気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

小説 じゅりれな

僕の彼女は魔法使い41

「もーサヤカちゃんそんなに怒らんでもええやん」

「・・・」

サヤカはムスッとしながら美優紀の横を歩いていた

「まぁ押さえ込んで洗ろたからなー。でも、あの臭さはホンマやばかったで」

サヤカを挟んで吉田も歩きながら言う

「・・・それもあるけど、なんでおまえらにつきあわなあかんねん」

サヤカはジロッと美優紀と吉田を見た

「そりゃあ、お礼ってやつ?」

吉田はにこにこと笑う

「それに何やねんこの服!もっとましなんなかったんか」

「一応地味なん選んだねんで。一人制服も浮くやろ?」

美優紀は悪びれもなく言う

風呂に入れられたサヤカは美優紀の服を着るようしいられたのだ

今現在サヤカが持っている服は小嶋の魔法で作り出した制服と自分が着ていた黒一色の服だけだった

そのため、2人に着せ替え人形のようにあーでもないこーでもないといわれながら

一応サヤカの意をくんで控えめな服だと言い張っているが

サヤカは不服そうな顔である

「まーまーええから」

「ほら、こっちや」

2人はサヤカの手を引き

「はぁ?」

四角い機械の中に入る

緑一色の壁をサヤカはぽかんと見ていた

「ほら、サヤカちゃん!」

「え?」

美優紀に腕をつかまれ

振り返った瞬間

パシャッ!

「はぁ?」

目の前を覆う光にサヤカは驚く

「ほら、次いくで」

吉田はサヤカの肩をたたきながら、前の画面を指さす

「はぁ?」

パシャ!

「おおっ!」

パシャ!

「なっ・・・」

パシャ!

「何やねんこれ!!」

「はい、終わり-。ほら、横いくで」

「はぁ?」

動揺するサヤカの手を吉田はつかんで連れて行く

ポップな音楽に画面とペン・・・

その前には美優紀が既に陣取っていた

「もーサヤカちゃん、全部表情硬い」

美優紀はクスッっと笑ってサヤカの方を見た

「・・・」

ドクン・・・

(なんや・・・これ・・・)

胸の奥に小さな波紋が広がる感じにサヤカは動揺する

「あはは、ホンマや!」

「!!」

吉田の笑い声にハッとし、我に返った

「んーこれとこれと」

「ここにハート入れる?」

「うん」

2人は慣れた手つきでペンを動かしてく

サヤカは2人の後ろでその作業を呆然とみる

「・・・」

そして、楽しそうな美優紀の顔を

気づけば見つめていた


---

カツン・・・

しばらくして一枚の紙が出てきた

「あ・・・」

それはサヤカが探してきたものによく似ていた

「はい、アカリン」

美優紀ははさみでそれを切り、渡す

「ありがと」

「はい、サヤカちゃんも」

「え?」

サヤカはその紙に目をやる

そこには『大親友』と書かれていた

「アカリンとのプリクラ探してきてくれてありがとう。だから、お礼につれてきてん」

「そうそう。今は私ら3人で大親友やからね」

吉田もニッと笑う

「なんやねん・・・それ」

サヤカは照れくさくて思わずそっぽを向く

「ほな、なんか食べよか」

「何食べたい?」

「・・・」

サヤカは紙をじっと見つめる

「ほら、サヤカいくで」

「あ、あぁ」

吉田の声にサヤカは駆け出す

友・・・なんて

いなかったな・・・ずっと・・・

2人を見つめフッと笑った



「・・・なんか、記憶消すのしのびないね」

「・・・そうだな」

その様子を前田と高橋は見つめていた






僕の彼女は魔法使い40

チュンチュン・・・

そして、朝が来た

カラカラカラ・・・

マンションのドアを開け、こそこそとする人影が一人・・・

「ちょっとみなみ!」

「!!」

その声で人影はびくっと身をのけぞった

そう、正体は高橋みなみだったのだ

ここは、前田と2人で暮らしてくマンション

ちなみに、宮澤、篠田たちも階は違うが同じ場所に住んでいる

「家まで窓から出入りしなくてもいいでしょ!?それに、どこいって・・・」

つかつかと高橋の方に前田は歩を進めるが

「くさっ!」

思わずのけぞった

「あ、あはは・・・ただいまー」

高橋は苦笑いをする

「どこいってたのよ。もう、はやくお風呂入って」

鼻を指でつまみながら前田は言う

「わかってるよー。だから起こさないように窓から入ったのに・・・あーあ」

高橋は肩を落としながら移動する

「で、どこいってたのよ」

「夢の島」

「え?」

「夢の島に、大事な宝物を探しに・・・ね」

そういって、高橋はニヤッと笑った


-----
サッ・・・サッ・・・・

店の前を美優紀の祖母が箒で掃いていた

トトトッ

目の端に黒いものがうつり

祖母は視線を向ける

「おや、サヤどこ行ってたんだい」

店に入ろうとする前に声をかけられ、サヤはぴくっと止まる

「・・・おや。何くわえてるんだい?」

そういって、祖母は近づき

「あら・・・」

トトトッ

サヤはぷいっとそっぽを向いて中に入ってしまった

「あの子・・・昨日のこと、どこかで見てたのかねぇ」

そういって、祖母はくすっと笑った


「おい」

「ん?」

眠っていた美優紀は体の重みで目を覚ます

ぼんやりと開けた目には黒猫が移っていた

「もう、ほったりすんなよ」

「え?」

そう言って、胸に何か白いものを置いて去っていった

「何?」

美優紀は訳が分からずその白いものを手にする

「あ・・・」

それはプリクラだった

以前、サヤカが見つけて勢い任せに捨ててしまった・・・

「サヤカちゃん・・・これ・・・見つけてくれたんや」

美優紀は微笑んだ

が・・・

「ん・・・くさっ」

布団から生ごみの匂いがするのだ

「あーーーー!」

美優紀は先ほどサヤカが布団の上にのっていたことを思い出す

「な、なに?」

下で寝ていた吉田もその声に驚いて飛び起きた

「くさいねん」

「は?」

「サヤカちゃんがくさいねん」

「どういうこと?」

「サヤカちゃん、ここではサヤっていう猫でくらしてるんやけど・・・さっき布団の上に乗ってきてん。で、出て行ったあとくさかったねん」

「え?ほんまに?猫とかなれるん?すごいなぁ」

そういって、吉田は布団の匂いを嗅ぐ

「うわっ、生ごみくさっ!」

「やろー?でも、きっとこれを探してくれててん」

美優紀の手には大阪時代に2人で撮ったプリクラがあった

「これって・・・」

「アカリンが来る前に、サヤカちゃんがみつけて私勢いに任せてほってしもたん・・・それを・・・探してきてくれたんや」

「ふーん・・・ええとこあるやん」

吉田は自分のカバンをごそごそとあさり

「私も、ちゃんともってるで」

そういって、手帳を見せた

そこには同じプリくクラが張られていた

「アカリン・・・」

「じゃあ、お礼せなな」

「え?」

「その前に・・・」

吉田はニヤッと笑った


-----

「お、おい!なにすんねん!」

風呂場で声を殺しながらサヤが言う

「あかん、動かんといて。くさいんやから」

「そうそう、きれいにせななー」

2人はシャンプーとシャワーヘッドを持ち

にやにやと近づく

「う・・・うわぁぁぁぁぁ」

ガタン!バタン!

「おやおや、元気だねぇ」

風呂場の方から聞こえる音を聞きながら祖母は店で微笑んでいた



僕の彼女は魔法使い39

祖母は先に帰ると言い、母親を連れて理事長室を後にした

「はー。なんなんだよ今日は」

高橋は緊迫した雰囲気から解放され、大きなため息をつく

「ははは、2度あることはっていうからあと一回あるかもね」

篠田はニッとわらう

「げ、やめてくれよ」

高橋の反応に篠田はくすくすと笑った

「アカリン・・・ごめんな」

「ううん。私のほうこそ、ごめんな。それに、守ってくれてありがとう」

「・・・うん」

2人は笑いあう

「いやーよかったよかった。仲直りもできたし、学校も来てくれるっていうし、万々歳だよ」

宮澤はにこにことその光景を見つめていた

「そうね。でも、あと一仕事残ってるんじゃない?」

前田の問いかけに、高橋たちは一斉に吉田の方をみる

「な・・・なに?」

さすがに視線が痛く、吉田がたじろぐ

「ごめんなさい。吉田さん。あなたの記憶を消さなきゃいけないの」

「え・・・?」

「提案したのは私なんだけどね。でも、まさかあんな奴がおそってくるなんておもわなかったから・・・ごめんなさい」

「ううん。それはいいんやけど・・・消すってどういうこと?」

「もう見たからわかってると思うけど・・・ここにいる人たちはこの世界の人間じゃないのだから、騒ぎが大きくなったら困るから・・・契約者以外は記憶を消すようにしているの。大丈夫、魔法をつかってたところの記憶を消すだけだから・・・渡辺さんと仲直りしたっていうことは消えないわ」

「・・・いやや」

「え・・・」

「だって、みんなみるきーのためにあんなに一生懸命に戦ったんやで。それを忘れるんやいやや。」

「吉田さん・・・」

前田は困った顔をする

「それに、あの戦いがあったから・・・みるきーとも仲直りできたんやと思うし・・・私、絶対言わへんから!だからお願い!」

吉田は頭を下げる

「私からもお願い!」

美優紀も続けて頭を下げる

「んー・・・どうする?」

小嶋は高橋の方をみる

「まぁ・・・しゃあないか。でも、条件がある。東京に居るときは渡辺さんの家に泊まること、大阪に帰る前にここによってくれよ」

「ありがとう!わかった!」

吉田はにっこり笑ってうなづいた

「はい、じゃあ今日は解散!渡辺さん、補習の日程はまた連絡するからね」

宮澤の声で一同は解散した

美優紀と吉田は2人そろって彩美堂に帰っていった

「いいの?あんな簡単にOKしちゃって」

「・・・東京に居る間だけ・・・な」

高橋は小さくつぶやいた

「今回の事件、でかい気がするんだ。吉田さんに危害が及ばないように見張って・・・大阪に帰る前に記憶を消す」

「そうだね・・・そのほうがいいかも。その間に、渡辺さんも説得しとかないとね」

篠田は顎に手をあて、考える

「・・・そんなんやったら、さっさと消してしまえばよかったんちゃうか?」

サヤカは眉をひそめる

「サヤカは情緒ってのをわかってないなぁ」

篠田はくすっと笑う

「はぁ?」

「今は記憶を消さないほうが、いろいろ話ができていいんだよ。仲直りはきっかけが必要だから」

篠田はにこっと笑い、サヤカの眉間のシワはより一層深くなったのだった


-----

渡辺と吉田は彩美堂近くの公園のベンチに座っていた

「うん、うん、わかった。じゃあアカリン連れて帰るから」

渡辺は携帯の電源を切り

「お母さん、そのまま大阪に帰ったって。アカリンも泊まっていいって言ってるから」

「ホンマ?ありがとう」

「ううん。こっちこそありがとう。ごめんな。私なんにも知らんで・・・ひどいことゆうて」

「ううん、ええんよ。私も、大阪の時ひどいことしたし・・・」

「「・・・」」

ビュゥゥゥ・・・

2人の沈黙を埋めるように風が吹く

「あのな」

吉田が口を開く

「ホンマはな、美優紀のお母さんが私のとこに来て会わんといてって言われたときな・・・悲しかったけど、うれしかってん」

「え?」

「美優紀、心配されてて・・・愛されてるんやなって思った」

「アカリン・・・」

「私のお母さんはな・・・全然私のことなんて興味なかったから」

「え・・・」

「うち、両親が小さいころに離婚して、私は母親と2人で暮らしてたんやけどな。小さいころから知らん男の人が次々に来てて・・・家ではお母さんはその人ばっかりで私のことなんて興味なくて、ほったらかしやってん」

「・・・」

美優紀は言葉をなくす

「だから、一回家に泊めてって言われたとき断った理由もそうやねん。お母さんの彼氏おるし、家も荒れててゴミ屋敷状態やし・・・とても泊めれるような状態やなかったから」

吉田は苦笑いをする

「だからな、夜の定時制の学校行ってバイトして、自分の服こうて遊んで・・・私も好きにしようって思ってん。学校はそんな状態の子らがようけおってなー。その子ら励ましたりいろいろしてたんや。なんか、ながいことそんな環境でおったから・・・家庭環境が悪い子ってなんか空気とか表情でわかるようになってしもてな」

「じゃあ・・・交差点で会ったときも?」

「うん。空気でわかった。見ながら歩いてたら急に立ち止まったからびっくりしたけど、話すきっかけになってよかったっておもってる」

吉田はにこっと笑う

「私・・・ずっとアカリンに助けられてたんだね」

「なにゆうてんの。お互いさまやで」

「え?」

「私も、元気もらってたから。周りにはおらんタイプやったし、楽しかったよ」

「アカリン・・・」

「みるきーはみんなに愛されてるよ。だから、卑屈になったりせんと笑いな。あんたの笑顔は見ててなごむから」

そういって吉田は美優紀の頬を引っ張った

「うん、がんばりゅ」

「あはは、なにそれ?ちゃんと喋れてないやん」

「それはアカリンが引っ張ったからやん!」

おなかをかかえて笑う吉田に、美優紀は頬を膨らましていた


「おうおう、いい感じじゃんか。仲直りは大成功って感じだな」

「・・・」

公園の木の上から高橋とサヤカはその様子を見ていた

「・・・なぁ」

「ん?」

「捨てたもんって、ここらじゃどこに行くんや?すぐ燃やしてしまうんか?」

「捨てたもん?あーゴミのことか?東京は人口多いからまず、いったん集めてそれから・・・」

「それ、どこにあんねん」

「え?」

スッと立ち上がるサヤカに高橋はきょとんとする

「・・・拾いに行かなあかんもんがあるんや」

サヤカは口をとがらせて、照れくさそうに言った

「ふーん・・・いいぜ。つきあってやるよ」

高橋はサヤカの肩をポンとたたく

「別に、場所おしえてくれたらええだけや」

「なーにいってんだよ。私は土使いだぜ?地面うごかしゃすぐに見つかるって」

高橋はにやにやしながら言う

「・・・ちっ。勝手にしろ」

サヤカはそっぽを向く

「はいはい。そうさせてもらいますよ。じゃあ、ついてきな」

高橋はふわりと浮き上がり、サヤカはそれに続いた


-----

「あーつかれたー」

小嶋は篠田とともに生活する部屋に戻り

勢いよくソファーにダイブする

「こら、にゃろ。ちゃんとお風呂入ってから寝なよ」

「はーい」

そういいながら小嶋はクッションを抱え丸まる

「・・・全然、聞いてないじゃん」

篠田は苦笑いをしながら服をハンガーにかける

「・・・」

ふと、自分の手の紋章が目に入った

「・・・ねぇ。にゃろ」

「ん?」

「・・・答えてほしいことがあるんだ」

「・・・」

小嶋はクッションを抱いたままちらりと篠田の方を見る

「にゃろたちはさ・・・最初、誰に仕えてたの?」

「・・・忘れちゃった」

小嶋はそういって目を閉じた


-----

「あーなんか今日はすごかったなぁ」

珠理奈は今日の出来事をベッドの上で思い出しぽつりとつぶやく

「ごめんなさい、いろいろなことに巻き込んでしまって」

玲奈は机の上で読んでいた本を置き、珠理奈の方に近づく

「怪我、ちゃんと治ってる?」

顔を覗き込む玲奈に珠理奈はどきっとする

「へ、平気だよ!玲奈ちゃんはすごいなー!もうピンピン」

ゴンっ

「・・・っー」

勢いよく立ち上がったため、2段ベッドで頭をぶつけて珠理奈は頭を抱える

「だ、大丈夫?」

「平気平気。私、石頭だから」

珠理奈は苦笑いをする

「ふふっ。でも、あんまりぶつけてたらコブができちゃうよ」

そういって玲奈は珠理奈の頭に手を置き

スッと目を閉じ、呪文を唱えながら撫でた

「あ・・・」

痛みが引いていくのと同時に、珠理奈はその顔に見とれてしまう

このまま、近づいたら・・・

キス・・・できるのかな?

「はい、これで大丈夫」

「へ?あ、う、うん!ありがとう」

珠理奈は今考えていたことが照れくさくて勢いよく頭を下げた

「ふふっ。変なの」

玲奈はころころ変わる珠理奈の表情や態度が面白くてくすくすと笑った

「あ・・・あははは。そういえば玲奈ちゃん、何よんでたの?」

「え?あぁ、この前生徒会長さんが薦めてくれた本。でも、昔の話だから注釈が多くて読むのに時間かかっちゃって」

「あー信長ね。玲奈ちゃんはまじめだなぁ。私なんかわかんなかったら、そういって返しちゃうけど」

「うーん・・・読みだすと最後まで読まなきゃ気が済まないから気になっちゃって」

「そうなんだ」

「でも、もう遅いし寝ましょうか。おやすみなさい」

「う、うん。おやすみ」

玲奈はスッと珠理奈のベッドから出ると電気を消し、自分のベッドに入っていった

「・・・」

うぅ・・・寝れない

先ほどの玲奈の表情を思い出し

珠理奈は寝返りをうつのだった

僕の彼女は魔法使い38

高橋は散らばった破片を手に取る

手に取った瞬間、破片は土となり崩れてしまった

「・・・」

床に目をやると他の破片も土になっていた

「たかみな、なんだったのあいつ」

篠田は眉をひそめる

「わからない。ただ・・・私らの世界から来た可能性は大いにある」

「え・・・」

「詳しい話しはあとだ、またあんな奴が来たら困っからよ。さっさとここから避難しようぜ」

高橋は立ち上がり、柏木に目くばせをした

そして、球体に乗り皆で一斉に廃旅館を後にした



ジャリ・・・

高橋たちが去った後、一人の人物がその部屋に入ってきた

「やはり・・・王女の力は絶大か・・・いいね。ますます欲しくなった」

そういってニヤッと笑った


―――

「あー疲れたー」

「なんだったのかしらあのゴーレム」

理事長室に戻った高橋たちは、ホッとして雑談をし始める

「まぁ、それはおいおいね…今はこっちの問題解決の方が先だと思うけど?」

篠田は苦笑いをして高橋たちはに言う

高橋たちはの視線は美優紀と吉田の方を向いた

「・・・」

2人は気まづそうに互いをちらりと見る

「あんな戦いに巻き込んじゃったけど、あれがあったから話す気にはなったんじゃない?」

「「・・・」」

2人は見つめあう

美優紀も心配して抱きしめてくれた吉田を無下にはできないが

まだ意地を張り素直になれないでいた


そこに

ドンドン!

勢いよく理事長室のドアが叩かれ

ガチャ!

「失礼します!」

一人の女性が勢いよく入ってきた

「おかあ・・・さん」

美優紀は目を丸くする

「美優紀!あなた、こんなとこにいたの?家にもいないっていうから!」

美優紀の母はつかつかと近づく

「・・・」

その剣幕に美優紀は固まってしまっていた

「まぁまぁ、お母さん落ち着いてください」

宮澤がなだめるが

「あなたは黙っててください!」

「す、すいません」

その勢いに、無意識に背筋が伸びる

「あら・・・あなた・・・」

母は吉田がいるのに気づき、怪訝な顔をする

「・・・」

吉田はうつむき、固まっていた

その表情を篠田は静かに見つめる

「あなた、なんでこんなところにいるの!?」

「そ・・・それは・・・」

吉田は口ごもる

「あなたのせいね?東京でも美優紀に余計なこと吹き込んだんでしょ!?もう2度と近づかないでって言ったのに!」


「え・・・」

その台詞に美優紀は固まる

「ごめんなさい・・・でも、私みるきーが東京に行ってから、連絡も一切取ってなかったんです。でも・・・どうしても・・・謝りたかったんです」

「謝る?そうよね。成績優秀な娘をたぶらかして遊びに連れまわしてたんだから!でもね、あなたのせいで美優紀の人生はめちゃくちゃなのよ!今更謝ったってどうしようもないんだから」

「・・・」

吉田はうつむき、ぐっとこらえていた

「・・・もうそのぐらいに」

篠田が母と吉田の間に入ろうとした、その時

「ええかげんにせぇよ」

サヤカがスッと間にはいる

「な、何よあなた?」

「私はこいつらの・・・友達や」

「サヤカ・・・」

吉田は目を丸くする

「いろんなことゆうてるけどな。そんなにこいつが悪いんか?私はそうは思わんけど」

「あなたに何がわかるのよ!どうせ、あなただってそいつの仲間なんでしょ?美優紀をまた悪いほうに連れて行こうとしてるんでしょ!」

母親は半ばヒステリックになっていた

「うっさいわ!」

その声以上の大きさで、サヤカは叫んでいた

「こいつは、ホンマに美優紀のこと思ってここまで来たんや。そうでなきゃ、あんな危ないとこまでいかへんわ!大体な誰とおるかなんて本人が決めることなんや!黙っておれや!」

「サヤカちゃん・・・」

美優紀の頬から一筋の涙が流れた

「お前もお前や!ちゃんと言え!親なんかな、気づいた時には死んでるんや!ちゃんと自分の足で歩け!」

「!!」

「何よあなた!失礼ね!」

母はサヤカのほうに食ってかかろうとしたが

「その子の言うとおりだよ」

後ろから、落ち着いた声が聞こえ

皆、一斉にドアのほうに視線を向けた

そこには美優紀の祖母がいた

「おばあちゃん・・・」

「やれやれ、血相変えてうちに来たと思えば、美優紀がいないとわかるとすぐに出て行ってしまったから・・・学校に行くんだろうとは思っていたけど・・・少々うるさすぎやしないかね」

祖母はひょこひょこ歩き、中に入る

「先生方すいません、うるさくして」

祖母はぺこぺこと頭を下げる

「い、いえ・・・」

宮澤たちも反射的に頭を下げた

祖母は母のほうに視線を向け

「いいかい。今、美優紀は私が預かってるんだ。おまえさんがとやかく言う筋合いはないよ」

「何言ってるのよ!私は美優紀の母親なのよ!」

「美優紀はあんたの物じゃないよ」

「!!」

「美優紀は昔から手のかからない子でね。大阪の家に遊びに行った時も本を読んでいるようなこだったよ」

祖母は美優紀の方を見つめ微笑む

「小さいころから塾に行かせたり、習い事させたりして・・・本当に賢い子だったよ。でもね・・・いつも、寂しそうだったよ」

「!!」

母ははっとする

「おまえは知らないだろ?私と散歩に行くと、美優紀は歌を歌ったり、鳥や虫を見つけては近寄っていくような好奇心旺盛な子だったんだ・・・なのに、家に居たら途端におとなしくなってね・・・。だか、気づいたんだよ。この子は両親にほめられるように、両親の目に届くところではおとなしいいい子にしなきゃって・・・無意識にそう思っちまったんだろうねぇ」

「おばあちゃん・・・」

「だから、今回のことで東京にくるって聞いたとき、美優紀もやっと自分の意思を出すようになったんだなと思ってうれしかったんだよ。だから、自分がどうしたいのかゆっくり決めたらいいと思って何も言わなかったんだ」

「だからって、黙りすぎよ!美優紀はこのままだと留年しちゃうのよ!」

「・・・それでもいいじゃないか」

「え・・・」

母はたじろぐ

「美優紀はあんたに反抗して、愛されてるかどうか試したかったんだよ」

「!!」

真意をつかれて、美優紀ははっとした

「美優紀」

「・・・なに?」

祖母はにっこり微笑んで

「おまえさんはいい子だよ。どんな風になろうとも、私の孫だもの」

「・・・っ」

美優紀の目から涙がぽろぽろとこぼれる

「だから、言いたいことはちゃんといいなさい。時間はかかってもいいから、納得できるまでね」

「ばあちゃん・・・」

サヤカはその面影をシノと重ねていた

美優紀は袖で涙をぬぐうと、サヤカのほうに近づき

くるっと母の方を向いた

「お母さん。私、ずっと寂しかった。ほめてくれるのはテストでいい点とった時だったし、私はそれを望まれてるから、期待に応えなきゃってずっと思ってた」

「美優紀・・・」

「でも、高校に入ってお父さんとお母さんの中が悪くなって・・・私はどうしたらいいのかわからなかった。そんな時、朱里が私を助けてくれたの」

「みるきー・・・」

「そりゃ、世間では不良って言われるかもしれんけど・・・。私のことちゃんと見てくれた!ホンマになんでも言い合える友達やった!急に、もう会われへんって言われて・・・また世界が暗くなった。私をわかってくれる人がおらんようになったから・・・でも、それもお母さんがゆうたことやったんやね・・・」

美優紀はまっすぐに母を見つめ

「お母さん、朱里は私の大事な友達や。何を言われてもそれは変わらへん」

「美優紀・・・あなた本気で言ってるの」

「うん。私、逃げてばっかりやったけど・・・気づいたんや」

美優紀はちらっとサヤカの方を見て、フッと笑った

「自分の足で、あるかなな」

「・・・」

その顔に、サヤカは見とれてしまった

「だから、もう迷わへん。学校はちゃんと行く。だから、朱里をそんな風に言うんはやめて」

「・・・」

母は何も言い返せなくなっていた

「そういうことのようですので、よろしいでしょうか?」

その間に合わせて、前田がフッと微笑んだ

「娘さんの補習は私たち教員が夏休みに行わせていただきます。まだ、進級は間に合いますよ」

「・・・」

「よろしくお願いします」

母の代わりに、祖母は微笑んで頭を下げた


僕の彼女は魔法使い36

「・・・っ」

美優紀は薄暗い部屋の中で椅子にくくりつけられていた

逃げようと体をよじるが、椅子の後ろにくくりつけられた腕が痛むばかりだった

「なんなんよ・・・なんでこんな目に・・・」

美優紀は目に涙をにじませながらぽつりと漏らす

「それは、お前が契約者になったからだよ」

「!」

そこには美優紀を拉致した男4人がいた

「なんで・・・そのことしってんの?」

「さぁな。ここで死ぬお前には関係ない話じゃないか?」

リーダー格の男が美優紀に近づき、顎をつかむ

「っ!」

「でも、いいじゃないか。どうせ、消えたいって思ってたんだろ?」

「え・・・」

「学校にも、家にも居場所がない。信用してた友達にも裏切られたんだ。そりゃ、自暴自棄にもなるわな」

「なんで・・・知ってるん?」

「でもな、お前はまだガキだから構ってほしいだけなんだろ?本気で消えたいなんて思ってないだろ?だからさ、今からそう思うようにしてやるよ」

男はそういってニヤッと笑い

ドンッ!

「きゃっ!」

美優紀を床に倒した地面に散らばった木くずやガラスで美優紀のほほには小さな擦り傷ができる

「傷だらけの女を犯すのもいいかもなぁ」

「っ!誰があんたらなんかと」

「おーおー。威勢がいいねぇ」

ドンッ!

男の蹴りが美優紀の腹に刺さる

「がはっ」

目の前が白黒になり、星が飛ぶ

「おいおい、まだこんなもんじゃねぇぞ。いいか、今から抵抗するたびにお仕置きしてやっから。嫌だったらさわぐんじゃねぇぞ」

そういって男たちは美優紀を取り囲み縛っていたロープをほどき床に押し付け

制服を脱がそうとした

「いやっ!いややっ!」

美優紀は抵抗するが、力ではどうにもできない

「おーおーいいねぇ」

「興奮するぜ」

男たちはテンションがあがり、ベルトに手をかける

押さえつけていた男は美優紀の胸に顔をうずめようとした

そのとき、美優紀は近くにあった角材を手に取り

「っ!嫌やってゆうてるやろっ!」

男を殴った

「・・・」

男の顔からは気の破片が刺さり、血がにじむ

「・・・決めた。こいつ殺そう」

男はゆっくり立ち上がり

ナイフを手に取る

「っ!」

美優紀は上体こそ起こしたものの、倒された衝撃で立てないでいた

「死ねよ」

男はナイフを高く振りかざす


こんなことなら・・・アカリンと仲直りしとくんやった

美優紀は目に涙をうかべ、、目をつよく閉じた

「だらぁっ!」

突如、男の顔に蹴りがめり込む

「ぐはっ!」

カランカラン・・・

鈍い音と金属音が響き渡る

「ったく、お前はなんで変な男しかよってこんねん」

美優紀はゆっくりと目を開ける

そこにはサヤカが立っていた

そして、地面にはリーダー格の男が倒れていた

「サヤカ・・・ちゃん」

「ちゃんづけでよぶなゆうてるやろ」

サヤカは顔を赤くしながら口を尖らせる

「みるきー!」

そこに吉田が駆け寄り、美優紀を抱きしめた

「アカリン・・・」

「よかった・・・酷い・・・こんな顔にされて・・・ほかにもなんかされたんか?」

「ううん・・・大丈夫」

「よかった・・・」

そういって吉田がまた強く美優紀を抱きしめた

「アカリン・・・ごめんね。ごめんね・・・」

美優紀はぽろぽろと涙をこぼす

「ううん。謝らんでいい。私の方こそ・・・いっぱい酷いこといってごめん」

「ちっ・・・」

サヤカは照れ臭そうにその光景から目をそらす

「何俺らのことほっぽりだして仲良しごっこしてるわけ」

「な・・・」

サヤカに蹴られた男はゆっくりと立ち上がる

その首は真横に向いていた

「サヤカ!やりすぎだ!」

高橋は焦る

「みなみ、そこじゃないでしょ?なんであの状況で立ち上がれるわけ」

前田は血の気が引く

「そんな程度じゃ、俺は死なねぇの」

そういって男は首を持ち、ぐっと力を入れて戻す

「・・・こいつら、人間じゃない」

「あぁ・・・そういうこったな」

サヤカと高橋はぐっと身構え

「ゆきりん!敦子たちを頼む」

そういって2人は男たちの方に走り出す

ドカッ、バキッ!

鈍い音が響き、男たちは倒れる

殴った部分からは砂が舞った

「・・・ゴーレム?いや、まさか・・・そんなはずは・・・」

高橋は混乱する

「おい!なにぼーっとしてんねん」

サヤカの声にハッとし

「そうだ・・・とりあえずこの場を乗り切らないと」

高橋は我に返り

地面に手をついた

「サヤカ、さがれっ」

サヤカが素早く反応し

地面から尖った無数の石たちが男たちの胸を貫く

そして、動きが停止した

サァァッ・・・

貫かれた体は、砂になり宙を舞う

「やはり・・・こいつらはゴーレムか・・・」

高橋がそうつぶやいた瞬間

リーダー格の男は、ぐっと刺さっていた石を折り引き抜いた

傷はみるみるふさがっていく

「言っただろ?そんなんじゃ死なねぇよ」

そういって男は笑う

「なんで・・・お前だけ・・・ゴーレムが胸を射抜かれて消えないわけがない」

高橋はたじろぐ

ゴーレムは人の形を形成する際に、核がなければいけない

その核は胸にあり、そこを破壊されると人としての形を保つことができないのだ

「俺をこんな土の塊のやつらと一緒にするな。今はまだ一人だけ・・・力が足りないだけだ」

そういって、男は地面を蹴り高橋に向かってくる

「くっ!」

高橋は石の壁を使い攻撃を防ぐが、次々と壊されていく

サヤカも応戦するが何度でも立ち上がってくるうえに、人間離れした力で防ぐこともままならないでいた

「くそっ・・・どないなってんねん」

壁に打ち付けられたサヤカは肩で息をする

「サヤカちゃん!」

風の結界で守られたなかで美優紀が声を上げた

「うっさいわ。黙って見とれ」

無様な格好をみられたくなくて、サヤカはよろよろと立ち上がる

「契約者ひとり守れんで・・・何が炎使いや・・・」

サヤカはぽつりとつぶやく


『いいかい、サヤカ。もしお前が選ばれしものになって、契約者を見つけたときは、しっかりとその人を守るんだよ』

サヤカの脳裏に、シノの言葉がよみがえる

『それが、忠誠を誓う炎使いの生きざまだよ』

「うあああああっ!」

サヤカは勢いよく立ち上がり、男に向かっていく

今、炎は使えない

でも、私は・・・

契約者を守る・・・

それが・・・炎使いってもんやろ・・・ばぁちゃん!

「おぉ、威勢がいいねぇ」

男はサヤカの攻撃を受け流し

ガッ!

「ぐはっ!」

腹に一撃を浴びせた

サヤカはよろめき、地面に倒れこんだ

「サヤカちゃん!」

「だめよっ!ここから出たら危ないわ」

柏木は結界を張りながら美優紀を制止する

「出してよ!ここから出してよ!サヤカちゃんが死んじゃう!」

結界に阻まれ美優紀は空中をドンドンと叩く

「うるせぇな」

男が美優紀の方を向く

「炎使いは殺さねぇよ。でもな、契約者のお前は別にどうなってもいいんだぜ」

にやりと笑い、ゆっくりと足をすすめていく

「待てやっ!」

サヤカは立ち上がろうとするが、足に力が入らない

「いかせるかっ」

高橋はよろよろと地面に手をつき

男の前に尖った岩を突き出した

「ゆきりん、今のうちに逃げろ!」

「うんっ」

柏木は浮きあがろうとした

が・・・

バァァァン!

男が勢いよく岩を崩し

すでに柏木の目の前に居た

「っ・・・」

柏木は息をのむ

「行かれちゃ困るんだよ」

男はぐっと手を伸ばし

結界を破り、柏木の首に手をかける

「っ・・・くぅ・・・」

呪文が詠唱できなくなり、結界がなくなる

「ゆきりん!」」

高橋は叫ぶが、もう力は使えなかった

ここは霊樹からの供給範囲から外れている

高橋はそのことをすっかり忘れていた

視線の先には、前田が肩で息をして倒れ込んでいる

上級レベルの技を使いすぎて、前田の体力を消耗してしまっていたのだ

(しまった・・・)

「離せよっ!」

吉田は果敢にもその男にむかっていく

「なんだ、お前」

男は吉田を軽く振り払い、吉田は地面に打ち付けられる

「アカリン!」

美優紀は吉田にかけよる

「安心しろよ。そいつも消してやるからよ」

そういって、男は柏木を勢いよく放り投げる

「ぐっ!」

鈍い声をあげ、柏木は地面に打ちつけられる

「ゆきりん!」

高橋は上体を何とか起こし、柏木の方に近づく

男は今度は渡辺の腕をつかんだ

「なにするん!」

「これだよ、これ。俺は、これが欲しいんだよ」

そういって男は美優紀の掌に自分の手をかざす

紋章が初めて光った時の赤の色とは違い

漆黒の煙のようなものが浮き上がる

「ぐっ・・・」

手がじりじりと焼けるような感覚におそわれ、美優紀は顔をしかめる

「ぐあぁぁぁっ」

それと同時に声を上げたのはサヤカだった

胸をおさえ苦しむ

「な・・・なにがおきてるんだ」

高橋はその様子に困惑する



その時

シャッ!

窓から何かが飛んできた

カキン!

男の腕が氷り、一瞬指先の力が弱まる

美優紀はとっさに腕を振りほどき

黒い煙は消えた

「おまたせー」

窓の方を見ると

そこには楕円形の水の上に乗っている小嶋たちの姿があった


僕の彼女は魔法使い35

ザワザワザワ・・・

街の雑踏が、美優紀を現実世界へと引き戻す

その後、美優紀は両親と暮らすことを拒み

母方の祖父母の家がある東京で暮らすことを決めた


「東京で会うとか・・・最悪。なんなん」

美優紀はぶつぶつ言いながら

街を見渡す

どこに行こう・・・

正直、東京に来てから

遊ぶ友達も居なかったので

いつも公園にいるか、駅前の店を転々と歩くかくらいしかしていなかった

・・・街での遊び方は全部吉田に教えてもらった

だから、一人でどうすごしたらいいのかというのは正直よくわかっていなかったのだ

「・・・ホンマ・・・最悪」

美優紀はぽつりと漏らした

そこに

「お、君ひとり?俺らとカラオケでも行かない?」

いかにもチャラそうな男4人が声をかけてきた

「いかん」

美優紀はさらなる苛立ちを感じ、そこから去ろうとする

「待てよ。ねーいいじゃんちょっとだけ」

男が腕をつかむ

「離してよ!」

美優紀は勢い任せに腕を振りほどこうとしたが

「っ!!」

腕が折れそうなほどに握りしめられ、顔をゆがませる

「素直についてきてくれたら痛いことしないからさ」

男は冷ややかな顔でいう

「誰が・・・あんたらとなんか」

「おいおい、言っただろ。おとなしくしろって」

そういって、男たちは美優紀を囲み

スッとナイフを出した

「!」

「な、いい子にしてろ」

「・・・」

美優紀は恐怖で声が出なかった

「おーいいのー?じゃあカラオケ行っちゃいますかー」

じろじろと見ている人たちに不信感を与えないよう

男たちは声をあげ、盛り上がる

「じゃあ、行こう」

そういって、美優紀を取り囲んだまま男たちは歩き出した

「声出したら、殺すよ」

そう耳元で言われ、美優紀は青ざめる


なんなんよ・・・

今日、ホンマに最悪・・・



―――

一方その頃

「で、吉田さん。なんで学校まで来たの?」

前田ががまっすぐに吉田を見つめた

「みるきーに・・・謝りたかってん」

「謝る?」

宮澤は首をかしげた

「別にええやろ。大阪でいろいろあってん」

吉田はぷいっとそっぽを向いた

「それは渡辺さんが学校に来ないのと関係あるのかな?」

篠田が問う

「え・・・みるきー学校行ってないん?」

「そ。今進級できるかの瀬戸際ね」

前田はふっととため息をつく

「なんで・・・ちゃんと行ってると思ってたのに・・・」

吉田はうなだれる

「大阪で何があったか、教えてくれないかな?」

篠田は優しい口調でいう

「いやや。あんたらにゆうたって変わらへんし」

「・・・やれやれ、教師は嫌い・・・か」

篠田はため息をもらす

「おい」

壁にもたれて話を聞いていたサヤカが口を開く

「ええ加減何があったか話せや。全然話進まへんやんけ」

サヤカはつかつかと吉田の方に歩み寄る

「あんた何?みるきーの友達?」

「はぁ?あいつは私のけ・・・」

「わー!そ、そうなんだ、おんなじクラスの子なんだよ!」
   
高橋は契約者というワードを出す前に制止する

「吉田さん、お願いっ!私、渡辺さんの担任なんだ。何があったか教えてくれないかな?学校に来て欲しいんだよ」

その勢いに乗じて、宮澤は手を合わせる

「・・・」

吉田は黙ったまま視線をそらす

「仕方ない。親御さんくるし、説得してもらおうかな」

前田がポツリという

「え・・・みるきーのお母さん来てんの?」

吉田がピクッと反応した

その反応を前田は見逃さなかった

「知ってるの?お母さんのこと」

「・・・」

理事長室はしばしの沈黙につつまれ

「言われてん」

吉田はゆっくり口を開き

「・・・もう、うちの子と付き合わんといてって・・・」

絞り出すように、言った

「なんだよそれ?ひどくねぇか?誰と付き合おうが自由だろうよ」

高橋はカチンとする

「仕方ないんや。私は定時制。かたやみるきーは有名な進学校やで。言われるんも無理ないわ」

吉田は皮肉っぽく笑う

「でも・・・ちょっとうらやましかってん」

「え?」

「私んとこにそうやって言いに来るってことは、少なからずみるきーのこと心配してるってことやろ?」

「・・・」

高橋は眉をひそめる

「私には、そんな心配してくれる人おらへんから」

「どういうことや」

サヤカが訪ねたが

「そこまで言わなあかんの?みるきーと何があったかゆうただけでええやろ」

そういって、吉田ははぐらかし

席をたった

「待ちなさいよ。そういわれても、気になってきたんでしょ?」

前田のセリフに、吉田の体はぴくっと動く

「だから、謝りたかったんでしょ?」

「・・・」

「あなた、友達思いのいい子ね」

前田はにこっと笑った

「うっさいな!」

吉田は顔を真っ赤にしながら部屋を出ていこうとしたが

「まぁ、待ちなさいよ。やみくもに探しても仕方ないでしょ?」

「え?」

「サヤカ、出番」

「は?」

前田のセリフにきょとんとする

「おい、敦子!吉田さんがいるんだぞ!」

高橋は焦って止める

「いいじゃない。一人なら、記憶消すのも体力しれてるでしょ?それに、私こういう子嫌いじゃないの」

前田はくすっと笑った

「はぁ・・・しゃーねぇなぁ」

高橋はため息をつき、サヤカの方に向き直った

「サヤカ、お前には言ってなかったが、私らは契約者の居場所を知ることができる」

「契約者?何それ?」

吉田はきょとんとする

「ま、いいから、いいから。ここで起きたことは他言無用でお願いするぜ」

高橋は苦笑いをし、説明を続けた

「目を閉じて、意識を集中しろ。そして、渡辺さんの姿を思い描くんだ」

「はぁ?」

「とにかくやれ、そうだなーイメージは空から探してるって感じだ。集中力が高まったら、いきなり上空から地上に引き込まれるような感じになって、今渡辺さんがどこにいるかがわかる」

「そんなんゆうても、ここらへんの土地やわからんで」

「大丈夫。たかみなが思念を地図に起こしてくれるから」

小嶋はぽりぽりと口を動かしながらいう

「にゃろはよくこの状況で食べてられるね」

篠田は苦笑いをする

「さ、そういうわけだから、今言ったとおりにやってみ」

「・・・」

サヤカは反抗したくなったが、祖母の顔をがうかんだ

この件であいつが学校に行ってくれるようになるんなら・・・仕方ないか

サヤカは目を閉じ

意識を集中させる

学校の天井を突き抜け、空から町を見下ろす

高橋はサヤカの肩に手をおき、目を閉じ反対の手をスッとかざした

そこには石板が現れ、地図が示される

「な・・・なにこれ?魔法?」

吉田はあっけにとられ、後ずさりする

「そうだよ。ここにいるみんなはちょっと特殊でね。だから、君の嫌いな教員とも少し違うと思うよ」

篠田がその背中を後ろから受け止め、優しく語りかけた

「え・・・」

「みんな心配してるんだ。渡辺さんのこと。そして、君と仲直りできるようサポートしたいとおもってる」

「・・・」

「だから、少し信じてみて」

そういって、ニコッと笑った


「・・・」

サヤカの意識は空を飛び、町を見下ろす

そして、ぐっと引っ張られるような感覚になり

地上へと降りていく

そして・・・

そこには廃墟で椅子に縛られた美優紀の姿が映った

「なんやこれ・・・!」

サヤカはハッとして目を開けた

「どうした?」

「あいつ・・・縛られてた」

「え?」

「ようわからんけど・・・人気のないぼろぼろの建物におった!とにかく危ないんや!」

サヤカは苛立ち、怒鳴る

「待て、地図みろ。お前が降りて行ったのはここだ」

「ここって・・・かなり郊外だね」

篠田は眉をひそめ、携帯で地図が示された地区を検索する

「んー・・・」

小嶋は立ち上がり、篠田の携帯の地図を覗き込んだ

「あ、このあたりってなんか廃旅館があるところでしょ?」

「え?」

「なんか生徒たちが肝試しに行くんだーとか言ってて、やめなさいっていってたの」

「陽菜!そこの名前なに?」

「えーなんだっけ・・・たしか・・・なんとか旅館」

「・・・」

篠田は検索ワードに心霊スポット 旅館と打ち込む

「わかった!三笠旅館だ!」

「よしっ!みんな行くぞ!」

高橋は声を上げる

「待ちなさい、とりあえず玲奈もよばなきゃ。ケガしてたら治さなきゃいけないでしょ」

前田が制止する

「じゃあ、私と陽菜は玲奈を連れていく」

篠田がうなづき

「じゃあ、珠理奈もつれていこう。部活やったるだろうから私声かけてくるよ」

宮澤も言う

「頼んだぞ」

そういうと、高橋は柏木の方を見る

「りょうかーい」

柏木は手をかざし、ふわりと大きな球体を作った

「じゃあ、みんな乗って」

前田の合図にみな、球体の中に入る

「りんちゃん、無理しないでね」

「うん、大丈夫」

2人は見つめあう

「ほら、こんな時でもイチャイチャしないの。さ、吉田さんもいくわよ」

「え?」

「仲直りには、きっかけが必要だから」

そういって、フッと笑った



僕の彼女は魔法使い34

そして、美優紀は家に帰らなくなった

正確に言うと帰りづらくなったのだ

両親が居ない隙を見て家に戻り、すぐまた出て行くという生活をくりかえす

学校も休みがちになっていたが

もともと、成績の良い美優紀はテストだけはいい結果を残していた

だが、美優紀を見つめる学生たちの目は変わっていった

まるで、汚れた何かを見るような目だった

「・・・」

そんな視線が嫌だった

だから、冬休みに入る頃には

不登校になっていた

そして

「美優紀、大事な話しがあるの」

両親に言われ、しぶしぶ美優紀は家のリビングに居た

ダイニングテーブルに並んだ両親、その前に座る美優紀・・・

目を合わせづらくて、思わずそらしていた

「お母さんたちね、離婚・・・しようと思うの」

「・・・」

思わず美優紀は両親を見た

父親は何も言わず、黙っていた

「そう・・・」

「だから、どっちについていくか・・・決めてほしいの」

「・・・どっちも嫌ってゆうたら?」

「いい加減にしろ。おまえはまだ高校生なんだ。どっちかについてきなさい」

父親の台詞にカチンとする

「なによっ!散々好き勝手やってきたお父さんにそんなん言える権利あるん?」

美優紀は立ち上がりガタっと椅子が大きな音を立てる

「おまえは子供なんだ!おまえこそそんなこと言う権利ない!」

「なによっ!都合のいいときだけ親ぶって!私は・・・私は・・・」

あんたらの都合のいい娘やない

そう言おうとする前に、涙があふれてきて

美優紀はたまらず家を出た

走って、走って・・・

吉田がいつも居る、駅前のあの場所まで走っていた

「・・・」

吉田は美優紀の姿をみると、座っていた花壇の縁から立ち上がり

美優紀の傍に歩み寄ってきた

「はぁ・・・はぁ・・・アカリン・・・」

美優紀は肩で息をしながら、さっきあったことを吉田に言おうとした

だが

「え?」

吉田は美優紀の横をすりぬける

「朱里ーお待たせー」

「どこいくー。カラオケー?」

後ろを振り返ると、派手な格好をした女子たちが吉田を囲んでいた

「うそ・・・」

美優紀はぽつりと漏らす

「そうやなー。カラオケしよー。朝までいっちゃう?」

「いいねー」

吉田は振り返ることもなく女子たちと話しをする

「・・・アカリン!」

美優紀は絞り出すような声で叫ぶ

「「・・・」」

一斉に女子たちの視線が美優紀に集まり、たじろぐ

「・・・」

そして、吉田も振り返り

ゆっくりと美優紀の方に歩み寄ってきた

「みるきー。もう、会うんやめよう」

「え・・・?」

衝撃的な言葉に、頭が真っ白になる

「ずーっとさ、遊んでる間も考えてたんだよねー。あんたとおってもつまらんのよなー」

「なに・・・それ?」

冷たく言い放たれた言葉に心拍数が上がる

「タイプの違う子と遊んだらおもしろいかなーって思ったけど、やっぱり合わんなーっておもって。だから、もうおしまい」

「アカリン・・・私は・・・」

美優紀は言葉をはなとうとしたが、喉の奥でつっかえて言葉にならなかった

「朱里ー。なにしてるん?早くいこー」

後ろで女子たちが口をとがらせていた

「わかったー。じゃあね。はよ帰って勉強でもしたら?」

吉田はそういうと踵を返し、去って行ってしまった

美優紀には、もう追いかけていく気力もなかった

そこにへたりこんでしまうのを必死に耐えるだけで

精一杯だった

「なによ・・・なによ・・・・」

美優紀の脳裏に、吉田との思い出が蘇る

優しくしてくれたん、全部演技なん?

笑ってくれてたんも・・・全部・・・

「っ・・・」

美優紀は肩をふるわせて泣いていた

家族も、友達も・・・なにもかも・・・失った気がした


もう、大阪になんていたくない

消えてしまいたい

そんな思いしか抱かなくなった


僕の彼女は魔法使い33

それから、美優紀は吉田と遊ぶようになった

ファッション雑誌を参考に2人で化粧をしたり

駅前のゲームセンターでプリクラをとったり、買い物をしたり・・・

それは、美優紀の今までの生活とは全く違う世界だった

楽しかった

吉田と笑って、街を歩いて・・・

友達だと初めて思える人に出会えたと思っていた


だが・・・

「美優紀!あなたいい加減にしなさいよ!」

美優紀の母がリビングで声を上げた

「・・・」

美優紀はむすっとした顔で母を睨む

夏休みが開け、2学期が始まっても美優紀は吉田と遊び続けており

塾に行っていないこともばれたのだ

「あなた、なんであんな子とつきあってるの!?あの子、定時制の学校でしょ!?そんな子とあなたが一緒に居るなんてお母さん耐えられないわ」

「何も知らん癖に、なんでそんなこというん!?」

「いい、美優紀。あなたは勉強していい大学に行くの。だからあんな子とは遊ばないで」

「それはお母さんができんかったから?」

「・・・!」

その言葉に母は顔をしかめる

「全部聞いた。お父さんが浮気してることも、お母さんがいい大学に行かせたいのも・・・」

「・・・」

「今まで私にしてきたことは、全部自分らのためだったんやろ?だったら、こんな人生いらん!私は私の好きに生きる!」

パンッ!

乾いた音がリビングに響き・・・

「・・・・っ」

美優紀は頬を押さえ涙ぐむ

「いいかげんにしなさい」

母は冷たく言った

「っ!なによっ!」

美優紀は鞄を手に、家を飛び出した

一旦出だした涙は、止まることなく溢れ続ける

「なによっ・・・なによっ・・・」

じんじんと疼く頬の痛みよりも

心が痛かった

―――

「みるきー」

外灯が照らす駅前の花壇の脇に腰掛けた吉田がパッと手を上げる

「アカリン・・・」

「え、どないしたん?その顔」

「叩かれた」

「え・・・?」

「お母さんに。でも、ええねん。私、高校辞めて家出て行こうかな」

「え?どないしたん。急に・・・」

吉田は眉をひそめる

「ええの。なぁ、アカリン家泊めて」

「え?」

「しばらくは帰らへんつもりやから」

「みるきー・・・」

「私、愛されてないねん」

美優紀はそういって笑った

その顔は、精一杯強がっている顔だった

「ごめん。みるきー。家は・・・泊めれん」

「え・・・」

「でもな、朝まで一緒におるよ」

吉田は美優紀をそっと抱きしめた

「うぅ・・・」

美優紀の頬に涙が伝う

「・・・」

吉田はそんな美優紀の背中をだまって撫でていた



僕の彼女は魔法使い32


―――

「はぁ・・・はぁ・・・」

美優紀は勢い任せに走り

駅前までたどり着く

肩で息をしながら

「・・・」

英新塾の看板が目に入り

美優紀は大阪に居た頃を思い出していた


―――

美優紀は裕福な家庭で育った

何不自由ない暮らしで何も気に留めることはなかった

幼い頃から英才教育と称して

塾や習い事をしていた

『100点とって偉いわね』

『美優紀は天才だな』

そういって両親が褒めてくれることが何よりもうれしかった

美優紀は中学でも成績優秀で有名進学校からも声がかかるくらいになっていた

そして、大阪の有名進学校から声がかかった

中学の時から、父親が大阪に単身赴任をしていたので

高校になることろに大阪にうつり、共に生活をするようになった

だが、そこから家族の歯車が少しずつ狂い始めていた

父親が帰りが遅く、母とその度に口論となっていた

どうすれば、家族がうまくいくのか・・・

美優紀は考えた

そして、自分がテストでいい点を取った時は両親が褒めてくれることを思い出した

私がいい成績をとれば両親は褒めてくれた

私がいい子で居れば、また家族が元に戻るかもしれない

頑張っていれば、きっとまた・・・

そんな淡い思いを信じ、美優紀は必死に勉強をしていた

そして、塾の夏期テストで成績優秀者として会報誌に乗り、両親も喜んでお祝いをしてくれた

しかし

それはすぐに消え去ってしまった

夏休みのある夜

「どうりで帰りが遅いと思ったら!」

「うるさいな!お前のそういうところが嫌なんだよ」

2階で寝ていた美優紀は1階のリビングで言い合いをする両親の声で目が覚めた

そっと階段を降り、ドアから漏れる光にそっと目を当てる

「私は家族のためにいろんなことを犠牲にしてきたの!それなのに何よ!?あなたはほかの女と遊んで」

「それはこっちの台詞だ!人が働いた金で何不自由なく生活してるくせに偉そうに言うな!」

「何よそれ!」

「だいたい、あのまま奈良に残ってくれていたら良かったのに。大阪の高校に行くとか言い出すから」

「なによそれ?美優紀が悪いって言いたいの?あの子はこのままいい大学に行っていい会社に就職するのよ!そのために大阪を選んだのに」

「それはお前のエゴだろ?自分がいい大学やいい会社にはいれなかったから美優紀にすべてを押してつけてるんだろ?」

「そうよ。悪い?子供に夢持って何が悪いのよ!」


(・・・・!)

美優紀の中で何かが音を立てて崩れていった


お父さんも、お母さんも・・・成績がいい子が好きなんだけなんだ


美優紀はスッとその場を離れた


そして、美優紀は塾をサボるようになった

勉強しに行くと言っては駅前をぶらぶらしていた

美優紀は勉強をせずに街を歩いていて気付いたことがあった

遊びに行こうと気軽に誘える友達が自分には居ないと言うことだった

もちろん、奈良にはそれなりに友達もいたのだが

新しく来た大阪という地で

美優紀は勉強しかしていなかった

クラスの子と話すことはあっても、それ以上でも以下でもない・・・ただのクラスメイトだった

「・・・」

ピッポッ、ピッポッ・・・

信号が青になり、皆が一斉に歩き出す

美優紀もその波のなかであわてて歩き出した

クラクションや交差点の音、排気ガスの匂い・・・

誰もかれもが早足で

私の存在なんてこの中の一部でしかないんだ・・・

このまま、波にのまれて消えて行くのかな・・・

そんなことが頭をよぎり

美優紀は足をとめた

バンっ!

その瞬間後ろから衝撃があり、よろめく

「ちょっと!あんた何急に立ち止まってんのよ?」

甲高い声が後ろから聞こえ

振り向くと、背の高い色白の女の人がこっちを睨んでいた

「あ・・・すいません」

美優紀は俯く

「・・・信号変わるから、話しは渡ってからね」

「え?」

その女性は美優紀の手をとり

向こう側まで走りだした

美優紀はわけがわからなくてぽかんと手を引かれるままだった

ブーン・・・

信号が変わるやいなや車が一斉に走り出す

「セーフ」

女性は車を見つめフッと息を吐く

「あ、あの・・・すいませんでした」

美優紀は頭を下げる

「交差点で立ち止まったらあかんっていうん小学生でもわかるで」

「すいません・・・」

美優紀はなんだか虚しくて泣けてきた

「え・・・ちょっと?」

その女性はおろおろして辺りを見渡す

行きかう人はちらちらとこちらを見ており、気まずさしかない

「あー!もう!なんやねん!とりあえずこっちきて!」

女性はまた美優紀の手をつかみ

ずんずんと歩く

そして、駅前のマックに入り

「ポテトLとコーラ2つ」

慣れた感じで注文をし、注文番号のプレートを手に

席に座る

「あ・・・あの」

美優紀はおずおずと女性の方を見る

「名前」

「え?」

「名前は?何歳?」

鋭い言葉に、美優紀は太刀打ちできず

「渡辺・・・美優紀。15歳」

素直に応える

「中3?」

「いえ、高一です」

「うそっ!同い年やん」

「えっ!?」

美優紀は思わず声を上げた

「何よその反応?」

女性は口をとがらせる

「だって・・・大人っぽいから・・・」

「あーそれは化粧とか服でそう見えるのかもねー」

「化粧・・・するんだ」

「するよー最近の高校生はおしゃれしなきゃー」

「う・・・うん」

美優紀は俯く

勉強ばかりしてきた美優紀にはおしゃれなど無縁のものだった

服もTシャツにGパン・・・どこにでもいる高校生・・・いや、中学生に見間違えられるのも無理はない

「お待たせしましたー」

そこに、店員が現れ美優紀達の前にポテトとコーラを置いて去って行った

「あんた、暇?」

「え?」

「遊びにいかへん?」

「へ?」

「せっかくやから、おしゃれしたらええねん。私、吉田朱里よろしくね」

そういって、吉田はポテトをつまんで食べた


僕の彼女は魔法使い31

話しは少し前にさかのぼる

麻友と話しをして機嫌を損ねた美優紀は足早に下駄箱の方に向かっていた

「何よむかつく・・・」

苛々しながら下駄箱に上履きをいれ

校門に向かって歩き出す

歩いていると

「なぁなぁ、ちょっと聞きたいんやけど――」

関西弁が聞こえてきた

視界には私服を来た女性が生徒に話しかけていた

「え・・・」

美優紀はその姿をみて

「アカリン・・・」

ぽつりとつぶやいた


「すいません。よくわからないです」

「そう、ありがとう」

女子生徒2人は足早に去っていった

そして、女性は美優紀の方に視線を向け

パッと表情がかわる

「みるきー!みるきーよな!?」

その女性は美優紀に駆け寄る

「よかったー!なんや東京の有名進学校に言ったとかいう噂しか聞いてなくてなー。場所ようわからへんから美優紀がいってた彩美堂に行っておばあちゃんに聞いたんよ。いつ帰ってくるかわからんって言ってたから試しにこっちに来てみてん。いやーよかったー会えて」

アカリンという人はテンションがあがって早口になる

「なんで来たん?」

美優紀はそのテンションとは裏腹に冷たく言った

「・・・あのな。私、みるきーと話しがしたくて」

「あんたと話しすることやない!なによ!一方的に切ったんそっちやん!今更虫が良すぎるわ!」

「それは・・・謝る。でも、あの時はそうするしかないと思ったん」

「知らん」

美優紀はスッと横を通り学校を出ようとする

「待ってよ!話ししたいいんよ!」

アカリンは美優紀の腕をつかむ

「離して!」

「離さん!」

「離せってゆうてるやろ!!」

「嫌や!ちゃんと聞いてくれるまではなさへん!」

校門で大きな声で怒鳴り合っていたので遠巻きに他の生徒たちが見ていた

美優紀はそんなこと気にもならなかった

苛立ちがマックスで視界には目の前にいるアカリンしかうつっていなかった

「何やってるんだ!」

男性教員が駆け付け

「渡辺さん!」

その後に宮澤たちが続く

「やばっ!」

アカリンがひるんだ隙に

美優紀は腕を振り払い

一気に走りだした

「あっ!みるきー!」

アカリンは追いかけようとしたが

「待ちなさい」

男性教師に肩をつかまれる

「離して!」

「だめだ!どこの生徒だ!」

じたばたと暴れるアカリンだが、男性教師には通用しなかった

「田中先生。ここは私たちが引き受けます」

「宮澤先生」

「・・・」

男性教師とアカリンは宮澤の方をみる

「君、ちょっと話しいいかな?」

そう言って宮澤は笑った

「ほら、皆帰りなさい」

田中はじろじろと見る生徒たちを帰るように

手を大きく振る

ガヤガヤと騒がしく生徒たちが移動していく

「ふーん・・・。使えるかも・・・ね」

その様子を2階の窓から見て、麻友はニッと笑った


数分後・・・

アカリンは理事長室に連行されていた

中にはいつものメンバーが周りを取り囲み

部屋の端にはサヤカが居た

「じゃあ、名前と学校聞かせてもらいましょうか」

前田はにこにこと椅子に座ったまま尋ねる

「・・・」

「ちゃんと答えてくれたら、学校や親御さんには言わないから」

「ゆうても一緒やで」

「え?」

「親も学校も、私になんて興味ないから」

「君、大阪の子なんだよね」

宮澤も会話に加わる

「そうや。もうええわ。あーあー。東京でも教師に詰め寄られるとは思わへんかったわ」

アカリンは椅子にもたれ、観念したように天井を見上げ

「吉田朱里」

「え?」

「難波中央高校2年 吉田朱里や」

吉田は前田の方をみてフッと笑った

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