季節は12月


もう日付も変わろうかというころ


仕事帰りのロケバスの中で


SKEのメンバーはすやすやと寝息を立てていた


しかし


古川だけはそわそわと携帯を何度も見て


時間を気にしていた


その様子を


高柳は隣で薄眼を開けて見ていた


日付が変わり


古川はきょろきょろとあたりを見回す


が、誰ひとりとして起きてはいなかった


古川は黙って肩を落とし


ため息をつく


(ふふっ・・・)


高柳はそんな様子を横眼で見て


微笑み


「あいりん」


と、口を開いた


「ちゅり。起きてたの?」


「誕生日おめでとう」


そう言ってにこっと笑った


「ちゅりーありがとー」


古川はにこっと笑って抱きついた


「あはは、寝てると思ったー?驚いたでしょー」


そう言いって高柳も抱きしめ返す


「ちゅりだけだよーみんな寝てるんだもん」


「収録長かったから仕方ないよ」


「ま、仕方ないか」


そういって古川は携帯を見る


高柳はドキドキしながら自分の鞄に手を入れ


「あのね・・・」


そう言おうとした時


「はい、もう着くよー起きてー」


そういってマネージャーの大声がバスの中に響き渡り


メンバーがもそもそと起き始めた


「んー・・・あ!今日あいりん誕生日じゃない?」


「おめでとー」


皆、めいめいに声をかける


「みんなありがと―」


古川はバスの中で立ち上がり


手を振る


嬉しそうにはしゃぐ古川の姿を見て


高柳はそっと鞄の中でつかんでいたものを離し


ゆっくりと手を抜いたのだった



―――――


「はぁ・・・」


自宅に帰った高柳は


自分のベッドに倒れこみ


天井を見つめていた


「・・・結局渡せなかったな」


そうぽつりとつぶやく


鞄の中には


古川へのプレゼントが入っていたのだ


バスから降りた後


渡せばよかったのだが


メンバーに囲まれた古川をわざわざ2人きりにできるわけもなく


渡せないまま帰ってきてしまったのだ


「・・・最初にプレゼント渡したかったのにな」


はぁ・・・とため息をつき


手で顔を覆った



高柳明音は


古川愛李に恋しているのだ


同じチームで


いつの間にか古柳とよばれるほどであったが


この恋心に気づいたのは


最近なのである


気づけばいつも隣にいて


支えてくれていた存在


そんな意識すらしていなかったのだが


ある日


古川が「明音」と呼んだ時


胸がドキドキして


顔が赤くなるのを感じた


古川はそんな高柳を見て不思議そうな顔をしていたが


高柳はこの時


古川を恋愛対象として好きなのだと確信したのだ


だが


気持ちを伝えようとはしなかった


してしまうと、今の関係が壊れてしまうのが怖かったから


このままずっと


あいりんの隣でいれればそれでいい・・・


そんなことを自分に言い聞かせていた