コンクールの翌日からは

またいつもの毎日が始まった

山田はメインの仕事を任されてから

ずーっと働きづめらしく

仕事終わりにも店に顔を出すこともなかったし

いつものベンチにも居なかった

私の方が顔出したり、待ったりしたらええんやろうけど

なんかそんなんも気恥かしくて

仕事の邪魔したくないとか

いろいろ自分に言い訳してたら

あっという間に、クリスマスがきてた・・・

「予約のケーキ個数確認してー!」

「これ、16時以降の予約の分ね」

「山本ー!イチゴ切ってー!」

「はいっ!」

厨房はウエディングケーキ、クリスマスケーキ、カフェ用のケーキの作成で

皆バタバタと動き回っていた

「山本!ケーキ運んで来い!」

「はいっ!」

木野チーフに言われ、私は台車を押して会場へと向かった



「すいませーん・・・」

小声で会場裏のスタッフに声をかける

「ありがとうございます」

受け取りに来てくれたのは

1年目の時に山田を怒鳴ってたプランナーさんだった

「あ、おねがいします・・・」

私はぺこっと頭を下げる

今日は、山田やないんや・・・

きょろきょろとあたりを見渡すが

山田の姿は見当たらなかった

「もしかして、山田さん探してる?」

「えっ!あ・・・」

いきなり声をかけられ、大きな声をだしてしまったので

慌てて手で口を押さえる

「あ、ごめんなさい。山田さん今日メインだから違うところにいるの」

「あ・・・そうなんですか」

そうか・・・この式なんや・・・山田の初メイン

「1年目から見てるけど・・・成長したわよあの子。あ、ちなみに私はケーキひっくり返したりしないわよ」

「あ・・・あはは」

どうやらあの件で私の事もしっかり覚えてくれているらしい

「ケーキ出しまーす」

「はい」

男性スタッフに声をかけられて

プランナーさんはケーキを持っていく

私はそれに乗じて、そっと式の様子を覗いた

「「わぁぁぁっ!!」」

ケーキの登場に会場は歓喜の声に包まれ

多くのフラッシュが重なり合って光っていた

一瞬、その奥に山田に姿が見えた

山田は嬉しそうにケーキ入刀のシーンを見守っていた

「・・・うまくいってるやん。最後まで、頑張りや」

私はそう呟いて

会場を後にした


夕方――

ケーキ作りも落ち着き

いつもの業務らしくなってきた

カシャカシャカシャ・・・

私は厨房で卵白を混ぜていた

「すいません、山本さんいらっしゃいますか?」

「え?」

聞きなれない声に私は顔をあげる

店の出入り口のところには

昼間ケーキを受け取ってくれたプランナーさんが立っていた

「ん?」

「なんだ?」

他のスタッフも手をとめ、プランナーさんを見つめていた

「ほれ、おめーらは山本じゃねーだろ。さっさと手ぇ動かせ」

「「はい!!」」

木野チーフの一喝でスタッフはまた視線を下ろす

「山本、さっさと行け。呼ばれてるのに待たすんじゃねーよ」

「は、はいっ!すいません、これ代わりにお願いします」

私は他のスタッフにボウルを託し

慌ててプランナーさんのところに向かう

「ごめんなさい。ちょっといいかしら」

「は、はい」

そういうとプランナーさんはカフェの方を抜け

ロビーを通り、職員通路に入る

「あ、あのー・・・?」

職員通路まで来たことを不審におもって私はプランナーさんに声をかけた

「ごめんなさい。こんなところまで。実はね・・・あの式が終わった後、山田さんが倒れたの」

「えっ・・・!?」

心臓がドクンと1回跳ね

その後、早鐘のようにドクドクと鳴り始めた

山田が・・・?

なんで・・・?

「急いで病院に行って見てもらったの。過労による発熱ですって。ここのところずーっと遅くまで残ってたから・・・」

プランナーさんは俯く

「そ、それで!山田は?」

「入院するほどでもないから、自宅安静。で、山本さん職員寮一緒だし、仲もいいみたいだったから・・・今日様子見に行ってあげてくれないかしら。私が行っても気を使わすだけだし」

「わかりました。ありがとうございました」

「じゃあ、お願いね」

私は去って行くプランナーさんを見つめながら

「・・・あほっ。無理しすぎやねん」

そう呟き

ぎゅっと拳を握った