――――

「お疲れさまでした!」

時計が定時を指した瞬間に、私は厨房から出ていく

「お?どうした山本。今日早いねぇ」

「デートか?」

「もーそんなちゃいますよ!じゃあ急ぎますんで」

先輩らの冷やかしも適当にあしらってしまうほど

私は急いでいた

肩かけ鞄を勢いよく揺らしながら

寒空の下を走る

街はイルミネーションに包まれ

行きかう恋人たちや、サンタの帽子をかぶって呼びこみをしている人たちが何人もいたけど

私はすべてを素通りし

職員寮を目指していた


―――――
「はぁ・・・はぁ・・・」

白い息を吐きながら

私は山田の部屋の前にたっていた

そして、深呼吸をし

インターホンを押す

「・・・」

しばらく待ってもドアは開かなかった

「・・・寝てるか?」

そっとドアノブに触れると

ガチャ・・・

「あ・・・」

開いた

私はゆっくりと戸を引き

「山田ー・・・?・・・っ!」

視線を下におろし

息を飲む

そこには廊下で横たわっている山田の姿があった

「山田!」

私は慌てて靴を脱ぎ捨て

山田に駆け寄った

「ん・・・。彩・・・?」

山田は目を開けて私を見る

「何してんねん。ここ、廊下やで」

「だって・・・床、冷たくて気持ちええんやもん」

そう言いながら山田はまた目を閉じる

おいおい

ていうか、こいつは何時間こうしておったんや?

病院帰って来てからずっとここで寝てた?

「あかんて。ほれ・・・」

そういって、山田を抱き起そうとして

身体の熱さに驚く

ったく・・・どんだけ無理してんねん

「ほれ、山田!しんどいかもしれへんけど、とりあえずベッド行くで」

「・・・うん」

私に支えられながら山田はふらふらと歩く

「とりあえず着替えな」

「うん・・・」

山田の顔は熱のせいで赤くほてっていた

ぼーっとしながらのそのそとコートを脱いだので

私はそれを受け取り

クローゼットを開ける

中はスーツやら冬物の上着やら・・・いろいろと入ってた

ハンガーを手に取り、コートをかけると

その中に無理やり押し込む

「ったく・・・どんだけ服入れてんね・・・っ!」

そう言いながら振り返った私は、固まった

山田はスーツを床にぺいっと脱ぎ捨て

下着姿になっていたのだ

そして、背中に手を回し

ブラのホックを外そうとしていた

「ちょっ!待てぇ!スーツはしまうけど。ブラは自分でしまえよ」

私は慌てて、またクローゼットの方を向く

「え?あ、うん・・・。ごめん・・・」

山田は熱でぼーっとしてるのか

あんまり気にしてないんか

私の慌てっぷりに動じていなかった

「できたら声かけてくれ」

私は目を閉じて

後ろを向き、着替えが終わるのを待った・・・