でも、それから

山田はローズに姿を見せなくなった

というかホテル内で会うこともほとんどなかった

でも私は

仕事忙しいんやろなー。また時間合う時にシュークリーム食べてもろたらええかなー。とか

気軽な感じで思ってた


―――

「・・・」

私は部屋で机に向かい

眉をひそめていた

机の上にはスケッチブック・・・

今回のケーキのデザインをどうするか

頭を抱えていた

スイーツは見た目も重要視されるから

どんなデザインにするかでパティシエのセンスがわかる

「はぁー・・・私、センスないわー」

そう呟きながら

私は書いては消して、ゴミ箱に投げて、ため息ついて寝そべって・・・

と、いうことを何度も繰り返していた

そして、あっという間に夜が来ていた

ブーッ・・・ブーッ・・・

携帯電話が鳴る

相手は佐藤・・・

またのろけ話やったら、速攻気ったんねん

そう思いながら、電話に出る

『もしもし、山本!?』

「お、おう・・・」

佐藤はやたら興奮気味やった

『俺、パリに行くんや』

「はぁ!?」

いきなりの発言に私は叫ぶ

『ははっ!今年の9月になー。今、小杉さんがパリで修業してる店の人が去年のコンクールの審査員でなー。俺も向こうで修業してみないかって言われてん』

「えー!すごいやん」

パティシエにとってパリは憧れだ

私だってもう少し貯金に余裕ができたら、パリでいろんな店回って

食べ比べとかしてみたい

『でな・・・』

「うん」

『俺、菜々と結婚する』

「え・・・」

佐藤の口から出た言葉に

私は言葉を失った

『もしもし?山本?なんやねん。今度は驚いて声でぇへんのか?』

「あ、あぁ・・・あーびっくりした。ホンマかそれ?」

私は動揺を悟られないように話すけど

胸の奥が痛くて

バクバクしてて

鼻の奥は何かが込み上げて来るようなツンとした感覚に襲われていた

正直、携帯を持つ手だって力が入らない

『パリに行ったら最低2、3年は帰ってこんし。その間、菜々を一人待たせるわけにもいかへんやろ?せやから、この前プロポーズしてん』

「・・・そうなんや。でも、いきなりすぎへんか?」

『まぁさすがに待ってくれって言われたけどな。でも、OKくれてん!この前はお互いの両親と食事もしたしなー』

「へー・・・」

それで、最近山田の姿が見えんかったんか・・・

『ホンマ、山本には感謝せなあかんわ。ありがとう』

「いや、私は連絡先教えただけやし」

『でな、6月に結婚式すんねんけど・・・出れるか?』

「え?今4月やで。もう2カ月しかないやん」

『うーん。まぁいきなりやからなぁ。菜々は6月に結婚式するん夢やったみたいやし。しかも、奇跡的に1枠あいてたんや!あ、場所は菜々の職場やから、山本も休みとってやー』

「大阪やないんや・・・」

『うーん。まぁ悩んだんやけど、菜々の希望でな』

「そうなんや。で、日にちは?」

『6月26日の日曜 午前の部』

「え・・・」

私は言葉に詰まる

『もしもし?』

「すまん。佐藤・・・その日、コンクールやねん」

『えーーー!!』

今度は佐藤の方が驚いて叫んでいた