カチ、カチ、カチ・・・

「ん・・・」

私はうっすらと目を開ける

気付けば

山田のベッドに突っ伏して寝ていた

私は身体を起こし、部屋にある時計をぼんやりと見る

時計は5時を過ぎたところだった

「・・・げ・・・こんな時間まで寝てたんか」

私は座ったままぐっと伸びをした

変な体勢で寝てしまったから、身体のあちこちが痛む

山田を見ると

私の方に向いて寝ていた

薬が効いているのか

顔の赤みも引き、穏やかな寝息になっていた

私はそっと山田の額に手を当てる

昨日のような熱さもなくなっていた

「・・・よかった」

「ん・・・」

山田の身体が少し動く

私はとっさに触れていた手を離し

起きるなと念を送る

「・・・すー・・・」

念が通じたのかどうかはわからんけど、山田はまた寝息を立てていた

「はぁー・・・」

私は安堵のため息をもらし、山田の顔を見る

なんやねん今の声、ちょっと色っぽかったやんか

先ほどの山田の声を思い出し、口をへの字に曲げる

「あんなん佐藤が聞いてたら・・・」

そういいかけて

ハッとした

あぁ・・・そうか

これから佐藤はあんな声聞くんや

付き合うんやもんな・・・

私が知らん山田を・・・

佐藤は見るんや


私は、そっと山田の髪に触れ

すくい上げる

髪は重力によって指の隙間からするりと流れ

はらりと落ちた


「・・・」


ギシッ・・・



私は身体を前のめりにし

気づいたら


山田にキスをしていた


「・・・っ!」

私は自分のしたことに驚いて

勢いよく山田から離れた

ガタン!

「・・・って!」

その勢いが強すぎて

後ろにあったテーブルに思いっきり背中を強打してしまった

「・・・つー・・・」

痛みに耐えていると

「ん・・・」

さすがに音が大きかったのか

山田が起きてしまった

「彩・・・?」

「あ、お、おはよう」

「え?あ・・・もう朝?」

山田はもそもそと起き上がろうとする

「いや、まだ早いし寝とけや。私は仕事いかなあかんから帰るな」

「うん・・・ごめんな。ありがとう」

「ええて。あ、コンビニでなんか買ってくるわ」

「え?あ、うん。ありがとう」

困惑する山田を背に、私はバタバタと山田の部屋を出てコンビニに向かった

外はまだ暗くて

外灯も光っていた

新聞配達のバイクの音、気の早い鳥の声

そして肌を刺す寒さ

でも

私は鼓動の音がうるさくて

外の音なんか気にならなかった

鼓動にあわせてどんどん体温が上昇していって

寒さも気にならなかった

「くそっ!」

私はこの鼓動の音をどうやって止められるのかわからなくて

ならばいっそと思い

勢いよく走ってみた

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

けど、そんな状態で走って

エネルギーが持つわけもなく

私は足が重くなって立ち止まる

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

私は電柱に腕をつき

息を整える

吐く息が白く浮かび上がっては、幾度となく消えていった

「・・・」

私はそっと唇に触れた

山田の柔らかい唇の感触が思い出される

あぁ・・・そうか・・・

私が好きなのは

佐藤やなくて

山田やったんや・・・

「・・・っ。くっ・・・」

自分の気持ちを認めたら

急に視界が滲んできた

「・・・っ」

止めどなく溢れる涙は

私の足元にぽたぽたと落ちる

なんやねん・・・

なんやねん・・・これ・・・

全然、止まらへんやんけ・・・