『織田信長』と書かれた本を見せた

「は、はぁ・・・」

「松井さんは?」

「えー・・・っと・・・」

玲奈はとっさに自分の手にしていた本を見せ

「私はそれよりも後の方が・・・」

「そう。やっぱり知らないことは気になるよね」

麻友はフッと笑う

「え?」

「ごめんなさい。邪魔して。じゃあ、また会いましょう」

そういって、麻友は持っていた本を玲奈に押し当て

「お薦めだから、読んでみて」

そういって、去っていった

「はぁ・・・」

玲奈は断ることもできず、その本を手にしたまま麻友が去るのを見つめていた


――――

美優紀はいつもの公園に居た

「なによ。あの理事長むかつく・・・」

そう呟き、むっとしていた

「おかーさん。あのね砂場で遊ぶー」

「うん。そうしようか」

子連れの親子が3組ほどやってきた

この公園は桜の時期以外あまり人が居ないのだが

今日はママ友会らしい

「・・・」

美優紀はこちらをちらちらみる母親たちの視線が気になり

座っていたベンチから立ちあがった

「なによ。今日はテストやから早く終わったの」

母親たちに言い訳するよう呟きながら

美優紀は公園を後にする

「・・・・」

どこに行こう・・・そう思っても行くあてもなかった

(帰ろ・・・)

そう思い、とぼとぼと歩きだした

「おい」

「きゃっ」

いきなり真横から声をかけられ

美優紀は思わず声をあげた

そこには、制服姿のサヤカがいた

「あんた・・・いつの間に」

「いや、そっちがぼーっとあるいとるけんやろ。そんなんすぐにおいつくわ」

「あの理事長に言われて追いかけてきたん?」

「・・・ちゃうわ。その・・・契約者・・・やから」

「ふーん。本心ちゃうな」

「う、うっさいわ!」

サヤカはムキになって叫ぶ

「まぁ、ええわ。ちょっと付き合って」

そういって、美優紀はニッと笑った

僕の彼女は魔法使い⑮

―――

「玲奈ちゃん急に出た行ったとおもったらそんなことになってたの?」

テストが終わり、珠理奈は理事長室隣の応接室に合流して昼食を取っていた

「そうなの・・・」

玲奈は急にテスト中に立ちあがり、とっさにお腹が痛いといって出て行ったのだ

その後、玲奈は帰ってくることなく

テストも終了、ホームルームも終わってしまっていた

篠田のフォローで玲奈は体調不良で保健室で休んでいることになり

荷物を持って理事長室に来るように耳打ちされたのだった

「はぁ・・・とっさだったとは言え大声でトイレに行くとか恥ずかしすぎて・・・」

玲奈はその時の事を思い出して顔を覆う

恥ずかしすぎてホームルームの時にもどることもためらわれ、このソファーでうなだれていたのだ

「まーまーいいじゃん。玲奈も人間なんだーってみんな思ったんじゃない?あ、まぁー異世界の人だけと」

宮澤は笑い肩をたたく

「うぅ・・・」

玲奈はますます真っ赤になる

珠理奈はそんな玲奈をかわいく思った

「ま、そういうこったからよ。よろしくたのむぜ」

「へ?は、はい!」

高橋に肩を叩かれて珠理奈はびくっとする

「何おどろいてるの?」

篠田がクスッと笑った

「うぅ・・・なんでもないっ!」

珠理奈がそっぽを向く

と・・・

「あ、たかみなさんたちだ」

窓に高橋たちが近づいてくるのが見えた

「おーみんなお揃いで」

結界を解き、高橋はニコッと笑う

その後ろでサヤカはまだぶすっとしていた

「あ・・・えっと・・・私、松井珠理奈っていいます。玲奈ちゃんの契約者」

珠理奈はスッと手をさしだす

「なんやねん」

サヤカはその手に視線を落としたあと、ギロッと珠理奈を睨んだ

「なにって・・・握手・・・」

「お前、あの時おったやつやな。なんやねんここの奴らは・・・いい人ぶりやがって」

「なんだよ!ひとがせっかく仲良くしようとおもってんのに!」

珠理奈はカチンとして怒鳴る

「私はそんな慣れ合いが大っきらいなんや!」

「まーまー。落ち着けって。な?こいつはサヤカってんだ。珠理奈よろしくな」

高橋が2人の肩をたたきなだめる

「「・・・」」

2人はしばらく睨みあい

そっぽを向いた

「あー・・・そうだ、サヤカ。渡辺さん探してこいよ」

高橋が話題を変える

「はぁ?なんでや?」

「だって契約者じゃん」

「契約者、契約者・・・ってそんなに大事なんか?」

サヤカは眉をひそめる

「あのな、説明したけどこの世界では契約者が居ないととどまれないんだ。だから、常に近くに居る必要がある。それに、お前はこの世界では私らとも性質が違うし、離れてる時間が長いほど弱っちまうぞ」

「・・・ちっ。そんなんゆうたかて・・・どこにおるかやわからへんやん」

「家ならわかるよ」

宮澤が言う

「ほら、裏山のふもとにある彩美堂っていう和菓子屋さん」

「あー。あそこ渡辺さんの家だったのか」

篠田が驚く

「うん、あそこのどら焼きおいしいよね」

「!」

どら焼きというフレーズに、サヤカは反応する

(確か、毎日もってきてくれてたやつや・・・)

「よしっ。とりあえず、そこに行ってこい」

高橋はポンっと背中をたたく

「なんでやねん・・・」

「いいから行けって。それに、渡辺さんにはまだ契約者としての仕事が残ってるから連れてきてもらわなきゃ困るんだよ」

「はぁ?」

「おまえの命名だよ。こっちで暮らすときに必要なんだ。名前決めてもらったら、この学園の生徒として生活してもらうから」

「だから、私は一言もいいっていってないやろ」

サヤカは苛々しながらいう

「もーしつこいわね。さっさと行ってきなさいよ」

前田が言う

サヤカはキッと前田を睨む

「何よ?私のせいで飛び出してったって言いたいの?私は当然の事を言ったまでだからね。それに・・・契約結んだんだからあんたも腹きめなさいよね。それとも何?渡辺さんに助けてもらったくせに放っておくの?契約者の一人も守れないの?」

「・・・ちっ」

サヤカは舌打ちをし、部屋を出て行こうと歩をすすめる

「あーまてまて、にゃんにゃんとりあえず制服にしてやって」

高橋が制止し

「オッケー」

小嶋は呪文を唱え

サヤカの身体は水に包まれる

「なっ・・・」

そして、黒いローブは秋葉学園の制服に姿を変えていた

「なんやねん・・・このスースーするやつ」

サヤカは慌ててスカートを押さえる

「なんだよ。スカートも知らねーのか」

高橋は苦笑いをする

「まぁ動きまわるんならそれがいいから。じゃあ、いってきなー」

「ちっ・・・」

サヤカはそっぽをむいて

ドアを開け出て行った

「一人で行かせて大丈夫なの?」

篠田が尋ねる

「大丈夫。ああいってるけど、意外と根はやさしいとおもうぜ。魔法もつかわないだろうしな」

高橋は笑う

「そう・・・ならいいんだけど」

「私はやなやつにしか見えないけど」

珠理奈は口をとがらせる

「まぁ、許してやってくれ。あいつもいろいろあってな難しいんだよ」

「ふーん・・・」

「ま、気にしない気にしない。ほら、珠理奈!新人戦に向けて練習練習!」

宮澤が肩を叩く

「あっ!そうだった!部活!」

珠理奈は時計に目をやる

「やばっ!もうすぐ始まるじゃん!」

慌てて弁当を掻きこみ

「じゃあ、玲奈ちゃんまた後でねっ!」

珠理奈は理事長室を出て行った

「う、うん・・・」

玲奈はもう姿が見えなくなっている扉に手を振った

「よしっ。じゃあ・・・玲奈も修行するか」

「はい」

「じゃあー今日はにゃんにゃん教えて・・・」

「だめだよ」

篠田がニコッと笑う

「え?」

「にゃろとゆきりんは答案用紙とばした罰としてここで採点してもらうから」

「「ええーーーー!!」」

「みなみもダメだよ」

前田が言う

「え?」

「今日は私に付き合ってもらうから」

そういって笑った

(あー。こりゃ相当腹立ってたんだな・・・)

渡辺とサヤカとやり合ったので、前田は相当苛々しているらしい

「ごめん、玲奈。今日は修行休み。それに、テストも魔法使わないで頑張って受けてたしゆっくり休め」

「え・・・あ。はい」

玲奈は言われるがまま頷き

「じゃあ・・・失礼します」

「すまんなー」

高橋たちは手を振り

パタン・・・

扉が閉まった

「さて・・・敦子様。いきましょうか」

高橋は振り返り、前田に一礼した

「うん、よろしい」

前田はふふっと笑う

「えーいいなー。デート?麻里ちゃん私も肉食べたい」

「だーめ。てか、そこで肉とか可愛くないのチョイスしないの」

「むーー」

「採点終わったらね」

篠田は小嶋の頭をポンポンとなでる

「佐江ちゃーん」

柏木は助けと目で訴える

「うーん。りんちゃんごめん。私も部活見に行かなきゃいけないから・・・採点終わったらご飯行こうね」

「えーーー」

「ごめんねー。麻里子様の意見には逆らえないから」

「そういうこと」

篠田はニヤッと笑った




僕の彼女は魔法使い⑭

ビュゥゥゥゥ・・・

高橋たちは裏山の楠に降り立つ

「・・・」

サヤカはエネルギーを吸われる感じに襲われていた

「・・・ここの方がきついんじゃねぇか?」

「・・・」

高橋はすべてをお見通しのようだった

「あんた、何か知ってるんやろ?」

「さぁな。なんかそんな感じがしたんだよ」

そういって、高橋は楠を触る

「私らはここが一番エネルギーをもらえるところだけどな。炎使いのお前は違うみたいだな」

「ったく・・・炎使いはどうしてこんなにハブられなきゃなんねぇんだ。こっちでも・・・むこうでも・・・」

「・・・すまない」

「なんで、あんたが謝ってんだよ」

「まー私たちにもいろいろあるのよー」

「うん、ごめんなさいね・・・」

小嶋と柏木も頭を下げた

「ちっ・・・わからんことだらけや」

「んーでも、こっちの世界も楽しいしー。住んだら楽しいかもよ?」

小嶋はにこにこという

「あ、そうだ。生徒として渡辺さんと一緒に通えば?」

「おっそれいいなー」

柏木の提案に高橋も頷く

「何かってに話しすすめてんねん」

「まーいいじゃねぇか、炎使いは義理堅いからな・・・契約者になった渡辺さんのこともほっとけないだろうし、傷を直してくれた玲奈に恩もあるから殺そうなんておもわんだろ?どうだ、学生生活してみないか?」

「・・・なんだよ。そんな知ったような口ききやがって」

「・・・そりゃ、知ってるさ・・・」

「え・・・?」

「いたんだよ。お前みたいに、無茶苦茶なやつ。でも、義理堅くて・・・熱くて・・・真っ直ぐすぎるやつがな」

高橋は目を伏せる

「・・・あんたら、炎使いの事知ってるんか?」

「「・・・」」

柏木と小嶋も口をつぐんだ

「まぁ、時期が来たら・・・話すよ。今はその時じゃない。それに、ここに呼びだしたのはもう一つ聞きたいことがあるからなんだ」

「なんや?」

「向こうの世界はどんな感じだ?街は?城は?復興はもうできてるのか?」

「・・・」

「たのむ、教えてくれ」

高橋は頭を下げた

「・・・城は、綺麗だったよ。腹立つほどにな。街だって活気づいていたし」

「そうか・・・」

「でも、私が育った山はひどかった」

「・・・」

「炎使いの理不尽な迫害を受けて、両親だって産まれて間もない私をかばって死んだって・・・逃げのびた人間だけで集落つくって・・・そこで技の伝承を受けて・・・来る日も来る日も修行修行で・・・そうなりゃ自然と国を恨むやろ?だから、私はあの日セイレートに行ったんや。王女の成人の儀・・・いろいろ調べたら、17年前から城はそういう一大イベントの時以外は強固な結界を張るようになったみたやし。昼に忍びこんでて夜に襲おうとしたら・・・このざまや」

サヤカはフッと皮肉っぽく笑う

「・・・まぁええわ。とりあえず、こっちの世界で玲奈の近くにおったらなんか戻るヒントあるかもしれんし。みつけたらとっとと帰って仇打ちや。ほなな」

彩はふわっと浮き上がる

「ま、待てっ!結界貼らないと飛んじゃ駄目だっていってんだろ!」

「私は見つかれへん」

「あほっ!いいか、さっきも言ったけど、ちゃんと隠しとかなきゃここでは生活できないんだよ!渡辺さんにだって被害が及ぶかもしれないんだぞ!ちゃんと考えろ」

「・・・」

渡辺という言葉に彩は眉をひそめ

トンッ

地面に降りる

「お前結構いいやつじゃん」

「・・・知るか」


キーンコーンカーンコーン・・・

学園のチャイムが裏山に響く

「お、やばっ!ホームルームも終わりだっ!部活はじまるし、一旦戻るぞ」

「うん」

「はーい」

そういって高橋たちは結界を作る

「・・・わかったわ」

彩も諦めたようにその結果の中に入り

再び理事長室へとむかった

僕の彼女は魔法使い⑬

高橋は公園で美優紀とサヤカが契約者になっていたことを説明し

美優紀とサヤカには珠理奈の時と同様、契約者の関係について説明を行った

そして

炎使いとして能力を使おうとすると美優紀に影響が出たことを話した

「・・・ってことは、この世界は魔法を使う区域が制限されて・・・なぜか炎使いの私だけはその区域すらも使用できないってことか」

「そうだ。ん・・・でも、待てよ。こっち来た時お前飛行術はつかえてたよな」

高橋は眉をひそめる

「・・・あぁ」

「あと、何使った?」

「猫にはなれたで。回復魔法も使ったけど・・・ぜんぜん治れへんかった」

「そうか・・・てことは・・・よし、今ちょっと浮いてみろ」

「え・・・」

サヤカはちらっと美優紀を見る

「大丈夫だ。玲奈もいるから。試しだ」

「あぁ・・・」

サヤカは気にしながらも呪文を唱え、ゆっくりと浮き上がる

「渡辺さん、今はどうもないか?」

「うん・・・」

「そうか・・・、てことは体内エネルギーは生きてて体内循環式魔法は使えるが・・・体外放出式魔法に関しては全くダメなようだな。白魔法に関しても傷がいえなかったことを考えると・・・癒そうとするエネルギーも無になるようだ」

高橋の言っている体内エネルギーとは、自分の持ってる魔力のことである

そして、体内循環式とは飛行術や変化術は自身の身体の中に気を回し身体を浮き上がらせたり、肉体を変化させたりできる魔法の事である。

つまり、自分の身体に魔法をかけているということになる

だが、体外放出式とは文字通り、外に力を出すこと

自分の体にある魔力を放出し、炎や水にかえることで攻撃を行う

サヤカは今、それが出来ない状態にあるのだ

白魔法も一旦手に力を集めて放出するため、無効になっていると考えられる

「ま、それが解消できなきゃ向こうの世界に戻るなんて到底できんし、無理したら渡辺さんが危ない目にあうんだから・・・大人しくこっちで生活しな」

「・・・ちっ。そんなんごめんや。契約は解消や。解消」

「・・・解消すると、その子の記憶は消える」

「はぁ?」

「お前と会ったという事実が全部なくなる。そして、また一定の期間中に契約を結ばないと時空の狭間にひきずりこまれる。・・・が、今炎使いが契約を解消したらどうなるか・・・さっきのこともあるから保障もできない・・・もしかしたら、渡辺さんの存在自体が消えてしまうかもしれない」

「・・・」

サヤカは眉をひそめる

「私、別にええよ」

美優紀が口を開く

「「え・・・?」」

皆、その台詞に驚く

「別に、私が消えたって誰もどうもおもわんし。自由になりたいんやったらそれでええんちゃん?」

「ちょっ・・・ちょっと待ってよ!そんなこといわないでさ!」

宮澤は慌てる

「別に先生がどうこういう話しやないやん。その人がどうするか決めるやろ?」

「・・・」

サヤカは黙っていた

「まー待てって。今炎使いがどういう状況なのか誰もわかんねぇんだ下手なことはできない。とりあえず、一時休戦だ。記憶もけさない。渡辺さんも契約者としていてもらう。な、一旦落ち着こうぜ」

「ふーん。じゃあ、私が言いふらしたら記憶消してくれるん?」

美優紀は悪態をつく

「・・・それは」

高橋はうろたえる

「困らせてんじゃないわよ」

前田がスッと立ち上がり、美優紀に近づく

「記憶を消されるあんたはいいかもしれないけど、みなみたちがどれだけ辛いか知らない癖に軽々しく言わないで」

「なによっ!あんたやって私の気持ち知らん癖に」

「甘えてグレてるあたなに、みなみたちの気持ちだってわかんないわよ!」

「・・・!」

前田の声に美優紀はびくっとする

そして・・・

「っ!」

理事長室を出て行ってしまった

「あっ!わ、渡辺さん!」

宮澤は追いかけようとしたが

「いかなくていい」

前田はむすっとした口調で言った

「敦子・・・」

そんな前田を、高橋も心配そうに見る

「ちょうどいいのよ。あの子、契約者になったんだし・・・いい機会だったのよ」

そういって前田はサヤカの方を見た

「渡辺さんのこと、お願いね」

「なんやねん。自分で怒鳴っといて人任せって」

「あなたには契約者を守る義務がある。それに、もちつもたれつってとこもあるし・・・ちょうどいいかなとおもって」

「はぁ?」

「契約を結んだことで、あの子は一人じゃなくなったの。そして、あなたもね」

前田はサヤカを指差し、ニコッと笑った

「・・・」

「だから、もう寂しくないわよ」

「はぁ?なんやねん!うっさいわ!」

その台詞は美優紀のことを言ったのかもしれないが

サヤカはカチンとして怒鳴っていた

「まーおちつけって。といあえず、郷に入れば郷に従えだ。とりあえず、社会のルールってもんをおしえなきゃな」

高橋はサヤカの肩を叩き

「とりあえず、名前」

「え?」

「名前、まだ聞いてなかったろ」

「・・・サヤカ」

「え?それだけ?」

「なんねん、名前以外ないわ!迫害されて存在自体消されたんやからな!」

「「・・・」」

その言葉に高橋たちは黙る

「すまなかった・・・でも、サヤカ・・・お前には聞きたいことがあるんだ。ちょっと付き合ってくれ」

「はぁ?」

「霊樹に行くぞ。そこでどうなるか確かめる」

「なんやねん、霊樹って?あのでっかい木のとこか」

「そうだ、もしかしたらセイレートにもどる手立てが見つかるかもしれないぞ」

「・・・ちっ。しゃーないのー」

サヤカは気だるそうに浮き上がろうとした

その時

「あ・・・あのっ!」

玲奈があわてて口をひらく

「なんやねん」

サヤカはじろっと玲奈をにらむ

「そ、その怪我・・・」

玲奈は怯えながらも左腕を指差す

そこには血に濡れた布が巻かれていた

サヤカの怪我はまだ癒えていなかったのだ

「・・・」

玲奈はそっと布を外す

「何すん・・・」

サヤカがそう言う前に玲奈は手を当て

呪文を唱える

傷はみるみるふさがっていった

「・・・なんでや?」

「怪我してたら・・・治す。それだけです」

「こちとら、あんたら一族の命狙ってたんやで」

「・・・でも、今ここにいるのにそうしないじゃないですか」

「・・・それは」

「サヤカさんは・・・優しい人だと・・・思います」

微笑む玲奈をサヤカは怪訝そうに見つめていた

キーンコーンカーンコーン

「あ、やべっ。急ぐぞ。ゆきりん、にゃんにゃん」

「「うん」」

そういうと、3人はサヤカを取り囲む

「なんやねん。飛べるんやで」

「だめだ。結界は体外放出式だから自分で結界はれねぇだろ」

「別にばれんように高速で飛んだらええやろが」

「駄目だ。高速で飛んだら未確認飛行物体とかいわれるから」

「そうそう。あれ、めんどくさいんだよねー」

「しばらくはメディアが騒ぐからね」

高橋の台詞に、小嶋と柏木が頷く

「はぁ?」

サヤカは首をかしげていた

「とにかく、こっちの世界にきたんだから私らの言うことは守ってもらうからな」

「・・・」

「セイレートに戻りたいんだろ?」

「ちっ・・・」

サヤカはしぶしぶ柏木が作った球体の中に入る

高橋たちはふわりと浮きあがる

「玲奈、すまん。今回は外してくれ」

「はい」

高橋の台詞に、玲奈は静かに頷き

4人は窓から出て行った

その後を玲奈たちは見つめる

「さっ、じゃあ私たちはホームルームにいこうかな。玲奈はどうする?」

篠田が言う

「え?」

「いや、さっきチャイムなったじゃん。テスト終わったよ」

「あ・・・」

玲奈はサーっと血の気が引いた

「あはは、玲奈ちゃんも渡辺さんと一緒に追試だね」

宮澤は苦笑いをした




僕の彼女は魔法使い⑫

「な・・・何?」

女子高生は何がおこっているか、理解できなかった

今にも死んでしまいそうな猫が

光に包まれ、中に浮いていた

そして

「え・・・?」

人の形になり

人間の姿のサヤカが現れた

「え・・・前・・・助けてくれた人・・・?」

もう、意味がわからなかった

ブゥゥゥン・・・

サヤカの前に赤い紋章が浮かび上がる

「なにこれ・・・?」

ふと、手を見ると

左手の甲が同じ光を発し、紋章が浮かび上がっていた

「なんなん?なんなんよ!もう!」

女子高生はパニックになり叫ぶ

カッ!!

光はより強い光を放ち、瞬いた

「っ・・・」

女子高生はそのまぶしさに思わず目を閉じた


「・・・」

サヤカはゆっくりと目を開ける

力が体内をめぐる感覚・・・

魔力が戻ってる・・・

確かめるように掌をにぎったり、開いたりする

「あ、あの・・・」

そこには女子高生が立っていた

「・・・」

(こいつが・・・助けてくれたんか?)

サヤカは女子高生を見つめる

「あーあ。まさか契約結んじまうとはな」

不意に声が聞こえ、身構える

そこには、高橋が立っていた

「貴様!土使い!」

「待て待て!今、争ったってどうしようもねーよ!」

「うっさい!」

サヤカはバッと距離をとり、呪文を詠唱する

が・・・


ぽふっ・・・


やはり、炎は出ない

「はぁ?なんでやっ!」

サヤカはムキになり、次々と・・・いや、片っぱしから炎の呪文を唱える

だが、全く炎はでなかった

「・・・っ。はぁっ・・・」

ドサッ・・・

その様子を見ていた女子高生が突如倒れる

「え・・・?」

サヤカは意味がわからなかった

「おい!大丈夫か?」

高橋は慌てて駆け寄る

女子高生は苦しそうに息を荒げていた

「お前、もう魔法つかうんじゃねぇ!」

「はぁ?」

「おそらく・・・これは魔力に対する反動・・・お前が唱えれば唱えるほど、この子が苦しんでるんだよっ!」

「っ!」

サヤカはドキッとする

「たかみなー」

「あーいたいた」

遅れて、小嶋と柏木もその場に降り立つ

「っ!」

サヤカは身構える

「いい加減にしろ!今は休戦だ!!」

「・・・!」

高橋の声にサヤカはたじろぐ

「たかみな、どうなってんの?」

「この子、何があったの?」

「・・・魔法を使ったことによる反動だ・・・くそっ、ここはまだ山のふもとだぞ・・・炎使いだけ、こんなにも影響あるなんて・・・聞いてねぇぞ」

高橋はギリッと歯を食いしばる

「たかみなさん!」

そこに、玲奈がふわふわと上下しながらようやくたどり着く

さすがに、玲奈も光の波動を感じこちらに来たらしい

「ひょっとして・・・玲奈なら」

高橋はハッとし

「玲奈、お前の白魔法でこの子を助けてやってくれ」

「え?」

「頼む、緊急事態なんだ!」

自体が飲みこめず、困惑する玲奈だったが

女子高生のただならぬ息使いを見て、急を要すると察した

「・・・わかりました」

「すまん。結界は私らに任せろ」

そういって、高橋は女子高生を寝かせると

柏木と小嶋の3人で結界を張る

サヤカは何もできず、ただ茫然とその様子を見ていた


「・・・・」

玲奈は女子高生の胸の前に手を当て

呪文を詠唱する

そして、かざした手から光が現れ

女子高生の胸に入っていく

「・・・ん」

女子高生は目をあけ、ゆっくりと起き上がった

「なに・・・?」

何がおこったのか理解できず、きょろきょろとあたりを見渡す

「はー・・・よかったぜ・・・」

高橋はへなへなと膝をつく

「よかった・・・」

サヤカはぽつりと漏らし

「え?」

女子高生を抱きしめていた



―――

「で・・・、今度はどういうことになってんの?」

「せめてプリント飛ばさずに行ってくれたらよかったんだけど」

理事長室では不機嫌な前田と、篠田が居た

「・・・おい、何やったんだよ?」

高橋が空気に耐えられず、柏木と小嶋に小声で尋ねる

「んー加速するために竜巻おこしちゃった」

「すごいよー。めっちゃくちゃはやかったんだからー」

「あほかっ!この空間でそんなん使うなよ!」

「だって、緊急事態だとおもったんだもん」

「そうそう」

焦っているのは高橋だけで、2人はあっけらかんとしていた

「なになにー。騒がしいねー。職員室まで聞こえ・・・」

テストの監視員を終えた宮澤が理事長室に入ってきて

固まった

「渡辺・・・さん?」

「「え?」」

その台詞に皆が一斉に女子高生を見る


女子高生はバツがわるそうに、視線をそらした

「佐江、もしかしって・・・」

篠田が尋ねる

「うん。うちのクラスの渡辺美優紀さん」

「みなみ。とりあえず、話して」

前田は真剣な顔で高橋を見つめた

「わかってるよ」

高橋は溜め気をつき、事のいきさつを話し始めた

僕の彼女は魔法使い⑪

そして

玲奈が来てから1週間がたとうとしていた


「ねーたかみな。まだ炎使いみつからないの?」

理事長室横の応接室で小嶋はお菓子をつつきながら言う

「あぁ。裏山を探索してるんだが・・・見つからないんだ」

「どーすんの?テスト今日で終わっちゃうんだよー。そしたら部活再開だよ?学生たち裏山はいっちゃうじゃん」

柏木も口をとがらせる

「あー!もう!そんなにいうならお前らも探せよ!」

高橋は思わず叫ぶ

「やだー。そういうのはたかみなの仕事だしー」

「私は保健室を守る義務があるし」

小嶋と柏木はそういってあっけらかんとしていた

「あ、の、な。それは仮の姿であって本来は・・・」

「まぁ、いいんじゃない?もう一週間たつし・・・時空の狭間ってやつに飲みこまれるんでしょ?」

理事長室の扉の方からたくさんのプリントを抱えた篠田が現れた

「まぁ。それはそうだけど・・・」

高橋は口をとがらす

「はい。陽菜。採点手伝って」

「えー手がいたーい。麻里ちゃん一緒にお茶しない?」

「だーめ。ほら、ゆきりんも手伝って」

「えー」

篠田はテーブルの上にあったお菓子たちを端によせると

プリントをどかっと置いた

「やだー。ねーこれ食べきったらにしない?」

「だーめ」

「けちー」

高橋をそっちのけで、やいやいと篠田に対する抗議がはじまった

「はぁ・・・皆話しきいてくれねぇんだから」

高橋は肩を落とし、うなだれる

「みなみは向こうの様子を聞きたいんでしょ?・・・もう、ずいぶん帰れてないから」

「「・・・」」

前田の台詞にみんな固まった

「・・・私、最後に探してくるわ」

高橋はそう言って勢いよく窓から出て行った

「ちょっと!!」

前田は慌てて制止するが

もう高橋は手の届く距離には居なかった

「・・・そうだねー。向こうの世界・・・気になるよね」

柏木はぽつりと呟く

「うん・・・もうずいぶん帰ってないからねー」

小嶋も頷く

「・・・はい、話し終わり。採点手伝って」

篠田は重苦しい雰囲気を一掃するように

パンッと手を叩いた


―――

ブゥゥゥン・・・・

結界が作動してい波動音を聞きながら

高橋は裏山を目指していた

『みなみは向こうの様子を聞きたいんでしょ?』

前田が言った台詞が蘇る

「・・・」

図星だった

(玲奈が成人ってことは・・・あれから17年か・・・)

高橋はぼんやりと思う

セイレートでは成人は17歳だ

世界が違えば基準も違う

そして、

セイレートとこちらの世界では時空の流れが違う

それゆえ、時の過ぎるスピードも違う

高橋たちはかれこれこちらに500年以上いるのだが

セイレートはまだ17年しかたっていたない


街の様子はどうなっているのだろうか?

魔道師学校はどうなっているのだろうか?

親は・・・元気にしているのだろうか?

炎使いがいるということは・・・何人か生き残っているのだろうか?

どこで、くらしているのだろうか?


あいつを捕まえて、聞きたいことはいっぱいあった


普通なら何故、セイレートにいた玲奈に聞かないのだろうか。

そう、思うであろう

聞けないと言うよりも・・・聞いても仕方ないのだ

玲奈と修業をして、高橋は気付いてしまったのだ

玲奈は、知らないのだと

何もしらないのだと

あの事件の事も、街のことも・・・

城から、一歩も出してもらえなかったのだから・・・

「・・・っ!」

いろいろなもやもやが高橋の胸の中でぐるぐるとまわり

それを振り払うように、一気にスピードを上げた


――――

一方・・・裏山の公園では


「・・・っ」

木の陰で、サヤカは荒くなる息を押し殺していた

左腕におった傷はまだ治らない

そして・・・じわじわと身体の霊力が吸われていくのを感じていた

力が、どんどん抜けていく

『時空の狭間をさまようはめになる』

「っ!」

土使いの忌々しい言葉がよぎり

ギリッと歯を食いしばった

もう、猫になるのもしんどくなってきていた


「猫ちゃーん」

「!!」

いつもの声に、サヤカはハッとする

「あれーおれへん。どこ?」

サヤカは身を隠し、なんとか見つからないようにやり過ごす

どら焼きをくれた女子高生は、毎日ここにきて猫に扮したサヤカにどら焼きの皮をあげていた

サヤカにとっては食べ物をくれる唯一の生命線になっていた

一度面識もあるし、人間の姿で会えばいいのだが

『おいしい?』

そういって微笑む彼女をみると

最初に怯えた顔をしていた彼女を思い出し

人間の姿で連れ回してしまうのは気がひけた


「もーいいかげん今日は病院行くで」

女子高生はぐっと拳を握り意気込む

手にはどらやきがたくさん入った袋が入っていた

猫との距離は徐々に近づいていたのだが

いっこうに身体にさわらせてはもらえていなかった

女子高生は、猫の腕の怪我が気になっていたのだ

数日たっても、傷からは血が滲んで、癒える気配がなかったからだ


(ったく・・・懲りもせず、毎日毎日・・・)

サヤカは肩で息をしながら

女子高生をちらりと見る

いつも睨まれ、恨まれていた私に微笑んでくれた人・・・

この世界で、唯一優しくしてくれた人・・・

(くそっ・・・今日だけは・・・来てほしくなかった)

サヤカはもうこの世界に存在できないことを悟ってしまっていた

水使いから受けた傷から指先にかけて

もう、感覚がなかったから


(・・・しゃーないな。最後くらい・・・サービスしてやるか)

サヤカはフッと笑って

猫になった


茂みからでようとしたが・・・

が、もうそれだけでも相当なダメージだった


「ぐ・・・」

思わず声が漏れ、倒れ込んだ


「あ、そっちやな」

女子高生がかすかな声に反応し

茂みを掻きわけ

「・・・え」

ドサッ・・・

手からどら焼きの入った袋が落ちる

猫は全身を使って荒く呼吸をしていた

「猫ちゃん!」

女子高生は駆け寄り

「なんで?なんでなん?昨日まで・・・普通やったやん」

涙目になる

(なに泣いてんねん。人がせっかく・・・猫になったんやで・・・喜べや・・・)

サヤカは薄れゆく意識の中、心配そうに自分を見つめる女子高生を見上げて

懇親の力で起き上がろうとする

「だめっ!無理したらあかん」

そういって、女子高生は猫を抱きしめる

不覚にもサヤカはそのぬくもりが心地よいと思ってしまった

「猫ちゃん・・・あかんよ!死んだらあかん!」

そういって、女子高生は猫を更に抱きしめる

その時、女子高生の頬に猫の口が触れた


ブゥゥン!!

突如、大きな波動が

女子高生と猫を中心に巻き起こり

木々が揺れた

「え?」

そして、神々しい光が猫を包み

カッ!!

強い光を放った



「なんだっ!まさかっ!?」

その光にいち早く高橋は気付き

「くそーっ!また力つかわなきゃなんねーのかよっ!」

そういって、手を天にかざし

呪文を詠唱する

「「!!」」

そして、学園にいた小嶋や柏木もその気配に反応し

「ゆきりん!」

「うん、いくよっ!」

そういうと、柏木は呪文を詠唱し室内に風の玉・・・

竜巻の元の様なものが渦巻く

そして

ブゥゥゥゥゥン!

その勢いを使い、高速で窓から出て行った


バサバサバサ!!

巻き起こした風でプリントが盛大に舞う


残された部屋には

「な、何?」

「て・・・テストが・・・」

自体が飲みこめず、窓の外を見る前田と

散乱したプリントを力なく見つめる篠田の姿があったのだった・・・

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