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試合が終わり

グラウンドに選手たちが整列する

前日にも名古屋スコープアウルと博多ウォーブラの試合があったため

4チームの選手が勢ぞろいしていた

「えーでは、これより表彰式をはじめます」

グラウンドに音割れのアナウンスが響く


「優勝!神戸ストークス!!」



「「わぁぁぁぁぁっ!!」」


グラウンドでチームのメンバーたちが優勝旗を手にはしゃぐ

玲奈は喜ぶ珠理奈の顔を見て

頬を緩ませていた

「あーあ。ええとこまでいってんけどなー」

美優紀はむすっと口をとがらせる

「せやなぁ。3対4・・・接戦やったなー」

隣で横山が拍手をしながら言う

「いやーいい試合だったなー。抜けだしてきたかいがあるよ」

中西もにこにこしながら拍手をする

「え?先生、抜けだしてきたんですか?」

玲奈は驚いて中西の方を向いた

「あー・・・あははー・・・うちの外来の看護師さん、診察終わったらカルテ整理しろってうるさくてさー」

中西はぽりぽりと頭を掻く

「それで、今日はそんな恰好なんですね」

玲奈は中西の服装がいつもと違うのは

看護師にばれないよう変装していたのだと気づく

「先生あかんでー。まぁでも私やったらケーキで手ぇうつかなぁ」

「みるきー。だめだよ」

玲奈が慌てて注意する

「あははー。美優紀ちゃんは優しいねぇ。でも、ちゃーんと患者さんは診察してきたから大丈夫。大丈夫。」

「もー・・・。先生、あとで叱られても知りませんからね」

玲奈はいたずらっぽく笑う

「ははは、厳しいなぁ・・・玲奈ちゃんはいい看護師さんになるよ」

そういって中西は苦笑いをした


あれから3年が経ち

玲奈は東京の大学に入学、看護学科の学生になった

この秋に臨床実習もある

高校3年生の時、進路で悩んでいた玲奈に

『松井は看護師とかいいんじゃないか?ほら、修学旅行で山本がのぼせた時に介抱してただろ?てきぱきしてて感心しちゃったよー』

という、野球部顧問 高橋みなみの発言がきっかけとなった

元々、長い入院生活をしていたので看護師は身近な職業だったのだが

近すぎるせいで、考えたこともなかったのだ

珠理奈は看護師になると言った玲奈に対してやたら興奮していたが

玲奈は何故そこまで興奮するのかよくわからずに首をかしげていた

そんなこんなで、玲奈は看護学科に進み

大学に入って驚いた

そこには、にこにこと手を振る美優紀の姿があったのだ


渡辺美優紀 大阪府出身 玲奈と同じ大学2年生 看護学科

山本彩の恋人だ

高校2年生の時に山本が東京に引っ越してしまい

遠距離恋愛をすることになってしまったため

大学は東京と決めていたらしい

幼い頃は喘息を患っており

将来は看護師になると幼心に決めていた

だが、数ある大学の中からどれを選ぶか迷い

玲奈に相談したところ

玲奈も看護学科を受験するということを知り、同じ大学を受験したのだ

現在、美優紀はソフトボール部のピッチャーをしており

玲奈はマネージャーをしている

「あー、また珠理奈たちと野球したいなぁ・・・時間ないかなぁ」

横山は、はしゃぐ選手たちを見ながら呟く

「ゆいはんはいつまでこっちに居るの?」

玲奈が尋ねる

「とりあえず1週間はおるよ」

そういって横山は笑った

横山由依 京都の某大学 教育学部の2年生だ

出身は京都だが、中学の時に転校して東京へ

秋葉女学院 野球部ではキャプテンを務めていた

高橋先生みたいに教育者として野球を教えたいという思いから

教育学部に進んでいる

ちなみに、京都では祖母の家で暮らしている

今回は春休みということもあり、試合を見に東京に帰ってきたのだ



ワイワイと盛り上がっているグラウンドに

一人のスーツを着た女性がマイクを持って立つ

「お、野本会長」

中西はその人の姿を見て、前のめりになった

彼女は 野本 裕子 

元女子高野連の会長だったのだが

プロ野球協会設立時に会長に抜擢された

元々、中西が高校の時から野球の監督をしていたので

女子野球会の第一人者と言っても過言ではない

日焼けした肌とオールバックで髪をひとつに束ねている姿は

スーツよりもユニホーム姿の方が似合ってるな・・・と

中西は苦笑いをした


「えー・・・では、続きまして・・・日本代表選手の発表をしたいと思います」

その言葉に、先ほどまではしゃいでいた選手たちの動きが止まる

他のチームの選手も、客席もどよめいていた

「え?なに?」

美優紀はきょろきょろとあたりを見渡す

「これは・・・ひょっとして・・・」

中西は顎に手をあて、にやにやと笑う


「この秋、アメリカで女子野球世界大会が開催されます!!」


「「・・・わぁぁぁぁぁっ!!」」


少しの沈黙の後

会場は一気に盛り上がりを見せた