その一件以降


宮澤は勤務が合った時に


柏木を迎えに行くようになった


ストーカーがまた来るかもしれないからという理由だったが


宮澤としては柏木とつながりを持っていたかったのだ



一ヶ月後――




「ねーゆきりん。今日夜ごはんいかない?」


昼休みの休憩中に同僚が話しかけてきた


「え・・・」


柏木は戸惑う


「だめだって。ゆきりんは彼氏が迎えに来るんだから」


もう一人の同僚がにやっとする


「えー何?彼氏とかいつの間に!?私聞いてないんだけど」


同僚は柏木に詰め寄る


「ちょ、ちょっと待って!何の話!?」


柏木は事態が飲み込めず混乱する


「とぼけちゃって―いつも迎えに来てくれてるじゃん」


「へ・・・?」


「ほら、黄色いバイクの・・・」


そう言われ柏木ははっとした


「ちょっと、彼氏じゃないって。それに女の人。残念でした」


柏木は笑う


「えーほんと?身長もあるしわかんなかった」


「なーんだ。ついに柏木にも彼氏ができたのかと思ったのに・・・」


そう言って同僚たちは柏木をつついてからかった


「はいはい。どーせ仕事ばっかりの一人身ですよー」


柏木はむすっとしながらお茶をすすっていた



そんな様子を


瀬部は少し離れたところで聞いていた


―――――


その日の勤務終わり


柏木は駐輪場で宮澤を待っていた


「・・・まだかな?」


そう呟き携帯を見る


「柏木さん」


後ろから聞きなれた声が聞こえ


振り返る


そこには瀬部が立っていた


「お疲れ様」


「お疲れ様です」


2人はぺこっと頭を下げる


瀬部はロードバイクを駐輪場から出し


少し固まってから


意を決してぐっとハンドルを握る手に力を込めた


「あ、あの柏木さん!」


「なに?」


「この前…お礼にってお食事誘っていただいたのに断ってすいませんでした」


「え、そんな謝らなくても・・・研修のレポートで忙しいって言ってたし・・・」


深々と頭を下げる瀬部を見て


柏木は慌てる


「そのことなんですが。食事じゃなくて・・・来月の花火大会に一緒に行ってもらえませんか?」


「え?」


突然のことで柏木は目を丸くする


「あ、あの。2人じゃなくて何人かのグループでいいんです」


瀬部はわたわたと顔を赤らめながら言う


「僕、東京に来てからまだあの花火大会行ったことなくて・・・男ばっかりで行くのも寂しいですし・・・こんな時ってわけではないですけど・・・」


瀬部はもごもごと口ごもりながらうつむいた


瀬部は茨城出身で就職してから黙々と仕事をするタイプであった


特別体格がいいわけでもないが、すらっとしていて黒髪で眼鏡


最近では珍しい好青年といったところである


柏木も1個下の可愛い後輩として見ていて


前の事件の際、瀬部が護身術を使えることに驚いてしまったのだ


「・・・いいよ。じゃあみんなにも声かけとくね」


柏木はにこっと笑った


「あ、ありがとうございます。僕も行ける人聞いておきます」


瀬部はほっとした顔をし、にこっと笑って頭を下げた


「じゃあ失礼します!」


そういうと瀬部はロードバイクにまたがりその場を後にした


「助けてもらったし・・・瀬部くんのめったにないお願いだしな・・・」


柏木はぽつりとつぶやく


「りんちゃんごめん!遅くなって」


少しして宮澤がバイクに乗って現れた


宮澤はヘルメットをとって、にこっと笑った


その笑顔を見て


柏木は小走りに駆け寄りながら


(・・・お礼だし、いいよね・・・)


と、自分にまた言い聞かせたのだった