「うわー雨すごいなぁ・・・」

横山はのれんを手に店の外に出て

雨の勢いに驚く

「こんな雨やったらお客さんけぇへんで・・・」

横山はそう呟きながらのれんをかける

ふと、視界の端に人影が映り

反射的に見る

そこには傘もささずにとぼとぼと歩いている人がいた

「え・・・?」

横山は目を見開く

「みるきー!」

横山は思わず走り出した

「あ・・・」

渡辺は横山の声を聞いて力なく顔を上げる

「どないしてん!傘もささんと!」

横山は渡辺の身体をゆする

「それに、彩は?送ってくれてたんやなかったん?」

「・・・」

彩という名前を聞いて

渡辺の身体がぴくっと反応する

「・・・うっ・・・うっ」

渡辺の目からは堰を切ったように涙があふれ出す

「み、みるきー?」

「うわぁぁぁぁん!」

動揺する横山に渡辺はしがみつき

声をあげて泣いた

勢いよく降る雨の音に混じり

渡辺の声が悲しく響いていた


―――――

山本は苛々しながら車を走らせ

自宅に着く

そして後部座席からギターを出し

勢いよくドアを閉め

店の中に入る

「おかえりーって、あんたなんでそんなに濡れてんの?」

レジカウンターで母親がぽかーんとする

山本は何も言わず一直線で店の後ろにある居間に向かう

「え?ちょっと・・・」

母親が話しかけようとするが素通りし

1階の奥にある脱衣所でタオルを何枚かつかむと

どたどたと階段を上って行った

「どないしたん・・・?」

階段を駆け上がる音を聞きながら、母親は首をかしげていた


バタン!

勢いよく部屋のドアを閉め

山本はギターケースを開ける

「あーもう!めっちゃ濡れてるやんけ!」

苛立って叫びながら

タオルでギターを拭く

前面から水たまりにダイブしたギターは

コーティングしている板の隙間をぬって水がしみ込んでおり

指で弦を押さえるネックの部分もところどころに水がしみ込んでいた

「くそっ!」

山本はタオルをギターに押しつけ、水を吸うが

完全には取りきれるはずもなく

押しつけても押しつけてもタオルには新たな水がしみこむ

「あーもう!」

山本は苛立ち任せに力いっぱいタオルを押しつけていた


ブーーン・・・


数十分後、山本の部屋では扇風機の音が響き渡っていた

壁にはギター、ギターケースが立てかけられ

ギターストラップはハンガーにひっかけ、窓枠に干されていた

バタン・・・

シャワーを手早く浴びた山本は部屋の戸を閉める

「はぁー・・・」

立てかけられたギターを見つめ、ため息をついた

「もう・・・弾けんよなぁ」

そう呟き、ギターを触る

ネック部分はまだしっとりとしていた

「・・・」

山本はギターを買った時の事を思い出す

長続きしないだろうと渋っていた親を

何度も何度も説得して、買ってもらった

初めてのギターだった

長年の相棒のボディ部分には、ぶつけた後や木の表面がはがれているところがある

皮肉にも、そこから水がしみ込んでいた

「・・・美優紀のあほ」

山本はぽつりと呟き

目から滲む熱いものを拭うと

勢いよくベッドにダイブした