しばらくして、山田はなんとかパジャマに着替え

ベッドに横になった

私はスーツを拾い、ハンガーにかけて一息つく

さて・・・次はご飯かな・・・

「山田。ちょっと冷蔵庫見せてや」

「うん・・・」

私は冷蔵庫を開ける

中は調味料とか飲み物ばっかりで、食べ物が入っていなかった

「・・・おい、山田。ここんとこロクに食べてなかったやろ?」

「うーん・・・だって忙しかったんやもん」

山田はもそもそとベッドで寝がえりをうち、壁の方を向く

いかんいかん

今、病人に怒ってもしゃぁないわ

「ちょっとまっとれよ」

私は階段を素早く降り

自分の部屋に行き、冷蔵庫を開ける

中に入ってる野菜たちを確認し

そして、冷凍庫を開け

冷凍ご飯と冷凍うどんを見つめる

「おかゆか・・・うどんか・・・」

私は顎に手を当てて悩む

「うん、でも関西人はうどんやで」

熱出てる時って、くたくたに煮たうどんがなんかうまいねんなー

私は小さい頃、親がつくってくれたの思い出し

冷凍うどんと野菜をスーパーの袋に放り込み

また山田の部屋に向かった

「うん・・・ありがとう・・・大丈夫やから。うん・・・」

玄関の戸を開けると

山田の声が聞こえた

誰かと話してる?

佐藤か・・・?

私は玄関の戸をゆっくりと閉め

声が聞こえなくなってか山田の元に向かった

「あ、彩・・・ありがとう」

山田は布団に入ったまま私を見る

「ええて。何回も言わんで」

「・・・今な、佐藤君から電話あってん」

「・・・あぁ。そうなんや」

やっぱり佐藤やったんや

そう思いながら。私は白々しく言う

「今日会えませんかって言われたんやけど・・・私こんなんやん?せやから断ってん」

「そうか。まぁまた熱下がったら会ったらええやんな」

「うん・・・」

「うどんでええか?」

「うん・・・」

私はまな板や包丁、鍋を準備するために

流しの下を覗く

「私な・・・」

「んー?」

私は鍋のサイズを物色しながら応える

「佐藤君と・・・付き合おうと思う」

その言葉に

胸の奥がずんっと重くなった

「・・・そうか。佐藤ええやつやしなー。紹介した甲斐があるってもんや」

変化に気づかれないように私は料理に集中する

「・・・うん」

そこから、会話は続くことはなかった

私は自分の手ぇ切らんように野菜切るんに必死だったし

山田も熱で話すんしんどかったんやと思う

正直、もうこれ以上その話しをしたくなかったから助かった



その後、山田はもそもそとうどんを食べて

薬飲んで

またベッドに横になった

私は片づけをし

腰をおろして一息ついた

山田の部屋は

ベッド前に小さなテーブル

そこから見えるようにテレビが設置されている

あとは本棚と化粧道具に全身が映る鏡が置いてあった

で、床には雑誌とか資料の山・・・

「はぁ・・・部屋の上だけみたら女の子の部屋って感じやのに、下見たら幻滅すんで」

そう呟きながら

私は近くにあった雑誌を手に取る

ウエディングプランナーらしく

結婚情報雑誌が何冊も積まれていた

私は何気なく

折り目がついているところを開く

そこにはウエディングケーキの写真が載っていた

私は別のところもを開く

また、ケーキが載っていた

「・・・」

私は別の雑誌も開く

やっぱり、ケーキ・・・

しかも1段じゃなくて、高さがあるやつが載ってるところばっかりやった

でも・・・今日、私が運んだやつは1段やったで?

『彩は・・・ケーキのデザインとか決まった?』

「あ・・・」

私はコンクール前の山田の言葉を思い出し

ベッドに寝ている山田に目をやる

もしかして・・・

デザイン考えてくれてた?

胸の奥がじんと熱くなった

なんやねん

こんなに何冊もチェックして

雑誌、折り目だらけやんか・・・

私は山田にそっと近づいた

山田の顔は熱のせいで紅潮してて

ふぅふぅと少し荒い息の音が聞こえた

こんなになるまで無茶して・・・

自分の仕事以外にも

私のコンクールのデザインまで考えて・・・

「あほっ・・・」

でも・・・

ありがとう

私は込み上げて来る涙を手でぬぐった