気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

小説 さえゆき

初めての彼女 番外編3 ⑤

柏木は瀬部を見送った後


くるっと向きを変え


宮澤の方に歩み寄ってきた


秋元は気を利かせてストーカーを連れてその場を離れる


「どうして?」


「え?」


いきなりの問いかけに宮澤は固まる


「どうして今日遅れたんですか?」


「そ、それは・・・今日検挙しようと思って・・・」


宮澤はしどろもどろになる



ぱんっ



乾いた音が響きわたる


「なんで言ってくれなかったんですか!」


柏木の目に涙がたまる


「・・・」


宮澤は頬を押さえたまま黙っていた


「いつストーカーがくるかわからないから・・・いつも迎えに来てくれてたんじゃないんですか?」


「・・・」


「なのに・・・どうして今日捕まえるって言ってくれなかったんですか・・・」


柏木は顔を手で覆い


声をくぐもらせた


「・・・すいません」


宮澤は頭を下げる


「・・・一人で怖かった・・・」


柏木は小さな声で呟いた


「・・・っ!」


宮澤の胸は締め付けられる想いだった



柏木はそんな宮澤の顔をみて一瞬ためらったが


勢いよく走り去り


その場を後にした



ウーーーーーー


パトカーのサイレンが聞こえる中


宮澤は柏木が去って行った方向を虚しく見つめていた



――――――――



秋元はパトカーにストーカーを乗せ


宮澤の方を振り向く


そこにはぽつんと宮澤が立っていた


「おいおい・・・」


秋元はため息をついた


「すいません。こっちお願いしますね」


秋元は他の警察官にそう告げると


宮澤の方に向かった



「佐江!」


「あ・・・才加・・・」


宮澤は覇気のない顔で秋元を見る


「なんて顔してんの・・・」


「・・・・」


宮澤は黙りこむ


「・・・今回はお前が悪い」


「な・・・」


「大体あのストーカーここ最近、毎日病院に来てたらしいじゃん。てことは、佐江気づいてただろ。それなのにすぐに検挙しないで何日も伸ばして。挙句の果てに一般人が確保してたじゃないかよ。」


「た・・・タイミングがあるだろ!それにちゃんとした証拠がないから数日様子を見ようとしてたんだよ・・・」


宮澤はもごもごと答える


「だからタイミングは今までにもいっぱいあっただろ。言ってること矛盾してるぞ」


秋元は苦笑いをする


「う・・・」


「とにかく、謝ってこい」


秋元は宮澤の背中をぱんっと叩き気合を入れる


「でも・・・」


宮澤はうつむく


「佐江。このままでいいのか?」


秋元のトーンが真面目になる


「・・・」


宮澤の脳裏に泣いている柏木の姿がよぎった


「行ってくる!才加ありがとう!」


宮澤はそう言うと乗ってきたバイクにまたがり走り出した



「・・・ホントに気にいってるんだなー。いつもなら被害者には深入りしないくせに・・・」


秋元はふっと笑い


パトカーの方に向かって歩いた



宮澤はバイクを走らせる


(マンション近いからもう帰ってるかな・・・)


そんなことを思いながら


急いでバイクを飛ばし


マンションに向かったが


柏木の部屋には電気が付いていなかった


「・・・どこいってるんだ?」


宮澤は不安になる


「くそっ!」


宮澤は向きを変え


またバイクを走らせた




宮澤は小嶋に柏木の写真を見せてもらった時から


胸が熱くなるのを感じていた


今思うとあれは


いわゆる一目惚れってやつなのだろう


人の顔と名前を覚えるのが苦手なくせに


柏木の顔は一瞬で目に焼き付いていた



警察官になってからというもの


宮澤の女子ウケは尋常ではなかった


一応仕事ということもあり


被害者とは一線を引くことを決めていた


しかし


柏木は宮澤にとっては特別だった


相談された以上、仕事としての責務は果たすが


終わってしまってから会ってくれる保証もない


ならば任務中に仲良くなって


解決後も会えるようにもっていこうという


宮澤の作戦だったのだ


だが、今日に限って携帯を忘れ


謎の男性に先を越され


挙句の果てに柏木からビンタをくらうという始末



予想外の展開が続き


宮澤は困惑していたが


(とにかく今は謝ろう!せめて友達でいいから・・・これからも会いたい)



宮澤の頭の中は柏木のことでいっぱいだった



――――――


一方、柏木は病院近くの


公園にいた




外灯が寂しく遊具を照らす中


ひとりぽつんとブランコに座り


ゆられていた


「なにやってんだろう私・・・」


ぽつりとつぶやき


涙をぬぐった


この公園は柏木のマンションと病院の丁度間にあるのだ


真っ直ぐ家に帰る気にもなれず


ここで時間を潰していた




ドルルルル・・・・



そこに


公園の入口の方から


バイクのエンジン音が聞こえた


そしてバイクの音が止むと


乗っていた人が走ってきた



「柏木さん!」


「み、宮澤さん!」


柏木は思わず立ち走り去ろうとする


「待って!」


宮澤は柏木の手首をつかむ


「・・・」


捕まった柏木は大人しくその場を動かなかったが


宮澤の方を向こうとしなかった


「・・・柏木さん。ごめんなさい」


宮澤は頭を下げる


「今日同期の秋元と予定があって、検挙することにしたんだ。急に決めたのは悪いとおもってる・・・それに連絡しようと思ったら携帯わすれてるし・・・でも近くで見てたんだ!何も起こらないように!」


「・・・もういいです。私もやりすぎました」


「いや、私が悪いんだ・・・本当にごめん」


宮澤はもう一度頭を下げた


「・・・」


柏木はゆっくり宮澤の真正面に立ち


おそるおそる顔を上げる宮澤の頬にそっと触れた


「ごめんなさい。痛かったでしょ」


「いや・・・大丈夫」


「・・・私もぶっちゃったし・・・これでおあいこってことにしましょう」


柏木はバツがわるそうに笑った


「あ、ありがとう!」


宮澤は思わず柏木を抱きしめる


「ちょ、ちょっと!何するんですか」


柏木は顔を赤らめて離れる


「いやーうれしかったからつい・・・」


宮澤はぽりぽりと頭を掻いて笑う


「もー・・・」


いつもの宮澤の笑顔を見て


柏木もつられて笑っていた


初めての彼女 番外編3 ④

それから柏木の勤務終わりに


宮澤が迎えに来ることになった


天真爛漫な宮澤に柏木も徐々に打ち解けていった


そして10日ほど経ったころ―――



「佐江。どうだ検挙できそうか?」


昼休み


食堂で定食を食べながら秋元が宮澤に話しかける


「んーそろそろかなぁ」


宮澤は唐揚げを頬張りながら答える


「そうか。今回はえらく時間かけるんだな」


秋元は味噌汁をすする


「・・・んぐっ!」


宮澤は動揺して唐揚げをのどに詰まらせ


勢いよくお茶を飲んだ


「はー死ぬかとおもった」


「大丈夫か?」


涙目の宮澤を見て秋元は心配そうに尋ねる


「うん。なんかさー。物陰から見てるんだよねー。そろそろストレス溜まってきたころだろうから近寄ってきたところを狙おうかなと思ってさ」


宮澤は呼吸を落ち着けながら話す


「そうか。じゃあ私も行こうか。」


「お、助かる。ありがとう」


宮澤はにこっと笑った



―――――――


勤務終わり


柏木はいつものように駐輪場近くのベンチで宮澤を待っていた


宮澤と秋元は物陰からその様子を見ており


ストーカーが現れるのを待っていた


「・・・今日遅いな」


柏木はそう呟き携帯に目をやる


いつもの待ち合わせ時間から10分が過ぎていた


(一回中に入ろう・・・)


そう思い病院の出入り口に向かって歩き出そうとしたとき


「柏木さん・・・」


「へ?」


そこには中年の小太りの男が立っていた


この男こそが柏木のストーカーである


「・・・!」


柏木は恐怖で体が固まる


「最近救急外来に行っても会ってくれないし、帰り待ってても変なやつが迎えに来てるし・・・」


そう言いながら柏木に近づく


「や・・・」


柏木は恐怖で声が出ず


じりっと後ずさる




「今だっ!才加行こう」


「おう」


小声で話しをすると


2人は柏木に向かって走り出した



「やめろ!」


そういってストーカーの腕をつかむ



「「へ?」」


宮澤と秋元は同時に声をあげた


腕をつかんだのは宮澤でなく


すらっとした長身の男性だったのだ



「・・・瀬部くん!」


柏木は思わず叫ぶ


「な、何だよお前!いつもの奴じゃないし」


男も驚いて腕を振り払おうと暴れる


「大人しくしろっ!」


そういうと瀬部は腕を取って背中の方にねじる


「痛ててっ!」


ストーカーは痛みで倒れこむ


秋元と宮澤は


彼の流れるような身のこなしを立ち止ったまま見ていた



「佐江!」


秋元は、はっとして宮澤の方をみる


「あ、ああ。行こう」


宮澤も秋元の声で慌てて走り出した


「警察だ!」


宮澤と秋元が現場に駆け付け


ストーカー男は検挙された


パトカーを待つ間


2人は職務質問をしていた



「あ、ありがとう瀬部くん・・・」


柏木は頭を下げる


「いえ、いいんです。駐輪場にきたらたまたま・・・」


そういって照れ笑いをする



彼は瀬部 健人


柏木と同じ救急外来で働く男性看護師であり


柏木より1個下の後輩である



「じゃあ、俺帰ります。」


そう言ってマウンテンバイクにまたがり去って行った


「ありがとう」


柏木は手を振り見送った


その様子を職務質問そっちのけで宮澤は見ていた


初めての彼女 番外編3 ③

その翌日―――


仕事を終えた柏木は宮澤に電話をした


『今夜間入り口の方に居るから、来てください』


宮澤はそう言うと電話を切った


「大丈夫かな・・・」


柏木は少し不安になりながらも


足をすすめた



自動ドアが開き


柏木はきょろきょろとあたりを見渡す


「お疲れさま」


「え・・・」


すっと視界に入ってきたのは


ライダース姿の宮澤だった


昨日のスーツ姿とはまた違った雰囲気で


柏木は思わずドキッとする


「一応当たりを見回したりしてみたんだけど…それらしい人は見当たらなくて。とりあえず帰りましょうか」


宮澤はにこっと笑うと


駐輪場の方に向かって歩き出した


「え・・・でも」


柏木は戸惑う


「今日は送るから。ほら」


そういうと宮澤は柏木の手を引き歩き出した


「え、あ、あの」


「いーから、いーから」


戸惑う柏木を宮澤は強引にリードし、駐輪場に向かった


派手な黄色のバイクの前で


「はい」


宮澤は柏木にヘルメットを手渡す


「へ?」


柏木は余計に混乱する


「バイクの後ろ乗るの初めてかな?」


「は、はい」


「じゃあ教えるから、メットかぶってね」


宮澤はにこっと笑い


柏木に乗り方を教え


後ろに座らせた


「じゃあ、しっかりつかまっててねー。あ、家教えてください」


「あ、あの・・・ですから・・・」


「柏木さん」


宮澤は真面目なトーンで振り返る


「は、はい」


「危険な目に会ってもいけませんから。ね?」


宮澤はそう言うとウインクをした


「わ、わかりました・・・」


そういうと柏木はマンションの場所を説明する


「じゃあ行きまーす」


そういうとエンジン音を響かせて病院を後にした


そして


その様子を物陰から眺めている


男性の姿があった・・・



―――――――


柏木は


宮澤の背中にきゅっと抱きついていた


(なんで私ドキドキしてるの・・・女の人なのに・・・)


柏木はそんな気持ちを抱く自分に戸惑いながらもやもやしていた



キーーーーッ


バイクが柏木のマンションの前で止まる


「着きましたよ」


宮澤が後ろを振り向いて笑った


「あ、は、はい」


柏木はあわてて返事をし


バイクを降りる



「ありがとうございました」


柏木は頭を下げる


「じゃあ、明日も仕事終わり行きますね」


「え・・・でも・・・」


「ストーカーはいつ来るかわかりませんから。ね?」


宮澤はにこっと笑った


「すいません・・・お忙しいのに」


柏木は申し訳なさそうに頭を下げた


「いえいえ、いいんですよ。じゃあ、おやすみなさい」


宮澤はにこっと笑う


「おやすみなさい」


柏木もにこっと笑いマンションの中に入っていった


宮澤は柏木が入って行ったのを見届けると


きょろきょろとあたりを見回し


「ついてきてないな・・・」


と呟いたのだった






初めての彼女 番外編3 ②

――――


「ふぅ・・・終わったな」


秋元はホワイトボードを消しながらつぶやく


「まったく・・・佐江が途中で居なくなるから対応とか大変だったんだからな・・・」


そういって後ろを振り返り


「って何してんの!?」


思わず叫ぶ


そこには荷物をまとめてそそくさと出て行こうとしている宮澤がいた


「才加ごめん!人待たせてるから!後は任せたっ!」


宮澤は手をぱんっと合わせ、走り去って行った


「おい!佐江!・・・ったく今度メシおごれよなー」


秋元はため息をつくと


再度片づけに取りかかった



――――――


「・・・まだかなぁ」


柏木は腕時計を見る


待っていてと言われてからもうすぐ1時間が経とうとしていた


「すいませんお待たせしちゃって!」


息を荒げながら宮澤が柏木の前に現れた


「いえ・・・」


柏木はちらっと宮澤を見ながら頭を下げた


「あーおなかすいたー。柏木さんは何か食べました?」


「いえ・・・まだですけど」


「じゃあ、もういい時間ですし此処でご飯食べましょう」


「え?あ、あの」


「いいんですって。待たせちゃったし此処はおごりますから」


「いえ・・・でも・・・」


「すいませーん。オムライスと唐揚げプレートお願いしまーす」


宮澤は戸惑う柏木をよそに注文をする


「ここのオムライスおいしいですから。たべてみてください」


そういって笑った


「は、はぁ・・・」


柏木はすっかり宮澤のペースに乗せられてしまっていた



「で、お話なんですけど・・・どのような感じなんですか?」


一瞬にして宮澤の顔が真面目になり


柏木がドキッとしてしまった


「あ、は、はい・・・」


柏木は自分の気持ちを落ち着かせるように一呼吸おいて話し始めた


「私、救急外来で看護師してまして・・・最近、夜勤になると私がいるかどうか確認の電話が入ってきたり、腹痛や腰痛だと言ってひと月に何度も救急外来に来ている人がいるんです」


「そうですか」


「はい・・・直接的なものは無くて、スタッフも私にその人の対応が当たらないように注意してくれているんですが・・・」


柏木はごくりと息をのむ


「この前・・・夜間入り口の前で居るのを見てしまって・・・」


「それって・・・」


「私が勤務が終わる時間帯でした」


柏木はうつむく


「幸い出る前に気づいて職員専用の出入り口から出て事なきを得たのですが・・・怖くて・・・」


「見たのは何時ごろですか?」


「あれは夜6時ぐらいだったと思います・・・」


「・・・夜勤のときは大丈夫なんですか?」


「夜勤は夕方入って朝までいるので大丈夫なんです。わりかし人もいますし・・・」


「そうですか・・・」




「お待たせしました―」


そこに店員が料理をもって現れ


話しが中断する



「よし、じゃあ食べましょう」


宮澤は柏木にスプーンを差し出す


「あ・・・はい」


とっさに柏木は受け取る


「明日日勤ですか?」


「へ?は、はい」


「じゃあ私が見張っときますよ。その男」


「え・・・?」


「私が責任もって担当させていただきます」


そう言うと宮澤はにこっと笑った


「あ、ありがとうございます」


柏木はほっとして頭を下げる


「じゃあ、食べましょ。ねっ」


宮澤はフォークで唐揚げを刺し


「はい、どうぞ」


柏木の前に置かれたオムライスの端に唐揚げを乗せる


「唐揚げもおいしいですから」


そう言って


にこっと笑った


急に真面目になったかと思えば


子供みたいに屈託のない笑顔を見せたり


ころころ変わる宮澤の表情に


「ふふっ・・・」


柏木は思わず吹き出す


「へ?何か変なこと言いました?」


柏木が急に笑ったので宮澤はきょとんとする


「いいえ。何でもないです」


「えーなんでもなくないでしょー」


口をとがらせる宮澤を見ながら



(なんで人気があるのかちょっとわかったかも・・・)


と納得したのだった


初めての彼女 番外編3 ①

初めての彼女番外編になります


設定はこちらからどうぞ http://ameblo.jp/k-re48/entry-11696382323.html



――――


「以上で終了となります」


少し広めの会議室で


スーツを着た背の高い女性2人が


ホワイトボード前で一礼する


会場内にいる女性たちも


一同に礼をした


「では、これから少しの間質問を受け付けますので・・・」


そう言い終わる前に


女性たちが一斉に立ち上がり


前で講義をしている女性たちに駆け寄る


「あ、あのとりあえず一列に並んでください」


「そうですよー。ご協力よろしくお願いします」


2人はあわてて左右に用意してあった


長机に座り


1対1で対応に応じる


女性たちは並びながら順番が来るのを今か今かと待っていた


そんな中その光景を後ろの方で椅子に座ったまま見つめる女性がいた



「ねーどっち派?」


「私はやっぱり秋元さんかなーあの真面目な感じが」


「えー宮澤さんは気さくで話ししやすいよ」


まだ列に並んでいない人のそんな会話が耳に入ってくる



(なんなの・・・これ?)


彼女の名前は柏木 由紀


秋葉総合病院 救急外来勤務であり


小嶋の後輩でもある


以前、患者のなかでストーカーまがいの人がいると言うことを小嶋に相談したら


後日、名刺をもって救急外来に現れたのだ


名刺の裏にはこの講義の日時と場所が記載されていた


たまたま休みだったので参加することができたのだ


講義自体は女性の被害をどう防ぐか、その対処法などの話であり


参考になったのだが・・・


(これ・・・明らかにこの2人目当てできてる人いるでしょ・・・)


柏木は少し顔が引きつった


そして持ってきていた名刺に目をやる



秋葉西署 生活安全課 宮澤 佐江 ・・・


柏木は顔をあげて


質問を受けている左側の方を見た


宮澤の相談を受けたい人の行列を見て


ため息をつく


(・・・秋元さんだっけ・・・あの人は)


宮澤を諦めて


一緒に講義をしていた秋元という女性の方に相談しようかと反対側を見る


そこには宮澤に引けを取らないの列ができていた


(だめだ・・・帰ろう・・・)


柏木はため息をついて荷物をまとめ


会議室を後にした



――――


2階のエントラスから1階に伸びる階段をおり


会場を後にしようとした時


「ちょっとまって!」


上から声が聞こえた


「へ?」


柏木は思わず振り顔をあげた


そこにはエントランスの手すりに身を乗り出している


宮澤の姿があった


「柏木さんですよね!?」


「は、はいそうですけど」


ぽかんとする柏木をよそに


宮澤は階段を下りて


柏木の前に駆け寄る


「あーよかった。違う人だったらどうしようかと思った」


宮澤はにこっと笑う


パンツスーツで緩やかなパーマがかかったショートヘアー


ボーイッシュとはこういうことを言うんだろうなと


柏木は思った


「小嶋さんの後輩なんですよね?」


「へ?あ、そ、そうです」


柏木は宮澤の声ではっと我に返った


「でも、どうして私ってわかったんですか?」


「小嶋さんに1回写真を見せてもらったので」


「1回でわかるんですか・・?」


「うーん。職業病ってやつかなぁ」


宮澤は笑った


「それより、相談があるからきてくれたんですよね?なかなかあの状況では聞けなかったんだろうなぁと思って・・・すいません」


宮澤は頭をさげる


「いえ、いいんです。それにしてもすごい人気ですね・・・」


「うーん。名誉なことなのかどうかは分からないけど、こうして講義を聞きに来てくれる機会になればいいかなとは思ってます。自己啓発にもつながるし・・・」


宮澤はぽりぽりと頭を掻いた


「おーい佐江!早く戻ってこい!」


今度は秋元が2階から叫んでいた


「あーごめん。今行く」


宮澤は秋元の方を向いて手を振った


「頼むぞ―」


秋元はそう言うと足早に会議室の方に戻って行った


「柏木さん。この後時間ありますか」


「へ・・・?はい」


「じゃあ、あそこのカフェで待っててください」


宮澤は会場の向かいにあるカフェを指差す


「終わったら、話しお聞きします」


宮澤はにこっと笑い


一礼して階段を駆け上がって行った



「な・・・なんなの?いったい・・・」


柏木はしばらくその場で固まっていた


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