―――

ドンドン!

「行け行け!リリーガル!!」

「打てー!!」

球場ではスタンドから声援や鳴り物の音が響いていた

東京リリーガル対神戸ストークスの対決



現在、1回表、東京リリーガルの攻撃

パンッ!

「ボール!フォアボール!」

審判の声で

東京リリーガルの選手が1塁に進む

「はぁー・・・」

ため息をつくのは

青い帽子、青いストライプのユニホームに身を包んだ

神戸ストークスのピッチャーだ

「・・・」

ピッチャーはバックネット裏の観客席に目をやる

「・・・来て、ない・・・か」

そう呟き

青い空を見上げた

―――

「あーもう始まってる!」

球場の外から聞こえる歓声で中西は焦る

球場のポールには

国旗と女子プロ野球の旗

そして、2チームの旗が揺らめいていた

「はぁ・・・はぁ・・・」

「玲奈ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫・・・です・・・。それより、先生・・・入りましょう」

玲奈は息を整えながら

鞄の中からチケットを取り出す

「あ、そうだね」

中西もゴソゴソとチケットを取り出した


「どうぞー」

穏やかな係員の声を聞いたかみたかで

2人はまた駆けだす

玲奈が高校3年生の時

女子プロ野球が設立された

全国に4チームあり

東京の『東京リリーガル』

愛知の『名古屋スコープアウル』

兵庫の『神戸ストークス』

福岡の『博多ウォーブラ』がある

現在、女子野球は昼メイン、男子野球は夜メインという形になっている

未だ、男子プロ野球の人気には勝てないが

女子野球も可愛い子がいると

じわじわと人気を集め

テレビやラジオ、雑誌などのメディアでも取り上げられるようになった


「あー来た来た!ここやでー!!」

バックネット裏の席で一人の女性が立ちあがり

自分の横の通路側2席を指差す

その姿を見つけた玲奈と中西は

階段を一気に駆け降りる

「みるきー!ごめんね!」

そう言って玲奈はその女性の隣に座った

中西もそれに続き、玲奈の隣に座る

「今めっちゃええとこやで!」

興奮気味にしゃべる彼女は

渡辺美優紀 

現在、東京の大学に通う2年生だ

「2人ともいけるん?めっちゃ息きれてるやん」

その隣で、おっとりした口調で話すのは

横山 由依

秋葉女学院 元野球部 キャプテンだ

「だ、大丈夫・・・それより、今って・・・」

玲奈は息を整えながら言う

「そうそう、今真っ最中や」

そういって 横山はグラウンドを指差す

「・・・」

玲奈は胸に手を当てて、きゅっと握った

「1ストライク、2ボール・・・。いやー面白いねぇ」

そう言って中西もニヤッと笑った


―――――

「ちょっと!ちゃんと投げなさいよ!さっきのファールじゃなかったら、ホームランになってたわよ!」

マウンドで怒鳴るのは神戸ストークス キャッチャー白石 麻衣だ

「すいません・・・」

ピッチャーの松井 珠理奈は肩をすくめる

「もう・・・せっかく東京に帰ってきたんだから、いいとこ見せなさいよ」

白石は珠理奈の肩を叩き、戻っていった

「そう言われても・・・見せたい相手が・・・」

珠理奈は目線をバックネット裏にやり・・・

「いた・・・」

確かに

はっきりと

珠理奈の目に玲奈が映る

「玲奈ちゃん・・・」

珠理奈はそう呟き

玲奈を見つめたまま固まっていた

そして

玲奈も珠理奈の視線に気づき

手で大きく丸を作って掲げた

「ほ・・・ほんと?やったっ!!」

珠理奈はマウンドでガッツポーズをとる

「ちょっ・・・」

白石が焦って注意しようと立ちあがった時

「こらぁ!珠理奈!」

バッターの声に

全員の視線が集まる

「何してんねん!ちゃんと投げぇ!そんなんやったらホームラン打ったるからな!」

そういってバットを珠理奈の方に向け叫ぶのは

赤いユニホームに身を包んだ

東京リリーガル キャッチャー 4番 山本 彩だ

「君っ!バッターボックスで叫ばない!」

「あ・・・すいません」

審判の注意に、山本はぺこぺこと頭を下げ苦笑いをする

「・・・そりゃーだめだよなぁ。せっかく玲奈ちゃんが見に来てくれたってのに」

珠理奈はマウンドで白い粉をつけ、フッと息を吐く

「ホームランなんか・・・」

そして、大きく振りかぶって

「打たせるかよっ!!」

投げた!!


わぁぁぁぁぁっ!!


ひときわ大きな歓声が

球場に響き渡った