高柳は家に帰り


部屋でひとしきり泣いた後


気持ちを落ち着かせ


また


いつものように日々を過ごしていた


「さーみんな張り切っていこー」


レッスンスタジオで高柳は気合を入れる


「おーおー、ちゅりは最近はりきってんなー」


中西は柔軟をしながら横眼で高柳を見る


「そりゃもうすぐナゴドだからねー」


木崎も柔軟をしながら言う


「・・・ふーん」


そんな会話の横で


古川はスポーツドリンクを飲みながら


高柳を見つめていた



――――――


「ふう・・・」


レッスンも終わり


着替え終わった高柳は


静かにロッカーの扉を閉じた


自主練習に没頭し


高柳しか残っていなかった


(体動かしてた方が余計なこと考えなくてすむからいいな・・・)


そんなことを思いながら


ロッカールームの扉を開け


静かな廊下を歩き


外に出る



「ちゅーり!」



「え・・・?」



関係者通路で待っていたのは


古川だった


高柳は思わず声を漏らす


「やっぱり、自主練してたんでしょ?」


そういって笑う


「え・・・てか、なんであいりんがいるの・・・?」


高柳は事態が飲み込めていなかった


古川は仕事で途中からレッスンを抜けていたのだ


「最近2人でゆっくり話してないとおもってね」


「う、うん・・・」


「だから、来ちゃった」


そういって古川は笑った


「あいりん・・・」


高柳は胸がきゅんとして


じんわりと心が温かくなるのを感じていた


「遅いけどご飯行こうよ。とりあえず歩きながら決めよう」


「う、うん」


高柳は古川の方に小走りにかけより


並んで歩き始めた


「・・・ぶえっくし!」


古川はくしゃみをして鼻をすする


「あいりん!風邪ひいたんじゃないの?」


高柳はあわてて古川の方を見る


「・・・もしかして、ずっと待っててくれたの?」


「あはは、いやー入館証忘れちゃってさーもう正面玄関も閉まってたし・・・もう少ししたらちゅり出てくるかとおもって」


そういって照れ臭そうに笑った


「だめだよ!もうすぐナゴドなのに!風邪ひいたらどうするの!?」


高柳は叫ぶ


「・・・ははっ」


古川は笑う


「なに?」


「いや、いつものちゅりだーと思って」


そう言って古川は嬉しそうに笑った


「え・・・?」


「最近なんか様子が変だったからさ。なんて言うか無理してるっていうか・・・頑張ってるっていうか・・・」


「あいりん・・・」


「KⅡのリーダー高柳明音はこうでなきゃね」


そういって高柳の頬を人差し指でつついた


その手はキンキンに冷えていた


「あいりん!手・・・」


「あー今日手袋忘れちゃって」


そう言って苦笑いをする




(・・・あ!)


高柳はハッとし


背負っていたリュックからごそごそと何かを探していた


「ちゅり?」


その様子を不思議そうに古川は見ていた


高柳の動きが止まり


くるっと古川の方を向き


「これっ!」


そういって包装された包みを渡す


「へ?」


「遅くなったけど・・・誕生日プレゼント」


「え?ケーキくれたじゃん?」


「いいから!」


「う、うん。ありがとう、ちゅり」


古川は嬉しそうに包みを開ける


そこには手袋が入っていた


「これ・・・もしかして?」


「・・・私が編んだの」


高柳はうつむき真っ赤になる


付き合ってもいないのに手編みとかもどうなのだと


悶々としていたため


編み終わっていたのに


いつまでたっても渡せずにいたのだ


赤色の手袋で甲には緑の毛糸でKⅡと書かれていた


「おーKⅡって刺繍まで・・・すごいなちゅりは」


ぱっと顔を上げると


そこには嬉しそうに手袋をしている古川の姿があった


「い・・・嫌じゃない?」


高柳はおずおずと聞く


「へ?なんで?」


古川のは不思議そうな顔をする


「え・・・だって・・・」


高柳はもごもごと口ごもっていると


「KⅡの刺繍入りとか最高じゃん」


そういって古川は笑う


「・・・うん。ありがとう」


その姿をみてホッとして高柳も笑った


「・・・ちゅり、手袋は?」


「え?あ、私も忘れてきちゃった」


高柳はぽりぽりと頭を掻く


「・・・じゃあ、はい」


そういって片方の手袋を差し出した


「え・・・でも、あいりんが寒いし」


高柳が迷っていると


「いいから、いいから」


そういって古川は高柳の右手に手袋をはめ


「こうすれば、温かいっしょ!」


高柳の左手を握り


自分のコートのポケットの中に入れた


「あ・・・」


高柳はドキドキして顔が真っ赤になる


「じゃあ、行こうか」


普段そんなことをしないので

古川も少し照れた様子で


歩き出した


「うん・・・」


高柳は


左手から伝わる古川のぬくもりが


とても優しく感じられた


「・・・ねぇあいりん」


「ん?」


「これからも私の隣にいてくれる?」


そうぽつりと漏らす


「何言ってんの?当たり前でしょ、いつだってちゅりの隣にいて支えるよ」


「あいりん・・・」


「なんてったって古柳なんだから」


そういってにこっと笑った


「うん!」


高柳も笑い


古川の腕に抱きつく


「わっ!どーしたちゅり!そんな萌え行動をするなんて!?」


思わぬ行動に古川は照れる


「ふふふ、たまにはいいであろう♪さ、ごはんごはん!」


照れ隠しにふざけながら高柳は笑っていた




きっと古川の発言は友達としてなのだろうけれど





いつかちゃんと想いを伝えれる日がきたら


その時も


隣であなたが笑っていてくれますように



君の隣に


ずっといれますように・・・






FIN