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次の日

「あかん!」

山本は飛び起き

「あ・・・今日休みくれたんやった」

そう呟いて、ベッドにまた横になる

習慣というものは恐ろしく

市場に行く時間に起きるようになっていた

「・・・」

携帯画面には着信はなかった

「まぁええわ。二度寝や」

そう呟いてまた目を閉じた


「ふわー・・・寝過ぎて逆にだるいわ」

次に山本が起きたのは10時を回っていた

「何しよう・・・」

ぽつりと呟く

気づけばこの1年ずーっと店のことばっかりしていて

まるまる空いた2日に戸惑っていた

「あんな親でも偉大やな・・・」

自営業の忙しさを感じながら

のそのそと着替え始めた

「おはよー」

下では母親がいつものように店番をしていた

「おはよー。車かバイク借りてええ?」

「昼からなら車使えるで」

「あーそう。ほな借りるわ」

そういって、また居間に引っ込む

テレビを見ながら朝食か昼食かわからない食事を取り

昼、配達から帰ってきた父の車を借りて

山本は隣町に向かった

夏休みということもあり

街には学生たちが多くいた

「今日は水曜やから・・・菜々さんとこは休みか・・・」

いつも土曜の夜に演奏代として食事をごちそうになっているので

今日は自分で払おうかと思っていたのだが、定休日なので諦めた

山本はにぎわっているアーケードの中の洋服屋に入る

店の中は学生たちがきゃっきゃと話しをしながら服を選んでいた

山本は服を手に取り

「・・・」

睨む・・・

「試着もできますので」

「は、はい・・・」

店員の声に愛想笑いをする

「・・・」

山本は服を手にとっては広げ、睨み、戻す、ということを繰り返し

結局何も買わずに店を出た

「・・・」

山本は商店街を一人歩く

『彩ちゃんはセンス悪いねん。こっちの方が似合ってんで』

『なー彩ちゃん、これかわええなー』

どの店を見ても

渡辺との会話が蘇ってくる

学生の頃、よくここに買い物に来ていた

そして、付き合いだしてからも・・・

たまの休みの日にはデートと称してここに遊びに来ていた

「・・・」

渡辺の居ない左側が、やたらと寂しく感じた

山本は携帯を見る

連絡は、ない

携帯をまたポケットにしまい

来た道を戻って行った


―――

「おかえりー早かったなー」

「あぁ・・・」

山本はそっけない返事をしながら車のカギをレジカウンターに置き

家の方に入って行った

「はーもう、ホンマにわかれへんわ。どないなってんの?」

母親はため息まじりにそう呟いた


夜になり

プルルル・・・

山本の携帯電話が鳴った

「はい!」

山本は勢いよく電話にでる

『あ、彩ー?』

「なんや・・・里歩か」

『なんやとはなんや』

電話の相手は小谷里歩

山本と同級生で現在は役場職員をしている

『今日、ゆいはんとこに飲みに行けへん?』

「え・・・?」

『ええやん行こうやー。彩、最近ゆいはんとこに顔ださへんからこうして誘ってんねんで』

「あ、あぁ・・・ほな、行くわ」

『よっしゃ!じゃあ店でなー』

「へーい」

山本は携帯を耳から離す

「・・・まぁ、里歩もおったら場も和むか」

そう呟き山本は横山の店を目指して歩き出した

歩いている途中

Y字路で煌々と照らされている渡辺の看板を見つめる

看板の渡辺は笑顔だったが

山本が最後に見たのは雨に濡れ、涙を流している顔だった

「・・・ええ加減、機嫌直せや。もう、怒ってないわ」

そう素直に本人に言えないので

看板に呟いてみた