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ホテルの一室はガヤガヤとにぎわっていた

「素敵な式でしたねー」

「ほんまー。私も恵美さんの手紙でうるっと来ちゃいました」

「えーほんとですか?」

花嫁を囲んで、私たちプランナーは話しをする

「山田さん」

「はい」

花嫁の恵美さんが私の名前を呼んだ

「本当にいろいろしていただいて、ありがとうございました」

そういって頭を下げる

「いえ、こちらこそ!素敵な式を見させていただいて、ありがとうございました」

私も深々と頭を下げる

「今度は山田さんの番ねー」

先輩プランナーの川崎さんがにやっと笑う

「えー結婚されるんですか?おめでとうございます!」

恵美さんはにこにこと笑う

「ありがとうございます」

私はそれに応えてにこっと笑った


「はぁー・・・」

午前の部を終え

つかの間の休息をとる

「どないしょぅ・・・」

私は打ち合わせで使用することが多いソファーにもたれ、俯く

・・・結局、私の口から彩にちゃんと言えてないままや

私の彼氏である 佐藤創太からプロポーズを受けたのは

今から1か月前の3月・・・

現在、4月半ばになるのに

彩に結婚すると報告してないままやった

創太の口からもう言われてるやろうけど・・・

でも・・・自分の口で言わなあかんよな・・・


創太と付き合いだしてから

彩と一緒に居る時間は目に見えて減っていった

仕事で忙しかったっていうんもあるんやけど

創太の誘いをむげに断ることもできなかった・・・

彩も相変わらず夜遅くまで残ってたから

すれ違いの日々が続いてた

もちろん、顔を合わせれば話しはしてたんやけど・・・

なんとなくお互いぎこちなくなってた気がする



「ん・・・」

私はふと

大きな窓ガラスから見える庭に目をやった

そこには

教育係の井出さんと

新しくウエディングプランナーとして入ってきた2名の新入社員の女の子が

必死にメモをとっている姿があった


あんな時もあったなぁ・・・

そういえば

ホテルの合同新人研修で

初めて彩と会ったんよな

50音順やったから隣になって・・・

確かちゃんと話したんはグループワークの時やったなぁ・・・



「山田さん」

「は、はい」

いきなり後ろから声をかけられて

私はドキッとする

「もー・・・午後の部終わったからって気を抜かない」

「はいっ」

川崎さんは私の前のソファーに座る

「じゃあ、打ち合わせしましょうか」

「は、はい」

「山田さんの結婚式の事をね」

「あ・・・はい」

私はこくんと頷いた

結婚式まであと2カ月・・・

普通はじっくり時間をかけて引き出物とかえらんだり

ドレス選んだりするんやけど

なにせ私らは時間が足りないから

毎日こうして打ち合わせをしてる

川崎さんは私の指導係で

喜んでメインプランナーになってくれた

1年目にケーキを倒した時に

手早く対処してくれたのも川崎さん・・・

あの時はホンマに怖かったけど

今はいい先輩や・・・

後から聞いた話

実はパティシエの木野チーフは川崎さんのこと好きやったみたいで

彼女の頼みとならばと

木野チーフが素早く対応したらしい

そのおかげなのか2人は今付き合ってる

木野さん強面やのに、実は優しいねんなー

まぁ私は40代の人の魅力ってのはあんまりよくわからへんけど・・・


「あ、ウエディングケーキって彼氏が作るの?」

「へ?」

「いやいや、だってパティシエでしょ?もし希望があるんだったら木野さんに連絡して厨房貸してもらうようにするけど・・・」

「あ・・・そうですね。じゃあ聞いてみます」

私はソファーから立ち上がり

川崎さんから少し離れたとこで創太に電話をかける

でも繋がらなかった

私は携帯を耳から離すと

『ウエディングケーキって創太が作る?』と手早くメールを送った

「ごめんなさい。繋がらなくて」

そう言いながら川崎さんの元に戻る

「そう、じゃあこれは保留ね。決まり次第教えて」

「はい」

「あと、曲なんだけど―」


川崎さんは話し続ける

私はそれをぼんやりと聞いていた

他の人の結婚式は力入るのに

なんでこんなに力入れへんのやろう・・・