ブンッ!

「かーっ!奈々未の球も早いなー。前よりスピードでてんじゃねぇか?」

グラウンドで勢いよく空振りをした大島は

マウンドに立つ橋本を見て笑う

「・・・」

橋本は帽子を取り、ニコッと笑う

「ホント、昔よりスピード出てるわよ」

白石もマスクを外し、ニコッと笑い

ボールを投げた

「・・・ありがと」

橋本は照れくさそうに笑った


「なーに4人で楽しいことしてんの」

「そうそう、混ぜてくれなきゃなー」


「え?」

聞きなれた声に大島は振り向く

「佐江、才加!」

そこには練習着に着替えた宮澤と秋元の姿があった

「私も参戦させてもらえますか?」

2人の後ろから山本がスッと姿を現す

「彩!」

「私も球早くなってますよー」

「珠理奈!」

「優子先輩!」

「えっ、由依まで?」

次々に出て来る秋葉女学院メンバーに大島は驚く

「ど、どうして?みんなが・・・?」

大島はきょろきょろと皆の顔を見た

「ふふふ・・・それはー」

秋元たちの後ろから声がし・・・

「さっしーが皆に連絡してきたんだよ」

「あー麻友!私の一番いいとことったな!!」

指原を押しのけて麻友が静かに言う

「麻友・・・さっしー・・・」

「そんな人数じゃやっててもつまんないでしょ?だから皆に写メ送ったんだー。優子たちがキャッチボールしてるのをね」

指原は得意気に胸を張る

「どうせならさー。元秋葉女学院メンバーでまた野球したいっておもってさ」

「え・・・?」

大島は首をかしげる

「あのっ、私たちも参加させてくだしゃい!」

そこには兒玉と宮脇の姿があった

「私もー」

「負けた借りは返さないとねー」

「私もいますよー」

そして、そろぞろと世界選手権代表選手達が現れる

「み、みんな・・・」

「いやーホテルに行って声かけまくったらこんなに来ちゃったー」

指原はぽりぽりと頭を掻き、笑う

「ま、試合するには人数必要でしょ?」

「え?」

大島は首をかしげる

「おーなんだぁ?めちゃくちゃ集まってんじゃねーか」

「高橋先生!」

ジャージ姿の高橋の登場に

秋葉女学院のメンバーのテンションがあがる

「ははっ。あと、やっぱ監督にも居てもらわなきゃねー」

そういって指原はニッと笑った

「ったく・・・」

大島はニヤッと笑い

「よーし!じゃあ秋葉女学院チーム再結成だ!ドリームマッチだぜ!」

「「おーー!!」」

大島の掛け声に

元メンバーたちは腕を挙げて答える

「じゃあ、私たちは・・・連合軍ってわけね」

白石もフッと笑う

「いいんじゃない。あの時のリベンジだ」

橋本もクスッと笑い

「前田さんも参加しますよね?」

視線を前田の方に向けた

「え?あ・・・」

「そりゃもちろんっ!こんな面白いことに参加しないわけないっしょ!」

「みなみっ!」

困惑していた前田の肩をつかんだのは

元バッテリーの峯岸みなみだった

「敦子、やろうぜ」

「・・・うん」

峯岸の嬉しそうな顔に、前田はクスッと笑って頷いた

「はい、わかりました」

橋本はニコッと笑い

「じゃあ、元秋葉女学院以外の人はこっちに集まってくださーい」

そういって手を挙げた


――――

「結局、野球やん・・・」

「ふふっ。そうだね」

バックネット裏の観客席には

美優紀と玲奈が居た

美優紀は頬をふくらませていたが

玲奈はにこにこしていた

「おーいいねー。やってるやってる」

後ろから声がして2人は振り向く

そこには、中西が立っていた

「玲奈ちゃん、連絡ありがとね」

「はい」

ニコッと笑う中西をみて、玲奈も微笑んだ

「って・・・どうしたの?ジャージとか珍しいね」

「あー・・・これは。あはは・・・」

玲奈は苦笑いをする

池に落ちた時に濡れた服は乾いていなかったので

急遽珠理奈のジャージを着たのだ

「ま、いいか。それより・・・2人ともなんか顔が違うような・・・もしかして」

中西は2人の顔を見てニヤッと笑う

「へ・・・?」

「べ、別に何もないでー」

2人はぎこちなく笑う

「まぁもう大人だし。玲奈ちゃんにも許可出してたし結構結構。じゃあ、私はグラウンドに行ってくるねー」

中西は2人の表情ですべてを悟り

にやにやしていた

「え?先生ここで見ないんですか?」

玲奈は首をかしげる

「だって、審判がいるでしょー?ねー。麻里子様?」

そういって中西は後ろを見る

「・・・」

そこには腕を組んでグラウンドを見つめる篠田の姿があった

「あー何それ。人が連絡したってのにその表情」

「・・・うるさい。大体1回でいいのに、何回も立て続けに電話かけてくるな」

「だって、見逃したら後悔すると思ってさー。こんないい試合」

中西は篠田に近づいてにこにこと笑う

「おーやってるなぁ。皆オフなのに・・・ったく野球バカの集まりだな」

「野本会長!」

篠田は後ろを振り向き驚く

「中西君、連絡ありがとな」

「いえいえー。こんな面白い事、お知らせしないわけにはいかないですから」

中西は篠田と野本のもとに駆け寄り、ニッと笑う

「まったく・・・お前ってやつは・・・」

そういって篠田はため息をつく

「まぁまぁいいじゃないか。それより、中西君アメリカにもついてってくれるんだって?ありがとなー。英語できる人がいると心強いよ」

「なっ!」

篠田は勢いよく中西を見る

「もーそんな怖い顔しないでよ」

「大体、そんなに休み取れるのか?仕事は?」

「バケーションだよ、バケーション。ま、遅めの夏休みってやつ?」

「あのな、日本と海外じゃ休みの期間が違うだろ」

「大丈夫。向こうの留学先の病院にも日本での実績報告をするってことで医局長には話そうと思ってるから。まぁ、そりゃ皆が現地入りする時には間に合わないかもしれないけど」

「いいのか・・・そんなので」

篠田は呆れた顔で中西を見る

「だってさー。見たいじゃん」

「は?」

「世界大会、優勝する瞬間をこの目でさ」

中西はニッと笑う

「・・・ったく。勝手にしろ」

篠田はフッと笑う

「・・・よし。じゃあ、行くか」

野本は2人の表情を見てニッと笑うと

観客席を後にする

「はい」

「はーい。じゃあねー。2人とも楽しんで」

そう言ってには篠田と中西は野本に続いて観客席を後にした


―――

「はいはーい。審判は私らが務めまーす」

そういって中西はパンパンと手を叩きながらグラウンドに入る

「中西先生!」

麻友は目を輝かせる

「はい、でたー。・・・ぐふっ」

からかおうとした指原は麻友の肘鉄をくらい、うずくまる

「あーもう、鉄板だな」

そんな様子をみて秋元は苦笑いをした


「珠理奈に彩、おめでとう」

中西は2人の肩に手を置き、にこにこと笑う

「「は?」」

2人は中西の顔を見て首をかしげる

「大人の階段、ついに登っちゃったねー」

「な・・・」

「ええっ、なんでわかったの?」

顔を赤らめる彩とは対照的に

珠理奈は当たってことに驚いていた

「そりゃー彼女たちの表情をみればねー」

そういって中西はバックネット裏の観客席にいる玲奈と美優紀をちらっとみた

「へー先生、すごいねー。てか、彩も?やったじゃん」

「う、うっさいわ!そんなこと大きい声でうゆうな!」

「いいじゃん、別にー。で、行ったの?ラブホ?」

「あほっ!行ってないわ!家じゃっ」

「へー家なんだ」

「あ・・・。っ!わ、私ゆいはんとキャッチボールしてくるからなっ!」

山本は顔を真っ赤にして叫び、横山の元に向かう・・・

というより、逃げたと言うほうが正しい

「あーあ。そんなに照れなくてもいいのに」

珠理奈は山本の後姿をみながら苦笑いをした


―――――


「あれー?麻里ちゃん?」

しばらくして

辺りを見渡しながら小嶋が観客席に現れた

「あ、あの・・・篠田監督ならグラウンドに・・・」

玲奈はそういって指差す

「あーホントだー。もー・・・仕方ないなー」

そういって小嶋は玲奈たちの横に座る

「あ、あの・・・」

「野球好きな人って、どうしていつもこーなんだろうねー」

玲奈の言葉を遮って

小嶋がムスッとしながら言う

「わかりますー。いっつも野球野球ってゆうて、ホンマなんやねんって思いますよねー」

小嶋の発言に、美優紀が賛同する

「そうそう。野球の事になると他の事ほっぽり出しちゃうし」

「あーわかりますー」

2人は玲奈を挟んで盛り上がる

「・・・でも」

小嶋はグラウンドに居る篠田を見つめ

「あの嬉しそうな顔が好きなんだよねー」

クスッと笑った

「「・・・」」

玲奈は珠理奈の

美優紀は彩の表情をみる

2人ともメンバーたちと楽しそうに話しをしていた

「ほんま・・・悔しいけど、めっちゃええ顔」

「うん」

2人はクスッと笑う

と、そこに宮澤に近づく柏木の姿があった

「あ、柏木先輩・・・」

「あーずるいー。応援やから観客席におったのにー。玲奈ちゃん、私らもいこう!」

「え?あ、うん」

美優紀に腕をつかまれ、玲奈は立ち上がる

「いってらっしゃーい」

小嶋は座ったまま手を振る

「え?い、行かないんですか?」

「うん。もうすぐしたら帰るから」

「へ?」

「だって・・・やっぱり、ルールわかんないもん」

小嶋はそう言って笑った


―――

「彩ちゃん!」

「美優紀!」

玲奈の手を引いてグラウンドに来た美優紀を見て

山本は顔を赤らめる

「・・・って、玲奈。なんでジャージ?それ、珠理奈のやないんか?」

「あ、あはは・・・いろいろあって」

玲奈はまた苦笑いをした

「玲奈ちゃーん」

玲奈の姿を見て、珠理奈も駆け寄る

玲奈は2人が並んでいるのを見て

高校時代を思い出した

「ふふっ・・・なんか懐かしいね珠理奈と彩のバッテリー」

「・・・おう」

「そうだね」

2人は顔を見合わせてニッと笑う

「頑張ってなー2人とも」

美優紀もニコッと笑う

「うん、ありがとう。でも、その前に美優紀ちゃんには聞きたいこといっぱいあるんだけどなー」

「なっ!じゅ、珠理奈!とりあえず投球練習すんで」

美優紀に近寄る珠理奈を山本が肩をつかんで制止する

「えー」

「ほれ、いくぞ」

山本は珠理奈を無理やり引っ張り

珠理奈はそれにずるずると引きずられていた

「ふふっ、やっぱりええなぁ」

「うんっ」

美優紀と玲奈はそんな2人を見て微笑んだ



「よーし、じゃあ始めるぞー」

しばらくして

全員のアップが終了し

野本はキャッチャーの後ろに立つ


「佐江ちゃーんがんばってねー」

ベンチで柏木は手を振る

「あーわくわくするなぁ」

「うんっ!」

その隣で、美優紀と玲奈も立ち上がり

グラウンドを見つめていた


サァァァァッ・・・

その時

春風が吹き

桜の花びらをグラウンドに連れてきた


「・・・」

玲奈は空を見上げる

どこまでも青く

澄みきった空が広がっていた


3年前からすべてが始まった

生きる希望を失っていた私を

彩がみつけてくれてた

そして

珠理奈が支えてくれた

ううん・・・

珠理奈だけじゃない、野球部が・・・中西先生が・・・皆が私を助けてくれた

だから

生きたいと思った

心の底から、生きてみたいと思った

あの時があるから

今がある・・・そして・・・未来がある



生きている限り

明日は来る・・・

命あるところに希望がある・・・

そう・・・希望とは


「・・・明日の空・・・」

玲奈は空を見上げたままぽつりと呟いた

「え?」

不意に言葉を発した玲奈に美優紀は首をかしげる

「ううん。なんでもない。ほら、試合始まるよ」

そういって玲奈は微笑み

マウンドを見つめた

そう・・・

そこには・・・

大好きな人が立っていた




先攻は連合軍

バッターボックスに白石が立つ

マウンドには珠理奈

そして、キャッチャーは山本だ

「珠理奈。悪いけど、打たせてもらうわよ」

白石は腕を伸ばし、バットを珠理奈に向ける

「おーこわっ・・・」

珠理奈はぼそっと呟く

「ん?なんか言ったー?」

「いえ、何もー。手加減しませんからねー」

「当たり前よっ!」

そういって白石は足場を馴らす

「悪いけど、今回も勝たせてもらいますよ」

山本が白石を見上げる

「あら、3年前とは皆レベルが違うのよ。それに、そっちはプロじゃない人だっているし」

白石はフッと笑う

「ははっ。でも・・・私ら最強のチームですから」

山本はニッと笑い

前を見る

珠理奈の後ろには

大島や麻友、横山たちの姿があった

「言ってくれるじゃない」

そういって、白石もグラウンドで構える選手達を見る

「・・・でも、確かにいいチームね」

「え・・・」

山本は驚いて

顔を上げる

白石はフッと笑い

「さ!手加減なしよ!来なさい!」

そういって構える

山本もニッと笑い

「しゃっ!珠理奈っ!こいっ!」

嬉しそうにミットを構えた



「よーし、じゃあいくぞー」

野本はスッと腕を上げ

大きく息を吸い込む

全員がその手に注目し

目を輝かせていた


「プレイボーーーール!!」

「「おーーーーーーー!!」」


青い空に

選手達の声がこだました




FIN