「・・・ぐすっ」


人々が家族や友人、恋人と歩いている中


柏木は一人


とぼとぼと歩いていた


その目には涙がにじむ


拭いても拭いても


止まることはなかった


「・・・またぶっちゃった・・・」


そうぽつりとつぶやく


カッとしてしまうのは悪い癖なのだが


それほどまでに


宮澤が言った台詞が気に入らなかったのだ


(何がお似合いよ・・・人の気も知らないで・・・)


そう思いながら


また涙がにじんできていた



とぼとぼと歩いていると


マンション近くの公園まで歩いていたことに気づく


「・・・」


柏木はふらふらと公園の中に入っていた


仕事で失敗をしたり、落ち込んだりした時は


いつも、この公園で時間を潰していたのだ



「ふぅ・・・」


柏木はブランコに腰掛け


夜空を見上げる


「あ・・・」


そこには三日月がひっそりと光っていた



「あの時も此処でいたら佐江ちゃんきてくれたんだっけ・・・」



そう思い


宮澤に抱きしめられたことを思い出す


あの後、家に帰ってもドキドキしていた


あの時はいろんなことがあったから興奮しているのだろうと思っていたけれど


あの時から・・・


いや、初めて会った時から


惹かれていたのかもしれない・・・


ただ、そんな経験がなかったから


自分の心さえも理解できないでいたのだ



2回もぶって


ちっとも可愛げがない・・・


もう少しおしとやかにしとればよかった・・・



「駄目だなぁ私・・・絶対嫌われてる」


そう呟き


顔を覆い


嗚咽が漏れる



好きと気づいたら


こんなにも切なくなるのかと


柏木は感じていた



「佐江ちゃん・・・」


嗚咽混じりの中


愛しい人の名前を呼んだ



「りんちゃん!」


「え・・・」


柏木は固まる


聞きなれた


あの人しか呼ばない


私の名前・・・



ゆっくりと顔を上げると


そこには


肩で息をする宮澤が立っていた


「佐江ちゃん・・・」


「はぁ・・・はぁ・・・やっぱり・・・ここに居た・・」


呼吸の乱れを必死に整えながら宮澤はにこっと笑う


そして


ゆっくりと歩き出し


柏木の方に向かう


「・・・ごめんなさい」


柏木は耐えられなくなり


その場から立ち去ろうろうとする


「待って!」


宮澤はそんな柏木の手をつかむ


「どうして逃げるの?」


「だって・・・私またぶっちゃって・・・それに・・・」


「それに?」


「こんな顔見せられないから・・・」


柏木は掴まれていない右手で顔を隠す


「・・・」


「きゃっ!」


宮澤は黙って柏木を抱き寄せた


「・・・顔が見られるのが嫌なら、こうしてるから・・・」


「さ、佐江ちゃん・・・」


「だから・・・逃げないで・・・」


宮澤の声がくぐもる


「・・・うん」


柏木も目を閉じ


ゆっくりと宮澤の背中に手をまわした