7月―――


クーラーの聞いた講義室で


「今日の講義は先生の急用で中止になりましたー。なお振り替えの日程は―」


講師の代わりに助手が教壇で声をかけていた


その合図で生徒たちがわらわらと教室から出て行った


「・・・まるまる時間あいてもうたな」


「あぁ・・・せやな」


そう話しをしているのは


横山と山本だった


山本は頬杖をつき、ぼーっと教壇の方を見たまま動かなかった


「・・・なんや、元気ないなぁ」


そんな様子を見て横山は眉をひそめる


「別に・・・」


「はぁー・・・彩、ちょっと話ししよか」


そう言うと横山は荷物をまとめ


山本の腕をつかみ大学内のカフェに向かった


――――――


「ほら」


そういって横山はアイスコーヒーを差し出す


「・・・あぁすまん」


そういって山本はストローをさす


「で、どないしたんや?」


「・・・」


山本は何も言わずコーヒーを飲む


「・・・みるきーか?」


「ぶほっ!!」


山本は横山の発言に驚き、むせる


「あぁ、やっぱりそうか。ま、彩が元気ないんはみるきーの事だろうとは思てたけど」


そういって横山は笑った


「・・・で、どないしたんや?」


「・・・みるきーが男とおってん」


山本はムスッと口をとがらせる


「あー・・・みるきーかなり人気やもんなぁ」


そういって横山もコーヒーを飲む



あれから


山本たちは京都の私立大学に入学し


剣道を続けていた


入学してからというもの


渡辺は男子から人気があり


話しかけられているのを横山も何度も見かけていた


目の前に居る山本彩と付き合っているということは内緒になっており


その事実を知っているのは


横山、小谷、上西の3人だけだった


渡辺もうまく男たちの誘いを断っているのだが


先輩たちを無下にあしらうこともできず


仕方なく相手をしているということもあった


その姿を見て


山本が嫉妬しているのも知っていたのだ



「そんなん付き合いでやろ?」


横山が言う


「・・・そうやとおもたんやけど」


山本はうつむく


「どないしてん?」


「いつも一緒の男とおんねん」


「え・・・」


その発言に横山は驚く


「・・・今の時間の講義が終わったらあそこからいつも一緒にでてくんねん」


そういって山本はカフェの窓から見える第一棟の入り口を指差す


「そうか、それでさっき上の空やったんやな」


「別に・・・」


山本はそっぽを向く


「聞いたらええやん。誰なんやって」


「・・・そんなん今さら聞けんわ」


「でた、変に頑固なんは変わってないなぁ」


そういって横山は笑う


「な・・・うっさいわ!」


山本はムキになり叫ぶ


その声でカフェに居た生徒たちが振り向く


「あ・・・すいません」


山本は顔を赤らめながらぺこぺこと頭を下げた


「だから、それが変わってないっていってんねん」


そう言って横山は笑った


「う・・・」


山本は言い返せず口をとがらせた



「家では普通なんやろ?」


「うーん・・・でも前よりべたべたするんはなくなったかも・・・」


「たとえば?」


「風呂入ろうって言わんようになった」


「ぶっ!」


その発言に思わず横山はコーヒーを吹き出しそうになった


「あ、言っとくけど元々一緒に入ってないで。美優紀風呂入ったら1時間は出てこんから、私は先はいってんねん」


「あーお風呂好きやゆうてたもんなぁ」


横山は息を整えながら言う


「何回も入ろうってゆうてきてたんやけど、断ってたら最近は言わんようになったわ。まぁもう入らんって諦めたんやろ」


「ふーん・・・そんなもんなん?」


2人はその後もたわいもない話をする




「あ、出てきたで」


そういって山本は指差す


横山も一緒にその方向を見る


そこには長身の細身の男性と渡辺がにこにこしながら話をしていた


「へー・・・」


横山はそんな様子を見ながら


横目でむすっとしながらアイスコーヒーを飲む山本の姿を見ていた


「彩、うかうかしてたらホンマに取られてまうかもな」


「な、なにゆうてんねん!」


「だってみるきーまんざらでもなさそうやん」


「・・・・」


その発言に山本の表情が曇る


「ま、他の男よせつけんようにガードしとかなあかんで」


「ど・・・どないせぇっちゅうねん」


「それは自分で考え。しっかりしーや」


そういうと横山は笑って荷物をもち


「ほな私は次の講義、別館やから行くわ」


「お、おう・・・コーヒーごちそうさん」


2人は軽く手を挙げ


横山はアイスコーヒーのカップを持ったままカフェを後にした


山本は残っていたコーヒーを飲みほし


「・・・ホンマどないせぇっちゅうねん・・・」


そう呟き


むしゃくしゃした気持ちをぶつけるように


空の容器をゴミ箱に投げ捨て


次の講義に向かったのだった