ザワザワザワ・・・

駅の雑踏の中

私とみるきーの間には音がないように感じた

お互い見つめあったまま時が止まったようだった

「ひさし・・・ぶり」

沈黙を破ったのはみるきだった

「お、おう」

「駅で会うとかすごない?」

みるきーは笑ったが、その笑顔はぎこちなかつた

きっと、私が卒業をだまってて何にも連絡よこさなかったからだろうな

「彩ちゃんはこれから用事?」

「え、あ、あぁ・・・」

「私、今さっき用事終わったとこやねん。時間あったら、少し話さへん?」

私は時計に目をやる

スタジオを借りてるけど・・・まぁ多めにとってたからいいか・・・

「1時間くらいやったらええで」

「ホンマ?ほな、ちょっとお茶しよ」

みるきーは少しほっとしたように笑った

ーーー
「ここの紅茶ラテおいしいねん」

そう言ってみるきーは手慣れたようにカフェに入っていった

「ここらへんよく来るんか?」

「きだしたのは最近。ボイストレーニングはじめてん」

「ん?まてぇ、もしかしてそこって・・・」

私はスタジオの名前を言う

「え、そうそう。もしかして彩ちゃんも?」

「あぁ。スタジオ借りて練習しようと思って」

「そうなんや。実はおんなじところにいってたんやね。すごい偶然。先生って・・・」

みるきーはスタジオ講師の話を始めた

担当の講師は違っており、ギターとかのスタジオとボイストレーニング専用のスタジオは分かれているから会うことがなかったのかもしれない

私はみるきーおすすめの紅茶ラテを飲みながら

こんなに会える機会があったのに

このタイミングで会うなんて・・・

と、ぼーっと見つめていた

「腹筋とか落ちてしもてて、よくおなかから声が出てないっていわれてなぁ」

「あー・・・」

「立ち方とか音程のつけ方とか、厳しいわぁやっぱり」

みるきーは苦笑いをした

私も最初はかなり怒られたもんなぁ

それに、あの先生って私は担当やないけど厳しいって有名やし

いや待てよ?男やん

あの先生結構若かったし

その人と2人っきり?

私の中でもやもやとした思いがよぎる

みるきーは以前見た時よりも綺麗になっていた

好きと言ってくれた後、待ってくれてるとばかり思っていたけど

連絡も少なくなって

結局仕事ばっかりになって・・・

もしかしたら、私以外にいい人が現れてもおかしくない状況だよな

もう・・・アイドルやないんやから

それに、芸能界に戻ったら

今度はみるきーを狙ってくる男がたくさん・・・

「なんで、また戻ろうと思ったんや?」

「え?」

私はなんかイライラして

みるきーの話を遮った

「うん・・・いろいろ考えて・・・ね」

「いろいろってなんやねん。やりたいことあったんちゃうんか?それで卒業したんちゃうんか?」

「したよ。でも、そううまくいかなくって。でも、アイドルとしては卒業したからタレントとしてもう一回やってみようって思ったん」

「そんなに簡単なもんやないやろ?」

「何?なんでそんなに怒ってんの?」

私の口調にみるきーもすこし口調がきつくなる

「だいたい、あんたは何でも急やねん。卒業したかと思ったら今度は復帰って」

「そんなん私の勝手やん。そっちやって卒業するって私になんも言ってなかったやん」

「私にも事情があんねん」

「ほなこっちやってあるわ」

みるきーは口をとがらせ

「もうええ」

がたっと席を立つ

「彩ちゃんこそ、勝手やん」

「・・・」

しまった・・・

私の熱はさーっと冷める

だが、もう遅い

みるきーはカバンを手に去って行ってしまった

あぁ、またやってしもた

どうして、思っているのに素直になれないんだろう・・・

追いかけようとしても

足が動かなかった

追いかけて

何を言うのだろう

『勝手やん』

そうだな

ホンマに

勝手に待ってくれてると思って

勝手に嫉妬して

勝手に怒らせて

何年たっても

なんでみるきーだけにはこんなに不器用なんやろう・・・