それからというもの


珠理奈は私に何度も話しかけてきた


たいてい一人でいる私に隙があるのも確かなのだけれど・・・


とりあえず相手にしないようにしようと心がけていたので


いつも珠理奈はムスッとしていた・・・


私なんて放っておいてくれればいいのに


どうせすぐに飽きるんだから・・・


そして初めて珠理奈に出会ってから


2週間がたとうとしていた





――――


昼休みガヤガヤとにぎわう教室で中西と話しをする


「それにしても・・・珍しいよねー」


中西が私の顔を見ながらつぶやく


「・・・何が?」


「いや、あんなに言い寄られてもつっぱねてるからさ」


「私じゃなくてもいっぱいいるからいいじゃない。それに私、ああいうタイプ苦手だし」


「まぁ・・・珠理奈はチャラいからなー・・・そう思うのも無理ないか。でも意外といいやつなんだよ。腐れ縁としてフォローはしとくよ。」


「いいところが全く見えないけど。」


「厳しーなー」


中西が笑う


「あ、いたいた松井。ちょっといいか?」


突然名前を呼ばれた



そこには生物担当の篠田先生がいた


「は、はい」


「ちょっと今から時間ある?」


「へ?」


突然のことに私は困惑した


「いや、2学期の身体測定が松井だけできてないらしくて、保健室に来てほしいみたいなんだ。」


「あ、はい」


「そうか、よかった。すぐすむから行こうか」


そういうと篠田先生はすたすたと歩き出した


「え、あ、あの・・・」




「いってらっしゃーい」


と、中西は手を振って私を送り出した


勢いに流されるまま


私は篠田先生の後を速足で追いかけるのだった




なんで保健室の用事を篠田先生が言いに来たんだろう・・・?


篠田先生はすらっとした長身でいつも羽織っている白衣がよく似合っていた


追いかけながら


後姿もかっこいいなと思いながら後をついていった




ガラッ


篠田先生が保健室の扉をあける


「あ、麻里ちゃーん」


中には白衣を着た綺麗な女性がいた


「つれてきたよ」


そういうと私の方を振り向く


「あ、松井です・・・」


とっさに私は名前を言った


「あ、あなたが転校生ね。はじめまして私は小嶋陽菜です。」


にこっと小嶋先生は笑った


「まったく、松井が来てから何週間たってると思ってるの。」


篠田先生がため息をつく


「だってー全校生徒何人いるとおもってるの。逆に良く気づいたって誉めてほしいのに―」


むっと小嶋先生は頬を膨らませる


「とりあえず、待たせちゃ悪いから早くやったげな」


そういうと篠田先生は白衣をハンガーにかけ


奥の戸棚からコップを取り出しコーヒーを入れだした



私は2人のやり取りをぼーっと見ていた


「ごめんねー今週末全校生徒のデータ記載しなきゃいけないんだけど。松井さんのだけ取れてないの気づいたの。早く終わらすから、終わったらお茶しましょ♪」


そう言って小嶋先生は身長計と体重計の前に私を案内した


私は言われるがまま身長と体重を測る


「うわーほそーい。ご飯食べてきてもこれ?」


私の体重を見てきゃっきゃと小嶋先生がはしゃぐので


恥ずかしくなった


「もう、終わりですか?///」


「あ、待ってあと視力検査があるの」


私はきょろきょろと周りを見渡したが


それらしい機材は無かった


「普段つかわないから、そこの奥から出さなきゃだめなの。ちょっと手伝ってくれる?」


「は、はい」


私と小嶋先生は奥の物置の扉に向かって歩いた


そのとき


窓から風が吹きベッド周りにかかっているカーテンがふわっと大きく波打った


そこに



パイプ椅子にもたれかかってる人がいた




見慣れた後姿だった



「珠理奈・・・?」



思わず声に出てしまった



「あっ忘れてたー。そこで本読んでたのよ珠理奈」



「え?」


本?珠理奈が?


私は本と珠理奈が結びつかず理解できなかった



だけど、珠理奈は私たちの声に何の反応もしなかった



「また寝てるー。いつも読みだしたと思ったら寝てるのよ」


小嶋先生はいたずらっぽく「しーっ」と私に合図し


私の腕を掴んでそっと珠理奈に近づく



珠理奈は一番窓側のベッドのわきにパイプ椅子を向い合せにして並べ


ソファーのように足を延ばしていた


読みかけのページを胸で押さえたまますやすやと寝息を立てていた




あ・・・・



珠理奈の寝顔に


素直に


綺麗だと思ってしまった



「良く寝てるーちょっと驚かしちゃおうか?」


こそっと話しかけてきた小嶋先生の声に


私の方がびくっと驚いてしまった


でも



もっと驚いたのは



珠理奈が持っていた本だった



初めて珠理奈と図書館で会った時


私が読んでいた本だった



もしかして


ずっと読んでたの?



あの日以来


その本は書棚から無くなっていたのだ




まだ半分もいっていないページを押さえる珠理奈をみて


以前、


仲良くなりたいんだ


と、言われたのを思い出した



(・・・頑張るところ間違ってない?)


睡魔と闘いながら本を読んでいる珠理奈を想像してクスッと笑ってしまった




意外といいやつなんだよーと言っていた中西の言葉を少しは信じてみようかな


そう思って珠理奈を見つめる



と、


小嶋先生が珠理奈の耳元で大きな声を出そうとしていることに気づき


とっさに肩をたたき


首を横に振った


小嶋先生はちぇーっと残念そうな顔をして


そっと珠理奈のもとから離れた



なんだか隠れて読んでるところが可愛くて


内緒にしておこうと思った


実はこっそり読んでたんだよって


自慢してくる珠理奈に


前から読んでるの知ってたよっていって


逆に驚かしてやろうかな・・・なんて少し意地悪な想像をしてクスッと笑ってっしまった




「にゃろ。早くしないと昼休みおわるよ」


篠田先生が椅子に座りながらこっちに声をかけた


「はーい」


小嶋先生は倉庫から視力検査の機材を見つけ



珠理奈を起こさないように気をつけながら


私は一緒に運んだ



――――――――


「はいっ。お終わりましたーお茶にしよー」


小嶋先生は嬉しそうに戸棚からカップを取り出した


「玲奈ちゃんは紅茶派かなー?麻里ちゃんと同じコーヒー派?」


「えっとじゃあ紅茶で・・・」


私は小嶋先生の勢いにおされて答えた




「珠理奈―!そろそろ起きろ―!」


篠田先生が叫ぶと


ガタっと音がして


珠理奈があくびをしながらカーテンを開けて出てきた


「はーまた寝ちゃった・・・・って!」


珠理奈は私に気づき手に持っていた本をとっさにベッドに放り投げた


そのあわてようが面白かったけど


笑ったらばれちゃうからティーカップに口をつけて笑いを誤魔化した



「玲奈ちゃんどうしたのー?」


何もなかったかのように珠理奈が駆け寄ってきた


「身体測定。玲奈ちゃんだけできてなかったの。今終わったからお茶してるのよ―」


「ほれ、珠理奈コーヒー。砂糖とミルク入れといたぞ」


「あっありがとー」



そんな三人のやり取りを私は不思議そうに見つめていた


篠田先生がそんな私に気づき


「珠理奈はここの常連なんだよ。よく昼休みに顔を出すんだ。」


と説明してくれた


「そうそう。小嶋先生が可愛くてさ―ついつい顔出しちゃうんだよね」


にこにこする珠理奈に


なんとなくむっとした



「はいはい。」



そういいながら篠田先生もコーヒーを飲む



「でも、小嶋先生は麻里ちゃんのものだから取る気はないよ―。私の中での癒し系アイドルって感じ?」


「えーアイドル―?麻里ちゃん私アイドルだってー♪」


「はいはい。ま、珠理奈みたいなガキに取られるほどの付き合いじゃないっての」


え???



ええええええ?????



私はティーカップを持ったまま固まってしまった


そんな私を3人が不思議そうに見る


「もしかして玲奈ちゃん知らなかったの?」


「なんか知らない子がいるのも新鮮だな」


「ねー固まってるよ」



ふと目をやると


2人の中指にお揃いの細い指輪がしてあることに気づいて


付き合っていることを確信した


それに小嶋先生のこと「にゃろ」って呼んでたし・・・



先生まで・・・?


どうなってるのこの学校?


私の顔はみるみる赤くなっていった


そんな私を見て3人はさらに笑ったのだった