「ちょっと!彩ちゃん!」

渡辺は山本に腕を掴まれたまま

履きなれない草履で転ばないように必死に歩く

「・・・」

山本は黙ってずんずん歩き

土手から屋台がある通りに入り

人ごみをかき分けながら

さらに歩き続ける

「ちょっ・・・・彩ちゃん!どないしたん?」

「・・・」

山本は何も言わない

そして

ある場所で立ち止まる

「え・・・?」

渡辺はきょとんとする

そこは先ほど見ていたシルバーアクセサリーの店だった

「あっいらっしゃい。またきてくれたん?」

先ほどの女性店主がにこにこと笑う

「・・・どれや」

「え?」

「さっき気にいってたやつ.。どれやゆうてんねん」

山本は恥ずかしそうに渡辺の方を見る

「彩ちゃん・・・」

渡辺はうれしくなり胸がキュンとする

「はよ言え。花火始まるから」

山本の顔はすでに真っ赤になっていた

「・・・これ」

そういってハート型の指輪をさす

「・・・」

山本は少し考えた後

「ハートは私がつけにくいからこれでもええか?」

そう言ってシンプルな指輪を指差した

「え・・・それって」

「・・・あーもう魔除けや魔除け!変なん寄ってきても困るからな」

山本はぶっきらぼうにそういうと

自分の左手薬指に指輪をはめサイズの確認をしだした

「彩ちゃん・・・だーいすき!」

渡辺はうれしくなって山本に抱きつく

「おっなんや仲ええなー2人」

店主は笑う

「ちょっ!こんなところで止めや!はよどれが合うか決めーや」

「はーい」

ますます顔が赤くなる山本を見て

渡辺はにこにこと笑っていた



2人は自分にあうサイズを選び

指輪を購入した

「じゃあ私からサービスしたげるわ。名前は?」

店主がにこっと笑う

「あ、彩です」

「美優紀ですー」

「ん、わかったー」

そういうと店主が器用に指輪の内側に細工をし始め

「はい、これでどうや?」

そういってウインクをした

内側には互いの名前とハートマークが描かれていた

「わーハートや♪ありがとうございまーす」

渡辺は嬉しそうに指輪の内側を見る

「あ、ありがとうございます」

山本も頬を赤らめながら一礼する



ドーーーーーーーーン


その時空に一発の花火が打ちあがる

「あっ始まったで、お二人さん。はよええ場所見つけてゆっくり見いや」

そういって店主は手を振る

「はーい。行こう彩ちゃん」

「お、おう・・・」

2人も店主に手を振り

その場を後にした



ドーーーーン

ドーーーーン


「わーきれいやなぁー」

渡辺は打ち上げ花火を見ながら歩く

「そんなに上見てたらころぶで」

山本はそんな渡辺の手を引きながら歩く

「あれ?彩ちゃん。みんなのところいかへんの?」

渡辺が首をかしげる

山本は部員たちが集まっている方とは反対方向の方に歩いていた


「あほ。あんなやつのおるとこやいけるかい」

山本はむすっとする

「あ、もしかしてけいちゃんのこと?」

「・・・」

山本はピタッと足を止め

渡辺の方を向く

「彩ちゃん?」

山本は先ほど買った指輪を取りだすと

スッと渡辺の左手薬指に指輪をはめる

「あ・・・」

渡辺はドキッとする

「ふらふらせんと、ちゃんと私だけのもんになっとけ」


ドーーーーーーン

その時

ひときわ大きな花火が打ちあがり

人々は空を見上げる

その隙に

山本は渡辺にそっとキスをしたのだった