気ままな詩人

48グループの創作小説を書いています。じゅりれな、さやみるきーメインになります。SKE、NMBの支店推しです。苦手な方は退室ください。

sing a song

sing a song⑩

「はぁー・・・緊張する」

ついに迎えた卒業コンサート

振り入れは、なんか自然と体か動いた

体力は昔みたいになかったけど

NMBにいた時の感覚が残ってるんやなって思った

コツコツコツ・・・

楽屋までの通路をあるき

楽屋のドアをぐっと握り

(彩ちゃん・・・おるかな?・・・ええいっ!)

ガチャ・・・

勢い任せにドアノブを

「みるきーやん久しぶりー!」

扉を開けるなり里香ちゃんが私に気づいて駆け寄ってきた

「久しぶりー」
「かわらんなぁ」

他の1期生のメンバーも次々に駆け寄ってきてくれた

私は話をしながら横目で楽屋を見渡す

「彩なら打ち合わせやで」

「え・・・あぁそう・・・」

里香ちゃんの言葉に探していたのがばれてドキッとした

「あー彩」

まーちゅんの声に

体がぴくっと反応する

「みんな久しぶりーありがとう」

彩ちゃんの声を背中越しに聞いてドキドキした

「もう少ししたらリハやから。おねがいします」

「みんなでもりあげようね」

「さやねぇが卒業するとかマジエモい」

「なんやそれ」

彩ちゃんははるちゃんとかりぃちゃんとかと楽しそうに話していた

「みるきー」

里香ちゃんの声にハッとする

「いける?」

「う、うん。いけるで」

「・・・・」

里香ちゃんは私の耳に顔を近づけ

「素直に言いたいこといったらええねん。その方がみるきーらしいで」

「え・・・」

「こういうとこ腹立つとかでもええし。ちゃんと話しとき」

「う、うん」

「そのタイミングは任せるから」

里香ちゃんは私の肩をぽんっとたたき

ニカっと笑った

「彩ー久しぶり」

里香ちゃんは私にそう言った後彩ちゃんに声をかけ

私の肩をつかんで彩ちゃんのほうに向けた

「・・・おう、岸野久しぶり。みるきーも・・・その来てくれてありがとう」

彩ちゃんはすごくぎこちなく笑った

「うん」

「ほな私は俺らとはの練習してくるから」

「あ、それやったら私も」

「いや、ええからええから」

里香ちゃんは彩ちゃんの肩をぽんっとたたき
まーちゅんたちの方に行ってしまった

「・・・」
「・・・」

お互いに沈黙が流れる

「あの・・・な。みるきー・・・」

彩ちゃんが口を開こうとしたとき

「「きゃー!!」」

楽屋のドアが開き、1期生たちの黄色い声が響く

「どうも、皇輝音翔です」

百花ちゃんがプライオリティーの時の衣装を着て現れた

「げっ・・・」

彩ちゃんの顔が引きつる

「さやねぇなにしてんねん。リハやるでリハ」

「ちょ、ちょっとまてぇ」

「えーなになにさやねぇもやんの?」

「リハみようみよう!」

みんなきゃいきゃいと騒ぎ出す

それにしても、なんで彩ちゃんそんなに慌ててるんやろ?

「あーもう!ネタばらしになるから、リハもみんでええからな!」

彩ちゃんは百花ちゃんの腕をつかんで楽屋から出て行ってしまった

「行くな言うたら行くよな」

「よし行こう」

里歩ちゃんとまーちゅんは目を輝かせ

2人の後を追おうとしたとき

「では、皆さんリハーサルに向けてご準備お願いいたします」

会場のスタッフさんが呼びに来て

2人は急ブレーキをかけ

準備をしだした


・・・なんやろ

結局話できんかったな・・・

私ももそもそと着替え

準備をする

「ではおねがいしまーす」

スタッフさんの声に促され

みんなステージに移動し始める

私はうつむきがちに楽屋を後にした

sing a song⑨

ーーー
それから

着々と卒業コンサートの話が進んでいった

「一期生の参加メンバーなのですが」

「はい・・・」

スタッフの方との打ち合わせに参加し、一期生と聞いてみるきーの顔が浮かぶ

「山田さんは正式にお伝えする前から申し出が出てますので・・・」

「「ははは」」

山田のフライング参加表明にスタッフたちも笑う

「あと参加者は・・・」

「すいませーん。遅くなりました」

「は?」

聞きなれた声に私は目を丸くする

そこには金髪、ピアスにダメージジーンズ

パっと見どこのもんやねんっていう木下百花がたっていた

「百花」

「卒業コンサート、私も参加させてもらいます」

そう言って机におもむろに紙袋を出し、ホッチキスで止めた紙を配りだした

「はい」

百花に渡された紙には

『企画 ダブルカップリング キス大作戦』

と書かれていた

「は?」

私は目を丸くして百花の方を見る

「百合はアツい」

「いやいや、なんでやねん」

「へーでも、面白そうじゃん」

スタッフさんがパラパラと企画書を見ながら言う

「うんうん、最近ゆーりちゃんと仲いいし。ちまたではさやゆーりはやってるんでしょ?」

「いやいやいや」

私はあわてて静止した

みるきーともちゃんとしたことないのに

それに、私は卒業したあとみるきーに・・・

みるきーに・・・

久しぶりに会って

ひどいことを言ったのに

私はまだ、心のどこかで許してくれると期待している

2年前のあの日

好きと言ってくれたから

『さやかちゃん』

みるきーの笑顔が浮かんだ

・・・ずっと、待っていてくれていたのだろうか?

「さや姉聞いてる?」

「え?」

百花が不満そうに問いかける

「あぁ・・・でも、なんでキスやねん」

「その方が盛り上がる」

「だから・・・」

「みるきー来るしお客さん喜ぶよねー」

「!」

百花と言い合っているうちに他のスタッフさんが

ホワイトボードに参加者の名前を記載していた

「・・・」

「みるきーとキスにする?」

百花の発言に我に返る

「あほっ!なにゆうねん」

その声にスタッフさんたちが一斉にこっちを見た

「あ、あはは。すいません」

私はあわてて取り繕った

ーーー

結局、百花の案が通り

なぜかスタッフはノリノリだった

一期生は愛菜以外全員参加ということを聞き

正直、仲間の絆の強さを感じた

「なーええ加減機嫌なおせや」

自販機前で百花が私にコーヒーを差し出してきた

「いや、別に」

私は受け取り、カコっと開けてぐっと飲んだ

「連絡とってんの?」

「・・・この前おうた」

「で、話したん?」

「したけど・・・怒らせた」

「はぁー・・・あんたは好きな子をいじめる小学生か」

「うっさい!」

「みるきーつらかったやろなー」

「・・・」

「あーわかったわかった。本気でへこんでんのをいじめる趣味はないからな。ええか、さやねぇだからこそ、みせつけたらええねん」

「は?」

私の肩に腕を回し

「女はやきもち妬かせてなんぼやで。その方が本心が出るってもんや」

「あんたはどこのイケメンやねん」

結局、流されるまま

卒業コンサートの日を迎えることとなった

sing a song⑧

1期生の集まりに私は参加しないことにした

芸能界復帰ということもあり、いろいろと立て込んでいたというのもあるけど・・・

彩ちゃんの話をみんなとしてたら泣いてしまいそうだったから・・・

ーーー
話は数日前にさかのぼる



なかなか返事をせずにしびれを切らしたのか

里香ちゃんから電話がかかってきた

『参加できそう?』

『ううん、ごめん』

『そうかぁー復帰とかで忙しいかぁ』

『うん・・・まぁ・・・ね』

『・・・もしかして、彩となんかあった?』

『え・・・』

『その反応はあったんやな。おうたん?』

里香ちゃん、鋭すぎ

『うん、実はボイトレのスタジオ一緒やって、駅で偶然会ったんよ。それで、お茶してたんやけど急に彩ちゃん機嫌わるくなって・・・』

『まじか・・・うわぁ。で、彩からそのあと連絡きてんの?』

『ううん。きっと私がなんも言わずに復帰宣言したからかなぁ。なんかそんな感じの口調やったし』

『そっか。でも、卒業コンサートには参加するつもりなんやろ?』

『うん、そのつもりやで』

『わかった。みるきー私らで彩へのサプライズは考えとくから、協力してくれる?』

『うん、もちろん』

そういって、電話は切れた

ーーーー

そして、今私は復帰準備の真っ最中だ

あわただしい方が、何も考えなくて済むからちょうどいい

でも、『僕はいない』の練習もしなきゃいけないから

その時は、鏡にうつる自分の隣に

彩ちゃんがふと見えてしまう時がある・・・

はぁ、こんなんで本番いけるんかなぁ・・・

ーーー

某日、大阪のとあるカフェにて・・・

岸野はソファーに座り、スマホを片手にきょろきょろとあたりを見渡していた

今日は打ち合わせの日なのだ

カフェの2階を貸し切っており、幹事の岸野は早めに到着していたという訳だ

「わー久しぶりー」

「りかにゃーん」

1期生のメンバーが続々と集まってきた

もちろん、全員参加という訳ではない

「みんな久しぶりー。座って座って」

岸野はメンバーを促しながら

「これ、寄せ書きのやつなー。コメントよろしく」

手際よく説明し、ペンを渡していく

みんなワイワイと話しながら、近況を話し合う

彩が卒業するときは必ず駆けつける

みんな言わずとも思っていたことだと、岸野は感じていた

そして

「りかちゃーん」

小谷・・・もとい三秋里歩が大きく手を振ってやってきた

その後ろにはまーちゅんもいた

「おー里歩ー、まーちゅんひさしぶりー」

岸野も手を振り、迎え入れる

「俺らがんばるでー」

「私久しぶりやから今レッスンつらいー」

ちなみにゆっぴは今日は来られなかったらしい

「ちょ、里歩、まーちゅん。実は話しあんねん」

岸野はちょいちょいと手招きをし、2人を端に呼ぶ

「なに?どないしたん?」

「彩がまたやらかした」

「はぁ?」

「どうやらみるきーと喧嘩したらしいわ」

「まじか・・・」

「彩、全然素直やないな」

小谷と小笠原はため息をついた

もちろん彩がみるきーのことを好きだというのは言わずと知れていることである

「みるきーの卒業の時はうまくいってたと思ったんやけどなぁ。でも、まじめに恋愛禁止を守って告白せんかったしな」

「おそろしいほどに真面目やな」

「まぁさやねぇらしいよな」

「で、彩も卒業する今私らがひと肌ぬがないかんと思うねん」

「ええで。どうする?」

小谷はぐっと親指をたてる

「でもどうすんの?」

小笠原がたずねる

と、そこに

「百花ー!」

きゃーっと黄色い声が響く

そこにははにかみながら片手を軽く上げる百花の姿がいた

「なんやますますイケメンやな」

「はーかっこええわぁ」

眉をひそめる小谷とは裏腹に小笠原はきらきらと目を輝かせていた

「百花ーこっちこっち」

岸野は木下を手招きし

「考えてくれた?」

「まぁ、しゃあないな。あの2人世話やけるわ」

木下はぽりぽりと頭を掻きながらいう

「さっすが百花!ありがとうな」

岸野は木下の首に腕を回し、抱き着く

「おぉー産後やから乳がすごい!」

「そやで、2サイズアップやで!」

きゃいきゃいと盛り上がる2人をよこに

「で、どういうことなん?」

小谷が声をかける

岸野は小谷のほうを向き

「まぁ私らが背中押したところで素直にいくとはおもえんから、ここは目には目を恋愛のこじれには恋愛をってな」

「「?」」


首をかしげる小谷と小笠原をよそに

岸野は満面の笑みを浮かべていた






sing a song⑦

カツカツカツ


私は早足で街中を歩いていた


なんなんよ・・・

なんなんよ・・・

せっかく会えたのに

話ができると思ったのに

・・・うれしかったのに

私・・・なんか怒らせることゆうたんかな?

視界が涙でにじみ

私はまわりに気づかれないよう

ホームの柱の陰で涙をぬぐう

『まもなくホームに電車が参ります』

アナウンスの声に

とっさに階段の方を振り向く

彩ちゃんは・・・

来なかった

・・・やっぱり、怒らせたんかなぁ

ボイトレに行きだしたのは

芸能活動復帰っていうこともあるけど

彩ちゃんの卒業コンサートに出るつもりだったから

だから、厳しくても頑張ろうって・・・

最近回数増やしたんやけどなぁ・・・

でも彩ちゃん急に怒り出すし

頑張ってたのに何よって・・・

なんかイライラしてしもた

プシュー・・・

電車がホームに到着し

みんな足早に動き出す

私は階段の方を振り向きながら

勝手なんは

お互い様やなぁ

彩ちゃんのために練習してた、って言えば

きっと・・・

プシュー・・・

私のそんな思いは

電車のドアによって遮られ

ゆっくりと動き出した

ーーーー

結局

そのあとボイトレにも行っていたけど

彩ちゃんと会うことはなかった

そして

『山本彩卒業コンサート参加依頼』が正式に来た

断る気はないけれど

この前のことがよぎる

素直に・・・なれるやろか

この前はごめんねって

言えるやろか

ピロン♪

lineがなり、スマホの画面を見る


『岸野里香』

珍しいなぁ、里香ちゃん

そう思い、メッセージを開く

『久しぶりー。彩の卒業コンサートの時に1期生でなんかできたらいいなって、企画のために集まろうっていってんねんけど。いける日ある?』

1期生・・・

懐かしい響きだった

その文字に、NMBで活動していた日々が走馬灯のようによみがえる

はぁ・・・卒業の日には好きってちゃんと言えて

満足して

そのままになってしまってたんやなぁ・・・

こう思うと、本当に淡い初恋みたい

彩ちゃん・・・どう思ってるんやろ?

卒業の日、私は自分がしたみたいに

彩ちゃんの思いが聞けると勝手に思っていたけど・・・

もしかしたら、そうならないかもしれない

NMBの劇場で彩ちゃんとゆーりちゃんが見つめあう姿を想像してしまった

「ゆーりちゃんのこと・・・すきなんかなぁ」

この前、アカリンに言われてからなんとなく検索してしまって

余計にもやもやしてしまった

「はぁ・・・」

すぐに返事をする気になれず

ベッドに突っ伏していた






sing a song⑥

ザワザワザワ・・・

駅の雑踏の中

私とみるきーの間には音がないように感じた

お互い見つめあったまま時が止まったようだった

「ひさし・・・ぶり」

沈黙を破ったのはみるきだった

「お、おう」

「駅で会うとかすごない?」

みるきーは笑ったが、その笑顔はぎこちなかつた

きっと、私が卒業をだまってて何にも連絡よこさなかったからだろうな

「彩ちゃんはこれから用事?」

「え、あ、あぁ・・・」

「私、今さっき用事終わったとこやねん。時間あったら、少し話さへん?」

私は時計に目をやる

スタジオを借りてるけど・・・まぁ多めにとってたからいいか・・・

「1時間くらいやったらええで」

「ホンマ?ほな、ちょっとお茶しよ」

みるきーは少しほっとしたように笑った

ーーー
「ここの紅茶ラテおいしいねん」

そう言ってみるきーは手慣れたようにカフェに入っていった

「ここらへんよく来るんか?」

「きだしたのは最近。ボイストレーニングはじめてん」

「ん?まてぇ、もしかしてそこって・・・」

私はスタジオの名前を言う

「え、そうそう。もしかして彩ちゃんも?」

「あぁ。スタジオ借りて練習しようと思って」

「そうなんや。実はおんなじところにいってたんやね。すごい偶然。先生って・・・」

みるきーはスタジオ講師の話を始めた

担当の講師は違っており、ギターとかのスタジオとボイストレーニング専用のスタジオは分かれているから会うことがなかったのかもしれない

私はみるきーおすすめの紅茶ラテを飲みながら

こんなに会える機会があったのに

このタイミングで会うなんて・・・

と、ぼーっと見つめていた

「腹筋とか落ちてしもてて、よくおなかから声が出てないっていわれてなぁ」

「あー・・・」

「立ち方とか音程のつけ方とか、厳しいわぁやっぱり」

みるきーは苦笑いをした

私も最初はかなり怒られたもんなぁ

それに、あの先生って私は担当やないけど厳しいって有名やし

いや待てよ?男やん

あの先生結構若かったし

その人と2人っきり?

私の中でもやもやとした思いがよぎる

みるきーは以前見た時よりも綺麗になっていた

好きと言ってくれた後、待ってくれてるとばかり思っていたけど

連絡も少なくなって

結局仕事ばっかりになって・・・

もしかしたら、私以外にいい人が現れてもおかしくない状況だよな

もう・・・アイドルやないんやから

それに、芸能界に戻ったら

今度はみるきーを狙ってくる男がたくさん・・・

「なんで、また戻ろうと思ったんや?」

「え?」

私はなんかイライラして

みるきーの話を遮った

「うん・・・いろいろ考えて・・・ね」

「いろいろってなんやねん。やりたいことあったんちゃうんか?それで卒業したんちゃうんか?」

「したよ。でも、そううまくいかなくって。でも、アイドルとしては卒業したからタレントとしてもう一回やってみようって思ったん」

「そんなに簡単なもんやないやろ?」

「何?なんでそんなに怒ってんの?」

私の口調にみるきーもすこし口調がきつくなる

「だいたい、あんたは何でも急やねん。卒業したかと思ったら今度は復帰って」

「そんなん私の勝手やん。そっちやって卒業するって私になんも言ってなかったやん」

「私にも事情があんねん」

「ほなこっちやってあるわ」

みるきーは口をとがらせ

「もうええ」

がたっと席を立つ

「彩ちゃんこそ、勝手やん」

「・・・」

しまった・・・

私の熱はさーっと冷める

だが、もう遅い

みるきーはカバンを手に去って行ってしまった

あぁ、またやってしもた

どうして、思っているのに素直になれないんだろう・・・

追いかけようとしても

足が動かなかった

追いかけて

何を言うのだろう

『勝手やん』

そうだな

ホンマに

勝手に待ってくれてると思って

勝手に嫉妬して

勝手に怒らせて

何年たっても

なんでみるきーだけにはこんなに不器用なんやろう・・・




sing a song⑤

「卒業曲なんだが・・・」

「はい」

私は秋元先生に本社に呼び出されていた

腰が沈む柔らかいソファーに姿勢を崩されないよう力を入れじっと秋元先生を見つめていた

「デモテープ・・・聞いたんだけど」

「は、はい・・」

「歌詞も山本がかいたんだよな」

「はい」

「じゃあ、なおさらだな・・・」

「え・・・?」

「この曲は世に出していいの?」

「・・・!」

その言葉を聞いた瞬間、固まってしまった

眼鏡の奥の瞳が私の胸に突き刺さる

「これは大事な人に贈るといいよ」

そういって、フッと笑った

「・・・とても、想いを感じるから」

秋元先生は机にCDを置き、立ち上がる

「そういうことだから、よろしくね」

「は、はいっ!」

私もとっさに立ち上がり

「あ、あのっ!あ、ありがとうございまいた」

深々と頭を下げる

「君は十分頑張った。だからね・・・もう、自由にしていいんだよ」

「!」

その言葉を聞いて、堰を切ったように目から涙があふれだした

「いい曲だったよ。とっても」

秋元先生は私の肩をポンっとたたくとそのまま部屋を後にした

あたしは頭を下げたまま固まっていた

涙のしずくがデモテープにかかっていた

ーーー

数時間後私は駅にいた

この駅にはボイストレーニングをしているスタジオがあるのだ

秋元先生に背中を押された気がして

デモテープの曲を練習しに来たという訳だ


「しゃっ・・・」

私は帽子を目深にかぶり

リュックをかけなおし気合を入れ・・・

どんっ

「っ!」

リュックを直したときに

後ろから急いできた人の荷物と当たり

よろける

なんやねん

幸先悪いなぁ・・・

と思ったつかの間

前から来た人とぶつかりそうになり

「あ、すいません」

私はとっさに顔を上げ

「え・・・」

固まってしまった

「さやか・・・ちゃん」

おいおい

嘘やろ?

目の前には

みるきーがいた


sing a song④

芸能活動をやめてから1年近くたった時

「渡辺さん。もう一度芸能活動をしませんか?」

そんな声がかかっていた

「まだ未練、あるんじゃないですか?」

そういわれて、胸を貫かれた気分だった

「・・・少し、考えさせてください」

私はそうって、頭を下げた

確かに、SNSで活動をしている自分が未練がないといえないわけはない

でも、今更・・・

彩ちゃんになんて言おう

そんなことがぐるぐると回っていた

「・・・こんな時は」

私はスマホを取り出し、ラインを送る

『アカリンちょっと相談あんねん』


ーーーー

アカリンとあったのはそれから三か月後のことだった

youtubeとかでいろいろ活動してるし、今やNMBで別のフィールドを見つけて活動しているやり手だと思う

「ごめんなーみるきーなかなか会えんで」

アカリンは手をパンっと合わせて頭を下げた

「ううん、ええよ。忙しいもんな」

「みるきーは今何してんの?」

「・・・まぁ・・・そのことやねんけど」

私は今事務所から声がかかっていることを話す

「ええんやない?」

「え・・・」

さらっとしたアカリンの発言に目を丸くする

「だって、みるきーは舞台でいる時が一番キラキラしてたもん」

「・・・・」

「そりゃ、いろいろあって疲れたんかもしれんけど、芸能生活経験して一般人に戻るんって難しない?」

「・・・そう、だね」

私はオープンキャンパスで言われたセリフがよみがえり口ごもる

「さや姉とは連絡とってんの?」

「え・・・」

「まさか、とってないの?」

「卒業したすぐはちょっととってたよ。でも、彩ちゃんどんどん忙しくなるし、なんか・・・」

私はもごもごと言いながら気づけば下を向いていた

「はー・・・あのにこにこしてたみるきーはどこに行ったんよ」

アカリンはため息をつきながら眉をひそめた

私は顔をあげてアカリンを見る

「やっぱり、舞台におるみるきーがええで。何年もしてきたら嫌になることもある。でも、求められてそこにもう一回立てるんやったらええんやない?」

「アカリン・・・」

「前言撤回なんて、ますますみるきーらしいやん」

そういってアカリンはニッと笑った

「それに・・・」

「え?」

「さや姉もいつまで待ってくれるかわからんで?」

「へ・・・?」

「最近はゆーりと仲ええから」

「・・・!」

その一言が決め手になったことは

悔しいからアカリンには言っていない






sing a song③

「え・・・」

携帯のニュースに『速報!山本彩卒業発表』と書かれた記事を見て

私、渡辺美優紀は固まっていた

私全然聞いてないんやけど

と、言いながら私自身彩ちゃんに何にも言ってなかったから人のことは言えんか・・・

「・・・あほっ!」

自分にも非があるけど、なんかむしゃくしゃして携帯をソファーのクッションに向かって投げる

トン・・・

クッションに跳ね返りスマホ画面が上を向き

卒業の文字が強調されるように映る

「・・・あーもう!」

私はソファーに突っ伏す

2年前、何も言わずにNMBを去っていった

でも、それは彩ちゃんの近くにいるのがつらくて

自分が何をしたいのかわからなかったから

でも、お互いの気持ちを知って

なんか、離れてても大丈夫って思った

きっと、彩ちゃんは変わらず思ってくれるから・・・

変な自信があった

卒業後すぐは海外に行ったりして随分と気持ちが落ち着いた

仕事、どうしよう・・・

そう思い、昔の夢だった助産師を考え、オープンキャンパスにもこっそり行ったりした

でも・・・

「あれ、みるきーやない?」

「え?ほんま?」

そんな声が方々から上がり、人だかりができてしまい

「校内での騒ぎは困ります」

と、冷たく言われそれ以来大学や人が多いところに行くのを避けるようになった

・・・やっぱり、芸能人として出てしまった以上一般人に戻るのは難しいんかな

そんなことを日に日に考え

テレビで歌って踊る彩ちゃんを見ると、一緒にいた時とはまた違った感情が沸いた

あの時は、近いのに遠かった

でも・・・今は・・・

「本当に・・・遠い」

そうつぶやいた私の頬には一筋の涙がつたっていた

sing a song②

そして、ライブ当日


私は卒業することを告げた


お客さんの悲しむ顔、応援してるって叫ぶ声、拍手・・・

こんなにも目で、耳で、体で・・・お客さんたちの入り混じった感情を感じた日はなかった


でも、なんか言えてすっきりした


ーーー


「さやねぇ!」

公演が終わると美瑠たちが目に涙をためながら抱きついてきた

「ごめんな。言ってなくて。でも、美瑠なら大丈夫やから」

頭をなでながらなだめる

「「さやかさん!」」

他のメンバーたちも目に涙をためながら私の方を見つめていた

「みんな・・・」

「ちょっと。私にも何にも言わんってどういうこと」

そこに吉田がつかつかと割り込んできた

目には涙がたまっている

「だって、言ったら顔に出るやん」

「そうやけど・・・でも・・・」

吉田はぐっと唇をかみしめる

「っ!・・・さやかの・・・あほっ!」

そういって吉田も抱き着いてきた

「さやかさん!」

他のメンバーも次々に抱き着いてくる

「ちょ・・・ちょっとまてぇ」

苦笑いしながらそれを受け止めていた

ーーー

メンバーをなだめながら、これからのこと、NMBのことについて話し

メンバーを楽屋へ戻るよう促した

「さて・・・と」

キャプテンとして今日やるべきことはやったかな・・・

そう思いぐっと伸びをして、開放感に浸る

「彩」

「ん?」

吉田の声に振り返る

「まさか・・・みるきーにもこのこと黙ってたん?」

「え・・・まぁ・・・」

「あーあ。しらんで」

普段よりワントーン低い声で吉田がニヤッと笑った

「え・・・」

その顔に嫌な予感がした




sing a song①

「ぐぁ・・・」


7月某日。私、山本彩はスマホ画面を見て固まっていた

そこには『渡辺美優紀 誕生日に芸能会復帰』と書かれていた

「あいつ・・・」

ホンマ、どんだけ気まぐれやねん

そう思いため息をつく

ま・・・でも、あいつらしいか。

ふっと笑みがこぼれる


プルルルル・・・

「うわぁっ!」

いきなりの着信に思わずスマホが宙に舞い、慌ててそれを受け止め電話にでる

「もしもし、彩か?」

電話は金子支配人だった

「はい」

「記事見たか?」

「あぁ・・・。みるきーのやつですね」

なんとなく照れ臭くなってポリポリと頭をかく

「そうや。いやーこんなタイミングで出てくると思わんかったなぁ」

「ははは・・・。まぁあの子らしいっていうか」

私は苦笑いをする

「で、どや?曲できそうか?」

「いやぁ・・・まだ、なんとも・・・」

私は机の上に散らばった紙とソファーに置かれたギターに目をやる

「・・・ほんま、タイミング図ってるみたいにでてくるなぁ」

「・・・」

「彩の卒業が正式に決定した次の日やもんな」

「・・・そう、ですね」

私はギターを見つめたままぽつりと漏らす

昨日、私は秋元先生に卒業することを告げ、正式に決定したばかりだった

『卒業の曲は君が書きなさい』

そう言われ、作曲作りに取り掛かった矢先だった

「発表はライブの初日になる。ええな?」

「はい」

「ほな、また状況教えてや」

「わかりました」

電話を静かに切り

画面は先ほどの、みるきー芸能界復帰の記事に戻る

2年前、みるきーが卒業した時にも夜な夜な作曲してたよなぁ・・・

『彩ちゃんのことが・・・大好き』

「・・・」

卒業公演の後、告白されたことを思い出す

あの時は恋愛禁止だから言えなかった思い・・・

「はぁ・・・」

私は手で顔を覆う

本当なら、卒業発表してみるきーを驚かせるつもりだった

なのに・・・

「ほんま・・・先先いってんのはあんたのほうやで・・・」

卒業したかとおもったら、復帰宣言

私はいつも後手に回ってる

・・・こうなったら、黙っといてやる

みるきーには先に言おうと思ってたけど、もうええ!驚いて私の気持ちをわかれ!

なぜか変なテンションになり、私はドカッっとソファーに座った




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