花火が終わり


人々が一斉に動き出す


秋元と宮澤は屋台周辺の警備をしていた




花火も無事に終了し


秋元はほっとしていた


(さて、次はこいつをどうするかだな・・・)


秋元は横目で宮澤を見る


はたから見れば警備のため


人々を見ているように見えるが


秋元から見れば


覇気もなくただ眺めているだけだった


「佐江。この後どうするんだ?」


「え?」


秋元の不意な問いかけにぽかんとする


「柏木さんのところ行かなくていいの?」


「な、なんでりんちゃんの名前が出てくんだよ!」


宮澤はうろたえ口をとがらせた


「・・・今日様子がおかしいのって柏木さんがデートしてるの見たんだろ」


「う・・・てか、なんで知ってんの!」


図星をつかれて宮澤はムキになる


「・・・いいのか?」


「なにが?」


「このままあの人が彼氏になっちゃっても」


「な・・・何言ってんだよ。りんちゃんが幸せならそれでいいじゃん」


そう言った宮澤の顔はひきつっていた


「・・・佐江。本当にいいのか?」


秋元が真剣な目で見つめる


「・・・ははっ。なんだよそんな顔して・・・」


宮澤は気まずくなってそっぽを向く


「他の女の子には積極的なのに本命にはまったくなんだな」


「な、なんだよそれ」


「私は、自分の思いを伝えないまま諦めるってのが嫌いなだけだ。」


「・・・」


宮澤はうつむく


「ま、私がどうこう言おうと、決めるのは佐江だけど・・・」


秋元はそう言って


屋台を行きかう人々を見つめた


その時


「佐江ちゃん!」


多くの人ごみを掻きわけて


聞きなれた声が聞こえた


「あ」


秋元は思わず声をもらす


「り、りんちゃん!」


宮澤も顔をあげて思わず声をあげた


柏木は人の波に逆らって縦断し


宮澤の前に姿を現す


「佐江ちゃん。あのね・・・」


息を整えながら


柏木が言葉を発しようとした時


「あれー?この前の人と一緒だったんじゃないの?」


宮澤の発言で遮られる


「え・・・」


「見ちゃったんだ。りんちゃんが仲良く金魚すくいしてるの。」


宮澤は引きつりながらも笑顔を見せる


「あーもしかしてはぐれちゃって探してほしいとか?」


「あ、あの・・・佐江ちゃん」


「もーはぐれないように手でもつないどかなきゃだめだよ―」


「佐江ちゃん!」


宮澤は話す隙を与えないようにまくし立ててしゃべっていたが


柏木の大声でピタッと口をつぐむ


「あのね。私・・・」


「・・・悪いけど。仕事中なんだ」


宮澤は目をそらす


「・・・2人ならお似合いだと思うよ」


そうぽつりと漏らす


「・・・っ!」




ぱんっ!




柏木の右手が宮澤の頬を叩いた



「なんなのさっきから!さっきは女の子と嬉しそうに話してたくせに私とは話したくないって言うの!?」


「え・・・?」


柏木のものすごい剣幕に宮澤は目を丸くする


「佐江ちゃんのバカ!もう知らない!」


柏木の目には涙がたまっていた


そして


くるっと向きを変えると人ごみの中に消えて行った


「あ・・・」


宮澤は柏木を止めようと手を伸ばそうとしたが


ためらい


手を降ろした


「佐江」


隣で一部始終を見てたい秋元が声をかける


宮澤はだまって横を向く


「お前が悪い」


秋元の顔は明らかに怒っていた


「・・・いいんだよ。」


「良くないだろ!ちゃんと話も聞かないで!」


「いいんだよ!!」


宮澤はうつむきながら叫ぶ


拳を握りしめ


体は小刻みに震えていた


(・・・ホント、本命には全く駄目だな)


秋元はふっとため息をつくと


「・・・私は向こうの警備に行くから。此処任せたぞ」


そういって人ごみに逆らいながら歩き出した


うつむいたままの宮澤の頬には


一筋の涙が伝っていた