「ぐすん・・・ぐすん・・・」

砂浜で少女が泣きじゃくっていた

「クゥーン・・・」

その隣では白いラブラドールレトリバーが心配そうに少女を見つめていた

体格はいいがまだ子犬のようだった

「おい!探したんやぞ!」

関西弁でショートカットの少女が叫ぶ

「あ・・・」

泣いていた少女は顔を上げる

「聞いたで」

「・・・うん。でも私、嫌や・・・・行きたくない。ロージーと離れるん嫌や」

そういってラブラドールレトリバーを抱きしめた

「・・・私が飼う。」

「え・・・?」

「私がロージー預かっとくってゆうてんねん」

「でも・・・ほんとに飼えるの?お父さん犬嫌いやなかった?」

「そんなんどうにでもなるわ!!」

ショートヘアーの少女が叫ぶ

「言っとくけど預かっとくだけやからな。せやから・・・」

ショートヘアーの少女はうつむく

「・・・なに?」

「絶対!絶対戻ってこいよ!!」

ショートヘアーの少女はぐっと拳を握りめ顔を上げる

目には泣かないようにと必死に耐えた涙が溜まっていた

「・・・うん。絶対戻ってくる。その間・・・ロージーのことおねがいな」

「当たり前や!」

そういって少女たちは笑った


――――――

ピピピ・・・・

バンッ!

「んー・・・あーあづー・・・」


夏のある日

時計のアラームを止め

一人の女性がベッドの上で寝がえりを打つ

着ているタンクトップと綿のショートパンツは汗で滲んでいた

「彩ー!」

1階から母の声が聞こえる

「んー・・・」

「もう誠二さんくるでー」

「え・・・やばっ!」

その声で女性はガバッと勢いよく起き上がると

急いで身支度をして

階段を駆け下りた

この女性は

山本彩 

高校2年生で現在夏休み中である

「あ、誠二さんおはようございますー」

山本の母は家の前に止まった4WDの車の運転手と話をしていた

「セーフ!誠二さんお待たせ!」

「彩ちゃん。寝起きやな。アウトやで」

そういって車に乗っている男性が笑う

この男性は

浦辺 誠二

海の家を経営している60代の男性だ

白髪混じりの髭と日焼けした肌がいかにも海の男という感じである

「もーええねん。どうせ濡れて直るわ」

山本は照れくさそうに髪を手で押さえながら車に荷物を乗せる

山本の髪は横が跳ねており

寝起きということが容易に想像できたのだ

「ワン!ワン!」

野太い声が庭から響く

「おっ!はようせぇって怒ってるわ」

山本はそういって笑い

「いくで、ロージー」

そういって山本はつないであったリードを外し

白いラブラドールレトリバーのロージーは勢いよく車に乗り込んだ

「いつもすいません。お願いします」

山本の母は頭を下げる

「いやいや、ええんです。彩ちゃんにはいろいろ手伝ってもろてるし」

そういって誠二は笑う

「ほないってきまーす」

「ワン!」

後部座席から山本とロージーが窓から顔を出す

「彩!言っとくけど帰ったらちゃんと勉強するんやで」

「わかってるわ!」

山本は口をとがらせ窓を閉め

車は走り出したのだった


――――

「早いなぁもう彩ちゃんも高2かぁ。来年はいよいよ受験やなぁ」

誠二はバックミラーにう映る山本の姿を見て感慨深そうに言う

「そうですねー出会ったときは小学生でしたしねー」

「ははっそうそう。ロージーの散歩でよく引きずられてたよなぁ」

「う・・・今はもうなついてるからいけます」

山本は口をとがらせながら言う

「でも、もうあれから5年くらいたつのかぁ・・・美優紀ちゃん元気にしてるんかなぁ」

「・・・そうですね」

山本はその名前を聞いて

俯いた

「ハッハッ」

元気のない山本をみてロージーが頬をなめる

「わっ!」

山本は思わず笑い

ロージーの頭をなで

「ごめんな。お前もずっと待ってるもんなぁ」

そう呟いたのだった