そして

山本たちはそれぞれのマンションに帰る


「あーなんかいろいろあって疲れたわ」

山本はどかっとソファーに座り

クーラーをつける

「なー彩ちゃん」

寝室で渡辺が声をかける

「なんや?」

山本は部屋をのぞく

「帯、外してくれへん?」

そう言って渡辺は山本に背を向ける

「あぁ・・・」

山本は後ろの帯をほどくために渡辺に近づく

アップにされた髪で

普段は見えないうなじがあらわになっていた

(な・・・なんや・・・えらい色っぽいやんか・・・)

山本はドキドキする

祭りのときは佐藤の事で頭がいっぱいで浴衣姿をゆっくり眺める余裕もなかったのだ

「彩ちゃん?」

なかなか帯がほどかれないので渡辺は後ろを振り返る

「す、すまん・・・今ほどくわ」

山本は顔を赤らめながら帯に手を伸ばす

「あーもう顔真っ赤やん」

そういって渡辺がからかう

「べ、別にそんなことないわ」

「えーじゃあこの浴衣は彩ちゃんにとって不評やったん?」

「はぁ?」

「だって彩ちゃんかわいいとかなんもゆうてくれへんし・・・」

渡辺はうつむく

「あ・・・」

「せっかくの花火大会やから浴衣選んだのに・・・」

「美優紀・・・」

山本は帯から手を離すと

すっと後ろから渡辺を抱き寄せた

「彩ちゃん・・・」

渡辺は不意打ちで顔が赤くなる

「似おうてるで・・・」

山本も真っ赤になりながら言う

「ふふっ・・・」

渡辺は山本の左手に自分の左手を上から重ね

「指輪ありがとう」

そういってきゅっと手を握った

「美優紀・・・」

「でもな・・・」

「ん?」

「指輪以外にも・・・彩ちゃんのもんやっていう印ほしいな・・・」

「え・・・?」

いきなりの発現に山本はドキッとする

渡辺は後ろを振り返り

山本を見つめる

その濡れた瞳は

山本をより一層ドキドキさせた

「美優紀・・・ええんか?」

「うん。当たり前やん。彩ちゃんでなきゃいやや・・・」

「・・・っ!」

そのセリフで山本の理性は一気に吹き飛び

帯をするすると解き

ベッドに押し倒したのだった




―――――――

翌日

横山の予想通り

渡辺が指輪をしているということは

大学内で一気に広まり

本当に勝手に失恋している人が出ているようであった


「な、ゆうた通りやろ?」

横山はニッと山本をみる

「うーん・・・せやなぁ。認めたくないけど」

講義が終わり横山と山本は剣道場に向かっていた

「彩は指輪せんの?」

「あー私までしてたらややこしいからせぇへんねん」

山本は苦笑いをする

今日一日で渡辺の相手は誰なのだと質問攻めにあい

げっそりしていたのだ

そこに

「彩ちゃーん。ゆいはーん。」

後ろから渡辺の声が聞こえる

振り向くとそこには

渡辺、小谷、上西が手をふりこちらに向かってきていた

「みんなで部活行こう」

渡辺はいつもより上機嫌でにこにことしていた

「もー今日みるきーの相手誰やっていっぱい聞かれて疲れたわ」

「私もーなんやごまかすんしどろもどろになってもうたわ」

上西と小谷はため息をつく

「なんや。みんなもおんなじかいな」

そういって横山は笑った

「ごめんなーみんな」

そういって渡辺は手を合わせる

左手薬指には昨日あげた指輪が光っていて

山本は少し照れくさくなった


「・・・」

横山はしばらく渡辺を見つめた後

「彩、ひとつゆうとくわ」

「なんや?」

山本は首をかしげる

「・・・キスマーク付ける場所考えなあかんで」

そう耳打ちをした

「なっ!」

山本は驚き

バッと渡辺の方を見る

渡辺の服の隙間からちらりと赤いあざが見えていた

「わー!」

山本はとっさに渡辺の服を引っ張り隠そうとしたが

その動きで

小谷と上西が渡辺の服の胸元に注目する

「なっ・・・」

小谷の顔はみるみるうちに真っ赤になる

「あーあ。ハレンチなやっちゃなぁ」

上西はニヤッと笑う

「ち・・・ちがうねん。これはそのー」

山本は顔を赤らめながらしどろもどろになる

「・・・えへへー」

渡辺は照れくさそうに山本の腕に抱きつく

「こら、まんざらでもない顔せんでええねん」

山本は渡辺につっこむ

「えーだってーホンマのことやんなぁ」

渡辺はにこにこと笑う

「はいはい。お熱いこって」

上西はため息をつく

「な・・・なんか実際見るとこっちが照れるなぁ」

小谷は手で顔を仰ぎながら歩く

「里歩には刺激が強すぎたか?」

横山は笑う

「もーその話はええねん!」

山本は顔を赤らめながら叫ぶ

その隣で渡辺は腕に抱きついたままクスッと笑っていた




FIN