渡辺が店を休むようになって6日が過ぎた

「あんた、いつまで美優紀ちゃんに休みあげてんの?」

「・・・」

夜、居間で母親がじろっと山本を睨む

山本は黙ったままテレビを見る

「わかってんの?金曜にはお母さんら旅行にいくねんで」

「・・・」

山本はテレビのボリュームを上げる

「彩!」

母親は山本からテレビのリモコンを奪い取り、電源を切る

「このままやったら一人で店せなあかんようになんねんで?わかってんの?」

「わーってるわ!美優紀がおらんだってな!一人で回せるわ」

「はぁ?じゃあ配達してる間、店番は誰がするん!?」

「そんなんどうにでもなるわ!」

山本は立ち上がり2階の自分の部屋に上がって行った



「おい、風呂場まで声聞こえてるで」

父親が髪を拭きながら居間に現れる

「彩が悪いんやで。ずーっと喧嘩したままやし。それに・・・渡辺さんのお母さんに今日おうたんやけど・・・」

「ん?」

「美優紀ちゃん、東京に行ってるって・・・」

「え?そうなんか?」

「いきなり行くってゆうたみたいで・・・彩、何も言えへんからわかれへんわ」

母親は眉をひそめる

「はーなにがどうなってんだか」

父親はテレビのリモコンを手にとり電源を入れる

『あははは!!』

「わっ!うるさっ!」

いつもよりも大きなボリュームに驚いて

父親はのけぞった

「あのー・・・」

「「わっ!」」

店の方から声がして山本の両親は声を上げる

そこには横山が申し訳なさそうな顔をして立っていた

「すいません・・・戸、何度か叩いたんですけど返事なくて・・・鍵が開いていたので」

そういってぺこぺこと頭を下げる

「母さん、不用心やなー」

「あらーごめん。彩なら2階やから上がってって」

「いえ、今日は彩に用事があってきたわけやないんです」

「「へ?」」

その発言に両親は首をかしげた



――――

山本はベッドに寝そべり、天井を見つめていた

「いつまで休むんか、私が聞きたいわ・・・」

そう呟き横に置いてある携帯を触る

連絡は・・・ない

「・・・」

山本はガバッと起き上がり

渡辺に電話をかける

プルルルル・・・

呼び出し音が鳴り続ける

出たとしても何を話していいのかもわからないのだが

呼び出し音の回数とともに

山本の心拍数も上がって行く

ガチャ

「あ、みゆ・・・」

『おかけになった電話番号は・・・』

「・・・」

お決まりのアナウンスに対して話しかけようとして

山本は恥ずかしそうに電源を切った

「・・・なんやんねん。いつまで怒ってんねん」

そう呟き

壁に立てかけたままのギターを見る

あの後、試しに弾いてみたのだが

湿気と微妙なネックの反りで

前と音色が変わってしまってしまっていた

「・・・怒ってんのはこっちやで」

そういってまたベッドに寝そべる

「彩ー」

「わっ!なんやねん」

母親が唐突に部屋に入ってきた

「あんた、明日と明後日休みあげるわ」

「へ?」

先ほどまで言い合っていたとは思えない台詞に

山本は拍子ぬける

「私らが旅行してる間に過労で倒れられても困るからな」

「え?で、でも・・・」

「そう言うことやから、今日はゆっくり寝な」

そういって母親は戸を閉めて出て行ってしまった

「はぁ・・・?」

山本は首をかしげながら

しばらく固まっていた