「・・・3月で退職するとは聞いてたけど・・・まさか世界大会の監督になるとはなぁ」

1塁スタンド、東京リリーガルの応援席でそう呟くのは

秋葉女学院 野球部監督 高橋みなみだ

そして、その横には懐かしいメンバーが顔をそろえていた

「面白いね・・・この布陣。優子もアメリカで腕を磨いてるだろうから・・・」

渡辺麻友はタブレットパソコンを手に慣れた手つきで何やらデータを打ち込んでいた

「うわー。まゆゆ、またにやにやしてて気持ちわるっ・・・うっ」

その横で、ちゃちゃをいれる指原莉乃は麻友に肘鉄をくらわされ悶絶していた

「佐江ちゃんよかったー・・・。おめでとう・・・」

元野球部マネージャーの柏木由紀はぼろぼろ涙をこぼしていた

「でも、この選抜メンバーでグッズ出したらめっちゃ儲かるなー。うーん・・・」

指原は顎に手を当てて考える

「さすが、グッズ販売員・・・しっかりしてるね」

麻友が呟く

「まゆゆだって、優子が帰ってきたから大学で身体能力データもらおうとしてるでしょ」

「・・・」

図星を疲れた麻友は黙ってタブレットパソコンに目をやる

麻友は現在、東京の大学でスポーツ医学を学んでおり

実際にプロスポーツ選手に協力してもらい研究を行っていたりする

常に成績優秀なのだが

スポーツ選手のデータを採取している時の顔がにやにやしすぎていて

他の生徒はもちろん、教授ですらその時には近づかないという噂だ


指原は東京の某私立大学の経済学科に在籍しており、東京リリーガルの売り子のバイトもしている

プロ野球発足当初、何を販売していいか悩んでいた時に

指原がアイディアを投じ、そのグッズが人気を博したため

卒業後は社員として働かないかと勧誘されている

そのため、現在は売り子と言うよりはもっぱら販売事業部に入り浸っている


柏木は名古屋の大学の栄養学科に通う大学3年生だ

現在、宮澤と同棲中である

ドラフト会議でどこに所属しても大丈夫なように

東京、名古屋、神戸、博多の大学を受験していたという徹底ぶりだったらしい

スポーツマンを支えるのは食だと考えていて

毎日気合の入った料理がでてくらしい

最初はお世辞にもうまいといえなかった料理も、今や腕を上げ

宮澤も食べるのを楽しみに毎日すぐ帰ってくるらしい


「まぁまぁ。それより、今日はこの後皆オフなのかなぁー。せっかくだし集まれないかな?」

さっきまで泣いていたのはどこへやら、柏木は手をぱんっと合わせて笑っていた

「おーいいなぁ。こうやって東京に皆が集まることもそうないしなぁ」

高橋も頷く

「この後か・・・。でも、邪魔しちゃいけないんじゃない?」

麻友が冷静に言う

「え?何の?」

「はい」

首をかしげる指原に

麻友は双眼鏡を差し出し、バックネットの観客席を指差した

「えー・・・?あ、由依!玲奈もいる!ていうか、あんないい席・・・彩のやつ私にも譲ってくれてもいいじゃんかよー」

指原はむすっと口をとがらせる

バックネット裏の観客席はいわゆる特別席扱いのため、選手達が招待したい人のためにおさえていることも多い

ちなみに

指原の力ではまだバックネットのチケットをゲットするまでには至ってないらしい

「えっ!?みんな来てるの?」

柏木は甲高い声をあげて、指原から双眼鏡を奪い取る


「・・・珠理奈、東京久しぶりでしょ?玲奈と一緒に居たいんじゃないかな?」

「おーなんだなんだ?まゆゆ優しー・・・ごめんなさい」

キッと麻友が睨んだので、指原はちゃかすのを止め、みぞおちをかばう

「うーん・・・じゃあ仕方ないかな。ま、こればっかりは選手の皆で相談してもらわないとね」

そういって柏木は携帯を手に、何やら文章を打つ

「さっしーが聞いてきたら?一応スタッフなんでしょ?」

「そうだなぁー。じゃあ、ちょっくら行ってきますか」

そう言って指原は席を立つ

「じゃあ、私も行こうかな」

麻友もスッと立ち上がった

「え?どこ行くの?」

指原が首をかしげる

「決まってんじゃん!中西先生のとこだよ!選手の発表も終わったし、今ならお邪魔じゃないからね」

先ほど、双眼鏡でしっかりと中西の姿も確認していた麻友は

きらきらと目を輝かせていた

「・・・相変わらずなのね」

柏木はそんな麻友の顔を見て、苦笑いをしたのだった